米国関連

米空軍、次世代戦闘機や無人戦闘機の開発に今後5年間で284億ドルを投資

米空軍は2025年度予算案の中で「NGADやCCAを開発するため25年度~29年度に計284.82億ドルを投資する」と言及、今後5年間で次世代戦闘機の開発に約196億ドル(約3兆円)、有人機に随伴可能な無人戦闘機の開発に約88億ドル(約1.3兆円)を投資する予定だ。

参考:USAF Plans $28.48 Billion over 5 Years to Develop New Advanced Fighters, Drone Escorts

米空軍は本当にNGADやCCAにかかる資金を捻出できるだろうか?

米空軍の次世代戦闘機は「Next Generation Air Dominance=NGAD/次世代エア・ドミナンス」と呼ばれており、ローパー次官補が2020年「次世代戦闘機のプロトタイプを秘密裏に設計・製造して既に試験飛行を行っている」と、ケンドール長官が2022年「NGADがEMD試験機の開発・製造段階に入った」と明かしていたが、米空軍は昨年5月「2024年の契約締結を目指し、NGADプラットホームのEMD契約に関する防衛産業界向けの募集を開始した」と正式発表。

出典:Northrop Grumman NGADのイメージが左端に映っている

ロッキード・マーティン、ボーイング、ノースロップ・グラマンがNGADの主契約者を巡って争うと予想されたものの、ノースロップ・グラマンは「NGADのプライムに応じるつもりはないと空軍に通告済み」「我々はサプライヤーとして他の入札者の提案に協力するつもり」と、空軍も「NGAD開発について2社と契約を結ぶつもり」と明かしているため、ロッキード・マーティンとボーイングの一騎打ちになる見込みだ。

さらに有人機に随伴可能な無人戦闘機(Collaborative Combat Aircraft=CCA)も開発する予定で、ジョーンズ空軍次官補は1月「CCAの競争試作に参加する5社(ボーイング、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマン、アンドゥリル、ゼネラル・アトミックス)と設計・製造契約を締結した」と発表、ケンドール長官や空軍関係者はNGADやCCAについて「NGADの調達規模は200機~250機の範囲」「NGADの調達コストは数億ドル」「CCAの調達は最低でも1,000機」「CCAの調達コストは3,000万ドル前後」と明かしている。

出典:Northrop Grumman Model437

2025年度予算案の中でも「NGADプログラムやCCAプログラムへの支出が大幅に増加する」「25年度~29年度に284.82億ドル(NGAD196.04億ドル+CCA88.78億ドル)の投資を予定している」と言及しているが、NGADの資金にはNGAP(次世代アダプティブエンジン)の資金は含まれていないらしい。

仮に1機2億ドルのNGADを250機購入するなら開発と調達にかかるコストは700億ドル(10兆円)以上になり、CCAも言及通りの戦力規模を揃えるのに400億ドル(6兆円)近いコストがかかる計算で、本当にNGADやCCAにかかる資金を捻出できるだろうか?

関連記事:米空軍の次期戦闘機はロッキードとボーイングの一騎打ち、ノースロップは撤退
関連記事:米空軍が1,000機調達予定の無人戦闘機、ボーイングなど5社で競争試作を実施

米空軍はレガシープラットホームを一刻も早く処分し、戦力全体をリフレッシュして運用・維持費を圧縮したいのだ

米空軍省は2025年度予算案で2,175億ドル(約32.4兆円)を要求したものの、この数字は空軍と宇宙軍の要求予算を合わせた数宇なので、空軍単独の要求額は1,881億ドル(約28兆円)だ。この内65%の資金(約1,214億ドル)が運用・維持費、人件費、インフラ建設に消え、研究・開発費と調達費に割り当てられる資金は377億ドル(約5.6兆円)と290億ドルに(約4.3兆円)に過ぎない。

出典:Courtesy photo by Kyle Larson, Lockheed Martin

勿論、他国と比べれば非常に大きな数字だが、NGADとCCAの開発はF-22A(Block30/35)アップグレード、F-35A Block4、B-21、T-7A、E-7A、NGAS(次世代空中給油機)、NGAL(C-5とC-17の後継機)と、調達はF-35A×1,300機以上、F-15EX×98機、B-21×100機、T-7A×350機、KC-46A×99機、E-7A×26機、ブリッジタンカー×75機~150機、NGAS×100機以上と重複するため、資金的な余裕は全く無いと言ってもいいだろう。

