米国政府は潜水艦で使用する大型誘導魚雷Mk48 Mod6を台湾へ売却することを議会に通知したことで中国が反発しているが、米国の台湾支援はこれだけに留まらない。
台湾法を盾に台湾は今年も米国から多くの兵器調達を進める予定
米国政府は20日、約1億8,000万ドルで大型誘導魚雷Mk48 Mod6 Advanced Technology(※1)を18発売却することを議会に通知したが、台湾国防部は米国から対艦ミサイル「ハープーン BlockⅡ」を搭載した移動式沿岸防衛システム(トラックにハープーンランチャーや運用に必要な機材を搭載したもの)の購入を進めており、両政府間による正式契約は近いと発表した。
※1補足:今回台湾に売却されたことになるMk48 Mod6は最新のものではない。現在、米海軍やオランダやオーストラリア等の同盟国に供給しているのはMk48 Mod7 CBASSだ。
さらに台湾空軍は要求性能を満たせない国産無人航空機(UAV)の代わりに米国製のMQ-9 リーパー調達を検討していると報じられている。

出典:JW19335762743 / CC BY-SA 4.0 無人航空機Teng Yunのプロトタイプ
台湾の国家中山科学研究院(NCSIST)はMQ-9クラスの無人航空機「Teng Yun(テンユン)」を開発したのだが軍の要求性能を満たせず採用が見送られたため同機の改良型を開発中なのだが、どうやら軍が要求するレベルのセンサーや電子機器を作動させるだけの電力供給(機上発電能力)が難しいらしく、台湾空軍はMQ-9 リーパーを4機調達することを検討中で調達費用は約1億6,600万ドル(スペアパーツは地上設備など関連費用を含む)程度を見込んでいるらしい。
因みに米国は台湾に対し昨年だけで約100億ドル(約1兆1,000億円)規模の武器売却(※2)を決定しており、移動式沿岸防衛システムやMQ-9の売却を米国政府が正式に議会へ通知すれば中国のさらなる反発は避けられないだろう。
※2補足:米国は昨年だけでM1A2 エイブラムス戦車 108輌、第4.5世代戦闘機F-16V 66機、FGM-148 ジャベリン対戦車ミサイル 409発、BGM-71 TOW対戦車ミサイル 1,240発、FIM-92 スティンガー対空ミサイル 250発等の売却を決定している。
このような米国は決定は台湾支援または蔡政権支援に映るかもしれないが、台湾自身はもっと冷静な見方をしている。
台湾陸軍の退役軍人である羅智源氏(最終階級は中将)は今月初め、今回の武器販売契約は米国が困っている台湾を助けるためや米国が台湾のことを兄弟のように思っているから実現したと考えるのは誤りで、この取引は純粋に米国と台湾の国益が合致した産物に過ぎないと話した。
特に台湾側がこの取引を成立させるために支払った代償を考えれば当然の結果だと指摘、要するに彼は米議会の議員に寄付という形で莫大な額(恐らく数十億円規模)を支払い「台湾同盟国際保護強化イニシアチブ法(台湾法まはた台北法)」を成立させてきた台湾の努力などを考えれば当然の結果で、これを米国やトランプ大統領の好意だと勘違いするなと言いたいのだろう。
この辺りの感覚は流石、米国と中国の外交関係に長年翻弄され続けてきた台湾らしい現実的な見方だと言える。
※アイキャッチ画像の出典:public domain MQ-9リーパー
代償を払っても売ってもらえない国も多いことを考えれば兵器輸出を好意の表れではないと言うのもそれはそれで独りよがりな見方じゃないですかねぇ
ルトワックも言ってるけど国家は所詮感情論で動くものであって国際関係論が想定するような合理的な戦略的主体なんてものは現実には存在せんよ?
