ウクライナ軍が驚異的なスピードで消耗する155mm砲弾の問題について米陸軍は「砲弾製造に必要な原材料は大量の備蓄があり、鋼材の供給も十分過ぎるほどあるが、工作機械の入手に時間がかかるため砲弾増産は長い道のりになる」と明かした。
参考:A Lack of Machine Tools Is Holding Back Ammo Production, Army Says
月9万発の155mm砲弾を生産するという計画は「工作機械の入手スピード」に左右される
西側諸国はウクライナに155mm砲弾を使用する榴弾砲・自走砲を計300門以上(引き渡し中・引き渡しを約束した分を含めると400門以上)を提供したが、航空戦力の接近拒否が成立した戦いは砲兵部隊の投射火力量が戦場を支配し、1日あたり1万発以上(侵攻初期6万発/今年1月1.9万発~2万発)も消耗するロシア軍の152mm砲弾は「何れ尽きる」と予想されていたものの、現在もロシア軍は月平均45万発もの152mm砲弾を発射しているとレズニコフ国防相が明かしている。

出典:Сухопутні війська ЗС України
これに対してウクライナ軍はNATO規格の砲兵装備で月56.4万発の155mm砲弾を発射可能なのだが、砲弾供給が少ないため月平均11万2,800発(投射火力量で言えば1対4)しか撃ち返すことができず、レズニコフ国防相はEUに月25万発の砲弾を要求しており、この問題は昨年10月頃から表面化していたため米国や欧州は155mm砲弾の増産に動き出しているものの「ウクライナの需要まで生産能力(米国が月9万発/欧米が月14万発~17.5万発以上)を引き上げには約2年かかる」というのが今のところの結論だ。
特に欧州の場合、155mm砲弾を増産するには火薬の生産量も増やさなければならず、中国から調達していたリンターコットンはCOVID‑19の影響で輸入に慢性的な遅れ(COVID‑19前は約3ヶ月前後→現在は6ヶ月~9ヶ月)が生じ、弾薬を製造企業が発射薬を手に入れるためのリードタイムは現在14ヶ月=今直ぐ発注しても発射薬が納品されるのは2024年5月頃になるという意味で、中国資本に買収された欧州の火薬企業も「半年ほど前から欧米企業に発射薬を供給しなくなった」とDieWelt紙が報じている。

出典:U.S. Army Photo by Dori Whipple, Joint Munitions Command
一方の米国では「工作機械の不足がウクライナへの弾薬供給の拡張を妨げている」と指摘されているのが興味深い。
米陸軍で調達や兵站を担当するブッシュ次官補は3日「155mm砲弾の製造に必要な原材料は大量の備蓄があり、鋼材も十分過ぎるほどの供給量があるので原材料不足が今直ぐ問題になることはないが、工作機械だけは直ぐ手に入らないので砲弾増産は長い道のりになる」と述べており、2025年までに155mm砲弾の生産量を6倍に増やして「月9万発」を生産するという計画は「工作機械の入手スピード」に左右されるという意味だ。

出典:U.S. Marine Corps photo by Cpl. Jennessa Davey
因みに対戦車ミサイルのジャベリン(ポーランドが現地生産を交渉中)、HIMARSやGMLRS弾(独ラインメタルが現地生産を交渉中)、HIMARSで使用する精密ストライクミサイル(オーストラリアが現地生産を検討中)、パトリオットが使用するPAC-2GEM弾(米レイセオンと独ラインメタルが現地生産で合意)の製造に同盟国が関心を示しており、ブッシュ次官補は「同盟国の生産能力が米産業界の負担軽減に役立つかもしれない」と指摘している。
どちらにしても西側諸国は経済効率を犠牲にしない範囲で増産に取り組むため、何をするにしても長いリードタイムが発生し、ここが戦時体制に入ったロシア産業界との大きな違いなのだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army photo by Sgt. Victor Everhart, Jr.
コロナ以降の部品供給不足がこんな所にも影響してるんか。。。
日本も火薬工場を今年立ち上げる〜って言ってたけど影響あるんかな?