研究・開発費や調達費を圧迫しているのは運用・維持費(756億ドル)に含まれる2つの資金で、空軍は兵器システムの運用・維持費に188億ドル(約2.8兆円)、110万時間の飛行費用に93億ドル(約1.38兆円)を割り当てており、この数字を押し上げているがレガシープラットホームの存在だ。米空軍の試算によると航空機のメンテナンスコストは導入1年目~14年目まで横ばい、15年目以降は要求されるメンテナンスが増加し、スペアパーツの入手性が悪化し始めるため毎年3%~7%づつメンテナンスコストが上昇していくらしい。

つまりF-15、F-16、F-22、A-10といったレガシープラットホームは「提供できる能力」と「運用・維持コスト」のバランスが悪い上、更新用の機体が手に入るまでレガシープラットホームを維持すれば運用・維持費が高騰し、研究・開発費と調達費が圧迫され、更新用の機体開発や調達に回す資金が少なくなってレガシープラットホームの更新が滞り、さらなる運用・維持費の高騰を招く悪循環にハマってしまう。

出典:Photo by Staff Sgt. Taylor Drzazgowski

国防予算の伸び率はインフレ率を下回っているため、実質的な購買力でみると予算は削減状態にあると言ってもよく、2025年度予算案でA-10×56機、F-15C×65機、F-15E×26機、F-16C×11機、F-22A Block20×32機の退役を、議会が要求するBlock20のアップグレードを拒否しているのもそのためだ。

開発全般を管轄するムーア中将は昨年4月「32機のBlock20を1年間飛ばすには4.85億ドル、これをNGAD完成するまで飛ばせば35億ドル、議会が要求するBlock35へのアップグレードを行えば35億ドルの費用がかかる」「もしアップグレードが義務付けられるとNGADに投資する資金の約1/3が吹っ飛ぶことになる」「Block20とBlock30/35では機能や操作方法が異なるため、パイロットはBlock30/35で飛ぶ前にBlock20で学んだことを忘れなければならない」「Block20は中国のJ-20に対して競争力がない」と述べたことがある。

出典:U.S. Air Force photo by Brian G. Rhodes

兎に角、空軍は中国との戦いに役立たないレガシープラットホームを一刻も早く処分し、戦力全体をリフレッシュして運用・維持費を圧縮したいのだ。

因みに「どうせ処分するならウクライナに送ればいい」という考え方も心情的に理解できるが、仮に廃棄予定の機体を無償で提供しても「誰が運用・維持コストを負担するのか」「誰がインフラの構築を行うのか」「将来性のない機体のサプライヤー維持に誰が責任をもつものか」など解決すべき問題が多く、廃棄予定の武器をウクライナに提供するということは「提供後の面倒も責任を負う」と意味し、ただウクライナに送ればいいという意見は全く現実的ではない。

出典:Rikujojieitai Boueisho/CC BY-SA 3.0 DEED

用途廃止が見込まれている陸自の203mm自走榴弾砲やMLRSを米国経由で送っても、提供後の面倒を米国や他国に丸投げするなら迷惑になるだけで、管理人を含む一般人が考えるほど「武器システムのウクライナ提供」は簡単ではない。

但し、米国側から「資金的にも提供後の面倒を見るので203mm自走榴弾砲やMLRSを無償で譲って欲しい」と申し出ているか、日本側が「運用・維持コストやインフラ構築の面倒を見るので米国経由で203mm自走榴弾砲やMLRSを送りたい」と話を持ちかけるのであれば話は別だろう。

関連記事:米空軍はF-35AやF-15EXの調達削減、旧型F-15Eの退役を議会に要求
関連記事:J-20に劣るF-22A Block20、今後も維持するなら次世代戦闘機の開発費が吹っ飛ぶ
関連記事:米空軍、F-22A Block20の改修費用は「途方もない金額になる」と予告
関連記事:米空軍はF-22Aに約1.1兆円を投じてアップグレード、但しBlock20は処分

 

※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin NGAD

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コメント

    • NHG
    • 2024年 3月 17日

    正直、ダメを承知で「提供を視野に米国と協議を~」と言い「やっぱ折り合いつきませんでした」と提供しない厚かましさを発揮してほしかったり(というかウクライナ支援の姿勢を示してほしい)
    そもそも法的に無理だから言わないのはわかってるけど

