コンゴのチセケディ大統領は「ルワンダの支援を受ける反政府勢力に勝利するには国民の犠牲が必要だ」と訴えて注目を集めているが、国連軍の関係者は「ただの武装グループではなく通常の軍隊で、能力的にも平和維持部隊を上回る」と警告している。
参考:DR Congo president calls for youth to form ‘vigilance groups’ amid resurgence of M23 rebels
チセケディ大統領は全ての若者に「軍隊へ入隊するか、軍に同行して戦闘をサポートする自警団を組織して欲しい」と呼びかけているが、、、
コンゴ東部北キブ州で結成された反政府勢力「M23(3月23日運動)」は2013年にコンゴ軍や国連平和維持部隊(南アフリカ、タンザニア、マラウイ)との戦いに敗れ、コンゴ政府がM23の戦闘員(ツチ族)を国軍に迎え入れるという提案に同意して降伏していたが、2022年に突然「コンゴ政府が約束を守っていない」と主張して本格的な戦闘再開を宣言。
当初の戦闘はコンゴ軍が優勢だったものの約1,000人のルワンダ軍兵士がM23に合流すると形勢が逆転、ルワンダ国境に近いビュナガナの奪取に成功してしまう。
コンゴ政府はこれを非難したもののルワンダ政府は関与を否定、しかし国連や周辺諸国はM23によるビュナガナ奪取が地域の不安定化に繋がると問題視、国連平和維持部隊の支援を受けたコンゴ軍は6月にビュナガナに向かったものの奪還に失敗、その後も戦いは一進一退の様相だったが10月にM23が主要道路(RN2)沿いに前進してキワンジャやルチュルを奪取してしまった。
これに怒ったチセケディ大統領は大使の追放してルワンダに抗議したが、今度は北キブ州の州都ゴーマで「コンゴに駐留する国連軍は何十年も国内の安定化に積極的な行動をとらなかったので国から出て行け」と暴動が発生、この暴動はM23が画策した可能性が高いものの国連はコンゴと協議した上でリュマンガボ基地から撤退、ここもM23に奪われてしまいコンゴ政府は「もう二度とM23と交渉しない」と述べたため「武力による制圧」を宣言した格好だったが、チセケディ大統領は「ルワンダの支援を受けるM23に勝利するには国民の犠牲が必要だ」と訴え始め注目を集めている。
チセケディ大統領は全ての若者に「軍隊へ入隊するか、軍に同行して戦闘をサポートする自警団を組織して欲しい」と呼びかけているが、国連軍の関係者は現在のM23について「ただの武装グループではなく通常の軍隊で能力的にも平和維持部隊を上回る」と警告、M23の中にルワンダ軍の制服を着た人物やルワンダが供給した武器も確認されているため、一般人を動員したコンゴ軍がM23に太刀打ちできるのか非常に怪しい。
コンゴ陸軍は10万人以上の兵力を有しているので数的にM23を圧倒しているが、その多くが元反政府組織の人間で規律的に問題が多く、コンゴ国内にはM23以外にも数十の武装グループが存在する=つまり北キブ州に多くの戦力を派遣すると「他の地域で問題が発生する」というジレンマに悩まされている可能性が高く、この辺りの問題もM23制圧に失敗する要因の一つなのだろう。
因みにコンゴ政府の主張が正しいなら「ルワンダはコンゴ東部を無法地帯にして鉱物資源=金を盗み出すつもり」らしいので、もはやルワンダによるコンゴ侵攻といっても過言ではないが、ルワンダ側はこれを否定して「M23とは無関係」という立場を貫いている。
※アイキャッチ画像の出典:MONUSCO/CC BY-SA 2.0
ちょうどこの前海外のドキュメンタリー番組でこの辺りを取材したのを見たのだけれど、国軍に取り込まれた軍閥の元指導者が反政府組織と交渉して国軍へのスカウトや、農業に戻りたいなら支援するって内容だったんだ。
