カナダ国防省は頭痛の種になっているヴィクトリア級潜水艦の後継艦プロジェクトを立ち上げたと現地メディアに明かしており、正式に次期潜水艦プログラムが立ち上がれば複数の海外企業による争奪戦になるのは間違いない。
参考:Navy kicks off long-anticipated push to replace Canada’s beleaguered submarine fleet
参考:Royal Canadian Navy to start process of replacing aging submarine fleet
ヴィクトリア級の退役によって生じる潜水艦戦力のギャップを回避するため後継艦プロジェクトを開始
カナダは第一次世界大戦が始まる前年にCC級潜水艦を2隻、第一次世界大戦中にH級潜水艦を2隻運用していたのだが1920年代に全ての潜水艦が退役、25年後に第二次世界大戦中に降伏したドイツ海軍のU-190とU-889を接収するまでカナダ海軍の潜水艦運用は一旦途切れてしまう。
その後、米ソの冷戦が激化した1960年代に米海軍のバラオ級潜水艦や英海軍のオベロン級潜水艦を導入して本格的に潜水艦部隊を再建、その後継艦として英海軍から退役したアップホルダー級潜水艦×4隻を計7億1,000万ドルで導入したのだが、これが現在まで続くカナダ海軍の頭痛の種になっている。

出典:public domain アップホルダー級潜水艦
アップホルダー級潜水艦(現ヴィクトリア級潜水艦)を購入した当時のカナダ政府は英国との契約を「掘り出し物だった」と大きく国民に喧伝したが同艦は退役から売却先が見つかるまでの4年間、英国の港で完全に放置されていたため状態が思わしくなく4番艦「シクーティミ(旧アップホルダー級潜水艦1番艦)」はカナダに向けて自力航行中、強風に見舞われ司令塔が海水をかぶり内部に海水が溜まってしまったのだが排水ポンプが作動せず、艦内の兵士がハッチを空けたため溜まっていた海水(推定2,000リットル)が艦内に流れこんで電気系統がショートしてしまい艦内で火災が発生。
最終的にカナダ海軍兵士が1名死亡・8人負傷という大惨事に発展してしまい英海軍の救助を受けて何とか港に戻ることが出来たが、火災の損傷で自力航行が不可能になったため重量物運搬船に乗せられてカナダに運ばれることになった。

出典:カナダ国防省 4番艦「シクーティミ(旧アップホルダー級潜水艦1番艦)」
さらにカナダへ移送されたアップホルダー級潜水艦を調べてみると状態が思った以上に悪く1番艦ヴィクトリアに関しては船体に謎の凹みが発見され、購入した4隻全てをヴィクトリア級潜水艦として再就役させるのに9年間もの時間を要したのだが再就役後も艦内の電力システムが吹き飛んだり、水深45mの海底に激突したり、溶接箇所の不具合が見つかったり、バッテリーの調子が良くなかったり、数え切れないほどの問題に直面して「海にいるよりもドックに入渠している期間のほうが長い」と揶揄されている。
因みにカナダ海軍はヴィクトリア級潜水艦の維持・運用コストとして年間3億カナダ・ドル/約263億円を支出しているので「一刻も早い後継艦導入」が望まれていたのだが、ついにカナダ国防省は次期潜水艦調達に向けて動きだした。
複数の現地メディアによればカナダ国防省はヴィクトリア級潜水艦の退役に備えて後継艦の研究を行う専門のチームを立ち上げたと報じており、カナダ海軍のスポークスマンも「ヴィクトリア級の退役によって生じる潜水艦戦力のギャップを回避するため後継艦プロジェクトを開始した」と語っている。
カナダは国内企業のみで通常動力式の潜水艦調達は不可能なので恐らく海外の企業と協力する形で潜水艦を調達(現地建造)する可能性が高く、正式に次期潜水艦プログラムが立ち上がれば複数の海外企業による争奪戦になるのは間違いないだろう。

出典:カナダ海軍 次期フリゲート艦プログラム
ただカナダが進めている次期フリゲート艦プログラムや次期戦闘機プログラムでは高レベルのオフセットやカナダ産業界への再投資を要求しているので、次期潜水艦プログラムにも同じレベルのオフセットや再投資が求められると国際取引に慣れているプレーヤーにしか受注は難しいかもしれない。
しかしカナダ海軍はヴィクトリア級潜水艦の退役時期を2040年代と考えている可能性(寿命延長プログラムがキャンセルされれば退役時期は前倒しされる)が高いので、新規プレーヤーも経験を積む時間があるのでチャンスは十分残されているとも言える。
特に本命の英国がアップホルダー級潜水艦以降、通常動力式の潜水艦を建造していないので政治的影響力を行使できるプレーヤーが存在しない入札になるのは間違いないのだが、逆を言えば英国の潜水艦関連企業(戦闘管理システムを開発しているBAEシステムズなど)を取り込んでコンソーシアムを形成した企業が政治的に有利かもしれないので今後の動きに注目が集まるだろう。
関連記事:気がつけばドック入渠、ほとんど海にいないカナダのヴィクトリア級潜水艦
※アイキャッチ画像の出典:public domain ヴィクトリア級潜水艦
>しかしカナダ海軍はヴィクトリア級潜水艦の退役時期を2040年代と考えている可能性が高い
80年代に建造された問題だらけの潜水艦を40年も使い倒すなんて正気か。性能は落ちるけど209型とか買って代替したほうがいくらか安くなるんじゃないか
ただ維持してるだけで作戦行動をさせてないのならは分かる
鋼鉄船は酷使しなければ百年でも使える
米軍によると、潜水艦の寿命は年数よりも深々度潜航の回数で決まるって話ですよ、要するに練習艦扱にしとけば大丈夫
潜水艦じゃないけどミズーリがそうだよね
予備役時代もあったけど最終的な退役は1992年
>米軍によると、潜水艦の寿命は年数よりも深々度潜航の回数で決まるって話ですよ、
別に米軍によらなくても潜水艦について少しでも知っている人には常識だけどね.
