米海軍は開発資金を要求せずレールガン開発終了を議会に提案していたが、バイデン大統領が27日に署名したNDAAの最終バージョンにはレールガン・プログラムへの資金が盛り込まれていることが確認された。
参考:Congress Wants Answers On The Railgun It Just Funded Even Though The Navy No Longer Wants It
レールガン・プログラムへの資金供給目的は技術開発ではなく達成されたレールガン関連技術と知識を文書化して保存するため
米海軍は実用化に向けて10年以上も研究・開発に取り組んできたレールガン・プログラムへの資金を2022会計年度予算案(国防権限法/NDAA)の中で要求しない=つまりレールガン開発への取り組みを正式に終了させることを議会に提案していたのだが、バイデン大統領が27日に署名したNDAAの最終バージョンには海軍が望んでいないレールガン・プログラムへの資金が盛り込まれていることが確認された。
ただし議会がレールガン・プログラムに提供する資金は2,950万ドル/約33億円なので米メディアは「実質的にプログラムを前進させるには不十分な額」と指摘しており、下院軍事委員会も「レールガン・プログラムに海軍に累計幾ら投資したのか、実際の艦艇にレールガンして運用するために足りないものは何なのかをNDAA成立から90日以内に報告せよ」と命じているため、レールガン・プログラムの現状を一度整理して正式に終了させるのかプログラムの内容を再構築して再び推進するのかを検討するつもりだ。
その証拠にNDAAに記載されたレールガン・プログラムへの資金供給目的は「技術開発」ではなく「達成されたレールガン関連技術と知識を文書化して保存するため」になっているので、恐らく海軍だけでなく議会もレールガン・プログラムに見切りつけている可能性は高い。

出典:US Navy 2010年代後半にレールガンを艦艇に統合してテストを行うと海軍は主張していた
因みにレールガン実用化を海軍がなぜ諦めようとしているのかだが、これは技術的要因と戦場環境が大きく変わってしまったという2つの要素に大きく影響されている。
参考:US Navy Cancels Development of High-Tech Railgun Weapon
そもそも海軍がレールガンの本格開発を決意したのは「Mk.45等の艦載砲、精密誘導ミサイル、航空機による誘導爆弾といった兵器より安価で破壊力が高いレールガンなら沿岸地域で戦闘を行う海兵隊を効果的に支援できる」と考えたためで、副次的な要素としてミサイル防衛システムへの流用も見込まれていたが実際に出来上がったレールガンの性能は海軍の期待を大きく裏切るものだった。

出典:DARPA
海軍はレールガンに110マイル(177km)の射程を望んでいたが直ぐにコレを実現するのは困難だと気づき砲身は12発~24発毎に交換が必要で、仮に海軍の要求を満たしたレールガンが実用化できても対艦ミサイルの普及や長射程化で艦艇が200km以内の沿岸部に接近することはリスクが高すぎる上、迎撃困難で1,000km以上離れた目標を攻撃可能な極超音速兵器の登場でレールガンの魅力が色褪せてしまい「使い所の難しい兵器」になってしまったのだ。
以上のような理由からレールガン・プログラムに投入する資金や人材を他のプログラムに回した方が良いという判断に至り、海軍はレールガン開発を正式に終了させたいと議会に提案したのだろう。
関連記事:米海軍はレールガン実用化を断念、開発資金の供給打ち切りを議会に提案
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by John F. Williams/Released
レーザーの代わりもしくは併用するような対空用小口径もダメなのかな?
日本はまだまだ進める気満々らしいけど、どこを目指してるんだろう?
防衛省の資料を鵜呑みにするならミサイル迎撃が先頭に立つらしいけども
鵜呑みにしなくても、海自に求められる火力は対地ではないと思うし米軍と同じ方向では元々なかったとは思うんだけど
射程200㎞弱なら石垣島から尖閣を砲撃出来るので
日本としては開発する意義は十分ある
コメントにこうあるように
>極超音速兵器の登場でレールガンの魅力が色褪せてしまい「使い所の難しい兵器」になってしまったのだ。
同じ事を発射プラットフォームの自由度がより高い極超音速兵器で出来てしまう事で
発射装置が大掛かりで、かつ、プラットフォームが限定されるレールガンは存在価値
がなくなってしまったのですよ
それは米国の話でしょ
日本みたいにすぐ隣の小島がいつ奪われるか分からない国とは事情が違うし
定点防衛に優れた火砲とミサイルを比べるのもナンセンス
しかし日本の環境だと射程的に定点防衛で配備するなら沖縄かその南の南西諸島の
陸の上、駐屯地内の動けない固定施設だったら、有事の際には良い的になって簡単
に潰されるのでは?
かといって陸上機動兵器化はまだ出来ないし、艦船に積むにも大電力がいるから
それ専用艦がいるし、それなら同じ事が出来る投射型の極超音速兵器の方が
・・・って判断は日本だって変わらないと思うよ
レールガンは将来兵器として無くなりはしないけど、技術が追い付くまでは
しばらくはお預けになるんじゃないかな
果たして防衛省はそういう用途を考えているのだろうか、あと砲身寿命の異様なほど短いのはどう解決するつもりなのか、
レールガンに関してはアメリカのほうが長年開発に取り組んでいたから、こちらより多くの課題を洗い出した上で開発を断念しているのを念頭にすべきよ
ふとした疑問なんですが固定目標ならともかく不規則な動きをする船舶に200キロの彼方から命中させれるんですか?
艦船相手ならば誘導弾頭使用が前提ですよ、回避行動の遅い空母のような巨艦以外には当てられない
誘導弾頭はミサイル並みに高価だけど、相手がデカければ充分にお釣りが来るw
だが米軍は上陸支援のための艦艇からの対地砲撃を安全な海域から想定してたようですが、長射程かつ極超音速の対艦ミサイルが一般化しつつあるのでコイルガンのレゾンデートルを感じなくなったようです
日本や中国のレールガン開発計画も同じ末路になるんだろうか?
