米空軍のデビッド・ナホム中将は「高高度無人偵察機RQ-4/Block30や武装可能なMQ-9は中国との戦いでは生き残れない」と上院歳出委員会で訴え、2022年度の空軍予算案で情報収集・監視・偵察(ISR)戦力の整理を行う計画に理解を求めた。
参考:To afford next-gen combat aircraft, the US Air Force will make cuts to ISR inventory
米空軍はRQ-4という非ステルスのプラットフォームに見切りをつけており、在庫に残すBlock40もE-8のギャップを埋める役割しか期待されてない
米空軍は複数保有する情報収集・監視・偵察(ISR)戦力を整理して将来戦力への投資資金を捻出するためRQ-4(Block20/Block30)の退役やMQ-9の調達打ち切りを提案、最終的に最も新しいRQ-4/Block40と運用コスト安価なU-2だけを残す計画を進めようとしていたが議会が「ISRの包括的な近代化計画を提出するまでBlock20とBlock30の退役を認めない=要するにBlock20とBlock30が退役してもISRで問題がないことを証明しろという意味」と主張して計画が頓挫してしまった。
しかし今年5月に議会へ提出した書面の中で「空軍は引き続きRQ-4やMQ-9に投資されている資金を他のISR戦力に回すため同機の廃止や調達打ち切りを引き続き推進する」と明かしたが、議会は空軍が代替ISR戦力を本当に確保しているのか懐疑的で、特にMQ-9については影響を受ける議員(同社の製造拠点、サプライヤー、同機を運用する基地など選挙区に抱えた議員のこと)も複数いるため空軍の計画通り事が進むのかはまだ分からない。
そのため空軍で将来計画の立案や各プログラム分析・評価を担当するデビッド・ナホム中将が上院歳出委員会に出席して「高高度無人偵察機RQ-4/Block30や武装可能なMQ-9は中国との戦いでは生き残れない」と語り、情報収集・監視・偵察(ISR)戦力の整理を行う必要性を再び訴えた。
ナホム中将は「ISR戦力は脅威が存在する空域での生存性、持続性、接続性が不可欠でRQ-4やMQ-9は中国の脅威を想定して設計されていない」と主張、さらに空軍の在庫に残すRQ-4/Block40(地上監視に対応したタイプ)については「老朽化したE-8 JSTARSの信頼性が低下した際のギャップを埋めるためBlock40は必要不可欠で、今後6~8年の間は空軍にとって非常に重要なプラットフォームになる」と説明したが、調達を打ち切るMQ-9については「中東やアフガニスタンでのプレゼンス縮小に伴い近接航空支援に従事しているMQ-9部隊を縮小するが、空軍が保有する約300機のMQ-9や人員を現在のレベルを維持する」と述べて影響を受ける議員に一定の配慮を見せている。
今回の証言でハッキリしたのは米空軍はRQ-4という非ステルスのプラットフォームに見切りをつけているという点で、空軍の在庫に残すRQ-4/Block40に期待している役割も敵空域に高高度から接近して情報収集・監視・偵察を行うという本来役割ではなく老朽化したE-8の保険で、これまでRQ-4が担ってきた役割は機密のベールに包まれているステルス無人偵察機「RQ-180(既に運用体制に入ったと言われている)」に引き継がれているのだろう。
因みに空軍はE-8の正当な後継機を用意しないまま廃止することを検討中で、地上監視機能は無人機や有人機のセンサーを活用した分散型に移行して地上部隊の指揮・管制はABMS(高度戦闘管理システム)経由で実施することを考えているのだが、議会はE-8の退役を承認する条件に「ABMSの能力を実証」を挙げているため同機の耐用年数が尽きる10年以内にABMSの実用化に目処をつけないとE-8のアップグレードを議会が要求してくる可能性が非常に高い。
参考:House Wants to Keep JSTARS Flying for Foreseeable Future
勿論、米空軍はABMSとE-8のアップグレードの両方に投資するのは資金の無駄遣いなので何としても避けたいところだろう。
関連記事:レガシーなMQ-9は不要と主張する米空軍、来年以降の調達中止を議会に提案
関連記事:米空軍がRQ-4廃止を引き続き推進すると表明、日本のRQ-4導入に悪影響を及ぼす可能も
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Senior Airman Juan Torres
自衛隊で本格運用する前から産廃扱いとはひどすぎw
