米国の政府説明責任局はF-35の運用コスト削減が達成されない場合、2036年に米空軍が負担しなければならないF-35Aの「年間運用コスト」は93億ドル/約1兆円に達して予算オーバーになると指摘した。
参考:Watchdog group finds F-35 sustainment costs could be headed off affordability cliff
各利害関係者の運用コスト削減に対する見方はバラバラで米国の政府説明責任局は国防総省に「何とかしろ」と迫る
米国の政府説明責任局(GAO/旧会計検査院)はF-35プログラムコストに関する最新の報告書を今月7日に発表、コスト見積もりが現在のまま推移してF-35の運用がピークに達する2036年を迎えると「実際に請求される運用コストと負担可能な運用コストの間に約60億ドル/約6,630億円ものギャップが生じる」と指摘して注目を集めている。
この指摘を具体的に説明すると米軍は約4,000億ドル/約44.2兆円の費用を投じて約2,500機のF-35を調達する予定なのだが、同機の総運用コスト(機体の維持、機体のサポートに必要な人員、燃料や訓練に使用する弾薬、各種関連機器やその他の費用等)は約1.27兆ドル/約140兆円(2020年度試算)と見積もられており、この金額は2012年に見積もられた額よりも1,500億ドル/約16.6兆円増加しているのでGAOは今後も増加する可能性が高いと警告している。
補足:米軍のF-35のライフサイクルコストは4,000億ドル+1.27兆ドル=1.67兆ドル/約184.6兆円なので調達コストの約4.1倍に達しており、調達コストの2倍~2.5倍が相場(あくまで目安)と言われる西側製戦闘機のライフサイクルコストと比較すると相当高価だ
つまり莫大なF-35の運用コストを最も多く負担することになるのはF-35Aを運用する米空軍で、同機の運用数がピークに達する2036年までに1機あたりの年間運用コストを370万ドル/約4億円削減(47%減)できなければ同年に負担するF-35Aの運用コストは予想見積もりを「約44億ドル/約4,860億円」超過する可能性があるとGAOは指摘(F-35BやF-35Cの運用コストを含めると超過額は約60億ドル/約6,630億円に達する)しているのだ。
A.2020年度運用コスト | B.適正コスト | A-B=差額 | 2036年の推定運用数 | 差額の総額 | |
F-35A/空軍 | 780万ドル | 410万ドル | 370万ドル | 1,192機 | 44億ドル |
F-35B/海兵隊 | 910万ドル | 680万ドル | 230万ドル | 353機 | 8.12億ドル |
F-35C/海兵隊 | 790万ドル | 680万ドル | 110万ドル | 67機 | 0.74億ドル |
F-35C/海軍 | 990万ドル | 750万ドル | 240万ドル | 273機 | 6.5億ドル |
約60億ドル |
運用コストの削減に失敗して2020年度の運用コストのまま2036年を迎えると空軍はF-35Aの年間運用コストとして93億ドル/約1兆円、海兵隊はF-35BとF-35Cの年間運用コストとして37億ドル/約4,090億円、海軍はF-35Cの年間運用コストとして27億ドル/約2,980億円を負担(米軍全体では157億ドル/約1.7兆円)する必要があり、仮に適正コストまで削減出来たとしても米軍全体で97億ドル/約1.1兆円もの資金が「1年間の運用コスト」として消えるという恐ろしい試算結果だ。
では運用コストを2036年までに47%(F-35A)も削減できるのだろうか?
