ウクライナ戦況

ロボーティネの戦い、ロシア軍が2km以上前進して集落郊外に到達か

ロシア軍はアウディーイウカ陥落直後にロボーティネ方面で攻勢を開始、ウクライナ人が運営するDEEP STATEは「ベルベーヴ南西の防衛ラインが突破された」と報告していたが、ロシア人ミルブロガーが運営するRYBARは「ロシア軍がロボーティネ郊外に到達した」と報告した。

参考:Ореховский участок: наступление ВС РФ обстановка по состоянию на 01.00 19 февраля 2024 года
参考:СРОЧНО!

19日に更新された前線位置は「本当なのか」と疑いたくなる内容だ

タブリア作戦軍のリホワ報道官は15日「ロシア軍がロボーティネ方面に戦力を集中させてきた」「この集団の兵力規模はアウディーイウカ方面のロシア軍を上回っている」「敵はロボーティネを襲撃して成功を収めたいと考えているようだ」と警告していたが、アウディーイウカ陥落直後にロボーティネ方面の攻勢が始まった。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

ウクライナ人が運営するDEEP STATEは18日「ロシア軍が17日から積極的にロボーティネ方向の陣地を攻撃している」「ロシア軍はロボーティネ集落内に侵入しようとしており、集落の南側にある陣地で戦闘が続いている」「ロシア軍はベルベーヴ南西の防衛ラインを突破した」「ウクライナ軍は状況を安定化させるための作業を進めている」「予備戦力を投入しないと不味い状況になるかもしれない」「この事は両軍とも認識している」と報告。

ロシア人ミルブロガーが運営するRYBARも「ロシア軍はドネツクに関心が集中している状況を利用してロボーティネ方面の攻勢を開始した」「ロシア軍はロボーティネ近郊で1km前進して昨年夏に奪われた陣地を奪還した」「ベルベーヴ方向でも最低3つの森林ゾーンを占領することに成功した」「コパニ方向の攻撃は成功したなった」と報告していたが、19日に更新された前線位置は「本当なのか」と疑いたくなる内容だ。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

RYBARは「空挺部隊と自動車化狙撃部隊は2km以上前進してロボーティネの南郊外と南東郊外に到達した」「ロボーティネの西外れで戦闘が行われているという報告は未確認だが機甲部隊による攻撃方向や、集落西側に歩兵部隊が向かっていることを考えると現実的なシナリオだ」「問題は敵が増援を送り込む時間があるかどうかだ」「この集落は昨年夏の戦闘で破壊されたため要塞にはなり得ない」と述べ、提示された前進範囲(黄色斜線)はDEEP STATEのものとかけ離れている。

別のロシア人ミルブロガー(АРХАНГЕЛ СПЕЦНАЗА Z)は「敵に防衛ラインを立て直す時間はない」「天候が弾薬の供給に影響を及ぼしている」「敵の大砲は殆ど動いておらずクラスター砲弾も枯渇している」「敵が使用するFPVドローンの強度は非常に弱く事実上存在しないと同じだ」と主張しており、流石にこれを鵜呑みにはできない。

出典:Генеральний штаб ЗСУ

タブリア作戦軍は「ロシア軍がロボーティネ方面に戦力を集結させている」と認識しているため「何らかの措置」を講じているはずで、もしロシア人ミルブロガーの主張が事実なら「本当に弾薬がない」か「ロボーティネ方面への弾薬集積を怠っていた」のどちらかだ。

因みにRYBARは「ドニエプル川左岸の作戦に参加していない右岸の戦力をドネツク方面に移動させ始めた」「これは前線の戦力が不足していることを示している」とも言及している。

関連記事:予見されていた攻勢、ロシア軍がロボーティネ方面で防衛ラインを突破
関連記事:ウクライナ軍、アウディーイウカ西郊外の集落に新たな防衛ラインを設定か
関連記事:ザポリージャの戦い、ロシア軍がロボーティネ周辺で2km以上も前進か

 

※アイキャッチ画像の出典:Минобороны России

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コメント

    • もへみへ
    • 2024年 2月 19日

    ウクライナお得意のキルゾーンとやらはどこに設定されてるんでしょう。

    33
    • Easy
    • 2024年 2月 19日

    端的に、シルスキー将軍がアウディーウカ撤退と同時に全戦線で後方の防衛線までの退却を命じた可能性がありますね。
    軍事的にはとっくに戦線整理をするべき状況だったわけですから,遅ればせながら今ようやくそれが実施されたのではないでしょうか。

    48
    • kame
    • 2024年 2月 19日

     管理人さんの懸念や疑念については一理ありますが、事実は小説よりも奇なりという言葉もありますし、既にまともに抗戦できるだけの砲弾等の余裕が存在しないという可能性は充分にあり得ると思います。
     そもそも停滞気味だった南部よりも要衝であり、東部の要といえるアウディーイウカ防衛のために可能な限りの兵装は移転させていた筈ですし、その要が予備部隊投入後数日で陥落したことを考えると準備万端で攻勢を仕掛けてきたロシア軍を止められるとは考えにくでしょう。

    30
      • 2024年 2月 19日

      ロビティネの突出部は今月中には蓋を閉じれるかな?
      次は50000人と戦闘車両1000両のアソコが動く?

