ロシア関連

ロシアがバイデン政権に突きつける究極の2択、S-400導入開始が迫るインドへの制裁問題

アフガニスタンからの撤退問題で時間を浪費しているバイデン政権はインドのS-400導入にも決断を下す必要があり、どちらに転がっても利益を得るロシアや制裁解除の突破口になると期待しているトルコから熱い視線を送られている。

参考:В “Рособоронэкспорте” рассказали о новом контракте с Турцией по С-400
参考:Индия до конца года получит российские ЗРК С-400

アフガニスタンからの撤退でNATO加盟国との間に不和を生じさせたバイデン政権、今度はインド関係に影響を及ぼすS-400導入問題に決断を下す必要がある

トルコはのチャウシュオール外相は今年4月、ロシア製防空システム「S-400」の追加導入に関する交渉を開始したと発表、これに反応した米国は「新たな制裁を追加することになる」とトルコ側を牽制していたがロシアの国営通信「RIAノーボスチ」はトルコとの交渉は最終段階でもうすぐ契約に署名すると報じた。

さらにロシア側は同じタイミングで「2021年末までにインド向けのS-400供給が始まる」と再び強調してきたため、先送りにしてきたインドに対する制裁発動問題がアフガニスタンからの撤退問題で手一杯のバイデン政権に突きつけられた格好と言える。

出典:U.S. Air Force photo by J.M. Eddins Jr.

この問題を簡単に説明するとロシア製防空システム「S-400」には異なる理由に基づく「2つの制裁」を米国は実施しており、トルコは「S-400とF-35の同時運用はステルスの技術的特性がロシアに流出する」という理由での制裁(F-35プログラムから追放及び発注済みのF-35A引き渡し拒否)と、ロシア防衛産業企業の輸出を締め上げ収益面から弱体化させること狙った制裁(敵対者に対する制裁措置法/CAATSA)の両方を課されている。

つまり米国はS-400を導入するインドにもCAATSAに基づく制裁を課す必要があるため、トランプ政権時代から「S-400導入を中止して米国からパトリオットを導入して欲しい」とインドに要請していた。

しかしインドは「独立国が下した安全保障上の決定を他国の国内法に基づき制裁を加える」という米国のやり方の反発してS-400導入を予定通り進めており、バイデン政権もトランプ政権の方針を引き継いで「インドがS-400導入を強行すればCAATSAを発動する」と複数の外交チャンネルで伝えているもののインドは全ての警告を無視、逆に安全保障上における伝統的なロシアとのつながりを強化して「我々は独自の外交政策と独自のニーズに基づいて安全保障上の決定を下す」とまで公言している。

出典:Indian Navy / GODL-India

要するに米国は対中国戦略の要といえるクアッド構成国で米防衛産業界の新たな顧客に浮上しているインドとの関係を重視する必要があるのに、S-400導入済みのトルコにCAATSAに基づく制裁を発動しているためインドにも制裁を課さなければならないというジレンマに陥っているのだ。

もしインドだけS-400を導入しても米国の制裁を免除されればCAATSA発動基準が曖昧になりトルコが抗議してくることは勿論、CAATSA発動をチラつかせて抑え込んでいた中東、アフリカ、アジアの国々が一気にS-400やSu-35といったロシア製兵器の導入に踏み切る可能性もあるためバイデン政権はインドを特別扱いすることが難しく、かとってCAATSAを発動すれば米印関係は確実に悪化するためクアッドを中心とする対中国戦略は修正や練り直しが求められるかもしれない。

ロシアにとってはバイデン政権が制裁を発動すればインドに対する米国の影響力を弱体化することができ、発動回避ならロシアの防衛産業企業にとって好ましい状況が生まれる。トルコもS-400導入で米国がインドを優遇すれば制裁解除(CAATSAに基づく制裁のみ)の政治的突破口になるため「米国のCAATSAを骨抜きする」という目的においてロシアとトルコの利益は合致しているとも言える。

果たしてバイデン大統領は導入開始まであと4ヶ月しか残されていないインドにどのような決断を下すのだろうか?

 

※アイキャッチ画像の出典:Gage Skidmore / CC BY-SA 2.0

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 8月 24日

    インドは昔からロシア兵器のヘビーユーザーなのに、今更それを問題にする方がナンセンスな気が…
    代わりにパトリオットを買えって、インドの要求に合致しないからS-400を導入するんだろうに

    チェックメイトが販売し始めたらこれにも制裁するんだろうか、そこそこ売れそうだから買った国全てに制裁発動したらアメリカの外交が無意味に混乱するだけでは

    33
      • 匿名
      • 2021年 8月 25日

      誰もドイツのノルドストリーム2の件を指摘してない。クアッドをアメリカがどこまで重要視するか不明瞭だが、ドイツの件も有るのでインドに対する制裁は無いと考えていい。
      未だに外貨間取引の大半はアメリカで行われてるが、アメリカへの貿易依存が少ない国に対して米国内資産凍結は効力が少ない。既にドイツへの制裁も取りやめたのにインドへの制裁を実行すればクアッド消滅。そのままインドは東側に入るので傀儡バイデンでは何もできない。

      • 匿名
      • 2021年 8月 25日

      インドは本来イギリス兵器ですよ
      印パ戦争以降ソ連に接近、です

    • A
    • 2021年 8月 24日

    S-400はその国の防空システムと深くつながることができるのが売り文句。
    トルコの場合ではNATOの防空システムとつながってしまうのでそれを嫌がられていたって聞いたことがあります。
    インドの防空システムは他国とつながっていないので問題ないのでは?
    単にアメリカのいばりんぼ政策かな?

