米国関連

スウォーム化された無人艦による変革、米海軍が取り組む有人艦隊と無人技術の統合とは?

米海軍の演習に登場した超小型無人水上艦「ADARO」に米メディアが注目しており、スウォーム化された無人プラットホームが海での戦いに変革をもたらすことが期待されている。

参考:This Tiny Drone Boat Is Being Tested During The Navy’s Big Manned-Unmanned Teaming Experiment

有人艦隊への無人プラットホーム統合を急ぐ米海軍が南カルフォルニア沖で大規模な実証演習を実施

米海軍は有人艦隊の無人技術を統合(有人・無人チーミング)することで脅威の検出と追跡、さらに目標へのミサイル誘導技術を開発・実証することを目的にした大規模な演習「Unmanned Integrated Battle Problem 21」を南カルフォルニア沖で実施した。

出典:U.S. Navy photo by Chief Mass Communication Specialist Shannon Renfroe Unmanned Integrated Battle Problem 21の様子

もっと砕けた表現で説明すると何百kmも離れた敵を攻撃することが出来るミサイルを保有していても何百kmも離れた敵を認識できなければ無意味で、特に水上戦における戦場認識力はこれまで艦艇や航空機に搭載された高価で高性能なレーダーに依存してきた。

ここに低コストで人命リスクが皆無な無人プラットホームを統合することで有人艦艇や有人航空機の前方に高密度なセンサノードを構築=つまり水上戦における戦場認識力を拡張することで「より遠方」から敵水上艦と交戦することを米海軍は目指している。

ただ水上戦における有人・無人チーミングは試行錯誤の段階で今回の演習も様々な無人プラットホームを持ち込んで検証したり、実際にアーレイ・バーク級駆逐艦や沿海域戦闘艦などの水上艦艇や各種有人航空機とチーミングを行いどの様な組み合わせが有効なのかを評価することを目的にしているので実用化は当分先の話だが、今回演習に持ち込まれた無人プラットホームの中に非常に興味深いものが見つかり複数のメディアが注目している。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Alex Perlman 超小型無人水上艦「ADARO」

注目を集めている無人プラットホームは米政府が支援する中小企業の研究開発支援プログラムの下で開発された超小型無人水上艦「ADARO」で全長は1m未満で重量も10kg以下と非常に小さいのだが、搭載されたハイブリッド発電システムのおかげで連続航行距離は最大370km、最高速度は静粛性に優れた電気推進のみを使用して25ノットに達するらしい。

遠隔操作と自律的な航行に対応したADAROは搭載された光学センサーや各種測定器で収集した情報をイスラエル製の衛星通信装置を通じて演習に参加した艦艇に提供したと米海軍は説明しており、この様な無人プラットホームをスウォーム化して運用すれば広範囲の海域を高密度で監視することが可能で、仮に敵の攻撃を受けても戦場認識力が一度に奪われることもないのでリスクの高い環境下で遂行される任務に良い意味(指揮官により多くの判断材料を提供できる)で大きな影響を及ぼすだろう。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Alex Perlman 超小型無人水上艦「ADARO」

メディアが特に注目しているのはADAROがもつ可能性で、スウォーム化されたADAROに電子戦装置を搭載して有人艦として電子的に偽装すれば敵は無尽蔵に増えるターゲット情報に惑わされ有効な攻撃を仕掛けられなくなり、爆発物を搭載すればスウォーム化されたADAROによる自爆攻撃も可能になると期待しているのだ。

ADAROはステルスに配慮した設計を意図的に取り入れている訳ではないが、このサイズの艦艇を検出するのは容易ではないので攻撃に転用するというアイデアは有望かもしれない。

しかしADAROは沿岸海域で作動することを想定したサイズなのでスウォーム化された無人プラットホームが「外洋」で縦横無尽に暴れまわるためには超小型からサイズアップする必要があると管理人は思っており、今回登場したADAROがそのまま兵器化さることはないだろう。

出典:U.S. Navy photo by Chief Mass Communication Specialist Shannon Renfroe 同じ演習に参加したADAROより大型の無人艦艇「シー・ハンター」 

しかし上記で示されたアイデアやコンセプトは姿かたちを変えても必ず実用化されてくるので無視できるものではなく、約20年で戦争の形をガラリと変えてしまった無人航空機のことを踏まえると無人プラットホームによる水上戦の変革は既に開始されていると思っていたほうがいい。

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※アイキャッチ画像の出典:出典:U.S. Navy photo by Chief Mass Communication Specialist Shannon Renfroe Unmanned Integrated Battle Problem 21の様子

インドネシア海軍、沈没した潜水艦の魚雷発射管の一部や潜望鏡の潤滑油ボトルを回収前のページ

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    トルコとは異なるコンセプトだね。
    まだ試作、実験段階の製品をこき下ろすのもな。問題を訂正してから採用し、固有の欠点は理解した上で運用するんだから。
    こんな小型無人艦が波高き太平洋を制覇するとかは誰も考えんけど、でも必ず実用化するし使われるだろな