深深度潜航による高圧を経験すると艦体を形作っている高張力鋼に非可逆で永久的な歪みが残り,その艦を形作る高張力鋼はもはや当初のスペックにあった最大張力には耐えられなくなるからだ.
だからどの潜水艦でも,運用マニュアルに定められている最大可潜深度に一度でも潜ってしまうと,二度と最大可潜深度には潜れなくなる.(まあ現実問題としては,運用マニュアルにある最大可潜深度の決定においては安全係数を考慮した値になっている筈なので,もう一度潜っても耐えられるかも知れないが,生きて浮上できるかは運次第で全く保証されていない)
そんなにヤバい状態ならおやしおを買った方が良いのでは
中古でいいなら、練習艦になるやつ、売っていい気がするけど。
少なくとも日本よりは機密漏れなさそうだし。
カナダもかなり浸透されているんですけどね
オーストラリアの潜水艦を受注してるナーバルがアップを始めました
20年満たないサイクルで潜水艦を退役させてる海自は贅沢な運用なんだなと思う
潜水艦建造技術の維持が目的なんで
もったいないと思いつつ、まだ加齢による沈没事故のないことは喜ばしい
>米軍によると、潜水艦の寿命は年数よりも深々度潜航の回数で決まるって話ですよ、
上の方のこの書込みによると深々度潜航回数が寿命に大きく影響するとのことですから、
海自艦は艦齢の割に老朽化が進んでいるのかも。
海自潜水艦の行動海域は、本当のところは公表されてないから憶測だけど、対馬、宗谷、津軽の対ロシア3海峡でなく中国相手の大陸棚エリアが主な現在ならば浅海だからそうでもないはずなんだが。
ディーゼル潜は足が遅いのでほとんどの期間は海域間の移動に費やされています。
北極海で通常動力の潜水艦がどこまで使えるのだろうか。
日本の潜水艦をPRと氷海での性能調査の為、カナダに派遣してほしい。
リチウムイオン電池は寒いと性能落ちるらしいから、おうりゅうは北極海で運用できるのかな?
それは氷海のプロであるロシア海軍でも通常型を運用してるんで。
以前カナダは原潜12隻をもって海軍の中核となす大胆な案を発表したが、アメリカの圧力で撤回した経緯がある。
今回はどうなんでしょうね
へぇ~。そんな計画もあったんだ? まぁ、言われてみれば当然至極、あの長大な海岸線をカバーするには原潜の方が有利よな。英国製原潜なんて選択肢ならば有り得るのかな?
いろいろと面白くなりそう。
ネタがついないね~。
さあ、今度は日本の出番た。
管理人さん、国際取引に慣れてるプレーヤーじゃないとって釘刺してるじゃん
いいじゃないですか。競争力ある国産品があって、ついでにロマンもある商談なんだから、何かやってくれるんじゃ!?ぐらいの夢は素直に見ましょうよ
巨額に上る兵器購入だからオフセットとか現地生産要求とかアホとしか言えない。
それが原因で運用開始が大幅に遅れるうえに最終的に一隻5000億円とかになってしまう。
本気で防衛力を高める気ならだいげい型を1500憶くらいで買って残金でメンテ会社を立ち上げた方がなんぼか有効だろう二。
こうすれば技術や要員を育てることができるし、有事になったとしても国内で整備できる、急がば回れである。
日本だって各国のジェットエンジンのメンテを続けることでXF9-1エンジンを完成できたんだから。
> 巨額に上る兵器購入
だからこそオフセットや現地生産を要求するべきだと思いすけどね。
国防に必要でも只々お金が出ていくだけでは中々国民は納得してくれないと思いますよ。
その結果がオーストの潜水艦の運用開始は10年遅れることになった、軍備にとって時間損失は最悪の敵なんだが。
潜水艦の単価が上がればリベートも巨額になるが、日本相手ではそのリベートが得られないことが最大の問題なんだろう。
世の中は政治的要求が優先されるる場合も多々あるってことですよ。民主主義の欠点のひとつですな。
豪州もインドもトルコも最近のはどこもみんなこんな条件ばっかりだからねぇ
オフセットもやれない国に商機はない時代なんだって管理人がわざわざ解説してくれてるんだから、真っ直ぐに読めよ
世界の現実とか日本の勝敗とは別の次元で、
結果として「そのせいで事業遅れる」んじゃ
「安物買いの銭失いじゃねーの?」という話だろ。
オフセットが必ず失敗するというのかい(笑)
それこそ無理な論法
ケースバイケースってことだろ
それこそ読解力が無い証拠
「必ず失敗」なんて解釈がどこから生えてくるのか。
ドイツ、フランス、韓国あたりから購入すれば良いだろう
特に韓国は武器輸出にも慣れており、現地生産やオフセット契約もおいしい条件を提示してくれる
技術に価値を見出していないからポンポン技術を売ってくれるし、賄賂接待などの旨味も大きいしね
軍事技術ダダ漏れだけどね。
韓国はねーわ。今以上に悲惨な事になるぞ。
賄賂とか接待とかそういうのを揶揄してるんだと思うよ
どのくらいの国が入札に立候補するんでしょうね?
