米国関連

四面楚歌のボーイング、米海軍がF/A-18E/F BlockⅡ調達プログラム終了を発表

米海軍は24日、ボーイングに発注した最後のF/A-18E/F BlockⅡを受け取りBlockⅡ調達プログラム(単座型322機+複座型286機)が終了したことを明らかにした。今後は能力向上型のF/A-18E/F BlockⅢ調達に移行するはずだったのだが最悪、数年以内に生産ラインの閉鎖に追い込まれる可能性が取り沙汰されている。

参考:Navy takes delivery of final Block II Super Hornet, looks ahead to Block III

ボーイングにとって生命線といえるF/A-18E/F BlockⅢの生産ラインが大ピンチ

本来、米海軍のF/A-18E/F調達はBlockⅡで終了しロッキード・マーティンが開発した第5世代戦闘機F-35Cに一本化されるはずだったのだが、F-35プログラムの大幅な遅延の影響でF/A-18E/Fの調達をもう暫く継続しなければならななくなり、そこで開発されたのが能力向上型のF/A-18E/F BlockⅢだ。

米海軍は昨年、ボーイングに対しBlockⅢ開発のため最大40億ドル(約4,200億ドル)の契約を与えて2機のプロトタイプを製造するよう指示、完成したプロトタイプを使用して海軍が能力評価テストを行い正式発注が行われる予定で、海外受注で苦戦するF/A-18E/Fの生産ライン維持は米海軍からの受注で当面心配しなくても良いはずだったのだが米海軍の心変わりのせいで苦境に陥っている。

補足:因みに40億ドル=BlockⅢの開発費用ではなく「BlockⅢ開発費用+BlockⅢを最大72機の発注した場合にボーイングが受け取ることになる合計額が40億ドル」と言う意味だ。そのためBlockⅢ発注は複数年の予算に分割されて計上される仕組みになっており、米海軍は2021会計年度予算にF/A-18E/F BlockⅢを24機調達するための予算を盛り込んでいる。

米海軍は今年2月、2021年以降のF/A-18E/F BlockⅢ調達を中止して次世代戦闘機「F/A-XX」開発プログラムに資金を回すことを方針を表明、もし議会が海軍の方針を支持すれば海軍向けのBlockⅢ調達プログラムはたった24機の発注だけで終了を迎えることになり、クウェート空軍向けの28機分(2021年1月中に全機引き渡し予定)しかバックオーダーがないF/A-18E/Fの生産ラインにとって余りにも致命的過ぎる決定だ。

出典:ボーイング F/A-18E/F BlockⅢ

2021年会計年度に発注される24機のF/A-18E/F BlockⅢを製造するのに何年かかるか分からないが、クウェート空軍向けの28機製造に3年も掛かっていないため早ければ2024年中に生産ラインを維持するためのバックオーダーが尽きることが予想されるため、あと3年以内に海外市場から新規受注を獲得してこなければF/A-18E/F製造の歴史が幕を下ろすことになりかねない。

そのため先日発表されたドイツのF/A-18E/F購入意思の伝達は、まさにボーイングにとって恵みの雨だったに違いない。

しかしドイツのF/A-18E/F購入は複雑な国内事情の影響もあって本当に契約締結まで辿り着けるの非常に怪しく、カナダ、フィンランド、スペイン、スイス、インドへの提案も採用に至るかは依然として不透明で、ロッキード・マーティンのF-16Vのように受注を確信(もしくは確定)させるような案件が一つもなく、現時点のボーイングからは万策が尽きた感が漂っている。

関連記事:全く決着していない独トーネード後継機問題、第二ラウンド開始を告げる鐘が鳴っただけ

恐らくボーイングに残された手段は政治力によって議会を動かし米海軍の方針を撤回させるか、トランプ大統領に泣きついてGDP比2.0%を目標に国防費増額基調が続くNATO加盟国あたりにねじ込むことぐらいだろう。

ただ政治力の動員はF-15EXを空軍にねじ込む際に使用したばかりなので短期間で再び政治力を動員すれば今度こそ大きな批判を受ける可能性が高く、NATO加盟国は軒並み新型コロナウイルス(COVID-19)の影響でGDPが落ち込むことがほぼ確定しているため、国防費支出を増やさなくてもGDPに占める比率が勝手に上昇するという皮肉な結果が生じている。そのためトランプ大統領に泣きついてF/A-18E/Fを新規にねじ込むは難しいはずだ。

正にボーイングにとっては「泣きっ面にホーネット」と言っていい。

経営が厳しいボーイングに新たな問題が発生、合併交渉が拗れエンブラエルとの訴訟に発展する可能性

上記の記事とは直接関係ないのだが、ボーイングは予定していたエンブラエルとの合併を中止すると発表した。

ボーイングとエンブラエルは互いの商用機部門を合併を行うため、ボーイング側が約42億ドル(約4,500億円)を出資してエンブラエル株の80%を取得し傘下に収める条件でほぼ話がついていたのだが、突然ボーイングがエンブラエル側に合併条件の見直しを要求したことで合意が決裂してしまったと報じられている。

エンブラエル側によれば今回の合併決裂の原因は、新型コロナウイルスの影響で合併に必要な42億ドルもの資金が用意できなくなったボーイングが合併は合法的に破壊するためエンブラエル側が到底飲めないような条件を突然突きつけてきたと説明しており、エンブラエル側はボーイングに損害賠償を請求するための法的措置を講じると明らかにした。

