米ロッキード・マーティンは多くの国が支持するLoyal Wingmanの概念を否定、多層レイヤーで構築されたDistributed Team(分散チーム)の概念を12日に発表した。
参考:Disruptive Distributed Teaming
ロッキード・マーティンが発表したDistributed TeamはLoyal Wingmanを支持する国のMUM-Tとは次元が異なる
ロッキード・マーティン(LM)は多くの国が支持する「無人戦闘機が有人戦闘機に比較的依存した方法で接続され機能するLoyal Wingman(忠実な僚機)の概念」を否定、多様な無人機が有人機に協調して機能する「多層レイヤーで構築されたDistributed Team(分散チーム)の概念」を発表して注目を集めている。
有人戦闘機に無人戦闘機を接続して制御を行い「有人・無人チーミング(MUM-T)」を成立させるLoyal Wingmanの概念では「再利用」を前提にした無人プラットホームが使用され、モジュール方式のコンポーネントを採用することで機能の拡張をMUM-Tにもたらすが、これを検討したLMは「Loyal Wingmanが予想されているような作戦効果を上げるとは思えない」という結論に至り、分散アーキテクチャに重点を置いたDistributed Teamの概念を採用したらしい。
つまりMUM-Tを成立させる無人プラットホームを役割や機能別に複数用意、巨大なネットワークに接続して制御することで「MUM-Tを構成する特定の無人戦闘機を有人戦闘機が制御する」という構図を拡張、より自由で柔軟性の高いMUM-Tを実現を目指すとLMは主張しており、12日に公開したDistributed TeamのPV内で4つの無人プラットホームを披露している。
多層レイヤーの最下層にあたるのがCommon Multi-Mission Truck(CMMT)と呼ばれる空中発射型のローコストUAVでデコイ、EW、メッシュセンサー、メッシュネットワークなどのプラットホームとして機能、CMMTの上位にあたるのがTactical Expendable-Combat Air Vehicle(TE-CAV)と呼ばれるローコストUCAVと機体上に大きなコブを背負った中型UAVで、TE-CAVはリモート・ウェポン・ステーションとして中型UAVはセンサーとネットワークノードとして機能するようだ。
多層レイヤーの最上層にあたるのがRQ-170のような全翼機のUAVで、最もリスクが高いA2/AD空域に侵入して情報・監視・偵察(ISR)任務を担当するようPV内に描かれており、レーダー反射断面積がBB弾並で幅広い帯域に効果的なステルスになると予想されている次世代戦闘機(NGAD)も最もリスクが高い空域で作動するよう描かれているが、同機が担当する役割についての描写はない。
恐らく上記だけの説明でLoyal WingmanとDistributed Teamの違いが伝わらないと思うので、最も砕いて表現するとオーストラリア空軍とボーイングが共同で開発を進めているMQ-28AはF-35AやF/A-18Fと有人・無人チーミング(MUM-T)を構成する予定だが、MQ-28Aは機首部分に搭載されるコンポーネントを交換することで複数の機能をMUM-Tにもたらすのが限界だ。
しかしLMが発表したDistributed Teamの概念では「任務や機能が異なるUAV」を幾らでもMUM-Tに追加できる柔軟性を備えており、機能を制限して損耗に耐えられる安価なUAV、性能を優先するため高価なUAVと言った感じで使い分けることで作戦全体に掛かるコストも制御できるが、Loyal Wingmanと異なりDistributed Teamはシステム全体が複雑なのがデメリットと言えるだろう。
因みにLMはDistributed Teamの最下層にあたるCMMTは3年~4年以内に運用可能で、他のUAVは2030年初頭に準備が整う可能性が高いと明かしており、米空軍が開発を進めているNGADのスケジュールと一致するが、米空軍は複数のUAVを同時並行で開発を進めているためDistributed Teamに追加できるUAVの種類はもっと多くなるだろう。
追記:Distributed Teamの概念を米空軍が採用するかは定かではない。
