米空軍は保有するF-22について「Block20退役が認められないなら次世代戦闘機(NGAD)の開発に影響が出る」と議会に訴えており、今後も維持するBlock30/35については90.6億ドル=約1.1兆円を投じてアップグレードを行う計画だ。
参考:Keeping the F-22 Credible Through 2030 Will Cost At Least $9 Billion, USAF Leaders Say
LDTP(Low Drag Tank and Pylon)と呼ばれる新型の増槽とパイロンを採用するF-22Aのアップグレード
米空軍で調達・兵站を担当するハンター次官補は「我々の予算案は最も旧式のF-22A退役を前提にしている。これを拒否されると次世代戦闘機(NGAD)の開発計画も見直さなければならない」と述べ、訓練用途に使用しているBlock20を維持したまま「NGADの開発予算を捻出するのは難しい」と議会に訴えた。
米空軍が保有するF-22AはBlock20(33機)とBlock30/35(153機)があり、Block20は訓練用途にしか使用されておらず、これに目をつけた議会は「Block20をBlock30/35相当にアップグレードして航空戦力を強化しろ」と要求、しかしBlock20のアップグレードには18億ドルの資金と8年の歳月がかかるため、空軍は「Block20ではなくNGADに投資した方が良い=Block20を退役させたい」と主張して対立、この戦いは結局「Block20の退役禁止」「アップグレードの見送り」という折衷案で2023年に先送りされた。
米空軍は今年もBlock20の退役を議会に要求しており、今後も維持するBlock30/35については「2024年~2028年の間に90.6億ドルを投資してアップグレードを行う」と説明している。
費用の内訳はアップグレードの研究・開発(17.4億ドル)、センサー能力の強化(41.3億ドル)、信頼性と保守性の向上(24.3億ドル)、ステルスに対応した増槽とパイロンの調達(5.5億ドル)などで、過去のアップグレード費用と合わせるとF-22Aの能力維持には総額162億ドルを投資する計算になるらしいが、この金額にF-22Aの運用・維持コストを含まれてない。
つまりBlock20退役を議会が否定すれば「予算案を一から練り直す必要がある=F-22A関連の支出が膨らむためNGADの開発計画も見直さなければならない」という意味で、今年も空軍と議会の戦いが始まった。
因みに「ステルスに対応した増槽とパイロンの調達」とは、F-22AのRCS増加を最小限にする「LDTP=Low Drag Tank and Pylon」のことだろう。
中国が強化に努めてきた接近阻止・領域拒否(A2/AD)の範囲内=第一列島線内やその周辺空域で従来の空中給油機を使用した航空作戦は難しく、台湾海峡での戦いで最も戦闘機に求められるのは空中給油に依存しない作戦能力=航続距離だと言われており、F-22Aは600ガロンの増槽を主翼下に携行するとステルス能力が低下してしまう。
F-22Aは飛行中にステルス性能を回復させるため増槽とパイロンを機体から切り離す方式を採用しているが、接続部分や燃料の配管が露出するためレーダー反射断面積(RCS)が増加してクリーン状態のF-22Aよりもステルス能力が劣り、この問題を解決するため開発されているのがLDTP(Low Drag Tank and Pylon)と呼ばれる新型の増槽とパイロンだ。
新型の増槽のは従来のものに比べて抵抗が少なく超音速飛行を容易にする形状(予算案の中でマッハ1.2の飛行が可能と言及)を採用しており、新型のパイロンは従来のものよりレーダー反射断面積の劣化が少なくなるよう設計されているらしい。
さらに付け加えればF-22Aの設計は拡張性が乏しく「機内にはIRSTを組み込む物理的なスペース」が存在しないため、IRSTや追加の電子戦装置を収納できるステルスポッドを採用するはずだ。
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※アイキャッチ画像の出典:Courtesy photo by Kyle Larson, Lockheed Martin
高性能だが、高コストで早期退役ってまんまF14じゃん
最終的にF35より退役早そう
F35に対して、明確な優位性はステルスと速度かな
電子戦やチーミング、量産効果あたりは負けそうだしね
採用時期が早いからそりゃそうだとしか・・・
そのF35の致命的な設計の欠陥が記事になっていませんでしたかね?
block20の中身をF-35の物に代えれば、最強の戦闘機なって。当分新型は要らないぞ!