ボーイングは合併交渉の最終日である4月24日までにエンブラエル側が合併条件を満たせなかったためボーイングは合併を中止する権利があると話しているが、エンブラエル側は「あらゆる手段を用いて生じた損害を取り戻す」と息巻いている。

ボーイングの軍事部門は先細るばかりで、強みであって商用機部門は737MAXの墜落事故や新型コロナウイルスの影響による航空需要が落ち込み、これに加えてエンブラエルとの合併交渉が拗れ新たに訴訟を抱え込むことになれば経営に与える影響も無視できないはずだ。

本当に今年はボーイングとって全く良いニースがない。

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Lt. Alex Grammar/Released

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コメント

    • 匿名
    • 2020年 4月 27日

    これでボーイングは、戦闘機開発・製造からの撤退確定だな。
    もう売れそうな戦闘機がF-15E系列しか無いし、新型戦闘機の開発計画が不透明な状況である以上、コロナウイルスによる耐乏経営もあるだろうから「もう戦闘機はロッキード・マーチンとだけでやっていろ!」と米政府に捨て台詞を吐いて、敗戦処理を始めてもおかしくないと思う。
    それよりも国産機開発賛成派としては、エンブラエルとの合併中止発表の方が朗報。
    三菱スペースジェットもコロナウイルスで形式証明どころじゃないから、開発中止になってもおかしくない情勢だっただけに、最大のライバルがズッコケてくれたのは幸運としか言い様が無い。

    • 匿名
    • 2020年 4月 27日

    流石に国が潰さないだろうけど、ほんと踏んだり蹴ったりだな
    厄年や

    • 匿名
    • 2020年 4月 27日

    >>泣きっ面にホーネット
    これいいたいだけだろwwwwwww

      • 匿名
      • 2020年 4月 27日

      ルー大柴みたいでいいですね!

      • 匿名
      • 2020年 4月 27日

      こういう壮大な前フリは嫌いじゃない

    • 匿名
    • 2020年 4月 27日

    海外での戦闘機購入候補にはよく上がるが契約に繋がっていない。

    リーズナブルなF-16V、ステルス戦闘機のF-35AのLM勢と国内にもライバルがいるから海外セールスにおいてアメリカ政府のバックアップも期待出来ない。

    ノースロップ設計の系譜の戦闘機もついに無くなってしまうのか?

    • 匿名
    • 2020年 4月 27日

    米海軍としてはスパホのライン閉じちゃって大丈夫なのかね?
    まだ始まってもいないF/A-XXが戦力化されるまではF-35Cとの二本立てだけどそのF-35Cもまだ色々怪しい。
    て事で今後まだかなりの期間スパホが主力になると思うんだけど、F-22みたいに「ライン閉じちゃったせいでの厄介事」を抱え込む心配はないのかな。

    • 匿名
    • 2020年 4月 27日

    これで喜ぶのは中国、ロシア?
    それともエアバス?

    • 匿名
    • 2020年 4月 27日

    そもそも海軍、海兵隊の戦力、特に航空機に関しては削減する方向だろうから、こういう話になるわな。

    • 匿名
    • 2020年 4月 27日

    鈍足なことを除けば間違いなく超が付く名機なのにボーイング本体がアレすぎるのに引きずられてか、最近はいまいち不遇だねぇ、スパホ

    • 匿名
    • 2020年 4月 27日

    ボーイングにいいニュースが無いというより
    ただ単に「因果応報」ということに尽きるように思えますが?

    あと富士山頂とF18の写真いいですなあ。

    • 匿名
    • 2020年 4月 27日

    まだだ、まだトップガンがある
    上映すればスパホ大人気間違いなし
    トム・クルーズはスーパークルーズより強いんや

      • 匿名
      • 2020年 4月 27日

      なんでトムが乗る機体、すぐ生産中止になってしまうん?

    • 匿名
    • 2020年 4月 27日

    そもそも、旧マクダネルダグラスの経営陣が悪い!
    ボーイングと合併しなければ、F-35の下請が出来て戦闘機メーカーの地位が続いていたのに…

    • 匿名
    • 2020年 4月 27日

    ボーイングにとっては「泣きっ面にホーネット」

      • 匿名
      • 2020年 4月 27日

      スパホは有り得ないにしてもT-4後継機種にT-7の売り込みは有るかも。

      日本がT-50なんて買う訳は無いから。

        • 匿名
        • 2020年 4月 28日

        まだ日本にグロウラーの可能性があるぐらいじゃあないですかね?

        あと日本は練習機普通に国産にすると思う。

          • 匿名
          • 2020年 4月 30日

          でもF-3開発に力を入れたいなら練習機は国産でない方がいいと思うのですが。

    • 匿名
    • 2020年 4月 27日

    空軍の次期ジェット練習機T-7の契約があるから
    首の皮一枚で凌げるかもw

    • 匿名
    • 2020年 4月 27日

    日本に購入を打診してくるかもね。

    • 匿名
    • 2020年 4月 27日

    軍用機部門をどこが買ってくれるかというところだけど・・・L&Mくらいしか思いつかない。

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