米国関連

ソースコード提供拒否か? 米陸軍、イスラエル製防空システム「アイアンドーム」調達を中止

米陸軍はイスラエルが開発した防空システム「アイアンドーム」調達をこれ以上は行わない=追加調達計画を破棄したことを明らかにした。

参考:U.S. Army Scraps $1 Billion Iron Dome Purchase Plan After Concerns Over Performance Limitations

イスラエル側が米国にアイアンドームのソースコード提供を拒否したため調達中止?

米陸軍はロケット弾や無人機等の脅威に対抗するための防空システムを探しており、昨年幾つかのシステムをニューメキシコ州ホワイトサンズ・ミサイル実験場でテストした結果、議会は米陸軍にイスラエルが開発した防空システム「アイアンドーム」調達を命じた。

そのため米陸軍はアイアンドームを2セット購入して運用テスト行っていたが最近になって突然、アイアンドームの追加調達をこれ以上行わない=中止すると明らかにした。

米陸軍は調達したアイアンドームを単体で運用するのではなく、あらゆるセンサーを統合して管理する「CAC2S(Common Aviation Command&Control System)」に接続して運用していたが、イスラエル側がソースコード提供を拒否したため統合ミサイル防衛システム「IBCS(Integrated Air and Missile Defense Battle Command System)」への接続が難しくなり相互運用性が確保出来ないためだと言っている。

なぜイスラエル側がソースコード提供を拒否したのは明らかになっていないが、イスラエルはアイアンドームと米国製の防空システムを統合して運用しているため技術的な問題ではないのは間違いない。

さらにアイアンドームは巡航ミサイルを迎撃することができる能力があると言われているが、米陸軍はイスラエルに対し「アイアンドームが巡航ミサイルを迎撃できる証拠を見せて欲しい=データを見せろ」と要求したが、これも拒否されたためアイアンドームの性能不信が米陸軍の中で高まったことも調達中止の要因と言える。

ただ、これはアイアンドームを調達したくない米陸軍の詭弁だという見た方もある。

そもそも米陸軍はロケット弾、迫撃砲弾、砲弾、無人機、巡航ミサイル等の脅威に対抗できる「機動性」を備えた独自のシステムを開発していたのだが、議会は暫定的に米陸軍に対しイスラエルが開発した防空システム「アイアンドーム」調達を命じたため開発中断を余儀なくされた。

アイアンドームはイスラエルの都市を守るため半永久的固定運用することを前提に設計されているため、海外展開が前提の米陸軍が使用するには機動性が足りないと言っていたにも関わらず、議会が購入を「義務」付けたため仕方なく購入したというのが本音で、議会に対しアイアンドーム調達を中止するための理由を探していたとも受け取れる。

結局、米陸軍は議会が課した義務(アイアンドーム2セット調達)は果たしたので適当な理由をつけてアイアンドームの追加調達を中止に追い込み、中断していた独自システムの開発を再開させるが狙いなのだろう。

 

※アイキャッチ画像の出典:Israel Defense Forces / CC BY-SA 3.0

米空軍、空中給油任務を民間に解放か? 民間軍事会社も空中給油機KC-135を購入し準備万端前のページ

完成した機体の引き渡しはいつ? 韓国空軍の戦闘機KF-16アップグレード作業に遅れ発生か次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    ロッキード・マーティンに対する最後通告? 米空軍は今後5年間でF-35Aの調達数を10%削減予定

    前回の記事でも少し触れたが、米空軍はF-35Aの調達数を今後5年間で1…

  2. 米国関連

    GA-ASIが無人戦闘機「Gambit」シリーズを発表、共通コア採用が目玉

    米GA-ASIは共通コアを基づいた設計の無人戦闘機「Gambit(ガン…

  3. 米国関連

    サンタはソリではなくC-130でやって来る、米空軍が恒例のクリスマス・ドロップ作戦を実施

    米空軍は世界で最も遠い南太平洋上に点在する55以上の離島に物資を届ける…

  4. 米国関連

    130億ドルの価値を示せるか? 順調なら2023年頃に空母「ジェラルド・R・フォード」戦力化

    海軍長官代理のトーマス・モドリー氏は6日、動力部の欠陥を解消し海へ戻っ…

  5. 米国関連

    米議会予算局、財政赤字削減のためF-35導入中止やF-22退役を提案

    米議会予算局(CBO)は今月10日、財政赤字を削減のため非常に大胆な国…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 3月 09日

    アイアンドームそのものは優秀なシステムだけど、イスラエル重視のトランプ横やりに軍部は不満なんだなと

      • 匿名
      • 2020年 3月 09日

      スポンサー様から言われたから使ってみた。それで義理は果たしたと言う事でしょーね。
      実際、軍としては固定式の近距離防空システムより機動性のある物のほうが優先されると思うし。

        • 匿名
        • 2020年 3月 09日

        結局どこも自国製品でかつ自分が主体の装備が欲しいのに政治に邪魔され、今それを改めている場面

    • 匿名
    • 2020年 3月 09日

    強力な情報機関で軍事技術の隠れたパクり国家で有名だからソースコードの拒否かと思ってしまった。

    • 匿名
    • 2020年 3月 09日

    名前はよく聞くけどよく知らなかったので。
    wikiではこの辺りが絡む内容でしょうか。

    資金源としてイスラエルの国家予算以外に、アメリカ合衆国からの出資が得られている。これは、アイアンドームの開発に当たって、アメリカ合衆国が協力した事に対する適切な権利を獲得するための物でもあり、2011年度には2億500万ドルが提供され、2012年4月には、2015年までの間に6億8,000万ドルが拠出予定とされた。2011年度の資金は、最初の2個中隊の調達資金となっており、2012年度以降の資金は4個中隊の資金となる見込みである。

    指揮ユニット(BMC:Battle Management & Control)、レーダー、ミサイルランチャーによって構成され、いずれも牽引により移動が可能となるシステムである。

    2011年8月16日、レイセオンがラファエルと共にアメリカ合衆国での営業を開始、自社のCounter-RAMとのシームレスな統合が可能であるとした。アメリカ合衆国は、海外派兵時に拠点をロケット弾から防衛する目的で興味を持ったとされている。

    • 匿名
    • 2020年 3月 09日

    二人が入り 出るのは一人

    • 匿名
    • 2020年 3月 09日


    • 匿名
    • 2020年 3月 10日

    アイアンドームって優秀なの?
    イスラエルは射程が足りない(ゲリラ側のミサイルの能力があがった)とかで、別システムを開発中
    公開されてる命中率はターゲットとして選んだミサイルについてだけ
    カバー率?(例えば、20発撃ち込まれた場合に何発を迎撃できたのか?)は公開されていない

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  2. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  3. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  4. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  5. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
PAGE TOP