米国関連

現代重工業が米造船所と提携、米海軍・沿岸警備隊向け艦艇建造・MRO事業に進出

韓国の現代重工業は24日「米フィリー造船所と米海軍・沿岸警備隊向け艦艇建造とMRO事業に関する協定を締結した」「今回の協定で世界最大の米防衛市場攻略に拍車がかかる」と発表、Naval Newsも「現代重工業は米国市場参入に向けて前進した」と報じている。

参考:HD현대중공업, 세계 최대 미국 방산 시장 공략 박차
参考:South Korea’s HD HHI Progresses Towards US Defense Market Entry

最近の韓国勢の国際的な動きは本当に慌ただしい

海外の防衛産業企業が「7,000億ドル以上」とも言われる米国市場に参入するには「現地化」が必須で、欧州企業だけでなくアジア・オセアニア企業も「現地企業の買収」もしくは「合弁企業の設立」で米国進出を図っており、オーストラリアのAustalも「Austal UAS」を設立してインディペンデンス級沿海域戦闘艦やスピアヘッド級遠征高速輸送艦の建造、バージニア級原潜のコンポーネント製造を受注、2021年に米国進出を果たしたシンガポールのSTエンジニアリングも民間機や軍用機の航空機整備拠点の運営、沿岸警備隊向けの艦艇建造、米海軍の艦艇補修事業などを受注して20億ドル以上の売上を上げている。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Sean Lynch/Released

Hanwha Oceaは国際的な海軍艦艇向けMRO事業の需要が高まると予想して「米造船企業の買収を進めている」と明かし、米Maritime Executiveも「Hanwha Oceaがフィリー造船所の買収に動いている」と報じていたが、Naval Newsは24日「現代重工業とフィリー造船所は米海軍や沿岸警備隊向けのMRO事業に関する協定を締結した」「現代重工業は米国市場参入に向けて前進した」と報じた。

現代重工業はプレスリリースの中で「2005年から商用船の設計及び資材の提供でフィリー造船所と協力関係を続けてきたが、今回の協定によって協力関係を米海軍、沿岸警備隊、連邦海事局の艦艇や官公船まで拡大させる。現代重工業は事業拡大を推進しているフィリー造船所に艦艇·官公船設計及び資材パッケージ提供などの支援を行う」「今回の協定によって世界最大の米防衛市場攻略に拍車がかかる」と言及。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 1st Class William Spears フィリー造船所を視察するフランケッティ海軍作戦部長

同社の特殊船事業部を率いるチュ・ウォンホ代表も「米企業との艦艇·官公船建造及びMRO事業を通じてクローバル市場における当社の影響力を高めていく」と、フィリー造船所側も「両社は積み上げてきた相互信頼を土台に政府プログラムでも協力を模索する」と述べている。

因みに現代重工業はオーストラリア海軍の汎用フリゲート受注戦に向けてGE Aerospaceと、カナダ海軍の潜水艦受注戦に向けてL3Harrisと、米防衛市場を見据えた武装可能な水上無人艇開発でPalantirと、米国、韓国、同盟国向け自立型海軍システムの設計と製造でAndurilと提携を発表したばかりで、Hanwhaも米国防総省のプログラムに「元請け」として参加する資格をもつ豪Austal買収に動いており、韓国勢の国際的な動きは本当に慌ただしい。

関連記事:Andurilと現代重工業が提携、自立型海軍システムの設計と製造で協力
関連記事:現代重工業がGE AerospaceやL3Harrisと提携、豪海軍や加海軍の受注戦で協力
関連記事:韓国のHanwha、米軍プログラムの元請け参加が可能なAustal買収に動く
関連記事:造船への投資、米海軍長官がハンファオーシャンと現代重工業に米国進出を促す
関連記事:韓国のハンファオーシャン、米海軍需要を獲得するため米造船企業を買収か
関連記事:韓国企業が海軍艦艇向けのMRO事業に本腰、潜在的な顧客に米海軍が浮上

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy Photo by Hendrick L. Dickson/Released

米海軍長官は艦艇建造に海外の造船所活用を希望、米造船業界は反対前のページ

英陸軍の次期自走砲、スナク首相がベルリンでRCH155調達を発表次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    米空軍、11月1日から沖縄に駐留するF-15C/Dの本土撤退を開始

    沖縄に配備されている米空軍のF-15C/DについてFT紙は「退役するた…

  2. 米国関連

    LRDR完成が新型コロナの影響で再び遅延、日本も採用の可能性が高い「SPY-7」に影響も?