      • sien
      • 2024年 3月 17日

      米国経由の玉突きでPAC-3や廃棄予定の203mm自走榴弾砲やMLRS
      をウクライナ軍に送れば確実にロシアの敵対国になります
      日本のウクライナ支援で北方領土の交渉返還は不可能に近くロシアは
      漁業交渉を拒否し北方領土に攻撃ミサイルを配備するかもしれません
      中共の台湾侵攻も近い、日本国民が莫大な代償を払ってでも民主主義
      正義を貫くコンセンサスがあるのでしょうか

      2
        • バーナーキング
        • 2024年 3月 17日

        PAC-3(とPAC-2)の対米輸出はもう決まって既にロシアから警告も来てると思いますが…?

        27
        • 匿名11号
        • 2024年 3月 17日

        経済制裁している時点で既に敵対国でしょう。

        かといって、あからさまな侵略行為を黙認していれば、民主主義正義を放棄するも同然で、そちらの方のコンセンサスが得られないでしょうな。それに黙認したところで、「北方領土の交渉返還」「北方領土への攻撃ミサイル配備阻止」「漁業協定の締結」はウクライナ支援以上の見返りがなければ不可能でしょうね。露中から仕掛けられた際に日本に対して好意的中立以上のスタンスをとる国を減らすだけです。

        29
        • カササギ
        • 2024年 3月 17日

        戦線から遠のくと楽観主義が現実に云々って言えばいいの?

        11
          • 一般通過OSINT
          • 2024年 3月 17日

          だから遅すぎたと言ってるんだ!

          7
    • 幽霊
    • 2024年 3月 17日

    ヤフコメでは74式戦車を送ろうみたいなコメントを見かけるけど今更74式戦車を送られても困るよね

    19
      • 半分の軍事費の国から
      • 2024年 3月 17日

      オーバーホールついでに、主砲を120mmに乗せ換えて、近代化改修しつつ、APS、ドローン迎撃システムと光学迷彩とAIによる自動戦闘機能を付けて、重量60トン位になった90式の用な気がする巨大化した、外観が74式な戦車をウクライナに提供するのは有りかもしれません、又砲弾は何故か10式徹甲弾で‥10式専用設計なのでは?とか言いつつ74式UI型です、と言い切る、幾ら掛かるのやら‥

        • 戦略眼
        • 2024年 3月 18日

        74式より廃棄予定の90式を送った方がまだマシ。
        維持管理をどうするかだが。

        1
      • 匿名希望係
      • 2024年 3月 17日

      ポーランドからT-72系列の設計図もらって足回りをユーロパックに変えて日本で製造して輸出した方がましかと

      1
    • 分析
    • 2024年 3月 17日

    普段はそれぞれ皆さんが働いている各企業で、仕事機材の整備にどれだけ手間が掛かるかとか、在庫の管理にも費用は要するとか、誰も更新できない古くからの謎の遺産で何故か動いているシステムとか、身近にある問題だと思うのですが。
    何故か軍事の話になると、維持管理に要する費用や人間の概念が吹き飛んだ主張をされる方いますよね…
    それこそトラック1台だって整備が必要なのですが。
    特に米軍に関しては無限の人員と予算を持っていると考えている、もはや信仰めいた思想の方もいます。

    26
      • たむごん
      • 2024年 3月 17日

      仰る通りです。

      昭和のアメリカ・昭和の米軍のイメージの方が、残っていると推測しています。
      アメリカは経済が圧倒的でなくなっただけでなく、製造業の海外移転により、軍事力の裏付けが大幅に弱体化しています。

      軍事の機材は、開発が古いものもあり、管理が面倒くさそうですよね(息が長いため)。
      古い武器は、整備部品を製造しない・製造できない物もでてきそうですから、共食い整備も多くなりそうですし…

      1960年 43%(実質?)
      1970年 31.6%
      1990年 26.0%
      2017年 24.3%

      (2018/11/20 第1次世界大戦後の100年間:世界経済はどのように成長してきたか 日本経済研究センター)
      (2018年06月08日 図表でみる世界経済(GDP編)~世界経済勢力図の現在・過去・未来 ニッセイ基礎研究所)

