米国は総額26億ドルのウクライナ支援を4日に発表、このパッケージには弾薬と燃料補給車が多く含まれているものの、支援額の約80%が米軍備蓄からの引き出しではなく「ウクライナ安全保障支援イニシアチブ」を活用したものなので提供に時間がかかる。
参考:Biden Administration Announces Additional Security Assistance for Ukraine
米軍備蓄から引き出される1回の支援規模としては特に大きいものではない
国防総省が4日に発表したパッケージは米軍備蓄から引き出される大統領権限(PDA)経由の5億ドルと、産業界から新たに調達するウクライナ安全保障支援イニシアチブ(USAI)経由の21億ドルで構成されており、このパッケージの特徴は弾薬と燃料補給車が多く含まれている点だろう。

出典:Photo by Lance Cpl. Nicholas Guevara
PDA経由の支援にはパトリオットシステム向けの追加弾薬、HIMARS向けの追加弾薬、155mm砲弾、105mm砲弾、120mm迫撃砲弾、120mm戦車砲弾、105mm戦車砲弾、25mm弾薬、TOWミサイル、グレネードランチャー×400基、グレネード弾×20万発、回収車輌×11輌、燃料補給車×61輌、重量物運搬トラック及びトレーラー×20輌などが含まれており、米軍備蓄から引き出される1回の支援規模(数量が明かされていないので金額で見た場合の話)としては特に大きいものではない。
USAI経由の支援にはNASAMS向け追加弾薬、対無人機向けの30mm機関砲を搭載した車輌×9輌、レーザー誘導式ロケット弾システム×10基、対空レーダー×3基、対空火器向けの30mm・23mm弾薬、130mm・122mm砲弾、BM-21向け弾薬、ロケットランチャー及び弾薬、120mm・81mm迫撃砲、120mm・81mm・60mm迫撃砲弾、120mm戦車砲弾薬、ジャベリン、対戦車ロケット、航空機向け精密弾薬、小口径火器×3,600丁、小口径弾薬×2,300万発以上、回収車輌×7輌、各種燃料補給車×113輌、戦車架橋車、兵站向け車輌×4輌、重量物運搬トラック及びトレーラー×10輌などが含まれている。

出典:SAAB GLSDB
PDA経由の支援は米軍備蓄から引き出すので「数日以内にウクライナ到着」の可能性があるが、USAI経由の支援は「これから産業界と契約を締結するための資金」であり、上記の弾薬・装備が企業の在庫にあるのではなく「契約後に生産してウクライナに納品する」という意味なので、物によっては半年後、1年後、2年後というものさえある。
例えばUSAI経由で提供を約束しているHIMARS×18輌(昨年9月発表)の引き渡しは「1年以上先」と、150km先の目標を攻撃可能なGLSDB(今年2月発表)の引き渡しは「契約締結から9ヶ月後」と予想されており、今回の発表でUSAI経由の支援額は60億ドルを突破している=以前に発表されたUSAI経由の弾薬類がウクライナに届いているのかも不明だ。

出典:U.S. Army Photo by Dori Whipple, Joint Munitions Command
米陸軍は3月末「今年中に155mm砲弾の生産量を月1.4万発から月2.4万発以上、5年後に月8.5万発(2025年までに月9万発という以前の目標から大きく後退している)まで拡大するため生産設備の拡張に14.5億ドルを投資する」と明かしたが、この計画は「新工場の建設」や「工作機械の納品」がスケジュール通り進むかどうかにかかっている。
旧ソ連規格の弾薬を生産する東欧諸国の企業も生産能力を超える発注が相次いでいるので「ウクライナへの納品」には相当時間がかかる可能性が高く、155mm砲弾や152mm砲弾の供給だけは西側諸国の悩みの種と言えるだろう。

