ロシアがウクライナに侵攻すると予想していなかったフランスでは「諜報機関のトップが責任を問われ解任された」と報じられている。
参考:Guerre en Ukraine : le chef du renseignement militaire français remercié
やはりファイブアイズとフランスではインテリジェンスに大きな差があるのだろう
フランスの軍事偵察局(DRM)は「プーチンがウクライナ侵攻危機を煽るのは外交交渉を有利に進めるための手段に過ぎない」と分析、これを信じたマクロン大統領は「ロシアがウクライナに侵攻する可能性が高い」という米英の警告を否定、自信満々に「この危機をフランスが回避させる」と語りプーチン大統領とゼレンスキー大統領の説得を試みたが結果は米英の警告通りだった。

出典:Kremlin.ru / CC BY 4.0
フランス軍のティエリー・ブルクハルト参謀総長は今月初め「米国はロシアがウクライナに侵攻すると予想していたが、フランスはウクライナ侵攻に途方も無い犠牲が伴うと考え、ロシアがゼレンスキー大統領を排除するために別のアプローチを選択すると信じていた、しかし米国の予想通りになった」と明かし、インテリジェンスについて「フランスがアングロサクソン人(英語圏の人々)に劣っていたことを暗に認めた」と仏メディアが報じていたがDRMの失態はこれだけではない。
2021年3月にオーストラリアが米英に原潜導入を打診、6月に英国で開催されたG7の会期中に3ヶ国は原潜導入を実現するための枠組み「AUKUS」結成で合意、この動きをフランスが察知したのは9月15日にAUKUS結成のリーク記事が出たあとで、バイデン大統領会見の数時間前にサリバン大統領補佐官が駐米フランス大使に説明を行いマクロン大統領はようやく何が起きているのか理解したが、この時点でフランスが出来るのは米英豪を口汚く罵り「裏切られた」と叫ぶことぐらいだった。

出典:Cheveche glaukopis / CC BY-SA 4.0
因みに今回解任されるエリック・ヴィドー中将は昨年9月1日にDRM局長に就任、その直後にAUKUSショックを経験、7ヶ月後にはロシアのウクライナ侵攻を予測できなかった責任を問われDRMを去ることになったが、新たしいポストは用意されていないらしい。
まぁ日本がフランスのインテリジェンスを馬鹿に出来る立場にはないが、やはりファイブアイズとフランスではインテリジェンスに大きな差があるのだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:Минобороны России
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ブダペスト覚書にフランスは不在だし軍事面では米英しか信用されてないし
ウクライナ情報機関と連携にしたって米英とポとバ3ばかりで当然だろし
ドイツだってフランスと同じレベルなのゼレさんには見透かされたよね
仏独がロシアに弱腰なのはなぜなんでしょうね。
・陸続きでロシアに恐怖心があるから「あいつは口ではああ言ってるけど本当はいいやつなんだ」と思いたいバイアスが働く
・アングロサクソンほど正義感で行動せず、悪い奴とも是々非々でやれると思っている
・天然ガスなど資源で依存しているから喧嘩したくない
このうちどれか、あるいは全部かな?