日本のは対空メインの小口径砲なんで対地用の大口径砲だった米とはだいぶ違うから一緒くたには出来ないんじゃないかな
あまりよくわかってないがレールガンは小口径の方が技術的に有利らしいし
砲身の寿命の短さは主に摩擦によるもんだから、小口径だと全然変わってくるはず
あと、砲弾の質量も小さくなるから、投入電力も小さくなる
2019年1月に中国海軍はレールガンの海上射撃試験を行い、200km先の標的をマッハ約7.6で射撃することに成功した。
砲身の耐熱性・耐磨耗性と長距離砲弾の装填に関するコア技術を開発できたらしいので、当初の予定通り2025年までに水上艦で運用開始するかも。
他に中国軍は小銃サイズのレールガンや陸上ロボット搭載型のレールガンも開発中。
レールガン開発プログラムの座礁については米海軍の負うところが大きいと感じます。
本記事中でも触れられてますけど米海軍はレールガンのことを、(湾岸~対テロ戦争中に対地攻撃用に多用されてコスパの悪さが指摘されていた)巡航ミサイルを一部代替できる、既存の両用砲の上位互換程度に捉えていたのではないかと思うんです。初速に優れる以外は現時点で火薬砲に対して優れる所が多くない(特に対地支援で求められる大口径化や砲弾重量増加が厳しい)同兵器の仕様を考慮すれば、防空あるいは対艦はともかく対地攻撃用に用いるという発想にはならないと思いますし、今からでもプログラムを整理して近接防御火器として研究をすべきと思うんですよね。まぁ今回の予算がそのあたりのテコ入れに使われるのかもしれませんが…。
対地用途なら射程と弾頭威力の優先度が高くていまいちレールガン向きじゃない気がするのよね
拠点防空で超高速の小口径弾をで持続的かつ低コストで投射するのがフィットしそう
そういう目的なら米がどうだろうと日本が研究続ける価値はあるんじゃなかろうか
>砲身は12発~24発毎に交換が必要で
これがキツいわ。コスト的にどう考えても合わない
そもそも155mmエクスカリバーで70km先の目標に命中させてるし今はラムジェット砲弾で100km超えた狙ってるしで完全に要らん子になった
そもそもレールガンの加速に耐えれる誘導砲弾が無理ゲーだからズムヲルトのAGSより意味がないと思う
これは疑問として聞いてね
開発当初の話では、レールガンはゼロスピードから徐々に加速するから、いきなりの装薬爆発で発射時の最高速から飛行しつつ減速していくふつうの火砲より衝撃が誘導弾には優しいって聞いた覚えがあるんだが
じゃあ戦車に載せればいいじゃない。と思ったけど、記事内の砲身寿命ががが
昔の本だと2020〜2030年にドイツやアメリカの戦車はレーザーかレールガン搭載しているはずだったのに、どうして未だに120ミリ砲なのか不満だったが、これはまだ人類に早かったか。
扱いやすくなるか、別の使い道が見つかるまで塩漬けにしといていいかもしれない。
40mm口径の砲弾を2200m/sで射出するのに20ftコンテナ3台分の電源車が必要という時点で、日本のRGも使えねぇと思うんだけど。
砲身寿命の問題は、サボットと砲身間で発生するアーク放電によるエロージョンで、その辺はある程度解決できたらしいけど、それでも100発程度じゃあまりにコスパが悪すぎる。
同じ電力ならレーザーの方が、まだ使い様がある気がします。
砲身寿命に関しては割と最近に日本で何とかなりそうって話題出てなかったか?
日本のレールガン開発に関しては、防衛シンポジウムで詳しく説明されてましま。
YouTubeで見れます。
レールガンと言ってるけど、米軍が開発してるのってコイルガンだしな
レールガンの構造ならこんな摩耗する仕組みじゃないから
(リニアモーターカーの線路が100回程度で交換必要になるような話し
一応、参考にどうぞ、メリットは恐ろし真っ直ぐに飛んで行く事みたいです。
リンク
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電気が簡単に作れるようになるまでは無理そう。
リニアのようにレールに接触させなければ、磨耗も無いと思うが。
電蝕が怖いかな?
リニアモーターカーは内部の電磁石でレールの電磁石と反発して動作するのに対して、
レールガンはフレミング左手の法則で発射されます。
基本的に動作原理型がいます。
アメリカや日本の初期型はレールガンの内部が表面を純銅を用いていたので
何度かの発射で表面が劣化しました。
しかし、防衛装備庁の新型は銅合金を使用して発射の際の電気入れ方を
ソフトスタートにしてことにより解決したようです。
上の書き込みリンク防衛装備庁のシンポジュウムに詳しく紹介されてますので確認したほうがいいですよ。
この結果なら、陸軍が開発しているラムジェット推進砲弾”XM1155ERA”と同等のものを艦砲用として開発した方が現実的な気がしますね。
全機退役したはずのF-117が、しれっとネバダの空を舞う・・・そんな国です。 ほんとに中止なのかな・・・・
誰か知っている居れば教えてほしいのですが、
レールガン或いは空母の電磁カタパルトの電源として
爆薬発電機について検討がされた記録はないだろうか。
爆薬発電機はwikiで検索すれば出てきます。
元々は核融合反応の実験の為に
ロシア(ソ連)で開発されたものと同じと思います。
昔の研究資料にレールガンですよね、これ、な記述が有る位ですけど、創作活動の役には立つかもしれません。
リンク
有難うございます。