運用ノウハウ習得用と割り切って消耗品が高くつくようになったら
ドイツみたいに展示用に飾っておくのが一番コストがかからないのかも
他国でも運用するし米軍と違って少数機なのでスケールメリットが元からないとかあるから維持補修ができる範囲なら問題はない と思いたい
買っちゃった以上使えるだけ使って維持不可能になる前に代替手段といけばいいのですが
運用ノウハウも何も、所有は自衛隊だが画像処理や衛星の保有は米国なのだから、出来上がって初飛行まで済ましてしまっているのだからキャンセルはできないものとしても、日本に来る前に砂漠に送った方が最もコストがかからないだろう
問題は財務省が激おこカムチャッカファイヤー確定なのと、次の無人偵察機策定までの数年間と納入までの数年間でまた時代遅れになるということだ
兵器と戦場の進化が早い、諦めて日本もスピード対応をしなければならない、と言えば良い
グローバルホークは6〜8年は大事って書いてある。
9年後に42機のグローバルホークが一斉に退役したら、それはそれで部品が取れそう。
(9年後にF-15IIを含む非ステルス作戦機の一斉退役計画自体、実行できないと思うけど)
添削したデータしか受け取れない日本にとってはさらに産廃なんだよな
人民解放軍との正面衝突の話と、平時の哨戒の話は全く別なんで的外れも良いとこですね
そう。米軍は中国領に突っ込むのにグローバルホークは不向きと言ってんだよね。
大型で高性能な無人機は言うほど有用ではない気がする、コストが上がりすぎて有人機でいいんじゃないかと考えるようになる。
ええと、E-8とは・・・
なるほど。
E-8 J-STARS(Joint Surveillance and Target Attack Radar System ジョイントスターズ)は、アメリカ空軍が保有する軍用機の一種。レーダーで敵地上部隊を探知、識別し、味方地上部隊を指揮・管制する。対地版早期警戒管制機(AWACS機)とも呼べる機体である。
by Wikipedia
わざわざwikipediaのコピペなんかしなくても自分で調べるんで大丈夫
そういう人しかここには辿り着かないはず
賛否はあるでしょうが、防衛当局と議会で具体的な議論ができるのは良いですね。
日本だと隠す防衛省vsとにかく反対の野党になって、議論以前に頓挫するかな。
内容によるでしょ。
既存無人機を含む軍装備の廃棄・取得計画については純粋に米国内の問題なんで、国内法に基く議論があって当然です。
その際、代替として開発中の将来装備に関し詳細を公にしないのも国内法が根拠です。専門家ではないので具体的には示せませんが。
日本が米製装備を導入するに当り交渉内容を当面オープンにできないのは外交秘密等が絡むからです。
イージスアショアの導入計画で設置場所の議論において根拠資料を公開したのは外交交渉が絡まないからです。その結果初歩的チョンボが明らかになり今回は計画の白紙化・再検討に繋がったわけですが。
防衛省も何でも隠すわけではありません。野党は政局化したいのがメインの動機なので、質問の根拠が報道記事であったり底が浅いので本質的な議論にはなり難い。
米軍が早期退役させる分を格安で部品取り機として譲ってもらえないものなの?
むしろ当然の流れとしてあるでしょうね
アメリカからしたら廃棄するより売ったほうが良いし、日本をはじめとした運用国からしたら中古価格で早期退役した機体の部品を買えるし
ロシアは経済ヤバ過ぎてもう装備更新について来れないだろうな
問題は中国か
チェックメイトか。
グローバルホークの導入を推進していた者は切腹してください。
自国制空権ないでの監視任務なら十分じゃない?
この記事は敵の制空権下での偵察任務に、ステルスがないと対応できないって話でしょ。
素人の意見として間違いを指摘して欲しい。
①『RQ-4のデータを米国経由でしか受け取れない』の信頼出来るソースが欲しい。
いちいち自前の通信環境圧迫するのと日本が野放図に飛ばして垂れ流すデータ価値を判断するアナリスト貼り付けるのって普通に米国のリソース無駄遣いじゃないか?これが米国経由で衛星画像貰うって言うなら、まだ数枚なりの写真確認するだけでまだリソースとしては余裕があると思う。
そもそも衛星経由うんぬんの話は空自がグロホ用のKuバンド衛星通信中継器の利用契約で自国内で済んだ話じゃないの?
②部品高騰の話
そもそも継続して使用される予定のMQ-4との違いは搭載センサーだけの話なので、重視すべきはセンサー周りの部品だけで機体のパーツに関して言うならそれほどの心配すべき話ではないのでは?