関連記事:オーストラリア、ロイヤル・ウィングマンをMQ-28A ゴーストバットと命名
※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin
おお凄い。と、記事を読んで思わせておいての最後の一文よ。
しかしこの概念の実証が成功したらしたで、予備機も含めた無人機の必要数と費用でアメリカと中国以外マネできなさそう
ロイヤルウィングマンもそうだけど、ロッキードマーティンの構想も「机上の空論」感が否めないんだよな。何というか先進性ばかりに偏重して地に足がついた感じがしない。ズムウォルト級に似た空気を感じる。
下手に肩肘張って構想を練るより、戦場で安価に手に入る大量のドローンにカメラなり爆弾なり取り付けて解き放つ方が合理的な気がする。使っていくうちに自ずと概念も固まっていくし。
戦わざるアメリカはいろんな意味で世界を先導できなくなっていくのかもしれない。
>戦場で安価に手に入る大量のドローンにカメラなり爆弾なり取り付けて解き放つ方が合理的な気がする。
対地での航空支援ならともかく、F-35が使用されるようなハイレベルな戦争における空戦および海戦で、
安価な無人機といってもそれなりの価格になると思いますよ。
まーたやってるよ、って思ってしまいます。F35とフリーダム級で懲りてないんですかね?いくら構想段階で素晴らしく理想的なこと豪語したところで実現・達成ができなければなんの意味もないのに。
誰かが用意してくれる完成品だけですむんなら、それでもいいけど。
革新を起こすなら挑戦せざるを得ないと思いますよ。
先進的過ぎて使い物にならなそう、という意見があるが、今のuavの進化スピードは飛行機黎明期の発展スピードを思わせるものがあり、ネットワーク化という所もディープラーニングや機械学習を行う事で以外に実現可能性は低くないのではないか、と思われる。
むしろこのような空戦が(群れで行う)ようになるとその群れをどうやって空戦空域まで運ぶのか、がネックになってくる気がします。
戦闘機のウェポンベイは非常に限られたものですし
既存の輸送機を武器キャリアに使う計画は進んでいるようですが、より高速でステルス性に少しは配慮した、
かつ高額すぎない新しい概念の機種、機体、が必要になってくるのではないかとも考えられます。
先進的過ぎて使い物にならなそう、という意見があるが、今のuavの進化スピードは飛行機黎明期の発展スピードを思わせるものがあり、ネットワーク化という所もディープラーニングや機械学習を行う事で以外に実現可能性は低くないのではないか、と思われる。
むしろこのような空戦が(群れで行う)ようになるとその群れをどうやって空戦空域まで運ぶのか、がネックになってくる気がします。
戦闘機のウェポンベイは非常に限られたものですし
既存の輸送機を武器キャリアに使う計画は進んでいるようですが、より高速でステルス性に少しは配慮した、
かつ高額すぎない新しい概念の機種、機体、が必要になってくるのではないかとも考えられます。
たぶんチーミングどうこうとかではなくて
無人戦闘機のみでの戦闘が中心になるのではないだろうか
ゲームの操作みたいに同じ部屋でチーミングするんだろう
記事中の参考リンク先(LM社サイト)を見て下さい。
(翻訳文)
>F-35アドバンテージ
>生存可能なF-35と生存可能な無人航空機(UAV)を提携することで、データから意思決定までのタイムラインを改善し、分散チームの有効範囲を拡大し、パイロットを危害の道から遠ざけることで、ミッションの成功が保証されます。
この無人機システムはF-35の情報収集能力とその範囲を補助拡張し、パイロットの生存率を向上させることで作戦を成功させると説明されています。
無人機が有人機にデータを送れるなら
無人機が司令部にデータを送ることも出来るはずで、戦場に人間がいる必要はない(いない方が良い)と思う
無人機の専業メーカーが有人機とのエアチーミングのシミュレーションしたら、
どんくさい人間に大量にデータ送りつけて判断仰いでたら人間はボトルネックでしかない、戦場に来ないでほしいというシナリオが出てくるんじゃないかな。
> ゲームの操作みたいに同じ部屋でチーミングするんだろう
部屋チーミング!!