    9
      • 匿名
      • 2021年 8月 24日

      トルコの場合は機密漏洩懸念が理由で、インドの場合はCAATSAに基づいての規制だよ
      CAATSAってのはざっと言ってしまうとロシア企業に外貨獲得させるの禁止って法案
      これ無視されると今やってる対ロシアの経済制裁がまるで効力を失うから難しいものよ
      まあおもいくそ内政干渉する法案だから文句言われても反論できないけど

      3
        • 匿名
        • 2021年 8月 24日

        トルコにもCAATSAに基づく制裁は昨年末に課せられるけど?

          • 匿名
          • 2021年 8月 24日

          トルコは両方が理由で制裁されてるけどことの発端は機密漏洩防止が原因よ

          4
        • 匿名
        • 2021年 8月 24日

        ということはインドの場合は保守にロシア人は関わってないってことなんだろうか?

        (まだ表示されてないけど、トルコの時の記事張りました)

        1
      • 匿名
      • 2021年 8月 24日

      過去記事「レッドラインを越えてしまったトルコ、米国製戦闘機でロシア製「S-400」をテスト」より
      リンク
      >トルコはロシアから導入した「S-400」は、如何なるネットワークにも接続せず完全な「オフライン」で作動させるので、
      >捕捉した目標の伝播反射特性の情報がロシアへ漏れる心配はないと語っているが、
      >トルコが導入した「S-400」の保守に多くのロシア人技術者が関わっているため、情報が漏洩しない保証がない。

      2
    • 匿名
    • 2021年 8月 24日

    悩ましい問題ではあるものの、インドには制裁を加えるべきだろう。
    対中国でインドを優遇する策をとったとしても、インドが足並みを揃えてくるとは考えずらい。独自路線を歩みたいインドはアメリカの思惑通りには動かないと思われる。
    だが、インドの対中国関係をみるにインドが中国にすり寄る情勢は考えずらいし、ある程度距離をおいた関係でも良いのでは…と考えてしまう。(独自路線で苦しくなるのはインドだし、インドがロシアを対中国で取り込むなら、それでも良いのでは?と思う。)

    12
    • 匿名
    • 2021年 8月 24日

    s400の役割をパトリオットが務められるとは思えない。
    エゴだよこれは。

    8
    • 匿名
    • 2021年 8月 24日

    インドにとってクアッドはあまり魅力的で無く最初から乗り気でなかったしなぁ
    制裁なんか受けたらクアッドから脱退するんちゃう?
    インドってアメリカにズブズブな関係でも無かったやろし

    5
    • 匿名
    • 2021年 8月 24日

    そろそろバイデンさんの就任時のどや顔のお写真から、最近の困り顔に差し替えませんか?

    10
    • 匿名
    • 2021年 8月 24日

    アメリカにはS-400に相当する防空システムがないのにパトリオット買えとかアホとしか言いようがない。インドは昔から安全保障はロシア寄りなのに。
    同盟国とかNATO諸国でもないインドの安全保障に口を出すとかただの内政干渉。

    7
      • 匿名
      • 2021年 8月 24日

      この件に限らず、優越的な地位を濫用したアメリカ国内法での制裁は無理筋が過ぎるよな
      世界の警察官と称しているけど、世界の王として振る舞ってるから嫌われるんだろうに

      6
    • 匿名
    • 2021年 8月 24日

    最近本国でも指摘される機会が多いけど、ドルが基軸通貨であることを利用した制裁は今までほど効果を持たなくなっている。90年~00代はロシアは途上国並の経済状況、中国は文字通り途上国だったので米国に経済封鎖される=北朝鮮やイランと同じ運命を辿ることを意味したけど、今はロシアも復興し中国は経済大国になっているので米国以外の支援者の選択肢は少なくない。
    そのうえロシアは14年のウクライナ侵攻以降のEUからの制裁を経て経済構造を自己完結型に転換済みなので、この種の制裁は今や政治的アピールでしかない。
    冷戦時代の米国は多少内政に問題を抱えた独裁者でも冷遇すればソ連につくので武器輸出や経済協力で優遇していた(本当にどうしようもない時は政権転覆工作して新米政権を作る)。ホワイトハウスがいつ時代が変わったことに気づくか。

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