③米軍では産廃扱いだが
これに関しては米軍の環境がそれなりに恵まれた結果の不要論であって、それを自衛隊にそのまま当てはめるべきかの話。RF-4が近年まで現役だったんだから速度以外は素直に質が向上したとは思う。戦闘にはやや不向きだろうが国内災害に関しては墜落の心配はあっても撃墜の心配はない。うまくタイミングが合うなら偵察にわざわざF-35使う必要もなくなるだろう。後は通常の巡航ミサイル探知だって出来るんだし、日本の防空圏内での運用に関しては言うほど産廃扱いにならないんじゃないか?
①についてですが、私も同様の疑問を持ってますのでソースを知りたいです。
ソース元は忘れましたが過去に目にした記事では、日本保有のグローバルホークで取得するデータは防衛省情報本部が分析し、米軍と共有するとなっていました。
生データをリアルタイムで提供するかもしれませんが、その分析結果は日米で共有するんだろうと思っています。
②についてはほぼ同意見です。
③については、日本周辺重点地域において自前の「平時の常態監視」能力を獲得する目的で、民主党政権が導入を決め自民党政権が導入を急いだ最適装備がMQ-4Block30だったのだと認識していました。
ここにきて米軍がBlock30を退役させることは導入を決めた当時予測不可能ですし、防衛省の想定する運用条件では産廃どころか現在取得可能な有益装備と考えています。
①については正直知らないのでパス
②日本が導入するBlock30iを先に導入した韓国空軍がすでに保守・運用コストの上昇問題に直面して、根本的な問題の解消はRQ-4を導入する国が増えて規模が拡大しない限り厳しいと言っている。ここの過去記事を漁ると出てくるよ。
③RQ-4の導入経緯はよく知らないけど、自衛隊の導入する装備なのに有事を想定してなくて「平時の常態監視」という設定自体が理解できない。米軍がBlock30を退役させるなんて当時想定できなかったというのは同意見だけだけど、防衛省の想定する運用条件では産廃どころか現在取得可能な有益装備というのはどうかな?
現実的には保守・運用コストが想定よりも高騰する可能性が大で、類似の能力を提供する無人偵察機も増えきているのに2015年頃に導入を決定してから、状況が変化しているにも関わらず計画を一度も見直さなかったのはいただけない。
選択肢がRQ-4しかなかったんじゃなくて、端からRQ-4以外の検討をしてなくて一度決定したら状況が変化してもお構いなしで決定を維持するやり方に問題があると思うよ。
RQ-4が産廃とまでは思わないが、想定よりもまずい状況なのは間違いない。
ツリ主だが、②部品高騰の話 に関しては機体もレーダー搭載の為に弄っている感じだし悪条件にも強い構成になっているので大分別物になっている勘違いでした。
>自衛隊の導入する装備なのに有事を想定し
誰も有事を考えていないとは書いていませんよ、、日本の防空圏内での運用に関しては問題ないって書いてあるので。まさか北や中国の領空を堂々と侵して偵察出来るとか常識的に考えてあり得ないでしょう。公式の見解でさえ日本の領空内とか運用を想定して日本全土をカバーするのに3機必要ってそろばんはじいているんですから。すでに書いたとおり巡航ミサイルが探知出来るならヘリでも探知出来るだろうし、離島に上陸された場合でも近くに敵艦が居ない限りは普通に偵察活動に使えるでしょう。
>端からRQ-4以外の検討をしてなくて
だとするとどんな選択肢があったかって提示しないと政府も自衛隊の無能を笑えないのでは?RQ-4並の高度とスピードで運用出来る機体、搭載するセンサー類とかを同等レベルに考えたら選択肢なんてそもそも無いのでは?イスラエルのヘロンあたりは近いようには思えるが速度が遅い分は機数でカバーとかだと、数が必要で安くなるのかってのはある。日本の国土って結構広いからある程度スピード会った方が良いと思うんだが。代替品であるRQ-180なんて輸出自体やるにしてもステルス絡んでいるからあんまり期待持てないと思うんだが。
米軍は金がある方(世界的に見て)だからいいけど、こういう悪いとわかったら直ぐにやめるのってどうかと思う。
RQ-4の全ての機能が全く役に立たないわけじゃないんだから、ある程度の数量(当初予定よりは減らして)運用して、
不安がある分は補完する機能のある兵器を追加すればいいんじゃない。
こんなやり方だと、開発費が回収できず、フィードバックもできないんじゃないのか、と個人的には思う。
米海軍だと、LSCとかも失敗だけど、全く使い道ないこともないんじゃない?そもそも艦艇足りてないのにね。
欧米だと、こういう発想が普通なのかな?自分は日本人だから「もったいない」っ思ってしまう。