これについてGAOは各利害関係者がF-35Aの運用コストについて異なる主張を展開しているため「統一された運用コスト削減計画を立案するの困難だ」と指摘している。
F-35Aの運用当事者である米空軍は同機の運用コストについて「全てのスペアパーツが無料で入手できたとしてもF-35Aの運用コストは目標を14%上回り、成熟してきた機体設計や整備計画に大幅なコスト削減を達成するだけの余地が殆ど残されていない」と主張、F-35プログラムの管理者であるF-35ジョイント・プログラム・オフィスは「年間飛行時間や稼働率といった問題がF-35の運用コスト削減の障害になっている」と説明、F-35を開発・製造しているロッキード・マーチンは「運用コストの約53%を占める人件費削減が課題」と述べており、各利害関係者のF-35運用コスト削減に対するスタンスは見事にバラバラだ。
GAOも各利害関係者の誰だが正しいことを言っているのか報告書の中で言及しておらず「フルレート生産へ移行する前に国防総省は運用コスト削減に関する戦略的な行動をとれ」とだけ勧告しているので、GAOも何をどうすれば運用コストの削減に繋がるのか分かっていないのだろう。
全ての責任を押し付けられた国防総省はGAOの勧告を受けて「運用コスト削減に関する戦略的な行動」を取りまとめなければならないのだが、米空軍はGAOに対して「運用コスト削減が実現しない場合、米空軍に残された選択肢は調達数の削減か運用時間の削減しか残されていない」と主張してコスト削減に悲観的な姿勢を見せている。
要するに米空軍はF-35Aで更新予定だったF-16の代替機開発を本気で考えているのかもしれない。
関連記事:メッキが剥がれてきたF-35Aの運用コスト、スイスに提示した155億フランは空手形か
※アイキャッチ画像の出典:U.S Air Force photo by Airman 1st Class Jacob Wongwai
何に金が掛かっているさえ解らないとなると、マネジメントが全くできていない事になる。
このグダグダに巻き込まれる購入国こそ、最大の被害者だろう。
わからない理由まで考えんといかんよ
なんでわからなくなってるかっていったら、共同開発国増やし過ぎて、ワークシェアをあちこちに配分したせいで、
部品生産があっちこっちにとっちらかって、部品生産、管理、輸送のそれぞれでコストがかかり過ぎてるし、一元管理できないから訳わからなくなってるんや
一か所で大量に作った方が安いに決まってるやろ?それを細かく分けて言ったら高くなって当たり前。
しかも、ワークシェアで配分した部品製作をその国が作れるならまだマシな方で、
技術も金もねーのに、ワークシェアだけ取ってきて、いざ納入した部品は劣化品、納期超過とかされるんや
これの対処でまたコストが上がる
何事もコンセプトがブレるとダメなんだな
VTOLのB型より可動部の少ないC型の方が高いなんて意外。量産効果の有無でこんなに違いが出るんだ。
いやいや通常離着陸型の艦載機のも開発タイヘンなんやで.
特に35Aを元にするから余計にややこしくなった.
製造コストではなく運用コスト高の話だから、量産うんぬんは関係ない
運用コストは調達コストの影響かなり受けるぞ。
いや、それ、海兵隊と海軍の違いじゃね?
海兵隊のBとCを比較すると、実態はBが高く、適正価格ならBとCは同額みたいだぞ。
そもそもF-35の開発母体が、海兵隊が計画したSTOVL機の開発だから
海兵隊STOVL機からSTOVL機能をオミットしたら安く開発できて仕入れられるだろと空軍が相乗りしてきた
ここまではいいんだけど、要求がおかしい海軍向けが入ってきてから話がこじれた
最初予定したSTOVL機の機体規模じゃ、海軍の要求にこたえられないから大型化
大型化したから重量増加→強度不足→補強→重量増加→強度不足→補強→重量増加→……
このドツボに陥った
F-35の開発遅延理由も、大体海軍のC型が理由を作ってた
主翼は共通化しようとしたけど、それだと着艦に耐えうるフレームと脚の重さでAより機動性が劣るので、Aと同一になるまで主翼を大型化したのが、運用コストにも影響してるのかね。
海兵隊のBとCは、運用コストが同じ。Cは海兵隊と海軍では海軍が高いってことはBとCは運用コストが同じ、海兵隊に比べ、海軍は訓練数が多いってとこなのか。
そもそも、F16を全機F35で更新することに無理があったよね。
量産効果でイニシャルは下がっても、ステルスコーティングなどでランニングは高くなる。
まあ、遅延につぐ遅延で炎上してたF35開発時に、ランニングコストのことを考える余裕はなかっただろう。
関係者も気の毒だ。
コスト高の要因ってステルスコーティングは主流違うぞ
共同開発国を増やし過ぎて、ワークシェアをあちこちに配分することになったせいで、サプライチェーンの非効率化が起こったのが最大原因
一か所で大量生産すりゃいいのに、あっちこっちでチマチマつくってるから、在庫数もマチマチで管理が一元的におこなえず、輸送コストもかかるわでコストがガンガン上がっていた
パーツは羅国させて欲しいわぁ。
共同開発と枠組み上、ライセンス取るのは無理だから諦めるしかない
元々一部ラ国の提案もあったけど採算性の問題から三菱重工が拒否ったんだぞ
解決しないばかりか却って高騰するわ
第5世代とか4.5世代とか関係なく運用コストがこの先安くなることってあるのか疑問に思えてくるな
いやこれ運用数増えたら普通に考えりゃある程度コストは下がっていくもんじゃないの?
