米国関連

ロシア国内で多発する爆発の正体、親ウクライナ派工作員による無人機攻撃

どうやらウクライナはロシア国内で親ウクライナ派工作員を養成することに成功、さらにウクライナからロシアに無人機を持ち込む密輸ルートも確立し、ロシア国内から無人機を飛ばして「謎の爆発」を引き起こしているらしい。

参考:Ukraine has cultivated sabotage agents inside Russia and is giving them drones to stage attacks, sources say

戦場の定義が変更されたためロシアが負担する戦争のコストは跳ね上がるだろう

ロシア国内では無人機による攻撃が相次いでおり、米政府関係者はCNNに対して「ウクライナはロシア国内の親ウクライナ派を工作員に仕立てることに成功し、ロシア人の協力者とともに破壊工作を実施するためのネットワークを作り上げた。ウクライナは無人機を分解してロシア国内に持ち込む密輸ルートを確立している。工作員は運び込まれた部品を組み立てて攻撃に使用している」と指摘、欧州の諜報機関も「広大なロシアとウクライナの国境地域は密輸にうってつけで現金が不思議な働きをする」と述べているのが興味深い。

出典:Telegram経由

この件に詳しいある関係者は「ロシア国内では昨年、石油や燃料の貯蔵施設、鉄道、入隊事務所、倉庫、パイプラインなど狙った謎の火災が頻発していたが、クレムリンの宮殿への攻撃を皮切りに攻撃頻度が増加しており、これはウクライナ人の数ヶ月間に渡る努力の集大成だ」と述べ、別の国防当局者も「大胆な計画の背後にはウクライナ国防省情報総局(HUR)のキリロ・ブダノフ少将が関与している」と明かしており、このブダノフ少将はロシアが最も警戒している人物の1人だ。

昨年8月、モスクワ近郊でプーチン大統領に影響を及ぼしたドゥーギン氏(国家主義思想家)の娘が自動車爆弾テロで殺害され、プーチン政権打倒を宣言した国民共和軍(National Republican Army)が犯行声明を発表したものの、米諜報機関は「ウクライナが作戦実施に許可を与えた」と断定、これを受けてバイデン政権はウクライナ側を秘密裏に叱責し「同様の行動を二度とするな」と警告した言われている。

出典:СВІТ НАВИВОРІТ ブダノフ情報総局長

ウクライナ軍の国外作戦はHURに権限があるため、ドゥーギン氏の娘に対する自動車爆弾テロにウクライナが関与していればブダノフ少将が計画を主導した可能性が高く、海外メディアの取材に「(自動車爆弾テロについて)言えることはロシア人を殺してきたというだけで、私はウクライナが勝利するまで世界中のどこででもロシア人を殺し続ける」と述べており、米政府の高官は表向き「ロシア国内への攻撃は戦いのエスカレーションを招く」と警告しているが、欧米の関係者は「賢い軍事的戦略だ」と考えているらしい。

フランス軍高官はCNNに「ロシア国内への攻撃は戦争の一部であり、無人機による攻撃はプーチンだけでなくロシア国民にメッセージを届ける良い方法で禁じ手ではない」と、英国防省も「ロシアの司令官はジレンマに直面している。親ウクライナのパルチザンや無人機の攻撃に対処するため国境地域の防衛を強化するか、反攻作戦に備えて占領地域の防衛を強化するかだ」と指摘、ウクライナ政府関係者と会談した米当局者も「無人機攻撃はロシアに自国の安全を心配させる効果的な方法なので今後も継続するだろう」と明かしており、ロシアにとっては想定外の事態だ。

出典:管理人作成

ロシアの特別軍事作戦は「ウクライナ領内で実施される国外での戦争」であり、戦術核兵器の使用を危惧する欧米諸国がロシアへの越境攻撃を容認するとは想定しておらず、この戦争における前線はヘルソン州、ザポリージャ州、ドネツク州、ルハンシク州、ハルキウ州にまたがる占領地がウクライナ支配地域と接する面=約800kmを指す言葉だったが、ウクライナにとっての前線はロシア、ベラルーシ、沿ドニエストルと接する国境地域も含まれるため、その長さは2,000kmを優に越える。

ささやかだったロシアに対するウクライナの越境攻撃も「一時的にロシア領が占領される」「何度もモスクワへの無人機侵入を許す」という事態に発展したため、ウクライナ軍が自衛目的で本格的に国境を越えてくる可能性を否定できなくなり、戦争は国外から国内に拡大し「700km以上の前線」を追加で守らなければならない格好だ。

