日本関連

新明和工業、有人・無人プラットフォームの開発協力でポーランド企業と合意

ポーランドを代表する防衛産業企業=WB GROUPは20日「新明和工業と技術・貿易協力に関する協定を締結した」「この協定は有人・無人航空プラットフォームの開発協力を対象としている」と発表、ポーランドのディフェンスメディアも日本との協定について「双方に利益がある」と歓迎している。

参考:WB GROUP
参考:Ramowa umowa o współpracy GRUPY WB z ShinMaywa
参考:Polish-Japanese Technical Cooperation Begins

現在の日本に欠けている戦術用途の無人機や無人機を活用するための情報統合技術は魅力的に映るだろう

ポーランドを代表する防衛産業企業=WB GROUPは20日「シコルスキ外相とザレフスキ副国防相の日本訪問に合わせてWB GROUPと新明和工業は技術・貿易協力に関する協定を締結した」「この協定は有人・無人航空プラットフォームの開発協力を対象としている」と発表。

ポーランドのディフェンスメディア=ZBiAMも「両国間の協力関係は長い歴史があるため今回の協定締結に驚きはない」「協定に署名したWB GROUPのピョートル・ヴォイチェホフスキー氏は『無人機偵察・攻撃システムや海洋監視ソリューションの開発に関心を寄せる日本企業との協力を嬉しく思う』と述べた」「外相と副国防相も駐日ポーランド大使館での演説で『両国関係を技術・商用協力だけでなく政治・軍事協力まで強化する必要性』を訴えた」「ポーランドは本格的な戦争で実証された装備の開発経験、実際の戦場で直面した課題や経験を日本の防衛産業や防衛システムに反映させることができる」と報じた。

Defence24も21日「日本人がポーランドとの協力に熱心なのは現在の国際情勢だけではなく『ウクライナでの全面戦争においてポーランドの防衛産業が優れた成果を上げた』という点が大きい」「日本人は現代戦の課題に対応してきたポーランド産業の能力が貴重なものと見なしている」「新明和工業はWB GROUPの通信、射撃管制、無人技術分野におけるソリューションに興味を持っている」「ポーランド視点から見ると新明和工業は資金力と技術的ソリューションを有している」「まだ具体的な協力分野について明らかになっていないが、今回の協定は両国間の防衛協力における始まりの1歩だ」と指摘し、日本との協力を歓迎している。

出典:海上自衛隊

さらに「今回の協定でポーランドは経験がなく興味深い日本の技術(恐らく水陸両用機分野のこと)にアクセスできるようになる」「日本は近代的な産業能力と独自の装備品を持っているにも関わらず、海外輸出は平和憲法によって制限(部分的に改正済み)を受けてきた」「そのためポーランドは技術だけではなく国際市場での経験も日本に提供できる」とも述べており、日本側の弱点をよく把握しているようだ。

因みにWB GROUPは日本人にとって馴染がないと思うが、C4Iシステム、無人システム、射撃管制システム、訓練用シミュレーションシステムで成功を収めているポーランド最大の防衛産業企業で、現在の日本に欠けている戦術用途の無人機(偵察向けのFlyEye、FT5、X-FRONTER、Warmate-R、徘徊型弾薬のWARMATE)や無人機を活用するための情報統合技術は魅力的に映るだろう。

結果論になってしまうものの、WB GROUPの先見性は「ウクライナ侵攻が始まる6年前からWARMATE(当時は徘徊型弾薬という言葉すらなかった)の量産を開始して海外輸出にも成功していた点」に集約されており、WARMATEは継続的な開発と改善によって能力がアップグレードされ、採用国はNATO加盟国、ウクライナ、アラブ首長国連邦、トルコ、インド、韓国に広がっている。

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※アイキャッチ画像の出典:WB GROUP

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コメント

  • コメント (14)

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    • たむごん
    • 2025年 3月 22日

    新明和工業の全体を見たときに、防衛省向けビジネスは小さく、なかなか厳しかったんですよね。

    ポーランドとの提携が、防衛ビジネス拡大のきっかけになるのか興味深いですね。

    >三菱重工の設備を買い取ろうにも古いうえ、何十億円とかかる。その余裕はない。末端まで含め、10年ほど前まで1500社ほどあったサプライヤーの数は1400社まで減った。なぜ、くしの歯が欠けたようなサプライチェーンになってしまったのか。