それがBLOCK40/45(仮)なのでは?
A-10もそうだが、素人にはなぜ議会がここまで退役させないことに心血を注ぐのかが理解できない節があるので、機会があったらその辺も少しだけ解説してほしい。もしかしたらバックナンバーにあるのかもしれないけれど。
海軍のやらかし(失敗プロジェクトの連続)起因の拒否反応とか、地元雇用の死守あたりは見掛ける様な気がするけど、根っ子にあるのは何が要因なのでしょうね?
A-10は元々ベトナム戦争で空軍から十分なCASを提供されなかったことに失望した陸軍が独自にジェット攻撃機を導入しようとしたところ「いやウチがやるから」と空軍が予算を分捕って配備したものだから、A-10を退役させるなら代わりに攻撃機を配備しなきゃ陸軍が納得しない
それから何十年も経って空軍は不人気で厄介者な攻撃機を廃止してF-35で代替させてくれって言ってるわけだけど、そういう経緯だから陸軍が拒否してて議会も陸軍の肩を持ってる
F-22は単純に議員の支持者にF-22の部品を作ってる数多くの企業と従業員がいるから
多国間で部品を調達してるF-35じゃF-22みたいに国内で金が回らないから置き換えると数千社の雇用が失われると言われている
A-10の退役に米陸軍が反対しているという話を米メディアで見かけたことがないので、その手の話は日本発の都市伝説だと思いますよ。
ケンドール空軍長官も「MQ-9、A-10、旧式化した空中給油機、一部のC-130は過去20年間の対テロ作戦で役に立ったが中国との戦いでは活躍に期待できないのに何故大金を投じて維持する必要があるのか?中国が怖がらない航空機を維持する理由はどこにあるのか?このようなプラットホームの維持は中国と戦う準備に集中したい空軍にとって足枷でしかないのに自分の選挙区で雇用を失うことを恐れる議員の抵抗に遭っている」と述べて、当該機の早期退役が進まないのは「選挙の票を気にする議員に原因がある」と断言してます。
F-22の退役に議会が抵抗しているのは「次世代戦闘機がスケジュール通りに進むのか?」というのが主な争点で、これを具体的に空軍が証明しないかぎり対立構造は解消されないでしょうね。
いつかこれも踏まえたまとめ記事を読みたいところ。まぁトピックに事欠かない今は難しいかもだけれども。
まさかF-15やF-16より先にF-22の方が先に絶滅しそうだとは20年前は思いもしなかったなぁ
F-35には既にコンコルド効果が発動している感。
F-22のアップデートなんかに金かけないで新機種開発する方が健全な発想だと思われ。
民意を反映させるのは良いことだけど、軍がいらないって言ってる装備の維持を無理強いするのもどうなんだろうか。
F-22は冷戦期に設計されるも形になるころには冷戦は終わっており最初から活躍の場がなかった
どうせこのまま朽ちるのなら本来の仮想敵ロシア相手にひと暴れ出来ればいいのに
陸軍のM1戦車あたりはイラク相手に大暴れできたから一応役にたったが空軍は不憫だ
F-22もF-35も拡張の予知ないからNGAD前倒しありえる気がします空軍。
研究開発・製造・アップグレードで、すでに1機6億ドル位は掛かってるだろうに、さらに0.7億ドル追加ですか・・・
維持費もF-35の方が安いんだし、F-22全廃でF-35を200機追加のほうがコスト低くなりそうなんですが
米国でブロック20×33機が不要なら、”F3までの繋ぎで”タダで貰えると嬉しいですね(笑)。
ここ数年の情勢によると思いますが、九州か山陰に置いておけば、大陸や半島の敵性国家を、
当面は黙らせることができたりして。
F22の生産中止を決定し、JSFを推進した国防長官は、レス・アスピン氏で正しいのでしょうか。
一応、知っておきたい所です。
F35の資料を見てみても、書いてある所を見つけられなかったので。
議会はまだ大金掛けてアップグレードさせる気なのか
ボーイング(共同開発)の仕事無くなるからってのは分かるけど…
A-10を延命させてたのにも思ったけど、大枠でならともかく、具体的な使い道まで議会が口出せるのはちょっとやりすぎに思えるなぁ
軍事費を政治的に使ってる余裕、もうないんじゃ無いのかね