軍事的雑学

ステルス戦闘機「J-31」開発中止?中国、空母の次期艦載機に「J-20」採用

中国は海軍の空母で運用する第5世代戦闘機として小型の「J-31」ではなく、実戦部隊への配備が進む大型の「J-20」を選んだとサウスチャイナ・モーニング・ポスト紙が報じている。

参考:China’s navy ‘set to pick J-20 stealth jets for its next generation carriers’

空母の艦載機としてJ-20採用を決めた中国、2機種同時開発は金がもたない?

香港で発行されているサウスチャイナ・モーニング・ポスト(South China Morning Post)紙は、軍関係筋の話として、人民解放軍の最高意思決定機関である中央軍事委員会がJ-20の艦載機化を支持していることを明かした。

もう一方のJ-31は、ロシアのSU-27の艦載機バージョンのSU-33をベースに、中国初となる艦載機「J-15」を開発した瀋陽飛機工業集団が独自資金で開発した第5世代ステルス戦闘機だが、すでに実戦部隊へ配備が進むJ-20とは異なり、J-31は未だ試作機の域から抜け出せずにいる。

中国の国営放送「中国中央テレビ」が最近放映した番組も、J-20の艦載機化が行われることを示唆している。

番組の中で、中国海軍が艦載機の戦闘機パイロット候補をどのように選抜するかについて、J-20モデルを使用したモックアップを用いながら説明を行った。

しかしJ-20は、米空軍のF-22よりも大きく、空母の限られた飛行甲板上で運用するには小型のJ-31の方が有利だが、軍関係筋によれば中国は米国と激化する貿易戦争がいつ終わるのか確信が持てず、中国経済の景気後退リスクを考慮した場合、膨大な開発費が要求される第5世代ステルス戦闘機を同時に2機種進めていくのは、ほとんど不可能に近いと述べたという。

第5世代のステルス戦闘機開発の費用は、軍事費を自由に使う事ができる中国にとっても、そう簡単に捻出できるものではないという意味だ。

現在、中国で建造中のカタパルトを装備した空母は、米国のジェラルド・R・フォード級空母と同じ「電磁式航空機発射システム(所謂、電磁式カタパルト)」を搭載しているため、重量が重いJ-20を発艦させることに問題は無いが、20.3mもある全長は艦載機としては問題がある。

現在、空母「遼寧」で運用中のJ-15(全長22m)よりは小さいが、全長17mのJ-31に比べれば3m、米海軍のF/A-18E/Fと比べても2mほど大きく、横方向の大きさは主翼を折り畳むことで短くできるが、縦方向の胴体は設計を変更しない限り短くすることが出来ず、スペースに限りのある空母での運用には不向きだ。

補足:過去、英海軍がF-4ファントム(英国名:FG.1)を、米国の空母に比べてエレベーターのサイズが小さい英国の空母で運用するため、機種の先端部分(レドーム)を折りたたみ式にするという荒業を行った事がある。

そのため、J-20の全長を短くした短胴型の開発を行っているというが、最初から艦載機として開発するのなら話は別だが、陸上機を艦載機化するのはそう簡単な話ではなく、しかもカタパルトを使用して射出される航空機の設計ノウハウは米国しかもっておらず、中国にとっては手探り状態の開発になるだろう。

米国ですらF-35を開発した際、海軍向けのF-35Cは機体構造や降着装置の強化、空母着艦時に要求される低速域での揚力と安定性の確保のため主翼・垂直尾翼・水平尾翼を大きくするなど大幅な改造が必要で、3タイプの中で一番開発に時間が掛かった。

出典:public domain F-35C

J-20の艦載機は胴体を2~3mほど短くするつもりだろが、同時に機体の強度を高めなければカタパルトからの射出、着艦時に加わるアレスティング・ワイヤーの衝撃で機体が壊れてしまうだろうし、機体構造を強化すれば重量が重くなるので、今度は着艦時の低速性能が不足するかもしれないので、ここでも何らかの改造が必要になるのかもしれない。

あそこも、ここも弄る必要が出てくれば、当然外見の形状が大きく変更されることになり、ステルス性についても見直す必要が出てくる。

さらにJ-20が搭載する国産エンジン「WS-15」は、技術的にも性能的にも1世代古いにも関わらず、耐久性の問題で実用化に手間取っており、J-20を艦載機にする場合、エンジンに塩害対策も講じなければならず、腐食性の高い素材の開発も行わなければならない。

陸上機として開発されたJ-20を、空母で運用するということは、そう簡単な話ではないという意味だ。

恐らく、実用化できたと言うレベルのJ-20艦載機化には、10年前後の時間が掛かると思われるが、中国はどれだけ困難でもやり遂げてくるだろう。

 

※アイキャッチ画像の出典:Alert5 / CC BY-SA 4.0 エアショー中国2016でのJ-20

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 8月 30日

    >軍関係筋によれば中国は米国と激化する貿易戦争がいつ終わるのか確信が持てず、中国経済の景気後退リスクを考慮した場合、膨大な開発費が要求される第5世代ステルス戦闘機を同時に2機種進めていくのは、ほとんど不可能に近いと述べたという。
    貿易戦争も早速効果が出てきましたかな?
    我が帝国海軍の八八艦隊も、戦後不況で頓挫しつつあったところにワシントン条約ですから、適当な所で新たな軍縮条約を結ばされるかも?(まあ条約次第じゃ既成事実黙認になりますけど)

    >そのため、J-20の全長を短くした短胴型の開発を行っているというが、最初から艦載機として開発するのなら話は別だが、陸上機を艦載機化するのはそう簡単な話ではなく、しかもカタパルトを使用して射出される航空機の設計ノウハウは米国しかもっておらず、中国にとっては手探り状態の開発になるだろう。
    >さらにJ-20が搭載する国産エンジン「WS-15」が、技術的にも性能的にも1世代古いにも関わらず、耐久性の問題で実用化に手間取っており、J-20を艦載機に搭載する場合、エンジンに塩害対策も講じなければならず、腐食性の高い素材の開発を行わなければならない。
    >陸上機として開発されたJ-20を、空母で運用するということは、簡単な話ではないという意味だ。
    結局、実質的にニ機種同時並行開発ですかね? ジョイント病は国や人種を選ばない(戒め)

      • ななしさん
      • 2019年 9月 01日

      ステルス戦闘機の開発能力を比較すると
      中国=出来の悪い金持ちのボンボンに大勢の家庭教師をつけて無理やり詰め込んでる、最終的に二浪して私大に合格。
      日本=部活動でスポーツばかりやってた三年生が夏休み過ぎから猛勉強を始めて東大一発合格。

    • 匿名
    • 2019年 8月 30日

    莫大な技術的蓄積と巨額の投資が可能なアメリカですら第五世代戦闘機は難産だったわけで、それを考えると賢明な判断に思える。それ以上にF3の行く末が気になるが。

    • 匿名
    • 2019年 8月 30日

    まさか、かわぐちかいじ先生の「空母いぶき」の世界が、また一つ現実になるとは…(まあ、あっちの方はスキージャンプ甲板を用いたSTOBAR方式による離着艦だけど)

    • 匿名
    • 2019年 9月 01日

    中国の軍事費用は全国のタバコの税金だけでカバーできるから、資金的には問題ないって事だよ、わかってないだよなあ‼️

    • 匿名
    • 2019年 9月 01日

    中国の軍事費用は全国のタバコ税金だけでカバーできるからね、わかってないなあ

  1. 2020年 3月 28日

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