ロッキード・マーティンは空軍が求めるブリッジタンカーの最優先事項について「運搬できる燃料(飛行用燃料と給油用燃料の合計)の総量だ」と語り、これが事実ならボーイングのKC-46では到底太刀打ちできそうもない。
参考:Lockheed’s Plan To Bring Its Version Of The Airbus A330 Tanker To America
支援基地から遠く離れた戦場に航空戦力を投入するためには大量の燃料を効率よく運搬できる空中給油機が必要になる
米空軍はボーイングが開発したKC-46Aを2027年までに179機調達する予定だがKC-135の更新需要を全てカバーしている訳ではなく、それまでに研究が進められている次世代空中給油機「KC-Z」の開発や実用化も間に合わないためKC-46AとKC-Zの間にはギャップが存在する。
このギャップを埋める最もシンプルな方法は米空軍がボーイングに新たな契約を与えてKC-46Aを追加発注すれば良いのだが、同機は複数の不具合に悩まされボーイングは空中給油機の主要機能を自社資金によって「再開発」する事態に陥っており、少なくとも2024年まではF-22、F-35A、B-2といったステルス機やA-10への空中給油が制限される見込みで空軍や議会もKC-46Aの調達継続には批判が多く、この問題が影響したのかは不明だが米空軍はKC-46AとKC-Zとの間のギャップを埋めるブリッジタンカー(KC-Y)を新たに選定する方針を昨年6月に発表した。
米空軍がブリッジタンカーに求める要件に「2029年から納入可能な非開発の空中給油機」を挙げているため、ボーイングのKC-46AとエアバスのA330MRTTが再び受注を争うことになると複数の米メディアが予想しており、ボーイングの担当者とエアバスと組んでいるロッキード・マーティンの担当者は米空軍のブリッジタンカーに挑戦する意向を表明していたが、ロッキード・マーティンはブリッジタンカーに関して興味深い言及を行っている。
ロッキード・マーティンでLMXT(A330MRTTの派生型)プログラムを担当するラリー・ギャロリー氏は「ブリッジタンカーに求められる最優先事項は運搬できる燃料(飛行用燃料と給油用燃料の合計)の総量だ」と説明し、空軍が台湾海峡を想定した中国との戦い焦点を当てているため「支援基地から遠く離れた戦場に航空戦力を投入するためには大量の燃料を効率よく運搬できる空中給油機が必要になる」と述べており、ロッキード・マーティンが提案するLMXTは追加燃料タンクを2つ増設することでオリジナルのA330MRTT(111トン)よりも多い135トンの燃料を一度に運搬できると強調した。
もしロッキード・マーティンが主張した通り空軍がブリッジタンカーに燃料の運搬能力を求めるとKC-46(最大燃料搭載量96トン)では到底太刀打ちできそうもない。
KC-46は最大で無給油で12,200km飛行することができるが、LMXTは18,520kmを飛行することが出来るため「より遠くまで飛べ、より多くの燃料を友軍機に給油することができる」という意味で、この燃料搭載量は空中給油機を使用した物資輸送でも有利に働くだろう。
さらにロッキード・マーティンは空軍上層部から「LMXTはオリジナルのA330MRTTからどの程度変更を行うのか?給油ブームも変更するつもりなのか?」と質問され「空中給油システム(すでにMRTTはKC-46にはない自動空中給油システムを実用化済み)や給油ブームを変更する予定はない」と答えたと明かし、この答えを聞いた空軍上層部は「現在の設計を台無しにしないでくれ」と注文をつけたらしい。
つまり空軍はKC-46での失敗を二度と繰り返したくないと考えており、見方によってはKC-46よりもLMXTに期待していると解釈出来る。
因みにブリッジタンカーの調達プロセスは正式に決定されていないがベースとなるA330を製造するのに2年、国内でA330をLMXTに変更するのに2年かかる見込みなので2025年に発注しないと「2029年の初号機引き渡し」というスケージュールを達成できないため、2023年中に要求要件を確定させ2024年中に勝者を選択して契約を授与する可能性があるとロッキード・マーティンは見ており、最低でも140機~160機程度の発注が行われると予想している。
ボーイングは米空軍のブリッジタンカーに挑戦する意向を表明しているもののKC-46で挑戦するかは正式に表明しておらず、空軍の要求要件によってはブリッジタンカーからの撤退もあり得る上、現在開発中のリモートビジョンシステム2.0や新型給油ブームがコケれば最大179機受注している契約を打ち切られる可能性も0ではない。
米空軍はボーイングにKC-46を最大179機発注する可能性のある契約を授与しているが、実際に契約が行使されているのは91機目(55機目の引き渡しを終えた段階)までで残りの契約行使はRVS2.0の開発状況に懸かっているとも言われているので、開発が上手く行かなければKC-46の調達を91機で打ち切りLMXTの調達数を増やすかもしれないという意味だ。
果たしてボーイングはKC-46の契約を完走することが出来るだろうか?ブリッジタンカー契約をエアバスとロッキード・マーティンから守ることが出来るのだろうか?
