米国関連

米空軍、事故損耗分を補充するため砂漠で保管中のB-1B現役復帰を決定

B-1Bは本来の任務からかけ離れた長距離近接航空支援任務に駆り出され、構造的寿命を使い果たして状態が悪い17機を2021年に退役させたが、空軍は事故で失ったB-1Bを補充するためアリゾナの砂漠から保管機を引っ張りだして現役復帰させるらしい。

参考:Resurrected B-1 Coming to Dyess This Year 
参考:Dyess B-1B Lancer: Road to Regeneration

空軍は損耗分を補うためボーンヤードからB-1Bを現役復帰させること決定

米軍がアリゾナの砂漠=デビスモンサン空軍基地に保管している航空機について「必要があれば現役復帰できる」という伝説が存在するが、このボーンヤード(第309航空宇宙管理および再生グループ)で管理される航空機は概ね4つの状態に分けられ、Type1000に指定される航空機は高い確率で現役復帰が予想されるため、空調の効いた倉庫で飛行可能な状態を維持したまま保管されるものの、Type1000指定を受けるのは米軍が必要(機密保持も含む)とする一握りの機体のみだ。

出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Christopher Quail

最近退役したB-1BでさえType1000扱いではなくType2000扱いで、現役復帰の可能性を残すため解体が禁止されているものの同型機維持に必要な「部品取り」が認められており、Type3000扱いは飛行可能状態を維持して一時的な保管を行う場合、Type4000扱いはスクラップとして業者に売却される場合に指定されるため、墓場送りの大半はType2000扱いで「ボーンヤードはスペアパーツの供給地」と解釈するのが妥当だろう。

米空軍は2016年の事故で失われたB-52Hを補充するためボーンヤードからB-52Hを引っ張りして現役復帰させたが、飛行可能な機体を見つける検査とテストだけで4ヶ月間、バークスデール空軍基地に運ばれた当該の改修にも1年以上の時間を要しており「Type2000指定機からの現役復帰は時間と資金があれば可能」と実証されているものの、この手段を実行に移したのは「再入手が不可能なB-52H」と「訓練時の敵役を演じているF-117」だけなので多用できる選択肢では無いが、墓場送りになったB-1B(1機)が現役復帰に向けて修理されているらしい。

出典:Ellsworth Air Force Base

B-1Bは本来の任務からかけ離れた長距離近接航空支援任務(特にアフガニスタンやイラク)に駆り出された結果、機体の構造的寿命を使い果たしてしまい稼働率が大幅に低下したが、大規模なメンテナンスを実施して半数以上のB-1Bは本来の任務に復帰できたものの、特に状態の悪い17機を多額の費用をかけて元の姿に戻すのか、B-1B全体の稼働率を押し下げている17機を処分するのかで空軍と議会が対立。

最終的に議会は17機の退役を認めたものの「墓場送りになったB-1Bの解体を禁止=Type2000指定」し、アリゾナの砂漠で退役したB-1Bを保管していたものの、2022年4月にメンテナンス中だったB-1Bで火災が発生して第1エンジン、左主翼、燃料系統が損傷(損害額は1,494万ドル/修理不可能と判断され270万ドル分の部品が剥ぎ取られた)し、2024年1月には離陸中のB-1Bが墜落してしまい、空軍は損耗分を補うためボーンヤードからB-1Bを現役復帰させること決定した。

出典:U.S. Air Force photo/Gina Anderson 近代化されるB-1Bの様子

ティンカー空軍基地に運び込まれたB-1Bは今年後半までに稼働状態へ戻される予定だが、退役しなかったB-1Bは敵味方識別装置、Link16、通信システム、防御システムのアップグレード、大量の情報処理に対応した最新のデータストレージ追加などを含む近代化を施している最中なので、このB-1Bも近代化された状態で現役に復帰してくるのだろう。