そりゃいくら政府が買取保証するとかいっても、昨今のお気持ち優先世論がいつ反対になるかわからんし、世論が盛り上がったら政府も折れるから信用できんでしょ。
「企業は経済効率無視して弾作れ」
↓
暫く立ったら
↓
「私達は無駄なものを買わされている。そんな金あるなら福祉を充実しろ」
って世論が騒ぐのが目に見えてる。
日本事情で言えば、最大の増産ネックは「火薬加工品」「爆発物」を取り扱う事だと思います。
未経験業種はおいそれと参入出来ません。
従業員教育はもとより火薬類製造保安責任者も必要ですし(例年4,500名ほどが受検し合格率は
55~60%ほど)、製造施設や保管施設も厳重な安全審査を受けます。
アフリカとか東南アジアとか、この手の規制がとても緩い地域に工場建てて生産させて逆輸入
でもした方がずっと簡単で安く済むでしょうね
砲弾の製造過程がわからんけど、中間材だけでも日本で生産できんかね。
金属加工の工場なら町工場から大規模ラインまで山ほどあるし、工作機械なら日本にもアドバンテージあるし。
火薬込めてないからただの鉄の塊とかの名目で輸出して、国際分業出来ないものか。
朝鮮戦争の頃に逆戻りですな。
工作機械は一絡げには出来ないでしょうね。
155㎜砲弾の製造には、それ用の専用機や治具·金型が必要なんだと思います。
そういった設備·用具を製造できるメーカーも限られているでしょうから、サプライチェーンのボトルネックを解消するのに時間が必要なんだと思います。
完成弾でなければ、本邦もワッセナー協定の輸出管理枠組みで砲弾部品を輸出できます。兵器製造用機械装置も同枠組みで輸出できます。
米国も砲弾生産能力を今回強化するに当たって是非とも最新高効率の生産設備を整えたいはずですが、そのような加工機械装置は納期的に早急な取得が難しいということでしょう。
Youtubeなどに砲弾を製造している工場を見学する動画がいくつかありますが、
大まかには
原料となる鋼材の丸棒を切断
高周波で加熱して熱間鍛造で大まかな砲弾形に成形
旋盤で内外形を精密に切削
熱処理
検査
塗装
その後別工場で炸薬の充填や信管装着になると思われます。
この一連の工程でボトルネックになりそうな工作機械は鍛造とそれに必要な金型だけで、他のものは汎用の工作機械でどうにでもなるし必要なら外注に出せばいくらでも生産規模は拡大できると思うんですよねー。
金型だって高度な技術は要せずそんなに納期がかかるものでもないですし、単にNATO諸国にやる気がないだけっ手のが真相かと。
この手のやる気がない責める人はコロナ始まってマスクが不足した時、直ぐにマスクの生産体制が構築出来なかった事を思い出した方がいい。
設備投資の回収見込みがなけりゃ誰も動かない。
そんなに簡単だって言うなら日本が砲弾を作ってやればいいだろ。
ちょっと動画で製造工程を見たぐらいで知った風に語るな。
雑にガッチャンガッチャン単純にやる昔ながらの工場を作ったらどうか、と思いましたが、おそらく昔の欧米軍事産業を支えていた工作機械はもう作ってなくてそっちのほうも手に入らない。こんなところにもハイテク化の弊害があったんですね。
工作機械不足なんて、まさに太平洋戦争じみてきてるなと思いますね。それを言い出すのがアメリカというのが、時代の変化を感じますが。
工作機械の分野は確か、欧米系が高付加価値化路線、中韓が低価格路線で、日本はその狭間にいるせいで苦しいと聞いてます。この流れに乗れれば良いでしょうけど、現役で大量生産している韓国勢が強そうな気はしますね•••。
JETROより
工作機械生産額2022年国別シェア
1位中国28.1%、2位日本13.1%、3位ドイツ12.7%
工作機械市場(同)
中国28.5%、米国15.2%、イタリア7.3%、ドイツ6.7%、日本5.0%
工作機械輸出額(同)
ドイツが16.7%、日本が16.6%、中国が14.4%
別サイトより
世界シェアのメーカーランキング
1位 トルンプ (独)4.82%
2位 DMG森精機 4.20%
3位 アマダ 3.31%
4位 ニデック(日本電産) 2.28%
5位 牧野フライス製作所 1.98%
6位 シューラー 1.87%
7位 オークマ 1.83%
8位 斗山マシンツールズ 1.81%
9位 JTEKT 1.58%
10位 ファナック1.53%
11位 ジョージフィッシャー 1.16%
12位 現代WIA 0.82%
