北米/南米関連

カナダ、トルコへのEO/IRセンサー輸出黙認でアゼルバイジャンを間接的に支援か

カナダ政府はトルコに輸出しているEO/IRセンサーが無人航空機に搭載されアゼルバイジャンに輸出されている問題に苦慮しており、どのような決断を下すのか注目を集めている。

参考:Ottawa won’t say whether it let military sales to Turkey slip through arms embargo

カナダ、トルコに輸出しているEO/IRセンサーが無人航空機に搭載されアゼルバイジャンに輸出されているのを黙認か

トルコが製造している軍事用途の無人航空機(UAV)にはカナダのL3Harris Wescamが製造しているEO/IRセンサーを採用しており、特に同社が製造するMXシリーズは米空軍のMQ-9や米海軍のP-8A、英海軍のAW159リンクスなど多くの国や組織で採用されている人気のEO/IRセンサーだが、昨年10月トルコのシリア内戦関与を理由にトルコ向けの軍需物資輸出承認プロセスを停止=事実上の武器禁輸措置を講じた。

そのためトルコは国産無人航空機に搭載するEO/IRセンサーが手に入らなくなり、シリアやリビアでの軍事作戦で消耗したUAVの補充が出来なくなってしまったトルコは今年4月、カナダのトルドー首相にエルドアン大統領が直接電話で掛け合い武器禁輸措置からEO/IRセンサーを除外することで合意したのだが、このセンサーを搭載したUAVがアゼルバイジャンに輸出されアルメニアとの戦いに使用されているという疑惑が浮上。

これを受けてカナダ政府は「綿密な調査を行っており国際人権法や道徳的に著しく反した行為や不正が見つかれば適切な処置を取る」と発表したが、トルコ向けに輸出承認したEO/IRセンサーを搭載するUAVの輸出をカナダ政府が許可していたのかという疑惑に関しては沈黙を貫いており、輸出承認プロセスを管轄するカナダ国際関係省は「個別の軍需物資輸出に関する許可については商業上の機密性侵害にあたるためコメントはしない」と説明している。

このような政府の態度にカナダ国内のアルメニア人グループは不信感を募らせており、独自の調査によってL3Harris Wescamが雇用したロビイストが今年2月頃から活発に活動、フランソワ=フィリップ・シャンパーニュ外務大臣のオフィススタッフと「国際貿易」に関する議題で協議をおこなっている事実が明らかになり、トルコの無人航空機メーカー「バイカル」の代表者も今年2月に枢密院事務局(内閣の官房組織)の高官と「国際貿易」に関して連絡を取り合っていた事実が判明した。

さらにアルメニア軍に撃墜されたアゼルバイジャン軍のUAVからはL3Harris Wescamが製造したEO/IRセンサーによく似たものが発見されており、もはやアゼルバイジャンに輸出されたトルコ製UAVにカナダ製EO/IRセンサーが使用されているは確定的な状況といえるのだが、今だにカナダ政府は「調査中」との一点張りで何の予防措置も講じていない。

もっと言えばカナダ政府はトルコ製UAVにカナダ製EO/IRセンサーを搭載してアゼルバイジャンに輸出することを事前に知っていたか、アゼルバイジャンへの輸出を承認していた可能性が高く、その事実が明るみに出れば国際社会からの非難を避けられない。

しかし、カナダ政府も自国の防衛産業の利益を考えての決定なので国内世論(アルメニア人グループは除く)が政権批判に傾くかは微妙なところだ。

果たしてカナダ政府がトルコに対する武器禁輸措置を再開するのかは謎だが、こういった問題は武器輸出に必ず付いて回る問題なので避けては通れないだろう。

関連記事:カナダ、武器禁輸措置を破ってトルコに無人航空機コア装置を輸出

 

