米国関連

KC-46の問題が大きく改善? 米空軍がブリッジタンカーの必要性を否定

米空軍のケンドール長官は1日、KC-46Aと次世代空中給油機「KC-Z」のギャップを埋めるブリッジタンカーについて「必要性が低下した=KC-46Aの継続調達」を示唆して注目を集めている。

参考:US Air Force wants to lower the number of tankers required in its fleet

ケンドール長官の主張が真実なら結構なことだが、議会は納得できるだけの根拠を提出しないかぎりKC-Yのスキップを認めないだろう

議会が空軍に義務付けた「空中給油機479機以上の保有(2019年の国防権限法)」について、ヘリテージ財団のシンポジウムに出席したケンドール長官は「455機に削減することを議会に要求する」と明かした。

出典:U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Abigail Klein

ケンドール長官は「455機の空中給油機があれば中国の脅威と他の任務を対応するのに十分だ」と削減理由を述べたが、我々が直面している脅威を考えると「大規模な戦争(中国)と大規模な紛争を同時に対処していくのは無理がある」とも付け加えており、さらに「空中給油機は撃墜されるリスクが高まっている、この問題(PL-15などの長射程空対空ミサイルに対する対策)は依然として未解決なままだ」と述べている。

ただ空中給油機に関する発言の中で最も注目を集めたのは「KC-46A」と「ブリッジタンカー」についてだろう。

出典:U.S. Air Force Photo by John D. Parker

空中給油機の更新計画はKC-XとKC-Zに分かれており、KC-Xの選定で勝利したのはボーイングのKC-46Aで179機調達が予定されているが、まだKC-Zは要求要件も定まっていないペーパープランなので空軍は179機以上のKC-46Aを調達して老朽化した空中給油機を更新していく必要がある。

しかしKC-46Aは空中給油作業を制御するリモートビジョンシステム(RVS)と燃料を空中移送するためのムーブに欠陥(機体表面をムーブが傷つけてしまう問題)があり、F-22A、F-35A、B-2への空中給油は非実戦時のみ制限され、主に演習参加機や長距離飛行を伴う移動任務機に対してのみKC-46Aを使用している最中だ。

出典:U.S. Air Force photo by Chustine Minoda

この制限を解除するには新たに開発中のRVS2.0と再設計されたムーブへの交換(2023年までに開発完了→2024年頃に交換開始)を行う必要があるのだが、KC-46Aは数々の不具合や製造工程での問題で議会を怒らせたため空軍やボーイングの主張を信用しておらず「KC-46AとKC-Zのギャップを埋めるブリッジタンカー(KC-Y)を新たに選定しろ」と要求、これ受けて空軍は2024年頃にKC-Yの選定を実施する方針を発表した。

勿論、選定時期を2024年頃に設定したのは「KC-46Aの修正が完了しないと完成度の高いLMXT(A330MRTTの派生型)が勝利する」ためで、米政府説明責任局が「十分なテストを行った方がいい」と警告したにも関わらず空軍は検証作業を省略、RVS1.0と同じ「通常の開発試験でRVS2.0のテストを行う」と主張して予備設計審査が完了したと発表しており、空軍のKC-46A押しは素人目でも分かるほど強烈だ。

出典:Lockheed Martin

このブリッジタンカーについてケンドール長官は「KC-46の問題が一夜にして大きく改善(RVS2.0完成までの繋ぎとして開発されたRVS1.0の修正バージョン)したためブリッジタンカーの必要性は低下した」と述べており、KC-46の継続調達=KC-Yのスキップを示唆したため注目を集めているのだ。

もしケンドール長官の主張が真実なら結構なことだが、恐らく議会は納得できるだけの根拠を空軍が提出しないかぎりKC-Yのスキップを認めないだろう。

関連記事:米空軍のブリッジタンカー受注に自信満々のロッキード、不安要素しかないボーイング
関連記事:RVS2.0の予備設計が完了、本当に上手くいくのか???

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force Photo by Tech. Sgt. John Wilkes

お知らせ:記事化に追いつかない話題のTwitter(@grandfleet_info)発信を再開しました。

米空軍の次期戦闘機開発がEMD機開発段階に到達 IOC宣言は数年後前のページ

中国が大型ステルス無人艦の建造を開始、実用的なのか実験的なのかは不明次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    自由を守る戦い、退役米軍人3,000人がウクライナの呼びかけに応じて参戦

    Voice of Americaは5日「駐米ウクライナ大使館の呼びかけ…

  2. 米国関連

    ボーイングが空中給油機に革命を起こす? KC-46A空中給油作業無人化に繋がる技術を開発

    もしかすると日本も導入する空中給油機「KC-46A ペガサス」の空中給…

  3. 米国関連

    米国、ロシアが48時間以内に侵攻を開始する可能性をウクライナに通知

    米国のバイデン大統領はウクライナのゼレンスキー大統領に「ロシアが48時…

  4. 米国関連

    ロシア軍や中国軍の妨害に耐性をもつGPS軍用Mコード、米国の同盟国が対応を開始

    スプーフィング攻撃や妨害電波に対する耐性が強化されたGPS信号「Mコー…

  5. 米国関連

    米空軍、間抜けなミスで極超音速巡航ミサイルのプロトタイプ試射に失敗

    米空軍は先週、極超音速巡航ミサイルのプロトタイプを使用した初めての試射…

  6. 米国関連

    米大統領補佐官、米日豪印4ヶ国によるクアッドの軍事同盟化がバイデン政権の目標

    バイデン政権で安全保障問題を担当しているサリバン補佐官は29日、クアッ…

コメント

    • anon
    • 2022年 6月 02日

    だから、空自のKC-46にRVS 2.0を付ける時点はいつか? 20年後かな?

    18
      • KAMA
      • 2022年 6月 03日

      空自のF-35についてはどうなるのでしょうね?

    • や、やめろー
    • 2022年 6月 02日

    なぜ空軍はこんなにKC46にこだわるのかが分からない。完成度高いLMのに途中変更すればよかったのに

    7
      • 名無し
      • 2022年 6月 02日

      退役軍人を受け入れてくれる受け皿が必要なんですよ。。。

      8
      • けい2020
      • 2022年 6月 03日

      こだわってるのは議会で、KC-46にきめたのも議会
      元はロビー活動やら議員の地元への利益誘導が優先だったけど、今はボーイング救済で議会動いてる

      2
    • 千葉の猫
    • 2022年 6月 02日

    フライングブーム方式なので
    ムーブ→ブームでは?

    7
    • 2022年 6月 02日

    >「大規模な戦争(中国)と大規模な紛争を同時に対処していくのは無理がある」
    かつての米軍は、大規模紛争が起って米軍が介入しているときどこかで別の国が武力行使しないよう、同時に二か所の大規模紛争に対応できるだけの軍備を保持するのが建前だったのに時代は変わった。

    10
  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 日本関連

    海外メディアも注目、横浜で護衛艦「いずも」の空母化工事が始まる
  2. 欧州関連

    再掲載|英海軍の闇、原潜用原子炉の欠陥と退役済み原潜の処分費用
  3. 日本関連

    着実にレベルアップを果たす日本の対潜哨戒機P-1、2020年度から「能力向上型」…
  4. 日本関連

    国産防衛装備品の海外輸出が実現!フィリピンが日本製警戒管制レーダー「J/FPS-…
  5. 日本関連

    リチウムイオン電池採用艦!日本のそうりゅう型潜水艦11番艦「おうりゅう」就役に世…
PAGE TOP