    4
      • 匿名
      • 2021年 4月 25日

      この手の小型無人艦艇なら転覆水没お構いなし、な造りにも出来るし、
      1ノードに過ぎないなら漂駐したって大して困らん訳で、
      外洋でもせいぜい運用自由度や展開速度が下がる程度で運用自体は可能だろうしね。

      何よりこの手の艦艇を大規模に導入すれば355隻体制だろうが500隻体制だろうが無理なく実現できるw

      18
      • HY
      • 2021年 4月 25日

       現実的なのは大洋を巡行している間は有人艦に搭載され、作戦海域近くで展開されるシステムだろうね。無人航空機開発でもそういうコンセプトがあるし。

      9
    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    自動運転といい、使用される電子部品はどんどん増えていきますね。
    何か供給問題になりそうなものに対して、戦略的に準備すべきなのかな?

    6
      • 匿名
      • 2021年 4月 25日

      石油みたいにシリコンウエハースとインゴットを政府が備蓄すればいいのかな?
      意図的かどうかは分かりませんが、中国の景気対策で電子機器不足がおきますからね。

      11
    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    こっちでも日本は遅れを取ってそうだなぁ

    4
      • 匿名
      • 2021年 4月 25日

      と言うか、もうそんな分野に投資する経済的余力が失われている方に一票

      15
        • 匿名
        • 2021年 4月 25日

        戦略がないから継続して投資していないだけ。
        お金がないは問題外。

        9
          • 匿名
          • 2021年 4月 25日

          戦略と言ってもどの戦略を指すかと言う問題が有るんだが、国家戦略や防衛上の戦略に関して日本はそもそも立てようが無いと言う政治的経緯がある(三矢研究の事)
          で、経済上の戦略に関してはバブル崩壊後の経済的サバイバルを優先した影響で投資する原資が決定的に不足した状態で30年以上過ごしているのが現状(但し、これは日本だけの問題では無い)
          結論としては「お金が無いのは問題外と言うのは経済戦略に関しては嘘」「経済戦略はお金が密接に関わって来るのが実情」となる

          4
        • 匿名
        • 2021年 4月 25日

        トルコはもっと余裕ないと思うがその中でもやるべきことをやってる

        2
      • 匿名
      • 2021年 4月 25日

      記事中の
      〉何百kmも離れた敵を攻撃することが出来るミサイルを保有していても何百kmも離れた敵を認識できなければ無意味
      は、退役するファントムの代わりに、グローバルホークが偵察機になるのでASM-3(改)の座標指定に困ることは無い。ってことになりそう。自衛隊に撃墜上等の無人偵察機を開発する気があるのかな。

      ただ、有人偵察機に関しては、ファントム改造で失敗、ヘリで少数採用。なんで偵察機開発を頑張ってないわけでは無い。

        • 匿名
        • 2021年 4月 25日

        数機のグローバルホークでどうしろと?

        航空戦力の能力や防空システムの高度化、ミサイルの長射程化の影響でセンサーは無人機を利用した分散化とメッシュ化の方向に進んでいるのに数機のグローバルホークでどうにかなる問題じゃない。

        日本はセンサー単体の性能が良くても数が少なすぎて冗長性や回復力に欠けるから、一度でも攻撃を受けると戦場認識力が維持できなくて直ぐに盲目になる。

        F-35のセンサーが幾ら優れていても戦場のネットワーク化が致命的に遅れているから、きっとセンサーが収集した情報を活かせず終わる気がする。

        戦場のネットワーク化というはセンサーレベルで情報の共有と統合を意味するから、戦術情報の共有システム「リンク16」とは別ものね。

        26
          • 匿名
          • 2021年 4月 25日

          気持ちいいまで論破

          4
      • 匿名
      • 2021年 4月 25日

      ちょっと尖ったことやろうとするとすぐに否定され挑戦を許さない風潮が緩まないとどの分野でもこうなる

      多胴艦とか、少しはマシな風潮になってきてるんじゃないかと希望は持ってる

      6
    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    産業の米――高度経済成長期には鉄鋼を、冷戦以降は半導体を指して言われた経済用語
    言葉通りの重要性は理解していたにもかかわらず、自由貿易を推進し市場原理に任せた結果、日本は米不足状態に陥りました
    今生き残るために将来を見ないのは愚か者のすることだと思う

    16
      • 匿名
      • 2021年 4月 26日

      そんなもの後世の人間の後知恵でしょ。

      3
    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    有人艦では迷走気味なアメリカ海軍だけに、無人艦は着実に進んで欲しい
    それが中国の牽制になり、同盟国の模範になる

    9
    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    日本製兵器ってアメリカの兵器体系ネットワークシステムに接続させてもらえなかったり、
    接続させてもらえても段階でいうとかなり下程度までしか許されないとかなんでしょ?
    今後無人兵器でリンクしてAIに大部分を任せて他が撃ったミサイルを代わりに誘導とか
    統合運用していくのが兵器進化の流れなのに、自前開発兵器はダメだと締め出される
    それでいてアメリカ兵器は高額要求され整備も改造もアメリカだけと制限され、
    グローバルホークのような梯子外しも平然と行われるし、当初契約と違う追加料金要求もされるのがデフォ