アメリカがいるからだよ
何だかんだアメリカが守ってくれるから安心してロシアとビジネスが行え接近出来るってだけさ
>因みに今回解任されるエリック・ヴィドー中将は昨年9月1日にDRM局長に就任、その直後にAUKUSショックを経験、7ヶ月後にはロシアのウクライナ侵攻を予測できなかった責任を問われDRMを去ることになったが
死ぬほど着任のタイミングが悪いなこの人。
前任者の仕事や構築した組織の体制を把握するだけで精一杯の時期に立て続けにそれを原因とした失態に見舞われて、
自身の指導力を発揮することなく更迭なんて…(前職がこの組織の下級職だった場合は除く)
なるほど、能天気にすら見えたマクロン大統領の動きには
そういう背景もあったと。
FSBの日和見報告を元に侵攻を決断したプーチン大統領といい、
諜報機関の上げる情報の影響ってデカイんですねぇ。
そうなると、日本は大丈夫なのか気になります。
日本のインテリジェンスなんて欧米情勢は複雑怪奇から大して変わってない気がするが、
実際のところ首相にどんな報告が行ってたのか気になるな。
まあ公にされないだろうけど。
悪くもないけど良くもない、ってところでは。
正直の日本の問題は諜報能力自体よりも、厳密性を求めすぎて行動が遅い、あるいは現場の声が大きいやつに引っ張られて、それが間違えだったとしても軌道修正が遅れる、といった意思決定プロセスの問題の方が大きい気がします。諜報が優れていても情報を活かすことができないという。
まあこればっかしは、政府の問題ではなく、そもそも日本人が作る組織が最も苦手とする所なので、どうしようもない所でもありますが。
まあ、期待するだけ無駄でしょうね
>日本のインテリジェンス
テクニックでなく思考法の差ではないかな
なんのかんのいっても歴史では、フレンチはアングロの下風に立ってきたのはみなさんご存じの通り
ちなみにロシアは性悪説に基づく世界観らしいが、お前が言うなって感じ
むしろ、我が身を振り返ってこそのロシア性悪説論なのでは…
予測出来ても国家戦略が間違ってるからどのみち融和路線は変わらないでしょ
ロシアの政治体制や国家ビジョンを考えれば敵な事は明らかなわけで、、、
味方であるはずのアメリカを牽制するためにロシアと接近し資源を依存するから、東欧でフランスが気にしている影響力をここぞというときに発揮できないんだよ
欧州の自立等を声だかに叫ぶならドイツに核シェアリングを提供してみたり防衛の責任を少しは背負ってみたらどうだい?
ロシア内部にあるFSBですら侵攻については寝耳に水だったのにそれを国外の諜報機関が正確に予測しろって言われても無茶ぶりじゃねぇかなぁ…
米英が出来ちゃってますからね。
米英に対抗意識の強いフランスとしては看過出来ないのでしょう。
我が国に対外諜報機関なんてものがあったら鈴木宗男なんていうスパイはいませんでした。精々各国大使館のネットワークくらいでしょう。
なお日本外務省はウクライナ大使が一ヶ月も面談待ちぼうけ食らった件で
大臣・副大臣・政務官以下誰一人として責任は取らない模様
フランスでは世界中の専門家が否定していたウクライナ侵攻を予期出来なかっただけでクビだと言うのに
責任をとらない政治家なんぞ、ウンコを拭けないトイレットペーパーより始末が悪い。
いいなぁ
日本では何かを見過ごしたことによって責任を問われるということ自体がないからなぁ
高度な知的財産情報や貿易するさいの言語としての英語優位性、サイバー空間を構築する言語の英語優位性、基軸通貨ドル、金融取引の中枢を支配しているアングロサクソンですからね。
多民族国家アメリカが、事実上の国際言語である英語と多種多様な現地の言語を自由に操るバイリンガルを諜報活動に使えば、単一民族少数言語国家の諜報活動とは比較になりませんよね。
言葉を統べる者が世界を制する力を持つ、重層的な情報収集能力が死活的に重要という意味で、フランスはアングロサクソンに劣っていたということ。
それでも、非を認めて改善出来るフランスは素直に凄いなと思います。
日本では更迭処分まではしなさそう。
米英はもとより日本の安全保障の専門家も常日頃言っている言葉で「相手の意思ではなく能力に備える」というものがありますが、フランスにはそういう観念はないんですかね。記事で触れられている人事処分が代表者1名だけなのか政治研究者たちにも及んでいるのは分かりませんが、こういう八つ当たり的な処分をする事自体がフランスのインテリジェンス能力の劣化の証左なのでは?という気もします。
1950年代の米国務省では、41年の日本の対米宣戦や49年の国共内戦での国民党敗北を予見できなかった責任を取らせる形で(米国内で元々少なかった)東アジアの専門家や研究者が一斉に解雇や左遷されていったそうです。外交部門から地域の専門家が一掃された影響は地域への無関心という形で米国の外交政策に現れ、これが現在の中国の覇権主義や民族主義的台頭の遠因にもなっています。EUのNo.2にしてNATOの主要加盟国であるフランスが同じ轍を踏まないことを祈るばかりです。