      6
        • 分析
        • 2024年 3月 17日

        お笑い中国軍とか嘲笑するものではなく彼らに最新装備が揃いつつあることや、逆に自衛隊は世界標準だと弱い訳ではなく西欧諸国より余程戦力は整っているという点は、多くの人に周知されてきたと思うのですが
        最強米軍説は、過去の日本がそれにやられたからこそ、中々イメージが抜けないものですよね…
        いや確かに現在も単純な戦闘能力は最強だとは思うのですが、少なくとも第二次世界大戦の時のように二正面に数十万の兵士を叩き込みつつ、イギリスやソ連に数千の戦車や戦闘機を支援するような生産力は最早無いんですよね

        9
          • たむごん
          • 2024年 3月 17日

          仰る通りです。

          中国製兵器は、モノマネと揶揄されていましたが、研究開発費カット・世界で有効な物を取り入れたと考えればかなり手強いです。
          世界の工場が、その基盤にありますから、品質と価格も安定しているでしょうし…。

          米軍の生産力は仰る通りで、現状3正面に拘束(ウクライナ・イスラエル~シリアイラク・イエメン)されて在庫を削っていますから、余力(極東方面)は本当にあるのかなあと…。

          1
      • kitty
      • 2024年 3月 17日

      つか社会人でも「なんでこんな高い保守契約必要なの?」とかほざく事務屋がいて、高額機器がいざ故障するとスポット価格の修理代に腰を抜かすアホがいるのです。
      私は全く驚きません。

      8
    • たむごん
    • 2024年 3月 17日

    管理人様、勉強になります。
    かなり驚いたのが、機能・操作方法を替えるという点で、余程遅れていると推察しました。

    F22も既に古くなってきた戦闘機ですし、そもそも輸出が認められていませんから厳しいなと。
    実戦経験が気球撃墜くらいのため、何とも評価が難しいと感じています。

    それだけ、抑止力が効いたとも言えるかもしれませんが…。

    >「Block20とBlock30/35では機能や操作方法が異なるため、パイロットはBlock30/35で飛ぶ前にBlock20で学んだことを忘れなければならない」
    「Block20は中国のJ-20に対して競争力がない」と述べたことがある。

    2
    • 朴秀
    • 2024年 3月 17日

    F-22(初期型)もレガシー扱いなんですね
    時代を感じます

    4
      • M774A6
      • 2024年 3月 17日

      F-16初期型は要らないけど、F-16VならF-35の7, 8割くらいの値段でも買いたいって需要は旺盛ですからね。
      F-22でも運用性や戦闘能力の評価が初期型とそれより後では丸きり違うのでしょう。

      3
    • jimama
    • 2024年 3月 17日

    あれもこれもと夢みたいなこと追っかけるのではなくまずは有人でいいから、ちゃんと飛ぶ堅実な制空戦闘機を開発すべきじゃないかなあ
    とにかく延期々々でコストを水ぶくれさせない”つまらない”やつでいいから
    んでついでに余裕があるならF15、F16みたいに他の任務も任せていくと

    7
    • ブルーピーコック
    • 2024年 3月 17日

    GBU-28バンカーバスター用に203ミリ砲の砲身をアメリカに送って・・・今度はウクライナ軍の何に載せるんだという話になるか。

    • 名無し
    • 2024年 3月 17日

    F-22の時のように、一機で数億ドルするNGADを予定通りの200〜250機揃えられず、機体単価と維持運用費の更なる高騰を招くデジャヴに陥らないといいんですがね…

    13
      • DEEPBLUE
      • 2024年 3月 17日

      NGADがF-22の二の舞になるのではないかとは、自分も危惧しております。高性能であっても満足に調達できるかという

      9
      • バーナーキング
      • 2024年 3月 17日

      F-22の調達数削減は何と言っても冷戦の終結によるところが大きいと考えるので二の舞になるならそれ自体はそれで歓迎なんですけどね。
      ただ緊張度の変化に対応し切れず、余った戦力で世界の火種をつつき回して飛び火させる(私見)のは繰り返さないで欲しいとこですが。

      9
      • 匿名希望係
      • 2024年 3月 17日

      むしろ初期生産分を腐らせているのでそろそろF-35BLOCK2も同じ事が起こりそうよ。

      3
    • 戦略眼
    • 2024年 3月 18日

    アメリカ製のM270やM110A2なら、維持管理をアメリカに丸投げしても問題ないと思います。
    自衛隊のFH-70は自走用のエンジンがいすず製なので、手を打つ必要がありますが。

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