2022年度の国防権限法成立に向け上院と下院の協議が大詰めを迎えている中、米空軍が要求していた160機以上のレガシープラットホーム早期退役に議会が同意したと報じられている。
参考:Congress approves retirement of 160+ Air Force planes – with one notable exception
160機以上のレガシープラットホーム早期退役に同意してもA-10の退役だけは許さない議会
米空軍は将来戦力(次期戦闘機やB-21など)の早期実用化に必要な資金を捻出するため中国やロシアといった「大国間での戦い」に役に立たず、老朽化が原因で運用・維持コストが高騰しているレガシープラットホームの早期退役を議会に何度も要求してきたが、後継機を用意した退役ではないため議会は戦力低下を懸念してこれを認めてこなかった。
しかし2022年度の国防権限法(毎年の国防予算の大枠を決める法律)成立に向け協議が大詰めを迎えている中、上院と下院の関係者は「空軍が要求している160機以上のレガシープラットホーム早期退役が国防権限法の中で認められる」と明かしており、これが事実なら米空軍はF-16C/D×47機、F-15C/D×48機、E-8×4機、RQ-4/Block30×20機、KC-135×18機、KC-10×14機、C-130H×13機などの航空機を通称「飛行機の墓場(乾燥した砂漠地帯に位置するデビスモンサン空軍基地やモハーヴェ空港など)」と呼ばれる場所に運んで処分することが出来るようになる。
つまり空軍予算を圧迫していた運用・維持コストが高騰しているレガシープラットホームと手を切ることができ、浮いた資金を次期戦闘機プログラムやB-21の開発に回すことが可能になるという意味なのだが、米空軍が最も強く手放すことを望んでいた42機のA-10の早期退役だけは議会にブロックされたため今後も維持(281機)しなければならない。
ケンドール空軍長官は「過去20年間の対テロ作戦で役に立ったが中国との戦いでは活躍に期待できないのに何故大金を投じて維持する必要があるのか?中国が怖がらない航空機を維持する理由はどこにあるのか?このようなプラットホームの維持は中国と戦う準備に集中したい空軍にとって足枷でしかないのに自分の選挙区で雇用を失うことを恐れる議員の抵抗に遭っている」と語っていたが、議会は台湾海峡や太平洋を舞台にした戦場で特に出番が回ってこないA-10を退役させて資金を節約するよりも選挙区の雇用(A-10のアップグレードや維持を担当しているボーイングの事情)を優先したのだろう。
さらに次期戦闘機の開発資金を捻出するためF/A-18E/Fのアップグレードバージョン「BlockIII」の新規調達を2022年度から打ち切ることを要求していた米海軍のマイク・ギルディ作戦部長は「海軍が必要としていない航空機の調達を議会に働きかけるを止めてほしい=ロビー活動を通じて議会にBlockIIIの新規購入を頼むをやめてくれ」と訴えて注目を集めていたが、2022年度の国防権限法最終案には新造機のF/A-18E/F×12機を調達する資金が盛り込まれていることが確認されている。
参考:U.S. Congress boosts funding for Boeing jet fighters, ships in defense bill
要するに空軍や海軍の切なる願い=中国とのギャップを埋める予算が限られているから本当に邪魔しないでくれという要求を退け、議会は2022年度の予算で「ボーイングに仕事を用意した」という意味だ。
戦場で幾つもの伝説を残したA-10は議会の鉄壁の守りに支えられ今後も空を飛び続けることになるが、高度な防空システムが普及した世界では低空を低速で飛行するA-10が生き残れるほど優しくないので恐らく出番は回ってこないだろう。
余談だが議会がRQ-4/Block30の退役を認めたため、Block30を運用するのは日本と韓国だけになってしまった(米空軍が維持するRQ-4/Block40は7機のみ)。
関連記事:米空軍長官、A-10退役が進まないのは選挙区の雇用を心配する議員が原因
関連記事:一体いつまでA-10を維持させるのか? 米上院が空軍のA-10処分要求を拒否
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関連記事:RQ-4を見限っている米空軍、戦力として残すBlock40に期待するのはE-8のバックアップ
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air National Guard photo by Staff Sgt. Mercedee Wilds
MANPADSでも攻撃されうるから、ここ数年のお仕事の大半は上空から誘導爆弾を落とす→他の機種でも構わないお仕事
っていう話も聞いたけど対中を言い出したら尚更だよなぁ
てか、航空機の維持費は減らせ、能力は維持しろ、ただし一部旧式機の退役は認めない
ってこれ軍はキレていいレベル
これでRQ-4/Block30のスペアパーツには当分困らないな(怒)
全くだ
安全保障のためには兵器はすべてアメリカから輸入すべきなんて他力本願論者は、この記事をどう読んでるのかな
本当にそんな主張の人はいるの?
