サウジアラビアは国内の防衛産業に今後10年間で200億ドル(約2兆円)以上を投資すると明かした直後、ロッキード・マーティンと共同で合弁企業を立ち上げることに合意したと発表して注目を集めている。
ロッキード・マーティンはサウジアラビアの防衛産業発展に協力して、同国の防衛や安全保障能力を強化する
サウジアラビアは他国の政策に振り回されにくい独自の安全保障体制を確立するため防衛装備品の海外依存を2030年までに是正(国防支出の50%を国内で消化する)するため、国内の防衛産業育成や研究開発に今後10年間で200億ドル(約2兆円)以上を投資すると明かしたが、早速この方針に沿った動きが確認されている。
米国のバイデン政権は従来の方針を転換してイエメン内戦に対するサウジアラビアへの軍事支援打ち切りを発表、内戦に使用される可能性が高い武器(イエメン空爆で消耗した精密誘導兵器の補充やサウジ軍に対する訓練及び技術支援パッケージなど)の輸出を全面的に凍結、イタリアも同時期にサウジへの精密誘導兵器輸出を停止した。
ただサウジアラビアは武器輸入を複数の国に分散させているためバイデン政権の方針を転換に追従しないと発表した英国、イエメン内戦を問題視していないフランスやカナダ等の国からイエメン空爆で使用する武器を入手することが可能で直ぐにサウジアラビアの安全保障に問題が生じることはないがサウジ軍の主要装備に占める米国製兵器の比率は少なくないので、この様な兵器の運用や維持には米国からスペアパーツ、消耗品、弾薬等のサポートを受ける必要がある。
つまりサウジアラビアは米国と利害が一致しない安全保障上の問題が生じた場合、独自の決定や行動を貫くのが難しいという意味だ。
この様な問題を是正するためサウジアラビアは武器の直接輸入するのではなく調達する武器をサウジ国内で製造させる方式=つまり現地生産に改めようとしており、ロッキード・マーティンと共同で多用途ヘリ「S-70(UH-60の派生型)」を製造したり、ロシアと共同でカラシニコフのAK-103を国内で共同生産する準備を進めている。
مقتطفات من مراسم توقيع اتفاقية تأسيس مشروعنا المشترك شركة #SAMILockheedMartin
Highlights from the signing ceremony of our joint venture #SAMILockheedMartin pic.twitter.com/ui4zF07Vlu
— الشركة السعودية للصناعات العسكرية (@SAMIDefense) February 21, 2021
特にサウジアラビアは防衛装備品の海外依存を2030年までに是正(国防支出の50%を国内で消化する)するため「国内の防衛産業育成や研究開発に今後10年間で200億ドル(約2兆円)以上を投資する」と明かしたが、サウジアラビア軍事産業(SAMI)は今月21日にロッキード・マーティンと共同で合弁企業を立ち上げることに合意したと発表した。
新しく設立される合弁企業の株式はサウジアラビア軍事産業が51%、ロッキード・マーティンが残りの49%を保有することになっており、両者は協力してサウジ産業界への知識や技術の移転、サウジアラビア人自身が製品を製造して自国軍に供給するためのトレーニングを行い同国の防衛産業を発展させ、このような取り組みを通じて最終的にサウジアラビアの防衛や安全保障能力を強化すると言っている。
要するにサウジアラビアはロッキード・マーティンを利用することで国内の防衛産業を短期間で発展させることを狙っており、ロッキード・マーティンはサウジアラビアの政策に協力することでサウジ企業と合弁で運営する製造拠点を確保、ここを足場にして2030年以降も同国での利益を確保することを狙っているのだろう。
ただ合弁企業が具体的に何を製造するのかは明らかになっていないが、恐らくロッキード・マーティンがサウジアラビア軍に供給している弾道弾迎撃システムTHAAD、C-130H、UH-60L、S-70A等のメンテンナスや消耗品などの製造、新たにサウジ軍が導入する装備品を合弁企業でライセンス生産するのかもしれない。
どちらにしてもロッキード・マーティンが先陣を切る格好になっただけで、サウジアラビアで利益を挙げている他の防衛産業企業(ボーイング、レイセオン、エアバス、サーブなど)も追従してくることが予想されるため、上手くいけば防衛装備品の海外依存を2030年までに是正するという目標を本当に達成可能してしまう可能性を秘めている。
関連記事:サウジアラビア、ロシアとの武器共同生産と防衛産業育成に200億ドル以上の投資を発表
出典:Saudi Arabian Military Industries
ここで認識すべきは、サウジアラビアはアラブであって西側だの東側だのの括りに馴染まないということ。
ロシアとも中国とも、ビジネスになればお付き合いしてるってことで、バイデンだから云々いってるのは的外れだからね。
インドもそうだし、世界を二極化する発想そのものが古いよ
>バイデンだから云々いってるのは的外れだからね
そもそも装備が西側中心なのを無視して二極化の発想は古いとかはどうだろうか?西側が利益無視してサウジバッシングしたら既存戦力中心の車両/火砲/航空機/防空装備/レーダーとか結構やばい事態になる気がするけど。現有の戦力をこの先何年も維持出来るような企業はサウジには無いと思うんだけど。
その西側ってこだわりがアラブには無いから、今も昔も
アメリカ追従の日本には出来ない芸当だな、
日本も内需産業を重視してほしいな
そこ、同じことを思った。けど、
ロッキードマーチンとの合弁で素早く兵器産業を立ち上げるのは、産業基盤がないサウジにはあってるのだろうけど、日本には自国でやる(やれるかどうかは別)選択もあるので、日本とは自ずと選択肢が違うとも思う。
合弁も所詮は、米国政府がロッキードに止めろといわれれば止められるリスクがあるし。
まさかの展開と言うか上手くやったなロッキード、苦しい状況のボーイングも続きたいだろうな
こういうのは真っ先にボーイングがするべきだったのにね、苦しい経営なんだから…
余裕があるからできたことなのかもしれないけど
将来サウジアラビアが中東の兵器廠とか呼ばれる日が来るのだろうか
火薬庫(イラン)の隣に兵器廠なんてやめてほしい。
やがて石油にまで引火しないことを望む