もし失敗すれば空中給油機市場はA330MRTTの土壇場になってしまうだろう。
関連記事:自動空中給油に対応、ロッキード・マーティンが米空軍に提案する空中給油機「LMXT」を発表
関連記事:自動空中給油システムの開発が完了したA330MRTT、欠陥の修正に忙しいKC-46A
※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin
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無理だとわかっているが、問題のないA330MRTTを導入して欲しかった。
嗚呼ボーイング!1980〜2000年の帝王期を知っているだけにその凋落記事が心に刺さる。人話でしかないが、品質管理や開発かける情熱や徹底ぶりは何だったのか?
やがてはグラマンだのコンベアみたく、懐かしい、そんな名前あったって話になるのかしら
ダ、ダグラス・・・
ノースアメリカンw
コンソリw
死屍累々というか、企業の統廃合もまた資本主義の行きつく掟か
前記事で防衛産業と税金、日本のソレの衰退コメがありましたが、頭に浮かんだのはボーイング他でした。
もし米空軍がRVS2.0にも見切りを付けたら、空自のKC-46 はどうすたらいいんですかね…
そうなると既に91機導入してるKC-46Aが米軍にとって丸ごと深刻な状態になるからそれは考えにくいけどなぁ
仮にそうなったとしたら問題の不具合が起きないよう太陽との位置関係に気を付けながら給油するんじゃないかな
空自は実際に当面必要な時はそうする方向で考えてるみたいだし
太陽との関係、詳しく教えて。
リンク
これのPDFのページでいうと4P(PDF自体がページ途中からなので原本のページは20ページになってる所)に書いてある奴ね
太陽との位置によりカメラ画像が不鮮明になる⇒不鮮明になったら意図せずブームが機体に接触する
該当する技術的課題発生時には空中給油を開始しない、ないしは中止する等の手順を定める事で安全な任務遂行が可能って書いてあるよ(このサイトの過去記事にもこれは書いてあった話
後その記事とはさらに別のこのサイトのKC-46A関連の記事で書かれてたもう一つの事だけど、米軍もひとまず国内での訓練や演習の際にはKC-46Aでステルス機に空中給油をしてるので、仮にもしRVS2.0の開発が中止になったらそれはそれとして運用していくんじゃないかな
まぁステルス機は給油の際少々気を付けて運用しないと行かんかもだけど第4世代戦闘機はまだまだ日本も当面保有してるからね
では、夜間の給油という場面想定は無いんでしょうかね、あるいは照明を使うことで昼間よりもむしろ安全とかは
なんでも自動化、デジタル化すれば良いってもんでも無く、人間の眼の方が
性能が良ければ、ブーム操作にアナログ要素も残せばいいと思うのだが
先進的なのが信頼性が高く効率的ってもんでもないだろう。
従来通り機体後部に位置するブーマーが観察窓から目視で受油機を見ながら
ブームを給油口至近まで持っていて(夜間は暗視ゴーグル装着になるだろうが)
給油口と受油口のセンサーがお互いを認識出来たら、後はボタン押せば最終接続の
微調整はコンピューターがやってくれる目視併用の半自動式じゃいかんのだろうか
URL貼ったんだけど承認待ちになってるので待っててくれい
あるいは中国四国防衛局が発行してる資料のPDFを検索(「中国四国防衛局 KC-46A」とかで)して調べられるなら承認待たずとも確認できると思う
そうなった場合でも米軍はヘリや輸送機、A-10など非ステルス機を大量に保有しているため、KC-46はそれら専属のタンカーにするだけかと
やはり世界のエアバスは、強い
もうB-21でステルス給油機作ろうぜ。ノースロップなら任せられる。
サイズが大きければそれだけ使える空港も減るって事になるんだろうけど、分散配備って面から考えたらそれは大丈夫なんだろうか?
というか、GAOからの指摘でKC45がひっくり返ったのもそこら辺に原因が無かったっけ?
KDC-10と比べるとむしろ軽くなってる。
土壇場はエアバスでなくてボーイングですね。
エアバスは独壇場すね。