※アイキャッチ画像の出典:Bayhaluk / CC BY-SA 4.0 バイラクタルTB1

スイスの次期戦闘機候補、圧倒的なコストパフォーマンスでF-35Aが優位か前のページ

アゼル軍、弾道ミサイルを使用した戦略目標に対する攻撃を本格化次のページ

関連記事

  1. 北米/南米関連

    目先の利益は優先事項でない? 中国がアルゼンチンの軍事力強化を後押しする理由

    経済状態の良くないアルゼンチンの軍事力強化を中国が後押ししている理由に…

  2. 北米/南米関連

    カナダメディアの戦場レポ、ロシア軍は無人機から隠れるのが上手くなった

    激しい戦いが続くバフムートへの立ち入りが許可されたカナダのCBCは「市…

  3. 北米/南米関連

    第5世代機に相応しい練習機は? カナダ空軍のCT-155は後継機なしで退役

    カナダ空軍はパイロット養成に使用していたCT-155(Hawk 115…

  4. 北米/南米関連

    ボンバルディア、トルコ製UAV「バイラクタルTB2」に使用されているエンジン輸出を停止

    カナダのボンバルディアは最近、トルコ製無人航空機「バイラクタルTB2」…

  5. 北米/南米関連

    ややF-35A有利か? 提案書類が出揃いカナダの次期戦闘機選定がスタート

    ロッキード・マーティン、ボーイング、サーブの提案書類が出揃い、いよいよ…

  6. 北米/南米関連

    カナダ政府、CF-18A/Bの後継機争いからF/A-18E/Fが脱落したことを正式に発表

    カナダのトロント・スター紙は「CF-18A/B後継機選定プログラム(F…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    カナダは死の商人

    6
      • 匿名
      • 2020年 10月 07日

      え?センサーだけで?
      だったら我が国もそうなるじゃん!W

      1
    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    まぁ、んなこといったらトルコが使ったとかいうF-16の責任をアメリカがとるかっていったらとらんしな

    9
      • 匿名
      • 2020年 10月 02日

      それを言うなら、世界各国の軍隊や武装勢力が「戦闘車両」として愛用している日本製ピックアップトラックの責任を日本政府やトヨタ等の日本車メーカーが取る訳無いですし
      只、今後日本も防衛装備品の輸出を積極的に考えている以上、こういう問題に直面する時も有ると言う事は知って置いた方が良いと思いますけどね

      6
        • 匿名
        • 2020年 10月 03日

        さすがに民間用乗用車と軍事用センサー同列に扱われたらたまらんわ

        24
        • 匿名
        • 2020年 10月 03日

        民生用に輸出されたものを戦闘に流用されて責任取れって
        包丁メーカーが殺人被害者に賠償するかい?

        15
          • 匿名
          • 2020年 10月 03日

          勝手に流用されたのでしたらその通りですが知っていて黙認したのなら問題でしょう。
          しかしカナダが戦闘用に使われようがなんだろうが問題ないっていうんだったらそれはそれで問題なし。
          要は知らん顔するのはいかがなものかということでしょう。

          1
            • 匿名
            • 2020年 10月 03日

            包丁については、売る段階で犯罪に使うとはわからないでしょ。
            日用品として売られてるものと軍事品は全く別。

            4
    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    日本製の部品も迂回されて入ってる可能性ゼロじゃないしなあ…。
    勿論分解してみないと分かりませんけどね。

    5
    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    韓国がニコニコしながら売れ筋商品見つけたって思ってそう
    リバースエンジニアリングでコピーは十八番だしな

    7
    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    結局人間なんて自分本位で他人が死のうがどうだって良いってこったな

    6
      • 匿名
      • 2020年 10月 05日

      誰にでもエゴはある
      そのエゴを磨くことだ
      汚ならしいエゴで開き直られても不快だからね
      便所で飯食ってる奴が、人間はみな汚いとか言うなよってこと

    • 匿名
    • 2020年 10月 02日

    カナダもエネルギー産出国のひとつ
    どういう思惑があるのかな
    戦争荷担の国際的非難と引き換えにするほど、部品輸出で稼げるとも思えないんだが

    1
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      何か深い考えがあるかもしれないが、偏見だと思いつつも、
      あのトルドー首相が特に深く考えずやったんじゃないかと
      勘ぐってしまう。

      4
    •  
    • 2020年 10月 02日

    日本に足りないのは面の皮の厚さだね

    15
      • 匿名
      • 2020年 10月 03日

      レッドバージでマスゴミを粛清して黙らせたら手に入れられるかも

    • 匿名
    • 2020年 10月 03日

    噂話ではベトナム戦争時に不発のミサイルから三菱のチップが見つかったとかなんとか。
    あくまでも噂話の領域です。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  2. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  3. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  4. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  5. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
PAGE TOP