米国関連

サリバン大統領補佐官、ザルジニー解任はウクライナ政府の問題で関与してない

ホワイトハウスのサリバン大統領補佐官は「ウクライナがザルジニー解任を通知してきたのか?」という質問に「これはウクライナ政府の問題なので米政府が口を挟むべきではない」「一連の人事決定に関与していない」と回答、間接的に「ザルジニー解任問題が存在する」と示唆した。

参考:Transcript: National Security Adviser Jake Sullivan on “Face the Nation,” Feb. 4, 2024

ザルジニー解任は「ウクライナ側の政治的調整」と「後任人事の決定」を経て発表される可能性が高い

ワシントン・ポスト紙は関係者の話を引用して「ゼレンスキー大統領がザルジニー総司令官解任を決定したとホワイトハウスに通知した」「この重大な決定についてホワイトハウスの高官達は支持も反対もぜず、この件がゼレンスキー大統領の主権的な選択であることを認めた」「ゼレンスキーは解任発表を先送りすることも出来るがその可能性は非常に低い」と報じていたが、サリバン大統領補佐官も「ウクライナ軍の人事問題はウクライナ政府の問題だ」「そのことをウクライナ側に伝えた」と明かした。

出典:Zelenskiy Official

CBSの取材に応じたサリバン大統領補佐官は「ウクライナ政府が総司令官解任をホワイトハウスに通知してきたのか?」という質問に「ウクライナ軍の人事はウクライナ政府の問題なので米政府が口を挟むべきではない。そのため一連の人事決定に我々は関与していない。これはウクライナの主権でありゼレンスキー大統領に人事を決定する権利がある。我々は特定の決定に関与するつもりはなく、このことはウクライナ側にも直接伝えてある」と回答。

サリバン大統領補佐官は「ウクライナ側がザルジニー解任を通知してきたかどうか」に直接言及しなかったが「米国はウクライナ軍の人事に介入するつもりはないと伝えた」と述べているため、間接的に「ザルジニー解任問題が存在する」と示唆した格好で、ほぼワシントン・ポスト紙が報道通りの内容と言える。

出典:PRESIDENT OF UKRAINE

恐らく「ゼレンスキー大統領がザルジニー総司令官解任を決定したとホワイトハウスに通知した」という話は事実で、ザルジニー解任は「ウクライナ側の政治的調整」と「後任人事の決定」を経て発表される可能性が高い。

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※アイキャッチ画像の出典:The White House

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コメント

    • たむごん
    • 2024年 2月 05日

    ウクライナを取り巻く環境、ザルジニー総司令官を辞めさせて、何か抜本的に変わるのでしょうか?

    ウクライナ国内外に、彼を支持・評価する人がいるわけですから、ゼレンスキー大統領の求心力がなくなるだけだと思うのですが…。

    ロシアも、ウクライナの権力闘争で混乱している事を、見透かすのではないかと懸念しています。

    16
    • Easy
    • 2024年 2月 05日

    ちょっと手間取っている感がありますね。現在進行形で国防大戦争やってるのに総大将をレームダック化させて何日も放っておくのは非常によろしくありませんので。
    後任選びが難航してるのが予想されますね。

    16
    • lang
    • 2024年 2月 05日

    バイデンもイランとの対決アピールでもうどうでもいい感じなのでは

    11
    • n
    • 2024年 2月 05日

    ザルジニー総司令官解任の一番の障害はおそらく後任人事でしょう。
    後任は少なくとも軍内部のザルジニー派や一部の国民からは恨まれることになりますし、政府のいいなりというイメージもつきます。
    その上今後の戦況のすべての責任を負わされてもおかしくない立場ですから、かなり厳しい立場になると思います。

    シルスキーやブダノフは断っているそうですが、どうするんでしょうね。

    22
    • 黒酢
    • 2024年 2月 05日

    ザルジニーが解任されるとしたら、昨年行われた反攻作戦の失敗という理由があると思う。
    しかし当時の状況から考えると、その頃から西側諸国の支援先細りが懸念されている中での反攻作戦だっただけに、作戦自体に無理があったのは分かっていたハズだ。しかしそれでもウクライナ政府が作戦を強硬した理由って、ゼレンスキー氏よりも人気のあるザルジニー氏を失脚させる為に作戦を強行したのでは?って勘ぐってしまいますね。

    4
      • NHG
      • 2024年 2月 05日

      反攻作戦失敗の戦犯は英米軍司令でしょう
      初手の戦車を中心とした機動部隊による攻勢でつまづいてからは、歩兵を中心に塹壕を一つ一つ攻略していく戦術に切り替え味方の損失を最小化してた(ついでにロシア側の損失も大きくはない)のに、英米軍司令からの強い要請でサボリージャで大攻勢にでてロボティネに到達したところで息切れ
      次の攻勢にむけ態勢を整えてるあいだに米の支援に陰りが出始め、追い打ちをかけるようにロシアの反撃が始まり今にいたる
      正直、サボリージャの大攻勢で大量の物資と人員を失ってなかったら今の状況はもう少しマシになってたと思う

      7
        • 58式素人
        • 2024年 2月 05日

        ”反攻作戦失敗の戦犯は英米軍司令でしょう”
        航空優勢のないままに無理な攻勢を強いた可能性はある、と思います。
        ウクライナ側は逆らえる状態になかったと思いますが。
        今回の参謀は、ゼークト将軍の言う”無能な働き者”
        にあたるのでは、と思ったり(笑)。

