米両院の軍事委員会が国防権限法(NDAA)の妥協案を発表、A-10の退役、E-3の退役、F-22A Block20の退役禁止、F-15C/Dの退役禁止、F-35Aの追加調達資金、E-7A取得関連の資金、トルコ向けF-16の売却ブロック条項削除などが含まれている。
参考:Congress reveals plan to increase defense budget by 8%
参考:Congress would approve A-10 retirements, more F-35s in defense bill
参考:Compromise NDAA released with $857.9 billion topline
途方もない金額になると警告していたF-22A Block20のアップグレードは避けられた格好だが、報告書次第で退役も可能
米両院の軍事委員会が国防権限法(NDAA)の妥協案を発表、これは上院案(8,500億ドル)と下院案(7,620億ドル)のすり合わせが事実上合意に達したという意味で、来週中までに両院で可決されれば年内にバイデン大統領の署名・成立に漕ぎ着けられる可能性がある。
発表されたNDAAの国防予算額は8,580億ドル(国防総省向けの8,167億ドルや核プログラム向けの303億ドルなどが含まれている)で、現時点で判明しているのはフォートウェイン空軍基地に運用中のA-10の退役、E-3の退役、F-22A Block20の退役禁止、F-15C/Dの退役禁止、F-35Aの追加調達資金、E-7A取得関連の資金、バイデン政権がキャンセルした核兵器搭載の海上発射型巡航ミサイルプログラムへの資金供給、トルコ向けF-16の売却ブロック条項削除などがある。
軍事委員会は空軍が要求していたA-10の退役を承認、これを受けて第163戦闘飛行隊(フォートウェイン空軍基地)はF-16C/Dを運用する部隊に改編され、同隊が運用していた21機のA-10(281機→260機)は退役することが確定、E-3については後継機取得に関する報告書を義務付けることで15機の退役(内2機は訓練用として保持/現役機は16機減少)を承認。
空軍が要求していた33機のF-22A Block20退役は当面禁止され、Block20を退役させた場合の訓練計画、戦闘能力や即応性に及ぼす影響の詳細な報告書が提出されない限り退役を承認しない方針だが、議会が要求していたBlock20のアップグレード(空軍がBlock20をBlock30/35相当にアップグレードすると途方もない金額になると警告していた)は見送られ、老朽化したF-15C/Dの退役も戦闘能力や即応性に及ぼす影響の詳細な報告書を要求している。
議会は空軍がウィッシュリスト(空軍予算外での調達希望)で要求していたF-35Aの追加調達に5機分の資金を供給、これで2023年度の発注数は38機に増えたものの昨年度と比較すると10機減だが、空軍は2023年度発注分=LOT17からBlock4向けのAN/APG-85(AN/APG-83の後継モデルと思われるが詳細は不明)に切り替わると明かしており、E-7Aについて議会は米空軍向けモデルの開発を加速するための資金や2機のプロトタイプ製造費用を承認した。
さらに注目すべきはバイデン政権がキャンセルした核兵器搭載の海上発射型巡航ミサイルプログラムの研究を続けるため2,500万ドルの支出を承認している点で、下院案のNDAAに含まれていたトルコ向けF-16の売却ブロック条項は妥協案から削除されており、ギリシャとトルコが繰り広げた議会へのロビー合戦はトルコ勝利で終わった格好だ。
一先ず2023年度のNDAAについてはこんな所だが、バイデン大統領が署名して正式に成立すればより詳しい内容が出てくるので年末か正月にでもお届けしたいと思っている。
WOW !!