    (2021.10.12 防衛産業はつらいよ 海自向け航空機の予算ひっ迫、ほころぶ供給網 特集(1)苦境の日の丸装備品メーカー(上) 日経ビジネス)
    (2023年8月31日 防衛産業 装備移転の協議に注目 NHK)
    (2024年5月7日 2024年3月期 決算説明資料 新明和工業 IRライブラリー 決算短信)

    19
      • pl
      • 2025年 3月 23日

      日経ビジネスの有料部分に出てますが
      ・US-2の製造は直近3機連続で赤字を出している
      ・消防飛行艇で世界シェアをほぼ独占しているボンバルディアが航空部門から撤退するのでこの機に乗じて消防飛行艇に活路を見い出したい
      という状況だった様です。
      2番目については消防飛行艇の製造権はデ・ハビランド・カナダが取得して、ギリシャから受注も取り、取らぬ狸の皮算用に終わりそうです

    • ラーメン
    • 2025年 3月 22日

    今のアメリカは大統領が暴走機関車並みの政策を当たり前の用に連発してますからね。
    ポーランドを始めアメリカ以外の国との協力は大事だしドンドン推し進めるべきだと思います。

    25
    • 無印
    • 2025年 3月 22日

    US-2PL(仮)みたいなのが見れるのかな?

    3
    • 58式素人
    • 2025年 3月 22日

    悪く言うつもりでは無いのだけど。
    書類にサインをしている場所が、
    どこかの階段室横の、廊下の隅っこ?、に見えてしまのだけど?。
    どれほどの内容かはおいおい判って来るのだろうけれども、
    お互いの社長室でやれ、とは言いませんが、
    大きな契約ではないかのように見えてしまいます。

    15
      • 774
      • 2025年 3月 22日

      米国がホワイトハウスに招いて閣僚がずらりと並ぶ中で調印することの重さが逆にわかりますね

      2
    • 徘徊爆弾
    • 2025年 3月 22日

    徘徊爆弾は絶対に国産化しておきたいわな。制空権の3〜4割くらいは徘徊爆弾で担えるんじゃないか?
    こればかりは米国も欧州中枢も出遅れてるからポーランドが開発してくれていた事はありがたいばかり

    22
      • 名無し
      • 2025年 3月 22日

      制空権を徘徊型弾薬でって、、どう足掻いても無理でしょ

      6
        • 徘徊爆弾の優位
        • 2025年 3月 23日

        制空権の概念がかなり多層化しています。
        確かに上空を戦闘機が飛んで、敵軍用機や地上軍の活動を阻害し、味方を優位付けると言う従来の制空権は確かに徘徊爆弾には無理です。
        しかし敵方低空に留まり続けて、敵地上軍の活動を妨害し続けると言う意味での制空権は、もう有人機には無理な芸当ですし、マルチコプターでは火力も航続距離も足りない以上、徘徊爆弾が担うことになるだろうと。

        7
    • のー
    • 2025年 3月 22日

    WARMATE動画の機体は後部プロペラの形状からみて、着陸は考慮されてなさそうですが。
    徘徊型弾薬は、完全に使い捨てなんですかね?

      • ネコ歩き
      • 2025年 3月 22日

      「徘徊型弾薬」と分類されているなら「弾薬類」扱いの消費型使い捨て兵器です。
      ポーランド軍が1000セット調達してることからも弾薬類扱いと思います。
      定義上は本邦の「目標観測弾」も同じ。

      4
        • のー
        • 2025年 3月 22日

        そうなんですか。
        だとすると、1000機なんて直ぐに消費してしまいそうですが。
        安価で大量に供給し続ける前提ということですか。

        1
    • 理想はこの翼では届かない
    • 2025年 3月 22日

    専守防衛を謳う日本だからこそ、無人機・徘徊爆弾は必須
    この分野でトップを目指す気概で臨んで欲しい

    12
    • 早すぎる
    • 2025年 3月 22日

    部屋狭すぎだろw

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