        4
        •  
        • 2024年 2月 05日

        歩兵を中心に塹壕を一つ一つ攻略していく戦術に切り替え味方の損失を最小化した?はははおかしなことを
        歩兵攻撃、いわゆる浸透戦術なんてものは一番損害が出るやり方です
        例えばブルシーロフ攻勢では相手に100万の損害を与えながらロシア軍も50万の損害を出していますし、ゼークトライン突破戦でも相手に20万の損害を与えながら日本軍は10万の損害を出しています
        この2つ共に「大成功した場合」の先例です、ウクライナの南部攻勢なんて戦史上類例がないほど完敗した事例ですから損害ばかり嵩んでいるでしょう
        被害を最小化されたのは西側の職人が手間暇かけて作り上げた匠の逸品戦車であって肉壁同然の動員兵のことではありませんよ

        9
          • hiroさん
          • 2024年 2月 05日

          誤認がある様なので。
          ブルシーロフ攻勢では初戦に「突撃部隊」を投入してオーストリア軍前線を崩壊させたが、50万人とも100万人とも言われるロシア軍の損害のほとんどは、その後の追撃戦やドイツ軍増援部隊との正面戦で生じたもので、「浸透戦術」だからでは無い。
          ゼークトライン突破戦とは第二次上海事変のことと思いますが、日本軍の損害は4万人(10万人というのは中国側の宣伝数字)、国民党軍は27万人ですが、この損害は3ヶ月間の総数でゼークトライン攻撃で生じたわけでは無い。
          第二次上海事変の日本軍が「浸透戦術」の大成功例とした評価は目にしたことが無いので、出典を教えて頂きたいものです。
          「浸透戦術」こそが大損害をもたらす論拠が理解できませんが、昨年のウクライナ軍の攻勢での戦術変更は、地雷原と砲兵部隊、攻撃ヘリやドローンの待ち受ける戦場では機械化部隊は無力であることを悟った結果だと思われますので、機械化部隊の全滅を避けるためにある程度の損害覚悟で歩兵主体の攻撃に切り替えたのでしょう。
          個人的には初戦の損害で攻勢自体を中止する判断は無かったのかと思いますが、結果論ですね。

          2
          • NHG
          • 2024年 2月 05日

          比較対象がちょっと違いますね
          サボリージャででの大攻勢や初手の敵航空優勢下に一気になだれ込む戦術と比べてです
          戦闘で(それも攻勢で)人的・物的な損害がでるのは当たり前なので、問題にしてるのは損耗のスピード

          >【兵頭慎治×渡部悦和】反転攻勢めぐり米・英軍がウクライナ軍と「作戦会議」新たな戦略・戦術で意見対立も“支援国の圧力”米国の本音【深層NEWS】

          この13mあたりみたら言ってることわかると思う

    • あいうえお
    • 2024年 2月 05日

    ウクライナ軍がロシア国内の都市や製油所などを攻撃してるけど、もしかして軍総司令官ザルジニーがやってるのかもしれんね。もしそうなら、アメリカはザルジニーのクビ問題に一定の関与をしてるだろうね。

    ちなみに、ウクライナ軍によるロシア国内への攻撃問題には、以下のような背景がある。
    西側提供の武器でロシアの都市を攻撃するのがOKなら、ロシアは西側の都市を攻撃したがる中東武装勢力等にミサイル等を渡し、ベルリンやワシントンに撃ち込ませてもOKになる。
    もしも西側が(ロシア国内を攻撃する無人機などの)製造支援をウクライナ国内でするのなら、ロシアは(武装勢力などが西側を攻撃するための)製造支援をしてもOKになる。
    だから西側は、ロシア国内への攻撃には使わないことをウクライナに約束させ、兵器を提供してる。

    15
    • 名無しの悪夢
    • 2024年 2月 05日

    本物かどうかはわかりませんが
    ザルジニー総司令のオフィスに仕掛けられた盗聴器のリークによると
    想像の遥か下の争いでした。

    6
    • tk
    • 2024年 2月 05日

    内政干渉になるし文民統制の観点でも何ら問題はない
    世間が騒ぐほど影響はないかと

    1
    • ポンポコ
    • 2024年 2月 05日

    管理人さんのこの情報センスは素晴らしいと思います。サリバンという外交の大物の意味深なコメントですね。しかも、言ったのがヌーランドではないというところに、バイデン政権の国内向けの意図があると思います。

    (もしかして、バイデン政権もウクライナ支援に少し引きぎみなのかもしれません)

    しかし、こういう人事というのは、水面下で色々あっても、最後までわかりません。正式に発表されるまで、どんでん返しもあります。それは、日本の会社や役所とかでも同じです。

    最終的にどうなるか。今後の戦況にどう影響するか。

    8
    • うくらいだ
    • 2024年 2月 05日

    内政干渉もしてるし、口も挟んでるにきまってるじゃないですか。
    こういうときに影響力行使しないでなんの大国ですか
    だたそれをもってしても、2人亀裂は収まらなかったのでしょう
    公式見解では主権国家を尊重して関与してないとしか言えないでしょうが。

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