軍閥の罪は不問にする代わりに国の為に働くわけだから、問題はあれど現実的ないいプランだと思ったけど
番組に出ていた白人の女性レポーターは『戦争犯罪者が裁かれていない!』と御立腹の様だったよ。
紛争解決請負人の伊勢崎氏が言ってましたね。
紛争解決の最大の敵は、犯罪を許せない「正義の味方」だ、と。
I秒ごとに失われる人命と正義が天秤に載ってることをわ忘れるな、って。
人命のかかった場面では、第三者の語る正義は、全て偽善なんでしょうね。
軍閥の被害者側が納得してればいいですけどね
第三者が見て危惧する程に正義が行われていないなら、被害者側の不満がいつか爆発して次の武力衝突を呼びかねない
まさしく正義の味方なんでしょうね。
現地民の今後なんて考えてなさそう。
北キブ州や隣のイトゥリ州は、レアメタルの採掘ができるようですね。コンゴ政府も武装組織と対して変わらない(元武装組織あがりも含む)士気や忠誠心の低い部隊しかないので、「国民」に愛国心をあおり志願兵を募集する…どこかで聞いたようなデジャブを感じてしまう話…
コバルトの一大産地ですからね。世界のコバルトの生産量の半分がコンゴ民主共和国産と言われています。現状、リチウムバッテリーなどあらゆる物に必要なレアメタルなので、当然のように中国の手が伸びています。
ちなみにマンハッタン計画と、広島長崎の原爆で使われたウランは同国のシンコロブエ鉱山で採掘されたものです。別にコンゴは悪くないけど、何だかモヤッとする。
シエラレオネと同じ構図か。
てかコンゴ共和国とコンゴ民主共和国があるからコンゴだけだとやっぱり分かりづらいな。記事内のコンゴは民主共和国の方だが。
国連の無力さよ。
東欧と違って全然まったく報道されないから今まで知らなかったのですが、今知りました。このサイトがあって良かった。管理人様いつもありがとう
この件に関してはルワンダに非があるのはもちろんですが、一応ルワンダ側の動機も説明しておきます。
・ルワンダ虐殺は、多数派のフツ族が少数派のツチ族を虐殺し、その後ウガンダなどに逃れていたツチ族武装勢力がルワンダ政権を打倒し終結させた事件です。このツチ族武装勢力の指導者が30年弱にわたり今日まで大統領の座にあり、ルワンダに平和と繁栄、ツチ族とフツ族の統合を一応はもたらしています。
・もともと、当然ながらコンゴ民主共和国東側にはルワンダ系民族が住んでいます。加えてルワンダ虐殺で報復を恐れたフツ族の虐殺者、及びツチ族の避難民が大量にコンゴに流入し、問題を深刻化させます。
・大量すぎるツチ避難民、及びツチ族系先住者に対しコンゴは市民権を認めず、放置します。更にこれに対処するため、フツ族の虐殺者を武装勢力として活用・協力して来たと言われています。現在の問題の背景にはコンゴ領内ツチ族の地位問題があります。
・この紛争は大体、二次に亘るコンゴ内戦の構図と同じで、94年から断続的に紛争が続いていると言えます。
まあ、広大なコンゴを不安定化させて小国のルワンダに得るものがあるのかと言われれば微妙ですが…
DR(民主共和国)のほうのコンゴね。
まあ、もう1つのコンゴも通称「ニンジャ」を名乗るゲリラ(というか山賊)が闊歩してるが……。
ルワンダも、隣のウガンダと並んで周りの国の民族紛争にちょくちょく介入していて、あんまり評判が良くない国ですな。大統領の独裁化も進んでいるし。
ツチとフツの構図は今となってはなんとなく、ボスニア・ヘルツェゴビナと同様の「悪魔化」の宣伝工作だったように思う。結局、負けたフツが一方的に悪者にされ、政権を取ったツチによる戦争犯罪は裁かれないまま。