出典:President of Russia

実際、ウクライナ軍がロシア領に自衛目的で入るかどうかは分からないが、もう国境地域に「龍の歯」と呼ばれる障害物を並べただけでは自国の安全を守れない=相応の戦力を貼り付けなければならず、戦場の定義が変更されたためロシアが負担する戦争のコストは跳ね上がるだろう。

関連記事:米国はウクライナ国防省情報総局を監視、ブダノフ少将の大胆な計画を警戒
関連記事:ウクライナ軍がロシアのクレムリン宮殿をドローン攻撃か、宮殿上空で爆発
関連記事:今度はイリスキーの石油精製施設が炎上、ウクライナ軍のドローン攻撃か
関連記事:今度はロシアがドローン攻撃に悩む番、2日連続でイリスキー石油精製施設が炎上
関連記事:ウクライナ軍の攻撃? 今度はクリミア大橋に近いロシア領の燃料タンクが炎上

 

※アイキャッチ画像の出典:FEDOROV

南ドネツクの戦い、ウクライナ軍が確保した拠点をロシア軍が奪還?前のページ

ノーバ・カホフカ水力発電所、損傷した構造体が水圧で決壊した可能性も次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    豪州の希望が叶う?現実味を帯びてきた「B-21レイダー」輸出の可能性

    オーストラリアが希望していたステルス爆撃機「B-21レイダー」導入がに…

  2. 米国関連

    B-21のプロトタイプは計7機? 米空軍長官が新たに5機のB-21を製造中だと発表

    ケンドール空軍長官は空軍協会主催のカンファレンスで「B-21のプロトタ…

  3. 米国関連

    久々の朗報、9年の時を経てロサンゼルス級原潜ボイシのオーバーホールを開始

    米海軍から久々の朗報が届いた。9年近くオーバーホールを待っていたロサン…

  4. 米国関連

    圧倒的なコスパを示すF-35A、スイスに次いでフィンランドでも他候補を圧倒か

    米国務省は9日、フィンランドの次期戦闘機HXプログラムに提案されてる米…

  5. 米国関連

    米空軍大佐、ウクライナ軍に必要なのは制空権の確保ではなく制空権の否定

    米空軍のブレマー大佐はF-16提供について「ウクライナ軍の作戦を複雑に…

  6. 米国関連

    迎撃コストの逆ザヤ解消を狙う米陸軍、1600万円以下の新型ミサイル試射に成功

    米陸軍戦闘能力開発司令部(CCDC)は10日、1キル15万ドル以下を実…

コメント

    • TA
    • 2023年 6月 06日

    以前BBCの記事にあった衛星写真情報見たらウクライナの東部南部よりロシア国境の方が防衛線が薄かった記憶
    なので一度ロシア国境超えてから東部に迂回包囲するのも良い手かも(HoI脳

    26
    • bbcorn22
    • 2023年 6月 07日

    これについてはロシアも頭が痛かろう。
    これからますます雲霞のごとくわいてくるドローンを相手にするしかない。
    金もかかるし精神衛生上全くよろしくない。
    モスクワ高級住宅街の不動産価格は40%以上の暴落。
    あちこち爆発炎上が続けば
    経済活動にも影響出るだろ。
    もうこんな大損するだけの侵略やめたほうがいいんじゃないの?

    33
      • 地球市民
      • 2023年 6月 07日

      今こそ特殊軍事作戦続けるべきでしょう。
      特高警察が太平洋戦争と表裏一体だったように、文化大革命の粛清がベトナム戦争支援と裏表だったように、プーチン政権を攻撃しウクライナに利するいかなる行いであろうとも今は売国行為として排除できる。きちんと警戒と粛清を行えば偉大なるロシア国家を強靭化できる。英米の煽動破壊工作から守れる。

    • K(大文字)
    • 2023年 6月 07日

    >親ウクライナのパルチザンや無人機の攻撃に対処するため国境地域の防衛を強化するか、反攻作戦に備えて占領地域の防衛を強化するかだ

    これ二者択一ではなく、国内でのサボタージュに対応するのは治安維持部隊、占領地域の防御を固めるのは連邦軍の分担と思うのだけど。
    そういやロシアくん、緒戦で舐めプした結果治安維持部隊を突出させて無駄に溶かしてたなぁ…まさかここに来てそれが響いているとか?