いるよ、いつものおかしな人とか
米製兵器の輸入は貿易調整の影響が大きいので純軍事的に論ずるのは困難。
自動車産業は北米市場に依存しているし、北米で稼げなくなれば中国依存が強まるだろう。
その論理はボーイング救済が米軍全体の脚を引っ張ってる話と同じだよ
国内の雇用とかも絡むのだろうけど、もう貿易立国ではないのだからねぇ
円安は庶民には痛いし、輸出産業重視とかってただの弱みにしか思えん
2020年の「世界の輸出額 国別ランキング・推移」によると日本は世界第五位の輸出額とのこと
リンク
兵器と経済(雇用)のつながりが強いとどうしようもない問題だね。
現代に見合う後継機を作れればいいんだろうけど、対中でA-10が担う役割自体が不要だから厳しいのかね。
根っこの問題はボーイングの企業体質や技術力の欠如なのだから
そっちを支援、改善した方がお互いにメリットがあるだろうに。
ボーイングを守る為にロートル機を維持してもデメリットばかりで未来は無い。
勝者が独り占めするのを良しとするアメリカの論理では、そういう姿での私企業救済は無いんだろ
他企業によるボーイングの解体という合理的案はボーイングが呑まないし
今更だが、A-10って陸軍機だと思ってた。
空軍は陸軍に引き取って貰いたいらしい。
俺はフェアチャイルド製だと思ってた
アメリカの議会的にはグアムあたりを維持できれば後はどうでもいいってことなんだろう
純粋に軍事的な合理性だけから観れば「何考えてんだ」って話だが、A10の維持が雇用(=経済)と繋がっているのなら政治としてはあり得る判断だわな。そして、軍事は政治から自由ではない。逆も然りだが。
外野の日本からしたら「いいからさっさと対中シフトしてくれ」ってなモンだが、日本だってそれは全く出来ていないし、ましてや総力戦モードなんかはどこの国でも実際戦争にならんと無理だろう。
時間をかけて緩々と切り替えていくか、ショック療法で一気に切り替えるか。
後者じゃなければいいけどなぁ。
自走砲の砲身から作ったGBU-28バンカーバスターみたいに、改造して別の使い方できんもんかね
水道など必須のインフラまで民営化してる国が、いまさらボーイングは国益のために必要だからと表だっての公的救済はできないもんな
行きすぎた資本主義論理がどういう結末を迎えるのか
いっそA-10を台湾に供与してしまえばいいのでは。ボーイングのサポート業務は続くし米空軍は負担から開放される。まぁ十中八九台湾は持て余すだろうけど
持て余すっていうか台湾にとっては普通にただのゴミやろ・・・
百歩譲って新品とか新古品くらいならともかく、主翼交換する必要すらあるロートルなんだし
F-15C/Dの中身は欲しい
かなりガチで
イスラエルは米空軍からF-15の主翼?を譲渡してもらって、
再利用しているなんて話があったような。
中味を上手くつまむことなんてできるか?むしろ丸ごと使う方が良いだろう機体寿命は分からんが。
マッコイじいさん「〜♪」
>議会は台湾海峡や太平洋を舞台にした戦場で特に出番が回ってこないA-10を
たしか、弱腰オバマが中国の南沙諸島(だったと思う)に大軍の漁船でちょっかい出した時、わざわざ韓国から空中給油して現場の上空に徘徊させて威圧してたんじゃなかったかな?