台湾の場合は好意を向けられてるけど逆に過去30年の日本はアメリカから戦略的に明らかに非合理な敵意を向けられて陰に陽に軍事経済その他を抑えつけられてきたわけだし
(そしてそれが中国・朝鮮の台頭を招き国際秩序の不安定化を遂に容認できなくなったところでようやくアメリカの対日敵意も終わった)
過去の台湾の武器輸入の実績を調べれば、そんな結論にはならないと思うのだけど…現在のトランプ政権下での厚遇は激化する米中間の対立が背景にあると見るべきで「この取引は純粋に米国と台湾の国益が合致した産物に過ぎない」とした台湾陸軍の退役中将の発言が正解だと思うけどね
国家も人間の集団である以上、最後は感情で動くとする考え自体は間違いだとは思わないが、それをもって「合理的な戦略的主体など現実には存在しない」と言うのは暴論ではないか?
尚、米国が日本に対して抱いている敵意は太平洋戦争の経験が元になっているので非常に根深いものがあり、現在でも終わったとは言えない状況(何しろ、正規戦で一番米国を追い詰めた国はドイツと日本だけだから)
>尚、米国が日本に対して抱いている敵意は太平洋戦争の経験が元になっているので非常に根深いものがあり、現在でも終わったとは言えない状況(何しろ、正規戦で一番米国を追い詰めた国はドイツと日本だけだから)
一方当事者の米海軍と、帝国海軍の後継的位置付けの海自は、「ズブズブの関係」と評する人がいるくらいには密な関係にある様です。
>一方当事者の米海軍と、帝国海軍の後継的位置付けの海自は、「ズブズブの関係」と評する人がいるくらいには密な関係にある様です。
「ズブズブの関係」というより、明確な「主従関係」にあるといったほうが的確でしょう。
少なくとも「台米は」ってことじゃね
元はといえばニホンが真珠湾で騙し討ちなんかしなけりゃ良かったのでは?
たったそれだけの理由なら笑うわ
それ言ったらアメリカはせいぜいハワイまでで満足して
わざわざ別大陸の満州を植民地にしようなんて考えてたほうが
控えめに言ってかなり悪辣と言えるのだが?
そもそも第一のハルノートであの苛烈さを見るに
アメリカは本心ではモンゴルを除く東アジア全土を手にいれたかったんだろうよ。
その考えがそもそも悪いって事なんだがいかがか?
ただそのハルは、強硬派が主張していた石油の対日全面禁輸を一時期﹙年単位﹚退けていた様です。
それも「余計な口を挟むのは止めて自分の仕事をしろ」といった感じの強い叱責で。
ハルがいなければ、太平洋戦争は数年前倒しで始まっていた可能性もあるかも。
アメリカは台湾を日本のように中国に対する防波堤としての役割をようやく実行したという事だな
兵器を大量に売って、台湾は国防力UPさせ、アメリカは中国の海洋進出抑止になるし金にもなる
お互いWINWINだ
西太平洋の対ロシアの防波堤なら日本で事足りる面があるだろうけど、
対中国の防波堤だと日本だけでなく台湾も欲しくなるのだろうね。
対中国の警戒が本格化した現れでしょうか。
台湾には既に超音速対艦ミサイルがあるのに、これをベースに地上発射型にはせず
あえてハープーンベースで購入するのか
なんでだろ、ミサイルがでかすぎて機動性が低くなるからなのか
それとも実用化に時間がかかるから、いち早く導入できるものを選んだのか
日本もだけど種類の異なる対艦ミサイルを複数用意することによって相手にそれぞれのミサイルに対応した対抗手段の開発を強いることができるからじゃない?
ヒント:アメリカが売り込みたかった
これは脅威にさらされている台湾側にとって仕方ないことなんだけど、
中国軍側にとっても良い話なんだよな。
仮想敵国の戦力が増強されれば、自国側の軍の予算と規模も増やせるわけでね。
気功とかで瓦や壺を割ってた頃の人民軍が懐かしいです。
台湾にしてみれば「とりあえず買えるものは買っておこう」という感覚だろう。
おそらくトランプの落選を予想しており、民主党になれば武器売却がオバマみたいに酷くなる。
台湾には武器はあっても足りないが、たまに「え?それ必要なの」と思うようなものも複数存在する。
無人航空機も台湾の技術ならもう少しで軍の要求する水準を満たせるだろうが
米国製を導入する陰には米国の軍需産業からの政治家への台湾保護の圧力を少しでも
高めるという意図があるはずだ。
総合的な点を考慮して「政治的な産物」という言葉でまとまるような気がする。