    20
    • ボリス
    • 2023年 6月 07日

    目には目を歯には歯を…
    一方的に相手を殴れると思ったロシアが殴り反されただけですので~まあ、とりあえず「元」の国境線まで軍を引き揚げれば、ウクライナも許してくれ…いえ、もう今更無理ですよね…モスクワ市民も相当数を道連れにしないと気が済まないかもしれませんね。

    24
    • ak
    • 2023年 6月 07日

    支配地域におけるパルチザンではなく、ロシア国内におけるテロ攻撃になるので、ロシア国内においてはシンパシーを得られず反感しか持たれないのでじきに干上がって行動出来なくなるんじゃないかと推測します。
    彼らは人民の海に隠れられるような代物では無いですから。

    少なくとも前回のモスクワみたいに住宅地に被害が出るようであれば、市民自警団レベルで組織が摘発されそうな気がしますけどねぇ。

    7
    • 月虹
    • 2023年 6月 07日

    現地の工作員を養成して破壊活動をする。CIAのやり方とそっくり。侵攻前後からCIAやSASのエージェントがウクライナに入ってゼレンスキー大統領の警護などをしていましたが諜報や情報戦のノウハウなどもウクライナ側に指導している様ですね。

    16
    • 通りすがりの動物号
    • 2023年 6月 07日

     ロシアの軍事支出はGDP比で3%と分析されているので、まだまだ経済的余力がありそう。適度な給料を設定すれば、国境警備隊や治安部隊に人が集まるでしょう(徴兵されるよりマシ)。
     問題は、そういう「国内の前線」に勤務した人たちが、そこで得た経験をどのように解釈して、家族や知人に広めるか。国営放送ぐらいしか情報源を持たない人たちが「国内前線」を体験したら、クレムリンに対する信頼度が強まりかねない。そういう人たちに向けた適切な情宣活動は何でしょうね? ウクライナ情報部は何か名案を持っているのかな。

    3
    • パセリ
    • 2023年 6月 07日

    ヨーロッパで最も危険な男かな?ブダノフ少将は
    しかし、ザルジニーやゼレンスキーに加え、優秀な人材が揃ってるウクライナは幸運に思う反面、ロシアの間の悪さにはつくづく同情する

    4
      •  
      • 2023年 6月 07日

      フランスの暴動くらいになったら感心するけど
      密輸の火力じゃスルーがあり得る
      まあまだまだ奥の手があるんでしょうけど

      2
    • 匿名
    • 2023年 6月 07日

    やっぱ急にロシア領攻撃増えだしたのは西側のオーケーが出てんのかな

    14
    • チェンバレン
    • 2023年 6月 07日

    こういう破壊工作は、タイミングと場所を選べる攻撃側が有利ですね

    3
    • 無能
    • 2023年 6月 07日

    喫煙所以外での喫煙は厳しく取り締まるべきじゃないですかね?
    ロシアに受動喫煙防止法みたいなものはあるんでしょうか?

    6
    • 58式素人
    • 2023年 6月 07日

    どうなのでしょう。
    ドローンによる攻撃ならば、表現は悪いですが、爆破をするとして、
    実際にその場所に実行者が行く必要がないので、比較的に”効率”が良いような。
    ”ドローンが国内にいっぱいあるであろう”日本も、他人事ではないですね。
    ロシアの反体制派の破壊の目標は、政権と密着した上層階級なのでしょうね、
    上層階級が武装をすれば、上下の対立を起こせるでしょう。
    ひょっとして、本当に革命が起こるのだろうか?。
    1917年に、極めて有能な”アフラナ”を頼りにしていたロシア皇帝は、
    結局、エカチェリンブルグのイパチェフ館地下で銃殺されています。

    3
    • Easy
    • 2023年 6月 07日

    これは西側諸国は今のうちは笑って眺めていられますが。
    早晩,このテロ手法は第三世界に幅広く輸出共有され。
    多種多様なインフラ攻撃テロに使われるようになりますよ。
    徘徊型弾薬をNYで使われることを想像してみて下さい。
    犯人は姿を隠したまま、映像を見ながら好きなターゲットに自由に攻撃をかけられます。しかも何発も繰り返し攻撃可能。
    ウクライナ戦争が終わってロシアが崩壊した後、この種の訓練を受けたテロリストが全世界にばら撒かれることになる、ところまでもはや既定路線ですね。

    2
      • 名無しさん
      • 2023年 6月 08日

      そうですね。
      この戦争が終わったら西側諸国にはドローンによる国内テロの対策を取る必要がありますね。
      そのためにもこの戦争で、ドローンによる国内攻撃について詳細なデータを取る必要があります。
      ロシアにはよい被験体となっていただきましょう。

      2
    • のー
    • 2023年 6月 07日

    NATOがロシアを恐れているのは、プーチンがブチ切れて核兵器を使わないか。ですが。
    この程度の越境では破滅覚悟での核使用は無いと、見透かされてしまったからですかね。
    ロシアが核兵器を使ったら、中国もインドからも見放されてしまい、ロシアは破滅確定です。

    2
    • たぬき
    • 2023年 6月 07日

    空飛ぶタバコのお届けだ!

    2
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  2. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  3. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  4. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  5. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
PAGE TOP