13位 グリーソンワークス 0.73%
14位 キロン・グループ 0.61%
15位 通用技術集団 0.21%
余談は許さないものの、工作機械の世界シェアトップ10に日本企業が7社(独:トルンプ、シューラー 韓:斗山を除く)が入るなど、競争力はまだまだ日本が強い分野です
補足:
後半のシェア云々は2021年のもので、上場してないメーカーや非公開のメーカーは調査対象外とのこと。
情報ありがとうございます。思っているより日本勢は踏ん張れているんですね。それでもトップにドイツがいるのは流石といったところでしょうか。
よくそこまで卑屈になれるなぁ
工作機械売上世界一のマザック(日本)がないのは上場してないからですねw
中国の国営企業もか。
ロシア国内に工作機械工場があり撤退したものの、置いてきた設備で武器製造に転用されたのがDMG森精機。ウラルザゴンザボードに納品されて皮肉にもロシアに加担してしまっている。
陸自の廃棄されたはずの高機動車もロシア陸軍が入手してウクライナで使用しています。
ウクライナに武器を供与せず、ロシアには間接的に便宜を図る狂った価値観の日本人もいるようです。
自分達に武器を突きつける相手を強くして、愚かだと思います。
そういう危機管理はあまり得意でない気がしますね。
DMG森精機はラインを破壊して帰ってくれば良いのに。。。
今の中共をアメリカと共に育てたのも日本ですからね。
破壊なんてしたら、それこそそれを出汁に現地駐在員を拘留されそうですし、撤退しただけでも御の字では?保守部品を調達しづらくなるから、稼働率は下がって行くでしょうし。
中国については、欧米は日本の封じ込めのため、日本としては恐らく対欧米の東アジア連合の実現、という思惑があって、その両者をうまく手玉に取った共産党が優秀だったという話ですから。
中国に進出した企業は、撤退するときは金型まで徹底的に破壊して撤退しましたよ。
撤退を決めたとはいえ、自社製品である事には変わらないのだから、そういうのを残していくのは論外。
森精機「全機材、軸回りにガツンとワンパンかましてやったからもうまともな精度は出せないぞ(血涙」
露助「ひゃっはー、日本の工作機械は最高だぜ!!」
…みたいな事になってそう。
高機動車はそもそもそのままでは国内での民間への払い下げすらされてないがな
ロシア軍使ったりしてるのもスクラップ品を再生したやつでしょうし
どこでどういうレストアしたかわからんもの使うのは(恐らくは使うしかないのでしょうが)勇気あるなぁと
あんまりそう言う数値出しても意味がない気がする。そのシェアって携帯やPC製造機械も含んだ話だし今回の単純な砲弾製造だけに限って言うなら関係することが出来ない企業も含まれている。
大元の弾殻作るためのプレス(鍛圧)機械とかは結構な納期待ちじゃないかなとは思う。マイナーメーカーの油圧1000tのシリンダー破損しただけで納期半年以上とか言われて生産効率はがた落ちだし、数が出ないせいで用途が限られる部品に関しては余裕のある在庫とか持たずに発注分に近い在庫しか無い可能性があるから、急な増産対応が無理なのはどこの業界も似たようなもの。
ある程度の汎用性がある大きめの圧着端子レベルですら様々な理由で欠品が酷いとかあるんで集約化とか効率求めた結果、局所的な天災とかで大したことが無い部品すら供給問題が出てくる始末で国家の権限使って余裕を持たせる等の介入とかさせないと早々に解決する問題じゃないと思う。
工作機械の導入に加えて人も教育せにゃならんし、物流や保管、さらには業務内容が内容なので監査や安全対策も整えないとならんからな。都市開発ゲームみたく建ったら即フル稼働なら楽なんだが。
ところで欧州は既存の工場の生産量増加でウクライナに対応するとして、新規の工場建設の話は聞かんな。戦車やら戦闘機やらで忙しいのもあるんだろうが。
トランプが次期大統領選の公約にウクライナ支援の凍結とか言い出したから企業にとっては最悪梯子外される恐れも出て来たので設備投資が怖くてできないだろうな。
ルーズベルトも私は絶対に参戦しませんがマニュフェストだった
フランクリンルーズベルトは
周りがコミュニストだらけで
本人もコミュニストに取り込まれた疑い大。
トランプのカジノがロシアン・マフィアとズブズブだったり
ヒラリーとの選挙でもロシアが支援してたとか
もうロシアに取り込まれていることを隠す気もないのかな ?
そもそも選挙まで戦線持つんか…?