The FY23 National Defense Authorization Act #NDAA grants DOD permission to begin buying👇using multi-year contracting:
🔸864,000 155mm rounds
🔸12,050 #Excalibur rounds
🔸12,000 #JAGM missiles
🔸700 #HIMARS launchers
🔸1,700 #ATACMS missiles
🔸106,000 #GMLRS rounds .. pic.twitter.com/st1CYGHOEt— Air Power (@MIL_STD) December 7, 2022
追記:NDAAに軍需品の複数年購入権限が含まれており、155mm砲弾を86.4万発、エクスカリバー砲弾を1.2万発、JAGMを1.2万発、HIMARSランチャーを700セット、ATACMSを1,700発、GMLRS弾を10.6万発、ハープーンを2,600発、NSMを1,250発、PAC-3MSE弾を3,850発、スティンガーを5,600発、ジャベリンを2.8万発、AIM-120を5,100発、AIM-9Xを5,100発、LRASMを950発、JASSMを3,100発、SM-6を1,500発の調達(単年ではなく複数年で)を要求している。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Makenna Gott
個人的にはF-15は大好きな機体なのでまだまだ飛びそうなのは嬉しい
EXの調達数増えないかな
F-35ばっかはつまんなくてなぁ
F-35Bを増やして、強襲揚陸艦をライトニング空母にしないと、中華に対抗できないよ。
F-15C/Dは、エアフレームがもつのだろうか?
A-10は、主翼を替えたばかりじゃなかったか?
全てF-35Bというアイデアはぶっ飛んでるようで、アリだと思うんです。対地ミサイルの長射程・高精度化や低コストドローンの飽和攻撃が現実の脅威となった今では沖縄の滑走路に頼るのは危ないわけですが、F-35Bなら理論上どこからでも離発着でき一度浮かんでしまえば中華艦載機にはほとんど捕捉されず一方的に撃破可能です。現実には山ほど護衛の駆逐艦がつくのでそう上手くいかないかもしれませんが、向こうには垂直離着陸可能なステルス艦載機など一機もないのだからこの技術的アドバンテージを最大限生かす戦略は悪くないと思いますね。
弾薬積めないし航続距離短いから非効率
中国が本気で日米を敵に回して全面戦争するなら沖縄の滑走路をあらゆる手段で破壊しようとするはずですが、今のところは想定しうる攻撃に対応した防衛が十分可能であり、もし滑走路がやられてもすぐに復旧可能だと思いますので全てF-35Bにする必要は薄いと思います。しかし中国が将来、ロシアが使ったような大量のドローンや巡航ミサイルによる攻撃をさらに巧く大規模に仕掛けてくる可能性は増していくと思います。
まずVTOL機の運用に関する資料探して見る事をおすすめします。そしてF-35Bの垂直離陸能力に関しても調べた方が良い。その上で自分が言った意見が変わらないないなら自分は何も言いません。
F-4世代の自分は逆にピンとこない機体
日本でのアプグレ対応の不味さでさらに印象悪い(これは難癖
持たないからイーグルⅡに更新という話なのに(中断しましたが)、一度完全な機体調査を行うという事でしょうね。
「老朽化したF-15C/Dの退役も戦闘能力や即応性に及ぼす影響の詳細な報告書を要求している。」
ボロカスに叩かれているF-15イーグルⅡもボーイング救済のため、いえ調査の結果次第では購入の再開に至るかもしれませんね。
ミリオタとしては購入の再開を期待。
A-10(OA-10)の退役がやっと承認されましたか。
空軍としてはさっさと退いて欲しい機体でしたからね。
PrSMの量産開始が2024~2025年の予定ですが、それでもATACMSを1700発発注するのですか。
大量消費の可能性を考えているのですかね。
ちょっと気になります。
JAGMはこの夏に生産体制が整ったと発表があったみたいですから、ついにフルレート生産開始ですか。
今後は見慣れたヘルファイヤやマーベリックが消えていくのでしょうね。
ヘルファイアミサイルの射程は最近3倍に延長する試験に成功したようですよ