    同盟国に反米離米意識をわざと発生させてるようなものだと気づいてるんだろうか

    18
      • 匿名
      • 2021年 4月 25日

      米国人にそんな想像力ないだろ

      昨日もアルメニア決議案でトルコ怒らせてるし

      18
    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    甲標的(USA-21C)

    2
    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    結局は戦いは数だよ兄貴な環境になりそうだ

    3
      • 匿名
      • 2021年 4月 25日

      なんか湾岸戦争の圧倒的勝利に味を占めて
      高性能兵器に傾倒していったのが米軍の不幸の始まりな気がする

      7
        • 匿名
        • 2021年 4月 25日

        二次大戦のイケイケドンドンなアメリカより残念な現代アメリカェ……
        まあ、いい転換点なんじゃない?

        2
        • 匿名
        • 2021年 4月 25日

        あの圧倒的な威力でハイテク化の必要性を悟った人民解放軍が素朴な人海戦術から近代軍へ方針転換してしまい、今や米軍を脅かしているという。
        ある勝利が次の敗北を招いてしまうのかって、これは歴史の課題だな

        8
      • 匿名
      • 2021年 4月 25日

      しかし、アメリカが無人機を全面に展開する戦法になったら無双状態になりそうだな。シーハンター量産が完了したら、追いつかれる前に大海戦を望みそうな気がする。

      1
    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    ちょっと気になっていた4/23の米海軍のツイート
    U.S. Navy @USNavy·Apr 23
    Unmanned aerial, surface and subsurface vehicles participate in @USPacificFleet
    Unmanned Systems Integrated Battle Problem 21. #USXIBP21
    Read more: リンク
    多様な無人機・無人艇がすでに米太平洋軍に組み込まれている、と思われる。

    2
    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    >注目を集めている無人プラットホームは米政府が支援する中小企業の研究開発支援プログラムの下で開発された超小型無人水上艦「ADARO」

    岡田正則(学術会議)「相手が軍備を持ってるなら、日本も武器を持たなくてはいけないは時代遅れ」
    門田隆将「武器でなく自衛能力、弾道ミサイルを防ぐ方法を研究してもらわないといけない」
    岡田「話合いで武器を使わないようにするのが自衛」

    6
      • 匿名
      • 2021年 4月 25日

      超音速で落下してくる弾道ミサイルや群がって自爆攻撃してくる無人機と「話し合い」できるなら是非やってもらいたいもんだ

      11
        • 匿名
        • 2021年 4月 25日

        そういう話はいいから
        無知とは知らないでなく、知ろうとしないなんだよ

        1
      • 匿名
      • 2021年 4月 25日

      現代科学で無機物と対話する技術なんて開発されてなかった筈だけどなぁ……
      学術会議は未来に生きてんなぁ

      6
        • 匿名
        • 2021年 4月 25日

        ATフィールドでも科学者が作ってから対話でと言って欲しいな、対話で解決しなかった時の保険はなんだと問うべきだわ

        2
      • 匿名
      • 2021年 4月 26日

      やっぱり学術会議を名乗るだけあってぐうの音も出ない正論で返してるな
      岡田の返答を見ても本来政権を握るべきなのはアベ自民ではなく旧民主党だと良く判るわ

      1
    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    金と時間食いのイージスアショア代替え艦なんてやめて
    日本列島を囲むように対艦対空ミサイルで武装して
    無人機とネットワーク戦に注力しろよ

    2
    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    トップの写真の航空機は、何でNレジ、つまりアメリカ籍の民間機のナンバーを付けているの?

      • 匿名
      • 2021年 4月 25日

      MQ-9の主翼下に吊り下げてるのはGA-ASIが開発したソノブイ・ディスペンサーポッドぽいから、ここブログで取り上げてたGA-ASIと米海軍が共同でテストした潜水艦狩り用のGA-ASI所有機じゃないの?

      1
    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    主旨から外れるけど、ズムウォルト級(?)の駆逐艦滅茶苦茶汚くないか。

    2
      • 匿名
      • 2021年 4月 25日

      ズムウォルトの画像は見当たりませんが…?
      インデペンデンスを間違ってる?

      10
    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    相手に回収されてアッという間にコピーされるやろな
    海上なら尚の事

    2
    • 匿名
    • 2021年 4月 25日

    電源切れたら相手に回収されてアッという間にコピーされるやろな
    空ならバラバラだろうけど海上なら尚の事

    • ゆう
    • 2021年 4月 26日

    水上艦で情報収集、は非効率と思う。
    水平線までの距離は約4km。レーダーでは、これ以上先のものは分からない。
    だから、早期警戒機を飛ばし、水平線までの距離が延びる航空から探知している。
    その他、安定しないプラットフォーム、波や海面からの反射派、有利な点は少ない気がする。

      • 匿名
      • 2021年 4月 26日

      光学センサーって書いてるよ。

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