精密誘導兵器が発達した理由の一つがこういう消耗戦に耐えきれず使用量を減らすことで結果優位に立つ目的もあった
大量に撃っても当たらなければ無いのと一緒だから
仮に4倍としても撃ち勝ってるかは怪しい。
個人的には4倍もウクライナがもっと本気で
砲弾支援してほしいから盛っている気がする。
一般に精密誘導兵器の殺傷力は8倍、有効性は最大50倍とも言われる
その分、兵站にも優れている
が、通常砲弾のコストが安いことを活かして敵の殲滅を目標としない威嚇、威圧、威力偵察目的の砲撃もある
猛打で敵兵士を心理的に萎縮させて地下施設に閉じ込めてその隙に浸透し、敵司令部を制圧するのが100年前からの戦術の一種
精密誘導兵器のコストでこの戦術は難しいと考える
それはどうでしょう。
命中率の向上は、そもそも投射型兵器がこの世に生まれた時からの至上命題です。
精密誘導兵器の発達はただそれを技術的に追求した結果に過ぎません。
結果的に無駄弾が減ったのは副次的な効果です。
代わり複雑高価となって戦時量産が出来ずに、今まさに必要な時期に枯渇する
弊害を産んで、結果的に精密誘導兵器に頼った戦争は、今回の様な長期間の消耗戦
に耐えられなくなっています。それが今の起きている問題です。
現代の軍用火薬のことよく分からないんですけど、今もセルロース系の原料から作るんですね。そして輸入元は中国と。ウイグル問題と絡めてあれだけバッシングしていたところが安全保障の生命線になっていたとは皮肉ですな。
しかし45万発だ56万発だと言うと本当に感覚が麻痺しますよね。陸自で平時備蓄している155ミリ榴弾の数がおおよそ4万発程度じゃないかという話がありますから、文字通り世界が違っていますよ(これではせいぜい1会戦ぶんしか賄えないだろうという批判は冷戦中にはもうありました)。政府がどこまで検討しているか分かりませんが、台湾を念頭にウクライナモデルの兵器供与をする可能性も無くはない訳で、今後の体制拡充の動きが欧州の需要とどうリンクするのかしないのか、注目ですね。
日本だと小松製作所が155mm榴弾を生産しているみたいですね。
リンク
昔、本で読んだ話です。
日露戦争の時、野砲の砲弾が不足した時の、有坂成章(当時少将)の仕事です。
弾殻と信管の製造がネックだったとのこと。
弾殻の製造を民間企業に出したのだけど、弾殻の絞りの部分を加工できる工場が限られていたそうです。
そこで、弾殻を絞り部分と直線部分に分けて製造し、接合をしたそうです。
そうすることで、生産に係われる工場の数を増やし、何とか、必要数を作ったとか。
品質の評判は良くはなかったそうですが。外国発注分の到着は奉天会戦の後だったとのこと。
記事の写真を見ると、弾殻を一体成型で製造しているようなので、ちょっと書いてみました。
今回も数が足りなくなりそうな予想だそうですが、誰か、対策に頭を使ってくれる人はいないかな。
日本人である必要はないと思うけれど。
>BBC
>ロシアの予備役は「シャベル」で戦闘、弾薬不足で「接近戦」か=英国防省報告
本当にロシアは砲弾作れてるのかな ?
ウクライナは支援が欲しいから盛ってる可能性あるし
ロシアもいつものことで盛って報道している気もする。
(ロシア戦車なんかは発表と現地の戦車数と食い違っているし
工作機械、半導体不足が言われている)
シャベルで戦闘はやだな。
旧日本軍の銃剣・日本新刀のがいいな。
竹槍の方がまだましな気もする。
刃が付いていない斧みたいな感じか ?
ある時のロシア軍の演習7日間で使った弾薬の量が11万トンで、それは陸自が持ってる全弾薬量に匹敵するんじゃねとかいう話を聞いたことがあります。
それだけ普段から景気良く撃てるということは砲弾の大量生産にはかなり自信があるんでしょう。
弾薬は基本安いんでばんばん作ってるんでしょうな
作り方なんて100年変わってないだろうし
金門包丁の原材料提供元となった金門砲戦で使用された砲弾は21年間で47万発。1日における最大は開戦初日の5.7万発だったらしい。150㎢の金門島と単純比較はできないけど、宇露双方でひと月当たり合計50~60万発を何か月も撃ち合っているのは凄まじい。戦闘が長く続いているバフムートでは砲撃密度で金門島を上回っているかもしれない。
気が早い上に、ちょっと不謹慎かもしれないが、砲弾や装甲車輛を原材料とした鋼材が戦後この辺りの名物になったりして。
他の記事で読んだのですが。
アゾフスタル製鉄所が占領されているので、特殊鋼は払底しているとか。
70%程度だったそうです。
真面目に、電気炉設備を援助しても良いのでは、と思います。