ウクライナ当局者は「155mm砲弾の納入量がイスラエル支援の影響を受けている」と主張、国防総省のサブリナ・シン副報道官は22日「ウクライナが必要とするものはイスラエル支援の影響を受けていない」と反論したが、遠回しに「納入量減は資金不足のせい」と示唆した。
参考:Deputy Pentagon Press Secretary Ms. Sabrina Singh Holds a Press Briefing
過去の支援パッケージと比較すると規模が小さくなっているのは誰の目にも明らかだ
広大な戦場でロシア軍と戦うウクライナ軍にとって砲兵部隊が提供する火力は命綱に等しく、特に155mm砲弾の供給量は「ウクライナ軍の戦いに大きな影響を与える」と言われているが、ハマスとの戦争が始まったイスラエルも「155mm砲弾の供給」を要請しているため「ウクライナへの供給に影響が出るのではないか?」と危惧されていたものの、米当局者は「イスラエル支援はウクライナ支援に影響を与えない」と主張。

出典:צבא ההגנה לישראל
米国は中東有事に備えてイスラエル国内に155mm砲弾を事前備蓄(推定30万発)しており、ここから推定15万発がウクライナ支援に転用されたものの、まだ15万発もの155mm砲弾が残っているため「今直ぐ影響が出る」とは考えにくいが、ウクライナ当局者はABC NEWSに対して「(イスラエルとハマスの戦争勃発後)155mm砲弾の納入が30%以上も減少している。米当局者はウクライナ支援に影響しないと言っていたが影響を受けている」と明かした。
しかし米当局者は「大統領権限による支援は発表の何週間も前から取りまとめられるため、ウクライナに対する155mm砲弾の供給減とガザの状況は全くの無関係だ」と反論、国防総省のサブリナ・シン副報道官も22日「その記事のことは承知しているので反論したい。我々はウクライナの反攻に必要なものを供給できたし、冬場に必要なものも供給し続けるつもりだ。さらにハマスとの戦いに必要なものもイスラエルに支援することができると確信しており、今後も双方の支援を実行していくつもりだ」と主張したが、以下のように付け加えている。

出典:Office of Speaker Mike Johnson Public Domain ジョンソン下院議長
“この場を借りて支援継続には議会の協力が必要であると改めて申し上げたい。数ヶ月前に提出された緊急予算の可決なしに支援を行なうことは出来ない”
非常に興味深いのは「155mm砲弾の納入が30%以上も減少している」という部分が事実かどうかに触れず「ウクライナ支援とイスラエル支援を両立させることが出来る」「ウクライナが必要なものを供給していくつもりもある」「ただ議会が緊急予算を可決しないと支援を続けられない」と主張している点で、遠回しに「155mm砲弾の納入量が減ったのは資金不足のせいだ」と言っているようにも聞こえる。

出典:Генеральний штаб ЗСУ
因みにシン副報道官は9日「資金不足でウクライナ支援パッケージの規模がどんどん小さくなっている」と訴えており、最近発表された大統領権限(米軍備蓄から引き出した装備や弾薬を当該国に提供する権限)経由のウクライナ支援パッケージは1億ドル弱で、過去の支援パッケージ(1回あたり数億ドル~10億ドル前後)と比較すると規模が小さくなっているのは誰の目にも明らかだ。
ウクライナ支援のため大統領権限の口座に残る資金は約21億ドル(+国防総省が米軍備蓄を埋め戻すため10億ドルの資金を保有)と見積もられているが、民主党上院トップのチャック・シューマー院内総務は「緊急予算の審議は議員が感謝祭の休暇から戻ってからになる」と言及、Bloombergも「緊急予算の採決準備が整うのは早くても12月中旬で年を越える可能性すらある」と指摘しており、緊急予算の成立よりも先に支援資金が尽きる可能性も否定できない。

出典:Photo By Chad J. McNeeley, DOD
そもそも支援パッケージの規模を縮小することで「継続が支援されている」と誤魔化しているだけなので、ウクライナのニーズを満たせているかは別問題(どう考えても満たせていない可能性が高い)だろう。
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※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України
ウクライナにイスラエルとメガトン負債を抱えたアメリカは衰退スピードが加速すると思います
アメリカの国家予算の内の何%がウクライナ支援に使われているのか考えればその程度じゃあ衰退しませんよ
それいったら国家予算の四割軍事につぎ込むロシアは終わりです
今はドル高かつインフレになっているから、アメリカ国内での供給(生産)は予算一定なら減少するわな。
では、どうすればいいか。
相対的に安い国(日本や韓国)などから155㎜弾を購入するのが経済的に合理的だ。
果たして、できるかな?
韓国はまったく知りませんが、日本の155mm砲弾が安いという根拠は何でしょうか?
契約ベースで生産企業に支払った金額はわかるのですが、弾数が明記されていないので、一発当たりのコストがよくわかりません。
しかし、まあ、今までの経緯からすれば国産の弾薬が「安い」ということは相当考えにくいです。
議会がつなぎ予算で揉めるのは毎年の事で結局通ると思います。まあ野放図に国債を増発している日本より抑制が効いてて結構な事です。
問題は、つなぎ予算が通るにしてもそれまでは軍需産業の製造部門も稼働させられないのと、それまでにウクライナの残弾が枯渇しないかですかね。
もし、結局予算に入らないか、60億ドル程度にまで激減された場合は別次元の問題になってしまいますが。
別のメディアの記事で「ウクライナ向けの貨物がそのまま宛先を変えてイスラエルに贈られている。砲弾だけでなく、防護服や暗視ゴーグルなどの歩兵装備も全てだ」と読んだことがあります。
政治が絡むので真実はわかりませんが、結果だけ見るにどう見てもウクライナ行きの貨物は激減してますね。
アメリカの立場で考えれば、イスラエルとウクライナでは、政界~民間まで関係の積み重ねに格差があるため(比較するまでもないですが)、充分にあり得ますね。
戦争開始から、仲良くして・助けてと要請されたとしても、難しい面はありそうですし。
2択になれば、付き合いの長い方を優先するのは、よくある話でしょうね。
予算や物資は、米軍と言えども限られている訳ですから。
アメリカの弾薬在庫は、世界的な抑止力に影響してしまいますからね。
ガザ紛争により、ウクライナの砲弾が減ったと言われてしまっては、米軍に余力がない・余力が厳しいとイコールになるわけです(各地域の抑止力に直接影響します)。
米軍在庫のうちアジア太平洋方面は戦闘がなかたっため、在庫を空にして抑止力が低下した、台湾有事・朝鮮半島有事・極東有事に対応できなくなった。
これは極端な話ですが、こうなっては、非常に困るわけです…。
民主主義的な政治は、独裁国家と違って、揉め事も全て公開しているからあれこれ出てくるが・・・
今、ウクライナを見捨てれば、ロシアが勢力を増して、より大きな負担が EU に生じるであろうことは目に見えているから、結局 助けないわけにはゆかない。 あれこれ言ってみても、今 ウクライナを助けることが、最も「低リスク・低コスト」ということになるでしょう。
たぶんトランプさんにとってはEUの問題でアメリカは関係ない。
もつとシャンとしてEUが頑張ってねだと思う。
でもEUはいいなあ、日本は一緒に頑張ってくれそうな強国の友好国がまわりにない。
ヨーロッパ大陸に日本列島が移動しないかな。
まわりは香ばしいくにばかり。
「神様、それではあまりにも日本は恵まれすぎています」ネタ。