    日本のイージス・システム搭載艦に採用するかもしれないロッキード・マーテ…

  3. 米国関連

    ロッキード・マーティン、2023年までに同盟国分を含むF-35の運用コスト10%削減を約束

    ロッキード・マーティンは2023年度までにF-35の運用コストを3万ド…

  4. 米国関連

    再び流出したF-35C事故動画、機密性の高くない情報は隠すより公開すべき

    米メディアもF-35Cが空母着艦に失敗した瞬間を捉えた動画流出を取り上…

  5. 米国関連

    米海軍、設計上の欠陥を理由にフリーダム級沿海域戦闘艦の受け入れを停止

    米海軍は設計上の欠陥を理由にロッキード・マーチンが建造しているフリーダ…

  6. 米国関連

    ウクライナの精鋭、失敗から学んだロシア軍は手強く困難な相手に豹変した

    ロシア軍と戦うウクライナの特殊部隊は「侵攻初期なら比較的簡単だった作戦…

コメント

    • たむごん
    • 2024年 4月 24日

    韓国の軍事産業は、海外市場を獲得するために、本当に積極的ですね。

    30万t級のタンカー・大型貨物船などを、連続で建造している訳ですから、資材の調達ノウハウ・工程管理など、コストカットに生かせそうです。

    原子力空母・強襲揚陸艦などを除けば、彼らにとってはやりやすいのかもしれませんね。

    13
    • 名無し
    • 2024年 4月 24日

    マジか、韓国のスピード感ヤバ過ぎん?
    アメリカの造船業界に関する記事ってつい最近出始めたと思ってたのにもう業務提携したんか

    27
      • あまつ
      • 2024年 4月 25日

      結構焦ってるのかもね。
      先の選挙で与党大敗、反米野党大勝利でユン政権は残り3年もあるのに早くもレイムダック状態。
      このままいけば次期政権もムンジェイン路線に逆戻りでアメリカと対立する可能性大・・・となれば今のうちにハブられない状態にまで持っていかねば未来は無い、と考えてるかも。
      あと、このサイトでは韓国軍事産業の景気良い話が並んでるけど今韓国は不況の真っ只中で今まで国家経済を牽引してた電子産業が青息吐息な上に出生率0.7という驚くべき数字を叩き出して今後の国力衰退は不可避って状態になってる。
      このまま行くと民間の基盤産業の衰退で軍事部門も成長出来なくなる可能性があるが、そうなる前にアメリカ市場に食い込んで確たる地位を築いておきたいのかも知れない。

      35
        • 戦略眼
        • 2024年 4月 25日

        後10年ほどで韓国も人手不足で立ち行かなくなる。

        7
          • dhc
          • 2024年 4月 25日

          日本人が韓国に出稼ぎに行けばよい

          7
      • 名無し三等兵
      • 2024年 4月 26日

      後進が先進に追いつくには、こう言うスピード感とチャンスに食らいつく
      ガッツと、ハングリー精神が無ければ到底成果は出せません
      防衛産業に輸出で活路を見いだそうとする日本政府の旗振りに欠ける点は
      まさにここです。

      5
    • Easy
    • 2024年 4月 24日

    まさか韓国と北朝鮮が仲良く並んでウクライナ戦争特需の恩恵に与れる日が来るとは・・・
    朝鮮戦争で国土を荒廃させた両国が、今度は戦争の特需で潤う側に。歴史は繰り返すが、参加者が必ずしも前回と同じ役割とは限らない、というのが一つの真理ですね。

    31
    • 気ヴォ鳥栖の新人教師
    • 2024年 4月 25日

    艦船の建造なら、日本勢も頑張ってほしいところ…

    12
      • 戦略眼
      • 2024年 4月 25日

      人手不足だからなあ。

      3
    • HEAT信奉者
    • 2024年 4月 25日

    クッッッッッッッッソ紛らわしいけどフィラデルフィア海軍造船所の跡地の一角で営業してるフィラデルフィア造船所(ノルウェー資本)と覚書交わしたのか

    17
      • 豆板醤
      • 2024年 4月 25日

      そうみたい
      実績的には艦艇作ったこと無さそうだから提携するのかも
      リンク

    • DEEPBLUE
    • 2024年 4月 25日

    このペースだと数年後にポスコがUSスチールをシャンシャンで買収してるかも知れませんね。

    6
    •  さ
    • 2024年 4月 25日

    これって、韓国内で建造するのでなく、アメリカ国内で建造するって事なのか…?

    2
      • jimama
      • 2024年 4月 25日

      記事をそのまま解釈するとそういうことですね
      多分設計と資材の提供、場合によってはドックの上物の更新は韓国が、実際の組み立てはアメリカでということかと
      前のほうの記事で潜水艦とか空母その他が資材の到着遅れやら設計のまずさ(トイレとか)が原因で大幅遅れとかやらかしてるから
      そのへんを現代に任せるということかなと
      ・・・割と肝になるとこ他国企業に任せようとか米海軍の

      4
        • jimama
        • 2024年 4月 25日

        途中送信してまった
        米海軍の自国の船舶産業への不信感て相当なものがあるのでは

        7
    • 774
    • 2024年 4月 28日

    直近で韓国関連のこういった記事は多く取り上げられているのに対して他のサイトで取り上げられている日本関連の記事を此方でどのように取り上げられているか興味深く拝見しに来ますが全然取り上げられてなく残念でなりません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  2. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  3. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  4. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  5. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
PAGE TOP