中東アフリカ関連

イラクがバイラクタルTB2調達契約を締結、同機の総生産数は343機以上に拡大

イラクのアル・ジュブリ国防相は今年8月に「TB2購入についてトルコと合意に達した」と発表して注目を集めていたが、今年11月に正式な契約を結んでいたと報じられている。

参考:Iraq orders Bayraktar TB2S

果たして競合機が増える来年以降もトルコのTB2は現在の勢いを保てるだろうか?

イラク軍は中国から無人戦闘機(UCAV)タイプのCH-4Bを20機導入したもののイスラム国(IS)との戦いで半数以上を損耗、残りの機体もスペアパーツ不足で飛行できないためトルコ製のバイラクタルTB2が信頼性の高いCH-4Bの代替機として浮上、イラクは今年11月にTB2調達に関する契約を正式に締結したらしい。

出典:baykarsavunma

一先ずイラクが発注したのはTB2×8機(地上管制装置など関連システム一式や運用要員の訓練サポートなどを含む)だが、この契約には4機の追加導入オプションが設定されているため最大12機導入の可能性があり、イラクが要請していた攻撃ヘリ「T129ATAK」調達に関しては「米議会の承認が必要になるため契約締結には至っていない」と報じられている。

運用中発注数
トルコ最低でも166機以上不明
カタール6機なし
リビア36機なし
ウクライナ17機48機
アゼルバイジャン12機なし
モロッコ0機13機
ポーランド0機24機
イラク0機8機
エチオピア0機4機
キルギス0機3機
ニジェール
0機6機
最低でも237機以上最低でも106機以上

因みに不明だったリビアとアゼルバイジャンのTB2導入数、イラク、エチオピア、キルギス、ニジェールの発注数が判明したため同機の総生産予定数は最低でも343機以上で、このクラスのUCAVの中でMQ-9(推定400機前後)に次ぐ量産規模になっている可能性が高く、輸出量177機という数字だけを見ればMQ-9(運用国9ヶ国/輸出量76機)を完全に圧倒しており、中高度・長時間滞空型(MALE)に分類され偵察・監視と攻撃任務の両方に使用できる無人戦闘機(UCAV)の中でTB2は「最も海外から支持されている」と言っても過言ではない。

出典:Kronshtadt Group オリオン

ただ海外市場でTB2キラーになると予想されているロシアのオリオン-Eが新工場で連続量産に入っており、アラブ首長国連邦、エジプト、パキスタンといった国もTB2が開拓した市場に参入するため新型機を次々と発表するなど競争が激化しているため来年以降もTB2が現在の勢いを保てるのかは謎だが、非常に面白いのはオリオン-Eを始めとするTB2キラー機がトルコの手法を真似ている点だろう。

MQ-9は衛星通信に対応しているため見通し通信の制限に影響を受けることなく任意の空域で作動することができ、有人機向けの対戦ミサイル(ヘルファイア)や精密誘導爆弾(GBU-12やJDAM)を使用することができるのだが、この仕様は大半の国にとって不要なもので導入コストを押し上げるマイナス要因になっている。

出典:GA-ASI MQ-9

衛星通信対応であれば管制システムを移動させる必要がなく機体のみを当該地域に派遣して操作すれば良いのだが、大半の国は米軍のように海外で作戦を実行する機会がなく事実上国内や周辺空域での運用に限定されており、有人機とは異なり無人機による偵察・監視や攻撃任務は特定地域の上空に長時間滞空することが重要なので見通し通信でも十分、どうしても地上からの見通し通信外で作戦を行うなら通信中継機を搭載した有人機や無人機を飛ばせば衛星通信対応機でなくても事足りるいう意味だ。

さらに無人機向けの小型の精密誘導兵器を用意したTB2はMQ-9と同等の滞空能力を備えながら機体の小型化に成功したため導入コストが約530万ドル/約5.7億円と圧倒的に安く、衛星通信に対応して有人機向けの弾薬を使用する高価なMQ-9(4,940万ドル/51億円)に手が出ないor必要ないという国はTB2を支持しており、ロシアのオリオン-EですらTB2のコンセプトを踏襲している。

出典:GIDS Shahpar-2

アラブ首長国連邦が発表したReach-S、エジプトが発表したThebes-30、パキスタンが発表したShahpar-2といったMQ-9より小型のUCAVもスペックやサイズを見る限りTB2に似ており、もはやこの流れは1つのトレンドと言ってもいいだろう。

果たして競合機が増える来年以降もトルコのTB2は現在の勢いを保てるだろうか?

関連記事:飛ぶように売れるトルコ製UAV、ポーランドやモロッコに続きイラクがTB2導入を表明
関連記事:ロシア軍の無人航空機「オリオン」が量産化、露UAVの脅威が北海道に届くのも時間の問題
関連記事:ロシア、TB2キラーと名付けられた無人航空機「オリオン-E」の海外売り込みを開始
関連記事:ドバイ航空ショー、躍進するUAEの防衛産業企業「EDGE」が発表したUAVに注目が集まる

 

※アイキャッチ画像の出典:baykarsavunma

ウクライナ軍、ロシア陸軍が導入したサンシェードをジャベリンは貫通できるとアピール前のページ

米空軍がE-8C/Joint STARSの早期退役を開始、来年9月まで議会が認めた4機を処分次のページ

関連記事

  1. 中東アフリカ関連

    イラン、中国やロシアと共同で「アジア版NATO」創設を主張

    中国環球電視網(CGTN)は27日、国際情勢の専門家でテヘラン大学で教…

  2. 中東アフリカ関連

    イスラエル国防軍、レバノンに対する限定的な地上侵攻を開始したと発表

    イスラエル国防軍のハレヴィ参謀総長は「緩衝地帯を創設するためレバノンへ…

  3. 中東アフリカ関連

    快進撃が続くトルコの無人航空機、今度はモロッコがバイラクタルTB2導入を決定

    モロッコはトルコから無人航空機「バイラクタルTB2」を13機購入する契…

  4. 中東アフリカ関連

    第2世代から第4世代にジャンプ、創設57周年を祝うナイジェリア空軍がJF-17初披露を予告

    ナイジェリア空軍は1億8,430万ドルの費用を投じて導入した第4世代戦…

コメント

    • 匿名
    • 2021年 12月 25日

    無人機後進国日本も、トルコに頼んでバイラクタルを売って貰えば良い
    自衛隊だけじゃなく警察や海保なんかでも有用だろう

    7
      • 無無
      • 2021年 12月 25日

      島国の日本は衛星通信必要だろう、

      14
      • きっど
      • 2021年 12月 25日

      海保はMQ-9の民間版のシーガーディアンの試験をしていましたね
      海自もシーガーディアンに興味を示しており、滞空型UVAとして運用する可能性が高いです
      やはり、衛星通信が必須かと

      16
        • F-774
        • 2021年 12月 25日

        領海が広すぎますからね

        11
    • news
    • 2021年 12月 25日

    売れに売れまくってますなぁ。

    7
    • そら
    • 2021年 12月 26日

    まさかトルコがこんな事になるなんて数年前は思ってもみなかった。
    それだけ自分のアンテナが弱かったんだろうけど、それにしてもトルコは上手いところをついてるわ。
    今後も拡大するのか、ダークホースが出るのか分からないけど、面白い分野だなぁ。

    3
      • 無無
      • 2021年 12月 26日

      新規の技術とかアイデアって、過去に縛られない新興国のほうがすんなり取り入れるじゃないですか、トルコ軍事関連はまるで明治維新の日本状態かも

      2
  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  2. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  3. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  4. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  5. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
PAGE TOP