A-10退役ですか。何度も何度も退役と言われながらも、そのたびに他機種では代替できない大活躍をしてきただけに、まだまだいけると思ってましたが……。
ただ、JDAMなどのGPS誘導爆弾が精密な爆撃を行えるようになり、MANPADS系の発達で陸軍への近接支援も難しくなってきたし、そもそもA-10が活躍できるような派手な戦場もこの後どこがあるか、というと微妙ではあるんですよね。
量産されたB-21レイダーが腹一杯抱えたJDAMを大量にばら撒いていくだけでも、A-10部隊規模の攻撃力を発揮できてしまうし……。
米軍以外運用できない偏った機体ですが、その無骨さがいいんですよね。ちょっと寂しくなりました。
空軍の42機の退役案が却下され21機の退役しか認められなかったあたりに信頼の厚さが表れていますね。
削減後も260機が現役に留まるようですし、完全退役はいつになるんでしょう。
間違いなくA-10は名機ですね。
遂にあのルーデルの理念を受け継いだA-10が退役かぁ…。
少し、寂しくなりますな…。
近接航空支援は、前線地上部隊が直接運用できる偵察・攻撃型UAVに置き換えられていくのが今後の方向性なんでしょうね。
対中国にシフトした戦略ではA-10のような機体が有効に活動できる戦場は著しく制限されそうですし。
A10爺さん、地元雇用の為という利権問題で無理やり存続させられた面大きいからね。
米空軍としては旧式化した機体からとっととパイロット引きはがして
F35などに充てたい所だったし、ようやくといった所だね。
いや陸軍や海兵隊からのA-10の地上支援への熱い期待からでしょう。
A-10は速やかにウクライナへ横流ししてほしい。
Su-25と編隊組んで、東ウクライナ解放の道標になってほしい。
塹壕戦には効き目がありそう。
F22の今後が玉虫色なのは、忖度なのかそれとも不安の表れか
まだF35には絞れないんすかね
やっとトルコにF-16Vが…ギリシャにはやはりF-35を売るのだろうか?対立に油を注ぐようなことにならなければ良いが、これ以上F-16禁輸でトルコの近代化を遅らせれば中露に接近しかねないと判断したのだろう
A-10は1個飛行隊の退役承認なんですよね。(281機→260機)とあるし。
コメント見ると誤解が発生している気がします
議会のA-10狂信派閥が未だに力強いのがよく分かる削減数
狂信とか言うのは流石に悪意ある言い方ですよ。
事実としてA-10の地上支援への熱い期待が陸上部隊にはあるんだから。
>GMLRS弾を10.6万発
複数年契約&ウクライナで大活躍とは言え、
流石に10万発強の大量生産には
思わず乾いた笑いが出てしまった。
無人化して簡素化して対地ドローンとしてウクライナに贈りましょう。
つまり退役する機体の解体を請け負った企業が
ポーランド辺りの工場で解体したことにして、
コックピット辺りを解体し終わったところで
ウクライナの企業が買い取ってラジコンドローンに改造、
誰の目にも無線機と判るコックピットキャノピーが無い姿で
「無線機だから!ドローンだからー!!」
と言い張れば・・・!!
そういえばテレビゲーム改造のシミュレータで
A-10の操縦訓練受けてるウクライナ軍のパイロット
のニュースがあったはず。
無駄にはならないってことか・・・?
米軍も「解体後は完全スクラップにする契約忘れてた、てへぺろ」とか言えば・・・。
ジョージアにSu-25の発注(西側で部品代用)したほうがいいきがするな
実際中国軍はふるーいジェット戦闘機を無人化してドローンにしているんじゃないかみたいな話がありますね。
YouTubeのUSAミリタリーチャンネルでも、この前米軍がブラックホークにロボットアーム乗っけて無人で操縦飛行させる実験に成功したという動画がアップされてました。
技術的にはちょっと頑張れば出来そうですね。
アメリカ空軍は訓練に使用する無人標的機としてF-16C(block 30)ベースのQF-16を使ってますが、これは対空ミサイルの評価用なので武装を外から制御する機能が必要ない状態なんですよね。
デビスモンサンあたりで眠ってたQF-16に改造しようとした機体が「うっかり」武装付きで出てしまうかもしれないですね。
A-10はヨーロッパでソ連の機甲部隊を相手にする前提で開発された機体だからウクライナで有終の美を飾ってほしいね
無人兵器が発達すると残った機体もこれ以上出番ないだろうし
半年後、ウクライナ上空でロシア戦車を蜂の巣にする謎の攻撃機が!