関連記事:飛行機の墓場送り、冷戦末期に登場した戦略爆撃機「B-1B」一部退役が始まる

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo/Master Sgt. Nicholas Priest

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コメント

    • たむごん
    • 2024年 4月 02日

    航空機は、空を飛ぶため安全性を求められますから、現役復帰に時間がかかりますね。

    とても楽しみであり、復帰コストがどの程度なのか興味深いです。

    その点、戦車や装甲車の現役復帰は、比較的容易で低コストに感じますね。

    10
    • 幽霊
    • 2024年 4月 02日

    日本でも退役した兵器の保管をすべきと言う意見がよく見られるけど、日本の場合保管する場所や保存状態を維持するための予算それに気温や湿度など簡単には解決出来ない問題が多そうですね。

    37
      • ネコ歩き
      • 2024年 4月 02日

      自衛隊でも正当な理由があれば予算もついて実施してますよ、>退役した兵器の保管
      16大綱で火砲定数が900→600になったおり、FH70は消耗等により漸減し、平成42年度(令和12年度)までに全廃することとされました。
      そのとき、平成30年度以降は配備数が定数割れを起こすと見込まれ、その補充用に定数減で余剰となった状態の良い40門を保管砲とすることにしました。予算要求が認められドイツから組立式の高気密かつ除湿装置付き保管倉庫を23セット購入したのですが、それが本来の目的に沿って活用されていないと会計検査院に指摘され改善を行った経緯があります。
      つまり、気温や湿度の問題解決はさほど難しいことではありません。予算も財務省を納得させ得る説明が出来れば確保できます。

      24
        • 幽霊
        • 2024年 4月 02日

        わずか40門の砲を保管するために除湿装置付き保管倉庫を23セットも必要とするなら戦車や装甲車に航空機などの大きな物やより大量に保管するのは簡単では無さそうですね。

        20
          • ネコ歩き
          • 2024年 4月 02日

          保管砲は全国の補給処や補給支所に分散保管されたらしいです。
          大量保管に適した空き地って日本国内にどれだけ在るかという問題のほうが大きそうですね。

          11
            • 幽霊
            • 2024年 4月 02日

            本来なら出来る限りまとめて保管できる方がいいですからね
            整備・点検も出来る保管拠点を作っまとめて保管した方が行き届いた管理がしやすいですし。

            9
    • AH-X
    • 2024年 4月 02日

    B-1って優美なスタイルだから爆撃機の中で一番好きなんですがね。あと10年くらいで見られなくなるとは悲しい。

    22
    • jimama
    • 2024年 4月 02日

    コンコルドみたいで好きな飛行機なので結構なこと
    ロシアもTu160の新造を開始したみたいだし
    結局このクラスぐらいが現代だと気軽に使いやすいってことなのかな

    8
      • T.T
      • 2024年 4月 02日

      元々低高度高速侵攻爆撃の為に作られた機体で、能力的にもB-52を全ての面で上回る為、使い勝手が良くて酷使されたってとこですからね。B-21に資金を回す為に退役を早めてましたけど、B-21は高価すぎて使い勝手が悪いと言うことにならなければ良いけど。

      11
        • M774A6
        • 2024年 4月 03日

        B-2やB-21あるいはF-117でさえもステルス性によってB-1Bより迎撃を受けにくいと頭で分かっていても、地表近くですらM0.9以上で飛べる飛行性能の高さで何となくB-1Bの方が乗ってて不安少なそう。
        私としては、透明人間になれても全裸で渋谷スクランブル交差点を練り歩く勇気はなかなか持てないけど、見えててもパンツ一丁で走り抜けるのなら何とか覚悟決められそう。
        透明人間になれてると確信を持って全裸でコーヒー飲んでこれるまでになるよう日々訓練するのでしょうね。