F-22も多分似たような感じで最終的な調達コストも運用コストも上がっていってボロクソ言われるようになった様に思えてならないのだけど
同じ失敗繰り返す気か?
F35を2500機調達ってアメリカンサイズですなぁ
ライフコストも考えて開発する頭は無かったのか?
似たような問題は過去に何度もあったのに全く改善しようとしないしな
まあ、3種の戦闘機開発事業を無理やりひとくくりにして開発する時点で予想できそうだけど
忘れちゃいけないのが
米軍は2500機という莫大な数を運用するからコスト増も特大になり代替機が議論されるのであって、
その他の国の運用規模では代替機を作るほどでもない(作れない)ということ。
国内にもそれを勘違いする人がいそう。
未完成のまま配属され未完成のまま退役する史上初の機体
になったりして
数年毎にMC繰り返すデジセンシリーズが体制確立したら世界中に売っぱらうんだろな中古F35
中古のF35とか維持費高い、寿命短い、故障多いで
安物買いの銭失いになりそう
このプログラムをみた感じでは、中古取引とか成立しないだろ
米軍が退役を決めたら各国も揃って退役させないと異様な高額の維持費を負担させられる。
始めからそういうリスクを背負わされた計画なんてすよ、すべてがアメリカ優先、アメリカの都合で決められる話
なんやかんや言って数十年間F-35Aが主力を務めると思う
デジタル・センチュリーな戦闘機が投入されてもF-35ファミリーは主力として運用されるって言われてなかった?
F-35の性能を考えれば必要なコストでしょう。
パイロットの命は金で買えない。
F-15の後継とかならその考えでいいんだけどこれF-16の後継だからとにかくコスパ命よ
そうなんだよなぁ・・・
F-15とかみたいに維持費がもともと高めの機体を置き換える国はまだそこまで気にならんかもだけど、F-16の更新に充てる国は維持費爆上がりで大変
国土が広いと大変だな
うちは敷地50坪しかないが、雪かきとか除草とか何かとすぐ終わる
領海を考えれば、うちもそんなに狭くない。
だからスクランブル機体に悩んどる.
領海入れると日本は上位にランクインしちゃうんだよな
全然せまくない日本
陸海空自衛隊というのは不適切
島国の国情からすると空海陸自衛隊w
これは出順だけの問題だけどな
領海というかEEZでしょ
そだね すまそORZ
正規戦においては、F35が現状最も優れた戦闘機であることは疑いないと思うんだけどね
なんか、鳴り物入りで進めて来たF-35プロジェクトを早期に店仕舞いして、その予算を別のデジタルなんちゃらで
作った新型機プロジェクトへ回したい言い訳に聞こえる
「ほら、F-35プロジェクトにこだわると、年間これだけ無駄になるんですよ、だったら、もっと安価に出来る新型機
に移行しましょうよ」
米空軍が今まで必死に予算削減から守ろうとして来たF-35プロジェクトなのに、ここに来てデジタル・センチュリー
の方が美味しそうに見え始めたとたんに手の平返しをし始めた感が
F35プロジェクトにつき合わされた同盟国の立場はどうなるんよ、
文句あるなら自前で作れよ(ゲラゲラ
・・・かも