出典:U.S. Army photo by Staff Sgt. Matthew Johnson, Operations Group, National Training Center.
因みに国防総省が公開しているファクトシートによればウクライナへの軍事支援額は「358億ドル(昨年2月24日以降のPDAとUSAIの合計額)」に達しており、米国は13ヶ月間で155mm砲弾150万発以上(+エクスカリバー砲弾6,500発以上)の提供を約束している。
全てがウクライナに届いていると仮定すると「米国は155mm砲弾を月11万発(平均)も失い続けている」という意味で、これだけ提供してもウクライナ軍の砲弾需要(月30万発以上)は満たされておらず、現時点では月1.4万発しか補充できないため155mm砲弾の米軍備蓄は恐ろし速度(月9万発)で消えている計算だ。
関連記事:米陸軍は155mm砲弾の生産量を朝鮮戦争の水準に戻す、2年以内に月産9万発
関連記事:砲弾の増産に必要な原材料は十分過ぎるほどある、問題は工作機械の入手性
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army photo by Sgt. Victor Everhart, Jr.
ロシアはこれ以上に消費してるわけで これからどんどん経済も産業も縮小していくのにどこまで耐えられるんだろうね。
ロシアは備蓄は多いけど兵器の旧式化が著しい上に新型兵器の生産ができていない。
戦車工場でも戦車そのものは生産できても電子パーツがないから張りぼてを作ってるのと変わらない状態。
ほんと侵略を国を傾けてまで全力でやるとか割が合わないわ。
こんだけ砲弾を撃ってるなら、榴弾砲の消耗もやばいだろうね
砲身は寿命に近いだろうし、本体も永遠に使える訳じゃない
結局弾だけじゃなく本体も送らないと、火力は維持できない
米国の105/120mmAPFSDSには劣化ウランしかない認識だけど他の砲弾なんだろうか。
昔の激戦地なんか金属による汚染とかかなり酷い。古いライフル弾なら鉛は普通だし最新だろうがロシアが鉛フリー弾薬使っているとは思えないし、そこに劣化ウランまで加わるとなると世界有数の穀倉地帯の将来どうなるのかね。一時期の福島並みの検査結果出さないと購入する国は無さそうだけれども。
そうは言ってもロシアに諦めさせない限りウクライナの主権も無いわけなので背に腹は代えられないでしょう。
中途半端な敗北や停戦ではロシアは諦めないことをウクライナ自身が良く知っているかと。
弾薬処理や除染等で日本の技術が役に立つでしょうか。
忘れがちですがロシアも劣化ウラン弾使ってますからね。
確かロシアのライフル弾は、軟鉄製だった記憶。環境の問題じゃなくて、コストの問題ですが。
ただし、普通のライフル弾は今でも鉛芯じゃないでしょうか?
ロシアやウクライナの小麦は途上国向けが多いらしいので、あんまり気にせず食べてくれるかもしれません
最悪なコメントだな。
人間を何だと思っているの?
不謹慎に思えるかもしれんが、それも現実の一面なんやで
ン年後には、ろくに買いもしないのにウクライナ産小麦に輸入禁止措置を行う某国の姿が…。
日本産の食物は、高価故に先進国に対して輸出することになる
先進国の贅沢な国民は、食料の選択の自由があるから細かいことを気にして不買する
ウクライナ産の食物は、安価だから途上国を支えてる
食わなきゃ餓死する選択肢のない環境で、将来の健康の心配なんて気にしてられない
過去にも独ソ戦やチェルノブイリで汚染されても建て直してやってきた
福島産は日本国民や周辺国が選り好みできるほど豊かだから選ばれなくなった
ウクライナ産に関してはしっかり除染や検査してそのコストを上乗せするほうが困る国出てきそうですよ
安くて腹が膨れるものならなんでもいいって国は残念ながら多い
130mm砲弾が含まれていますね。M46カノン砲(130mm)を使っているのですね。
152mmの砲身がそろそろ消耗してきたということでしょうか。
レーザー誘導式ロケット弾システム×10基とは何でしょうか。何を狙うのかな。
120mm弾薬が2回書いてあるのは、一つはL30に使うのでしょうか。
最近思うのですが、古いP-15M対艦ミサイルも”あの橋”を落とすのに有効かなと。
”エイラート事件”のスティックスミサイルの改良型ですね。
約1000lbの炸薬を載せて射程80kmM0.9で飛ぶので、上手く使えば良いかなと。