3人の若い米国人エンジニアは既存の部品、既存のアルゴリズム、3Dプリンターを使用し、画像照合航法で飛行する無人機を1日で作り上げてしまい、彼らは「ウクライナ政府系ファンド、特殊部隊、地上軍から直接声がかかっている」と明かした。
参考:How A Trio Of Engineers Developed A GPS-Denied Drone For Under $500
Theseusの無人機にはウクライナ政府系ファンド、特殊部隊、地上軍から直接声がかかっている
米軍はロシアや中国の妨害してくるGPS信号への対応に苦慮しているが、3人の若いエンジニアは既存の部品、既存のアルゴリズム、3Dプリンターを使用し、画像照合航法で飛行する無人機(500ドル未満)を1日で作り上げてしまい、Aviation Weekは「彼らは低コストでGPSを代替する手段があると考えている」「この無人機の開発速度は国防総省が進めているレプリケーター構想に影響を及ぼすかもしれない」「大手企業に支配されない時代の到来を示唆している」と報じている。
we designed, 3d printed and built a <$500 drone with that calculates GPS coordinates without a signal using a camera + google maps
in 24h pic.twitter.com/8P2QoQMNbW
— Ian Laffey (@ilaffey2) February 18, 2024
この3人が開発した画像照合航法は「スケール不変特徴量変換(Scale Invariant Feature Transform)アルゴリズム」で「ドローンのカメラ画像とGoogleMapsの衛星画像」を照合するというもので、メンバーの1人は「この方法を採用したのは手っ取り早くやるためで最適解でないことは分かっている」「(これを実用化するには)まだまだやるべきことが残っている」と、別のメンバーも「DJI製ドローンのGPS精度(95%の確立で誤差5m以内)と同じレベルを目指している」と述べており、GPSに依存しない無人機が今直ぐ実用化レベルで完成するわけではない。
それでも彼らの開発アプローチやスピードは大きな注目を集め、20代前半の3人は開発したテクノロジーの商業化を追及するため直ぐに会社(Theseus)を設立し「既にウクライナ政府系ファンド(恐らくUNITED24)、特殊部隊、地上軍から直接声がかかっている」とAviation Weekに明かしている。
メンバーの1人は「伝統的な大手防衛企業は本当に優秀な人材を集めていない。我々の世代にとってはAndurilの方がクールに見える」「我々からすれば1発200万ドルもするトマホークは馬鹿げている。これは化学肥料が入った金属製チューブに過ぎない。攻撃の度に本体ごと失うやり方は強力な経済力をもつ敵に対して持続可能と思えない」「大きな目標を狙うのは何千、何十万といった小さな目標を狙うよりずっと簡単で、無人機がネットワーク化されれば多くの興味深いユースケースが生まれるだろう」と述べている。
因みに画像照合航法について「特定座標の地形に関する特徴をビジョン・トランスフォーマーで学習させれば、無人機は照合用の衛星画像を持ち歩く必要がない。イタリアに行ったことがある人なら、そこがイタリアだと分かるだろう」とAviation Weekに説明しているのが印象的だ。
余談だが、レプリケーター構想とは「エネルギーを物質に変換する技術で温かいアールグレイなどが出てくる機械」ではなく、圧倒的な量を揃えてくる中国に対抗するため「2年以内に数千機のUAVを実戦配備する取り組み」のことだ。
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※アイキャッチ画像の出典:Theseus(Ian Laffey)
相手が同じものを使わない限り。
必ず同じものが用意される
結局1日で作れてしまう時点で発想の問題でそれが実現できれば、相手側もすぐに同じものを作り出せるでしょうね。
この戦争でしか使わない技術というわけではないですから、資金力の乏しい様々な組織が、最大の効果を上げるために今後さらなる需要が見込まれそう。いずれはこうなったかもしれないけど、あまり良い知らせではないな。。
いうなればgeoguessrドローンですね。Gogglemapでは解像度が荒いので精度を上げるために米国の高画質衛星データを将来的には食わせるようになるのでしょうか。従来のGPS誘導では電子戦で妨害されてしまう所を、いわば『鳥の目』で巡航するというイメージだと思います。
オープンソースの情報で大体同じことを中国はもちろん、北朝鮮やイランもすぐにできてしまうのではないでしょうか。
地図データを扱う時にはGPSによる緯度経度取得ががとんでもなく便利なので使わないという発想がありませんでしたが「GPSが使えない状況」を想定しての技術開発というのは興味深いですね
あくまでプロトタイプを作りましたという段階なので、解決しなければならない課題は山のようにあると思います
単純に高精度地図データをどうするか、類似の多い地形での誤判別をどうリカバリーするか、最終的な目標位置の高精度な絞り込み、バッテリーとの兼ね合いなどなど
何にせよ、これも「必要は発明の母」なのでしょうね
その画像照合航法使って月面にピンポイント着陸して話題になったのがJAXAのSLIM
若い柔軟な発想は、イノベーションのために不可欠ですね。
既存の要素技術の組み合わせですから、他国も真似しやすいのが難点でしょうか。
Googleなど米国企業は、経済制裁などにより使用を制限する事はありますが、GoogleMapsの衛星画像はダウンロードしておく事で対策が可能です。
日本は、仮想通貨・ドローンなど新しい技術を次々と潰していますが、新しい技術を育てる国のやり方を見習いたいものです。
日本の文化・規制のやり方を考えれば(ポジティブリスト方式)、無理なのかもしれませんが…
後半の日本は〜が言いたいだけだろ?内容もトンチンカンだし。
御名答ですな
日本だと、本件の記事のような事が話題になれば、規制をかけただろうなあという位のもんですかね。
管理人氏がトレッキーだったのは初耳。
雲に突っ込んだら迷わないのかな?