エア・ドミネーションという目的を満足するアセットの方向性として、「ミサイルのような使い方ができる戦闘機(Royal wingman)」に対して「戦闘機のような長期の制空優位を提供できるミサイル」の概念が出てくるのは理解できます。最近また話題になってる対空型UAV(軽巡航ミサイルサイズで数時間から1日程度作戦地域に留まり敵を検出し次第ミサイルとして機能する)なんかはまさにこれですが、Distributed Teamは対空型UAVとRoyal wingmanの間のコンセプトなのかなという印象です。
「空軍力は伝統的な陸軍力に優越するが効果は一過性で戦場を長時間支配し続けられる訳では無い」「高性能なミサイルは伝統的な空軍力に優越するが効果は短時間で制空優位を決めるのは結局戦闘機である」という2つの命題の間を埋められる軍事技術はいずれどこかで誰かが実用化するでしょうが、それがどういう形で結実するのかは現時点では全く想像できなくて面白いですね。
なるほど、わからん!
PVには3つの運用例が示されています。
①航空侵攻作戦の前哨として、低価格UAV による敵SAMに対するデコイ役と電子妨害戦。
②高生残性の自律型ステルス無人機による敵SAM等の偵察とF-35への情報通信。
③F-35の前衛として、低価格UAV による敵航空機のアクティブ探知。
低価格UAVは目的に応じたカスタマイズが可能としています。NGADでも運用できる柔軟性と発展性があるシステムを目指していそうに思います。
英国のプロジェクト・モスキートにはLMが協力してたはずですから、先般の計画見直しにはこの構想の影響があるかもしれません。
ロイヤル・ウイングマンが空飛ぶウェポンベイ+機首機能拡張のみに対して、LMは複数の役割を複数の機体に分散して編隊を組むのがポイント、というところですね。
ハードポイントに積んでいたものや、AWACSのような高機能センサーを別のステルス無人機に載せて高度な戦術ネットワークを構築する事は今のトレンドと言えますが、戦闘機のミッションコンピュータやソフトウェアの負担をどのように解決するのか、課題はありそうです。
「イージスの父」ウェイン・マイヤー提督のようなプログラムマネージャーがいないと、実現は難しいかもです。
これはどこまでチーミングできるんだろうか。
F35と移動する機体は音速が出ないと話にならないけど、安価なUAVってどんな性能なの?
あと、低価格UAVもチーミング可能なら、攻撃目標近くにあらかじめ艤装商船を配置して、そこからTB3やスイッチブレードをわんさか放出してチーミングさせたら、相当な飽和剛撃になりそう。
しかし、一人のパイロットがどれくらいの子機をコントロール出来るのかな?しかも単座だし。
Royal Wingman じゃないぜ。
Loyal Wingman だぜ。
ハード的に別物の機体が増えるってのはメンテする人間が耐えられるのか?
作戦を行う上では最良かもしれんが、戦争をする上での最良とは言えないんじゃあないかな
話が専門的過ぎてわからんが
乱暴に言うといろんなUAVに戦術データリンク搭載しますという話なんか?
ロッキード・マーティンは、ベストセラーとなった有人機のF-35を中心に無人機のシリーズを揃えて、
F-35導入国に対して、自国のニーズに合った無人機を売り込もうとしている感じですかな。
良い悪いは別として、企業から提案してくれるのは、悪くないと思う。
日本の軍事産業に、そんな文化はあるのだろうか。
世界各国のロイヤルウイングマン構想が敵戦闘航空団との戦闘において優位に立つ事に主眼を置いてるのに対し、米国はそれだけではなく厳重に守られた敵防空システムを突破制圧する事も重要視している違いなんでしょうかね
米空軍で採用されるか未知数といっても、表に出てきているNGADの情報や運用構想と完全に一致するので、近いものが採用されるんじゃないですかね
機体外部の拡張兵装。
それを無人機とネットワークで行う。
現在の戦闘態勢を粒度を細かくした感じか。
管制の現地化