        11
    • 2024年 4月 02日

    アビオニクスは金かかるというのは分かるが、ガワまでもが新造できないほどに高コストなのか…

    2
      • nachteule
      • 2024年 4月 02日

       当たり前じゃんよ、外板はプレス加工とか機械や加工データ、型や治具が揃って初めて出来るもん。それらを揃えるのにいくら掛かるのか。
       よほど単純な物じゃ無い限りは量産前の試作レベルで作る製品なんて試行錯誤とか含めて外から見たらボッタクリレベルの価格やぞ。作る方も商売だし、安くしろと文句言うならそれを受ける所を探すか必要とする自分達で責任持って作れば良いだけ。

       金属3Dプリンターで作るとしても航空グレードのアルミ粉末があって薄板でも強度も担保されるのかが有るし、基礎研究するつもりがないなら従来通りのやり方するしかない。

      9
    • nimo
    • 2024年 4月 02日

    維持費が高いけど重宝されるね

    1
    • lang
    • 2024年 4月 02日

    事故率すごいですよね

    ヘリは2か月で4機も墜落してるからもっとやばいけど!

    1
    • 無印
    • 2024年 4月 02日

    早く来てくれB-21

    1
    • 匿名希望係
    • 2024年 4月 02日

    オーストラリアかアメリカの砂漠かりんと無理だよな>兵器保存

    7
    • あるまじろ
    • 2024年 4月 02日

    砂漠送りからの現役復帰って言うは易く行うは難しを地で行くんですね。

    そりゃウクライナ支援の議題に出ないわけだ・・・。

    勉強になりました

    3
    • 一読者
    • 2024年 4月 02日

    アスラン王国のB-1とF-15、キム・アバ(シン)のタイガーシャークはどうなったのだろうか…。

      • バーナーキング
      • 2024年 4月 02日

      F-14なら燃えちゃいました…

      1
        • 一読者
        • 2024年 4月 02日

        F-14、燃えちゃいましたね。A-10も不時着してパイロットは不慮の事故で亡くなったし、ケンとウォーレンのクフィールも墜ちた…。無傷を確認出来るのはF-20だけ。

        5
        • 一読者
        • 2024年 4月 02日

        あら、ご反応ありがとです。

    • 雉猫
    • 2024年 4月 02日

    有事には米国に戻すと言う約束で、日本の金で治せそうな奴を治して、通常時は空自が運用。という事とか出来んのかなぁ。

    日本も爆撃機をそろそろ持っった方が良い頃合いだと思うんだが。

    キッシー、米軍から、廃棄同然の品もらってくるか、B-21の日本仕様を特別に作ってくれる様に拝み倒すとかできんのかなぁ。
    米軍も金にはだいぶ困ってるようだから、日本の金で、なんとかなりそうなもんだけども。

    ただの妄想です。

    2
      • 匿名希望係
      • 2024年 4月 02日

      正直1から作った方がましでは?
      B-52ってだいたいB-767と同じぐらいだし>基礎設計

        • 匿名希望係
        • 2024年 4月 02日

        間違えたB-1(汗)

    • daishi
    • 2024年 4月 02日

    この前ニュージャージーの発掘戦艦(=記念艦メンテ)が記事になったかと思ったら、B-52だけでなくB-1Bが損耗分補填で発掘されてくるとか米軍の現役機体層の薄さが心配になりますね。

    2
      • daishi
      • 2024年 4月 03日

      管理人さんの記事探してたらタイプ2000保管は4機のみなんですね。
      タイプ2000保管は部品取りOKとのことで、B-21が出る前に残り3機を復活させることになったら大変です。

      リンク

      1
    • kitty
    • 2024年 4月 03日

    ある日、謎の宇宙線が降ってきて、兵器の墓場から旧兵器が自律稼働するゾンビ兵器となって大暴れ。特に米国とロシアが手が付けられなくなる…。
    なんて頭の悪いなろう系小説のアイディアを思いついたけど誰か書かないかなw。

    3
    • Natto
    • 2024年 4月 03日

    タイプ1000にするにはデカい格納庫が必要だったんだな。

    1
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