上手いこと使えば、まだ出番あるかもね。
(少なくとも攻撃ヘリより役に立ちそう)
攻撃ヘリは普通に出番あるし新造も新規開発も要求してるぞ
軍産複合体は健在だね。予算に群がるシロアリのようだね。
全機じゃなく一部退役さえ認めてくれないのか
ボーイング救済ならF-15EXでも追加発注してやればと思うが担当する工場が違うんだろな
いっそA-10維持費分の費用でうるさい選挙区の工場を別機種に転換すればいいんじゃないの
今後も長く調達が続きそうな機種向けに
KC-46とか(フラグ
A-10は現在、陸軍兵士からはどう思われてるんやろね?
いや、空軍の金だろ!何言うとんねん!ってのは分かるし、陸軍側が必要っていうならそっちが管理せえや!ってのも分かるけど、それはおいといて、現在の陸軍兵士からは実際に必要とされているのか?っていう。
やっぱり存在は心強いのだろうか?生身で戦う人間としては?
敵と膠着状態で接場詰まった状況なら爆弾数発落として退散されるよりは長時間粘ってついでにアヴェンジャーもぶっ放してくれる方がありがたいだろうな
上の方でも出てるけど、最近は民兵でも携帯SAM持ってて反撃してきたりするから
いかにA-10といえどホイホイとアベンジャーぶっ放すシチュエーションは少なくて、誘導爆弾落として退散することが多いらしいよ
選択肢としてあった方がないよりはいいのかもしれんけど、運用実態としてはあえてA-10ってことも少ないのかもね
ぶっちゃけ地上援護に限定してもA-10より空中戦もやれて速度も出せる(自己防衛できる)F-16系のほうが使いやすいし役に立つ
機銃使うにしても戦車相手でもないかぎり20mmで十分だし
C-130H×13機が早期退役の対象になるのは何で?
古いからじゃね?
C-130Hって1975年から配備開始だし、最終ロットが1996年だし
(良い意味で)
さすがA―10!!
選挙対策とボーイング救済のために首をメリメリ絞められる米軍……ぶっちゃけ中国軍より相手すべきは身内なんじゃ?
昔っから、最大の米空母撃沈戦果を持っているのは議会って云われてますし……
未だ1件も無い、スーパーキャリアの撃沈記録を持っているんですぜ
23mmの徹甲弾まで耐えるとかって装甲車並だ
秒間3発程度の単装砲でいいと思うがな。ヤークト系戦車みたいに10度くらい可動
ヘルメット連動照準
いうて今時の対空機関砲って30mmあたりが標準じゃね
パーンツィリ-S1も30mmとミサイルのセットだし
対空だと近接信管とかタイムモードじゃないかな
ヒューマノイド型の遠隔操縦ロボットを作って、A-10のコクピットに座らせれば良くね?
これで立派な無人機さ
正直ボーイングの雇用だけなら色々と調整してA-10改修している工場でF-15C/Dを近代化とかの手はある(というよりもボーイングが航空機で打てるのがF-15かF/A-18しかないので自ずとその二つに絞られる)
まだ米軍的には、A-10維持した方が安くなりそうだけど(対中の戦力値的にはF-15の改修の方がまだ役には立つがF-15EXの採用でその目がない)
管理人の書いた運用廃止の数って5月のエアフォースマガジンだったかの内容より随分おとなしめだよな。確かF-15と16は100機以上、A-10は全廃だった気がするんだけど。
A-10の任務は代替出来ない部分があるのは事実だし、陸軍のお偉いさんは空軍は費用低減をするには全廃が妥当と考えているが少数は残して欲しい位のスタンスだから、用途が限られるのは百も承知なんだろう。
雇用維持でA-10が生き残るなら空軍がボーイング製の固定翼A-10後継機や陸軍がボーイング製の回転翼のより性能が高い(運用高度/航続距離/ペイロード)機体が出てこない限は退役の目はなさそう。
空軍が運用コスト低減したいなら精度が出なくて脅しの意味が強い30mmをより小口径か単銃身の機関砲とかに変えるとかも有りだと思うが費用も掛かるしバランス崩れるよな。
A-10は
予想されるウンカの如き迫り来る
ドローンや歩兵や装甲車などにもしかして有効かも
でもその状況は絶対制空権上ではないよね
想像したくない場面
唯一無二のA-10は個人的には好きやなー