米議会は2024会計年度の国防支出を決める国防権限法(NDAA)を可決したが、上院案と下院案の内容は異なる点も多く、空軍にとって最も致命的なのは「KC-46Aの追加調達を禁止」する条項で、KC-46AとLMXTによるブリッジタンカーの入札が強制される点だ。
参考:What’s at Stake for Air Force as Senate and House Work Out Final 2024 Defense Bill
LMXTが勝利すれば「米空軍がKC-46Aを見放した」と映るためボーイングにとっては致命的な結果だ
米上院は先月27日に2024会計年度の国防権限法(NDAA)を可決、8月の夏休暇を終えて議会が再開されれば上院案と下院案のすり合わせ作業が本格化し、1本化されたNDAA最終案が大統領のデスクに届けられる予定だが、上院案と下院案の内容には異なる点も多いため「最終案がどこに着地するか」は誰にも分からない。
ただ下院案には空軍にとって不都合な条項が幾つも含まれており、これらの条項が最終案に生き残るとB-1Bは2027年まで、RQ-4は2029年まで、U-28は同等以上の能力を国防総省が特殊作戦軍に提供していると確認できるまで退役が禁止され、F-15C/DとF-15Eの削減も保持する機体の耐用年数、修理、アップグレードの詳細を議会に報告するまで、F-16も今後5年間に削減が検討されている数、この退役が戦闘機戦力に及ぼす影響などを報告するまで退役が禁止されることになる。
空軍にとって最も致命的な条項はKC-135退役に関連したもので、下院はNDAAの中で「不確かな次世代空中給油機(NGAS=以前はKC-Zと呼ばれていた)ではなく、KC-135の後継機(ブリッジタンカーもしくはKC-Yと呼ばれている)に関する現実的なスケジュールを優先しろ」と要求、さらにKC-46Aを予定されている179機を越えて調達することを禁止する条項や、KC-46Aのリモート・ビジョン・システム(RVS2.0)についても「実機への適応前に設計通り作動することを証明しろ」という条項が含まているため空軍とボーイングにとって大打撃だ。
議会は不具合や製造過程の品質問題でボーイングやKC-46Aを信用していないため再三「ブリッジタンカーの入札を実施しろ」と要求、空軍とボーイングは「まもなくRVS2.0搭載のKC-46Aが完成するのでブリッジタンカーは不要だ」と議会を説得したいのだが、RVS2.0は開発期間を短縮するため「RVS1.0の不具合を見逃した手順と同じ方法」で開発されており、サプライヤーの問題でRVS2.0のリリースが2024年3月から2025年10月にずれ込むことが確定。
ブリッジタンカーの入札に手を上げているロッキード・マーティンはA330MRTTの米空軍向けバージョン=LMXTを提案する見込みで、A330MRTTはF-22AやF-35Aといったステルス機への空中給油が承認(KC-46Aは機体表面を傷つける可能性があるためステルス機への空中給油は実戦任務以外に制限されている)されており、フライングブーム方式の自動空中給油システムも完成、現在はプローブ&ドローグ方式の自動空中給油システムを開発している最中だ。
要するにRVS2.0が完成してもKC-46AとLMXTでは入札時期に提示できる「信頼性」や「将来性」に大きな差があり、空軍はブリッジタンカー入札を回避するため「NGASの開発を加速してブリッジタンカーの調達数を半分(150機→75機)に減らす」と発表、LMXTの採算ラインは最小100機なので調達数が75機に削減されると「(KC-46Aに対して)競争力のある価格」を提示するのが難しく、この発表は誰がどう見ても「LMXT排除」を目的にしたものだ。
しかしKC-135退役に関連した条項が最終案に生き残ると空軍には「179機を越えるKC-46Aの調達禁止」「NGASではなくブリッジタンカー優先」が義務付けられるため、KC-46AとLMXTが競合する入札実施は確定的になり、LMXTが勝利すれば「米空軍がKC-46Aを見放した」と映るのは必然で、超過した開発コスト(70億ドル)を回収しなければならないボーイングにとっては致命的な結果だ。
因みに上院案も下院案も「2024年会計年度にA-10を42機退役させる」という空軍の計画について反対しておらず、2023会計年度のNDAAに含まれていた「F-22A Block20を退役を禁じた条項」の解除に反対している。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Joshua J. Seybert
そもそもkc-46を支持する理由が利権以外に思いつかない
現状lmxtに勝ってるところがなく、開発中の機能が出来上がっても、lmxtより格段に高性能なわけでもない
相当数のKC-46を導入済みなので同規模2機種を嫌がるのは普通の判断でしょう。
炎上っぷりからLMXTに変えろというのも当然ですけどね。
勝手なことを言いますが。
ボーイングは大変ですね。社内改革が必要では。
F-22A Block20の退役禁止は良いですね。機体寿命のある限りはコキ使いましょう。
元々、F35とは方向性の違う機体なのですから、改修の価値はあると思います。
A10は全部ウクライナにあげたら良いのでは、と思います。
使い潰しで良いので、最後の奉公をしてもらいましょう。
代わりにロシア軍に大量の爆弾をお見舞いしましょう。
地上戦を早く進めないとですね。
MDに汚染されて無理では?
kdc-10の分だけA330MRTTに更新して棲み分けるか
KC-46をシステムとかをA330MRTTキメラにした方が多分幸せになれそう
WIKIなどを読むと。
マクダネルダグラス社はF15を完成させたあたりから、
技術的な先進性を失ったと書いているところがありますね。
お金に走ったのでしょうか。
であれば、旧MD経営陣は要注意なのでしょうね。
国内で軍用機を製造できる会社を複数確保して競争原理を働かせたいのかもだけど、ここまでハンデつけるようなやり方してまで保護する必要あるのかなぁ…むしろ不健全ながん細胞化してしまわないだろうか。
仕方ないとはいえ本邦も不運だな。
国内でA330を運用していたらKC-46を採用する理由がない。
さすがにでかすぎるから
A310にしたいけどね。
日本は、ボーイング王国だからね。
ダークグレー?の塗装と相まって、KC-46の面構えは最高にかっこいいんだけどな
こういう問題の場合、軍事に詳しい人たちからは、「素人の議員が口を出して悪くした」と言われがちです。
日本でも日露戦争後に、「党利私益の議員が予算を削って兵隊さんたちが苦労した」と言われました。
しかし、平時に予算を削っていたために緊急時に総力戦で余力が出せる面もあります。
お金は限度がありますから、重点配分が大事です。その点、昭和の初めの日本の議員はもっと軍や世論から悪者にされても頑張って欲しかったと思います。
なぜなら、専門家より、素人の常識や予想の方が正しい「場合」もありますからね。特に長期的な戦略面では。
具体的に評価する知識がないので、一般論になりました。すみません。
ボーイング「できらぁっ!」
ボーイング「え!! 同じ開発予算でRVS2.0を?」
やっぱりノースロップが引き取れとか裏で言われてるんだろうか?その内、LMの社内コンペになりそう
経営陣きっちりと引導を渡さないとまた乗っ取りそう。
マクダネルダグラス成分だけ
ロシアと中国にプレゼントしようぜ
あれだけ有能だったボーイングをここまで腐らせるんだからすげえわ