Ghost of Warthog
蜂の巣にされる戦車はもうないんや・・・
機銃掃射で地上をピンクの霧だらけにするウォートホッグ君が…?!!
ごく一部のA-10の退役(20/281)、もうゲリラ相手以外には使い道無いのに維持費だけが浪費されてるA-10
F-22も全部退役させたほうが良いだろうに、米軍基準なら性能的に陳腐化が進みまくってるし
>空軍がBlock20をBlock30/35相当にアップグレードすると途方もない金額になると警告していた
これやったら、一機で200億でも足らなくなりかねない(じゃなくても開発費は1機250億円以上)
>F-15C/Dの退役禁止
これはマジで意味が分からん、性能的にも一線で使えないし、部品確保すら大変になって維持費も右肩上がりなのに
記事に書いてある通り戦闘能力と即応性への影響についての報告書が上がってないから退役の承認ができないんだろう
要はF-15CDが抜けた分の穴埋めをどうするのか説明しろってことだな
元はF-35で穴埋め予定だったけど、それは議会が予算認めなかったし
ようはF-15EXを増やせってことなのかもしれん
あとF-15EXとF-15JJSI相当への近代化の比較も出せと言われそう。
A-10のような機体は今でも地上支援で効果を発揮することがウクライナの戦場で証明されていますよ。
ミサイルと弾薬の補充要求が日本からすると異次元すぎて…
まぁ米の国防予算を見ればこれが妥当なんですけどね。
F-22は次世代機ができても糖分残るんじゃないかなぁ
ドッグファイトできる機体がないとやばいだろ
より小型で大出力大発電量のエンジンを積んで、戦車のような近接防御兵器も積み、より重装甲化したらSAMへの耐性を獲得できないだろうか。退役寸前のA-10には無理としても、A-10のコンセプトを引き継いだ機体はまた出てくると予想する。
A-10のコンセプトを維持、の時点で飛行速度を上げる訳にいかないのがなぁ。
1割2割の装甲増じゃSAM耐性なんかつかないし、それ以上の重装甲化すれば大幅な重量増は避けられない。
増えた重量を飛ばすには翼を拡大するか速度を上げるかしかない。
翼を拡大すれば被弾面積やRCSが増える。
速度を上げればA-10の最大の長所である低速度域での飛行性能が損なわれる。
それならF-35でいいじゃん、となっちゃいそう。
そこでAPSやレーザー砲ですよ。まあ将来の話なので何とでも言えますが、それらの航空機搭載近接防御のコンセプトもすでに出てきていますし強力なエンジンさえあれば不可能ではないはず。需要(ロシアの大戦車軍団)が残っているかは別としてですが…。
ハープーンの調達数がNSMの倍というのも気になる
あれだけ購入しなかったATACMSを今更購入する意図は何だろう。限定的ながら後継のPrecision Strike Missileも作って来年ぐらいには配備するような感じなのにまだまだ信頼が置けるような状態ではないと言う事だろうか。
それにATACMSにも300kmを遙かに超える射程延伸型、ユニタリー弾頭、バンカーバスターと幾つか種類があるが一体どれを購入するつもりなのか、それとも何種類も買う感じになるんだろうか。
あのA-10も退役していくのか…
今回は比較的少数の退役で済んだけど、これからどうなるのか。
A-10は大好きな機体の一つなだけに少し寂しい。