ドイツ・韓国は立候補するとして、後はフランスとイギリスぐらいですかね?
日本も立候補する可能性はあるかなぁ。
中古販売か、退役予定の艦種(世界的には十分新しい方)の製造関連をそのまま、みたいな条件でいいなら日本も参加すること考えるだろうけど、
>ただカナダが進めている次期フリゲート艦プログラムや次期戦闘機プログラムでは高レベルのオフセットやカナダ産業界への再投資を要求しているので、次期潜水艦プログラムにも同じレベルのオフセットや再投資が求められると国際取引に慣れているプレーヤーにしか受注は難しいかもしれない。
この条件を本当に求められた場合は厳しいと思う
むしろ環境が近いスウェーデンが第一候補に躍り出るんじゃ
日本は受けないでしょ
こんな条件だと受けてもメリットがほとんどないし、下手すると大きく損をするだけになりかねない
ここまでヴィクトリア級を偏愛したんだから、更に魔改造することを希望。
今の今まで何してやがったとも思うが。
そりゃ買ってすぐのヴィクトリア級潜水艦を即退役させたら金の無駄遣いとして国民や野党からのパッシングは避けられないからな
せめて4年間ノーメンテの海上放置による劣化具合を現地で実物確認してから買うかどうか決めるなり、買うにしても最低限イギリスによる移送前メンテを条件としなかった時点で詰んでいた
これからの潜水艦の行末は分からないけど、日本のように早いサイクルでの運用が都合よく輸出に繋がれば、機密レベルも穏やかにならないかな?
(そこまで潜水艦に力を入れる国は多くないし比較できないけど、デジタル・センチュリーのような)
ならない
だって
「ナダが進めている次期フリゲート艦プログラムや次期戦闘機プログラムでは高レベルのオフセットやカナダ産業界への再投資を要求しているので、次期潜水艦プログラムにも同じレベルのオフセットや再投資が求められると国際取引に慣れているプレーヤーにしか受注は難しいかもしれない。」
って記事でも書いてたでしょ
そしてそれを至極真っ当な推測で寧ろそうだろうとしかおもえず、そして日本はそれを受けるのはありえない
日本がカナダ次期潜水艦の争いに食い込めるなんて思ってないですよ。
今後、早いサイクルでの運用が都合よくハマる時代が「もし」きたら日本の輸出はどう変化するかな?と好奇心でのコメントでした。深い意味もありません
何時も思うけど、オーストラリアといい、カナダといい、戦争する気がないなあ。
何が、したいのだろう?
日本とは潜水艦と他の装備の優先順位が違うからそう見えるだけじゃない?
オーストラリアは近くに脅威度の高い国がないし、カナダは動く時はアメリカとセットだからな
こと海軍に関しては、日本の周辺環境が過酷すぎるんだよ…
もうハナから日本の潜水艦は売れないって言ってるようなもんじゃん
極東の謎に包まれた潜水艦に賭ける酔狂な国なんてないだろうし普通に考えれば売れないな
かつて東南アジア某国からは引き合いがあったけど、法整備前だから対応出来なかったとあるよ
だいたい想像はつくけどw
まぁフランスだろうな
昔、ド・ゴールがケベック州について口出ししてカナダの心象悪くした事あるから
フランス製は生理的に拒否するんじゃね?
それもあるし、あるいはカナダ国民の頑固なフランス系を懐柔するのにフランスとの商談を優先するのもあり。
現政権のお手並み背景だな、トルコへの兵器部品輸出で判るように、カナダもそこそこブラックだし
ちょっと待って!カナダが買ってやるから再投資しろとか乞食みたいな提案するの!?そっちのほうが衝撃なんだけど!カナダが!?
それ乞食じゃなくて正当なビジネスですよ
輸入に際してアメリカいいなりの我が国が世界的には変だと気がつかないから(笑)
ガラパゴスなのは兵器でなく軍ヲタのほうじゃないのか
論点を逸らすなよカナダがやったことに意味があるんだ
別に北欧によくある何の取り柄もない国ではないだろう?
まあそうする必要があるほどビジネスでアメリカから膨大な利益を得ているってことだからねぇ
経済大国として実に誇らしいよ