ウクライナ戦況

ウクライナ軍、ロシア軍から鹵獲したPantsir-S1を使用して目標を破壊

ウクライナ軍はロシア軍の防空システム「Pantsir-S1」を3輌鹵獲したと言われてきたが、ウクライナ国防省は10日「編入されたPantsir-S1が最初の標的を破壊した」と発表して注目を集めている。

参考:Міністерство оборони України

ロシア軍から鹵獲したPantsir-S1を自走式対空砲として活用している可能性が高い

トゥーラ器械製造設計局が開発した移動式の防空システム「Pantsir-S1」は火器管制システムは目標検出を担当する「1PC1-1E」、目標追尾・誘導を担当するディアルバント(UHF/EHF)のフェーズドアレイレーダー「1PC2-1E」、赤外線捜索追尾システムが組み込まれた電子光学センサーの3つで構成されており、30mm機関砲×2門と専用設計の上昇ブースター付き迎撃弾「57E6E」×12基を使用して高度15m~15000mまでを飛行する目標(固定翼機、回転翼機、誘導ミサイル、無人航空機など)と交戦することが可能だ。

特にPantsir-S1が使用する57E6EはMANPADSの流用ではなく専用設計の迎撃弾なので交戦範囲が広く、イルミネーターによる誘導方式を採用しているため高価なシーカーを必要としない=迎撃コストが安価なのが特徴で、スティンガーを流用して開発された米国の近接防空システム「IM-SHORAD」とは根本的に設計思想が異なる。

ウクライナ国防省は「軍に編入されたPantsir-S1が最初の標的を破壊した。我々の在庫にある30mm弾をPantsir-S1で使用できる」と述べているため、Pantsir-S1を自走式対空砲として活用している可能性が高い。

出典:United States Army IM-SHORAD

流石に都合良く57E6Eを補充する術はないので迎撃弾による対空戦闘は難しいが、ドイツが提供を約束しているゲパルトよりも高度なセンサーを搭載しているため自走式対空砲としても有能なのは間違いなく、もし戦場で57E6Eを鹵獲できればロシア軍機にとって恐ろしい存在になるはずだ。

関連記事:ロシア、無人航空機迎撃に対応した多目的対戦車ミサイルを開発
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関連記事:ロシア、無人機や精密誘導兵器と交戦可能な新しい防空システム「Magistr-SV」を発表

 

※アイキャッチ画像の出典:Міністерство оборони України

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コメント

    • 成層圏
    • 2022年 7月 12日

    57E6Eが上手く手に入り、西側に兵器と共用すれば重層的な対空防御ができるね。
    西側や東側ではありえない防御態勢で、ある意味うらやましい。

    7
    • G
    • 2022年 7月 12日

    57E6Eの残団が減った場合は2台運用にして一台西側に送ってもらえると良さそうですが、そのあたりの交渉はされていないのでしょうか
    ロシア軍の先端技術を物理的・システム的に調べ上げることができ、場合によっては利用したり対抗装置を開発する絶好の機会だと思われるのですが

    3
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