雲に突っ込むような高度では飛ばないだろうが、夜はちゃんと飛べないような気がしますね。値段的にカメラがたぶんスマホのやつだから。
ごく普通の積雲の雲底は低ければ数百mとかですので実用化するなら雲中飛行への対処は必須かと。
カーナビやスマホ用のジャイロとかで簡単な慣性航法くらいは搭載するんじゃないでしょうか。
まあこんなイノベーションを妨害して大企業の利益を守るために送られてきたのが現国防長官オースティン氏じゃないの!?
精力的に米軍を変えようとしていたロバート・ゲーツと比べると何しにきたの?って思います
なんとなくですが。
無尾翼機形状を見て、ああやっぱり、などと思います。
B2やB21の大きさでなければ、割と簡単に実現できそうに思えます。
何せ、技術は既にあるので。INSもGPSも西欧でなら割と簡単に入手できるのでは。
ステルス塗料も、フェライトなら簡単に手に入るだろうし。
推進はダクテッドファンを使っているみたいですね。
単純なプロペラより、騒音が制御されると想像します。
これでペイロードが大きくなると、例えば、
気の利くテロリストは、街中でAKを射撃するよりこうしたもので
任意の時間に任意の場所を遠距離から爆撃するようになるのでは。
ウィングレットがっつり立ててるので実質垂直尾翼みたいなもんでしょう。
B-2/B-21の様なステルス全翼機とは目指してるところが全く違うのでは。
詳しくはありませんが。そうかもです。
たしかにウイングレットのある方がコントロールは容易な気がします。
過去の全翼機の実機はいずれもコントロールに苦労していたようだし。
実用化された機体はいずれもコンピューターでの自動制御を前提としているようだし。
オペレーターの力量に頼るのは限界があるものと想像します。
この機体ウィングレットに加えて控えめながら下部に胴体あって重い部品はそこに集めてるだろうから、言わば「翼端上反角つき高翼機」なんですよね。
ダクトも垂直・水平安定板として機能する様に設計してるだろうからかなり安定寄りの造りになってると思います。
ぶっちゃけB-2/B-21よりも「鳥人間コンテスト」の参加機に近い機体かと。あれも高度な姿勢制御装置なんて何もないけど出来の良い機体は安定してそれなりに真っ直ぐ飛ぶでしょう?
「小さいから簡単」という認識は少し違うと思います。
なるほどです。
ご教授ありがとうございます。
トマホークも元々GPS誘導は無くて、TERCOMとDSMACなのだから先祖返りでは?
技術の発展ですね
一昔前に同じことやろうとしたら相当大掛かりな装置になったでしょう
進んだ技術で過去の手法を再発見してる気分
安価な制御装置の話やね
高燃費なパルスジェットエンジンの話もあるし
どんどん高性能化していくな
大陸国の小型無人機なら画像照合航法でもいいかもしれないけど
機体を大型化して水平線まで何もない海上を飛ぶようになったらどうなんのかね
AW の記事を読むと、一日で出来たことは制御系とGoogle mapを使ったロケーターをシミュレーター上で確認したことと、機体を 3D プリンターで出力するところまで。初飛行は 2, 3週間のうちに行うとあります。
正直、技術としては最先端という訳ではなくて、制御はオープンソースのArdupilot, ロケーターやシミュレーターもどこかから持ってきたものですが、一日でそこまでやる、手馴れているところが評価されたのだと思います。
1番すごいと思ったのは、DoD はハッカソンで大企業ではない一般市民から可能性を吸い上げる努力をしているところですね。
この学生は勘違いしてます。200万ドルのトマホークでも2億ドルの高価値目標を破壊できれば、つまり交換比率が百倍くらいあれば、誰からも文句は出ないでしょう。逆にこの5万円のドローンは500円くらいで撃墜したいとこ。
2億ドルの高価値目標を「トマホーク1発で確殺できるなら」ですね。
でも最新戦闘機+兵装+α並のシロモノが防空体制も掩体もなしにほっぽり出されてる事はなかなかないと思いますし、20万ドルの迎撃ミサイルで落とされたら大赤字でしょう。
加えて個人的にはこうした「既存部品」と「3Dプリンタ(または汎用工作機械)+CAMデータ」(と加えて「一般企業に大量に依頼生産できる加工品(板材とかW/Hとか)」)だけで作れる装備の利点は単に「安い」だけでなく「平時の経済に負担を掛けず、戦時に突然モリモリ作れる」点にあると思います。
先日ここでも記事のあったScalpelが多分それに近いんでしょうね。困った事に。
平時の防衛産業なんて、軍事産業のエコシステムを維持するために放っとけばどんどん高性能高価格高利益率に向かっていくもの、いかに安く目的を達成するかという観点は発注者の側にもない
西側の装備は高額で完璧、しかしそれにより必要数を必要な時に必要な勢力に提供できない、つまり低強度紛争に決して勝てない体制になってしまった
廉価兵器を大量生産するような企業を防衛産業エコシステムの中に持っておかないと、低強度紛争でアメリカのリソースを不必要に浪費させられればアメリカの納税者は必要な場合でも軍事介入に反対するようになり、結果西側全体の首が締まる事になる
滑走路に欺瞞用の絵を描いたら騙されそうなんですが