      3
    • たむごん
    • 2024年 2月 19日

    クリンキ方面の部隊移動、ようやく始まりましたか。

    プーチン大統領が、2023年末のテレビ出演でも、直接言及して把握していたのが印象的です。

    ロシア軍が、ロボティネの攻勢に部隊集約していた事を考えると。
    クリンキ橋頭堡は、損害と軍事資源を消耗したうえに、陽動効果すら小さかったですね。

    22
    • nanashi
    • 2024年 2月 19日

    ウクライナ軍の行動は全て他国からの支援を引き出すための「プロパガンダ」であり戦略的合理性は有りません。
    反転攻勢という支援国向けの戦争ショーもいよいよ閉幕に近付いている様子ですね。

    41
      • 名無しの悪夢
      • 2024年 2月 19日

      同意できる部分がないわけではないのですが
      そういった直接的なコメントは控えたほうがあなたの考える戦略的合理性に沿ったものになるのではないでしょうか?
      中立的に情報整理し伝えようとしている管理人さんの立場が危うくなるので

      11
      • 犬の〆
      • 2024年 2月 20日

      プロパガンダは「そうせざるおえない」理由があるからするのでしょう。その部分は斟酌してもいいのでは。
      上の方もおっしゃっているように、管理人さんの立場も悪くなるでしょうし、イデオロギーに偏りのある意見の無意味な衝突も起きる原因にもなりえます。

      1
    • 名無し
    • 2024年 2月 19日

    昨年の無謀な反攻で消耗したまま戦力が回復できていないのか、防衛陣地もロシア軍が使用していたものを再利用するだけで碌に構築していなかったのか、それとも両方ともなのか…

    アウディーイウカ同様最近では勢いのある側の情報が正確だったりするケースが多い上に、ウクライナ軍としても突出部の維持はかなりの負担になっているでしょうから戦線整理としていずれは後退の必要性もあるかとは思いますが、それにしても崩れるスピードが速すぎる気がしてならないですね

    とはいえ突出部の放棄は反攻の僅かばかりの成果をほぼ喪失することと同義なので、アウディーイウカのように限界まで撤退させないという可能性も十分あるでしょうが…

    29
    • 2024年 2月 19日

    一旦守りやすい拠点まで撤退するのかな
    へルソンのドニエプル川を中途半端に渡河した部隊も撤収しそう

    11
    • ミカ
    • 2024年 2月 19日

    アウディーイウカのように準備された要塞でなく高地もロシアが押さえてるという悪条件なので、ウクライナ側も撤退が遅れることによる犠牲の増加の国内批判を避けるため早めに見切りを付けるのが合理的判断だろう。
    ただゼレンスキーにそういう合理的判断ができるかどうかだ。

    19
    •  
    • 2024年 2月 19日

    ゼレンスキー4日に訪問したばかりなのにな。
    ゼレンスキーが来た後はロシア軍がやってくるというパターンが出来上がってしまってる

    37
    • のむら
    • 2024年 2月 19日

    アウディーイウカが長年耐えられたように、都市の鉄筋コンクリートの建造物を使えるところまで撤退しないと
    兵士が失われる、士気が下がるだけなのでは…素人考えでしかないので日本でお茶飲みながら言っていい話ではないんでしょうけど。

    一週間耐えれば支援が来るわけではなく、また各国選挙や人気もあるので少なくとも年単位で持ち堪えられる防衛方法の方がウクライナにとって良いと思います。

    15
    •  
    • 2024年 2月 19日

    この戦線からアウディーイウカやバフムトに抽出されまくってたからウクライナ側の戦力は相当薄くなってたことと思う
    あとそのように限られたリソースの中でどうやらウクライナ軍はいつもの二重包囲を避けるために突出部の根本の陣地を強化していたようだが、ロシア軍が選んだのはむしろ正面の平押しだった
    この幅の突破口を形成されたら塞ぐのは大変だろう

    13
      •  
      • 2024年 2月 19日

      ウクライナ軍がこの平押しに対応しようと側面の根本の兵力を抜いたら、密かに集結していたロシア軍に抜かれてt0408を獲られて補給が死ぬというアウディーイウカのパターンにならないよう警戒しないといけないな。

      11
        •  
        • 2024年 2月 19日

        ちなみにベルベーヴ正面に展開する第82独立空中強襲旅団は西側兵器で武装したウクライナ最精鋭の機械化部隊と言われています
        おそらく攻勢を見越して先月からベルベーヴ正面の戦術的高地の奪取を試みて攻撃していましたが、失敗して消耗しています
        これを撃滅出来ればウクライナ軍の対応力はさらに損なわれるでしょう

        20
    • クル
    • 2024年 2月 19日

    戦線整理せざるをえない状況になったんでしょうけどアウディーイウカの各部隊ごとに散り散りに逃げる潰走に近い撤退状況やら見るに本当に大丈夫なんですかね…
    なんか組織として必死に守ってきた大事なものがへし折れてしまったというかそんな気がします

    26
      • Easy
      • 2024年 2月 19日

      兵士たちの信頼が厚かったザルジニー将軍がクビになり。
      結果、自分たちの司令官が「死守命令のゼレンスキー」「ミンチ製造マシーンのシルスキー」の最恐タッグですからね。。
      なかなか士気が上がらないのは仕方がないかと。

      29
    • 名無し
    • 2024年 2月 19日

    確かにウクライナ兵士のモチベーション維持は重要な問題だろうな

    西側から約束された兵器や金は届かない
    作戦はプロパガンダ優先で合理性に欠ける肉壁になるものばかり
    生き残っても五体満足で帰れる保証はなく、なんなら給料が支払われるかも分からない
    女は西側に流出してるため家庭を築ける見込みもなければ、今後定職につけるかもわからない

    ここまでやって手に入れられかもしれない報酬は、自由という名の曖昧な精神しかない
    戦いの果てに彼らは本当に幸せになれるのか?
    冗談抜きで開戦直後にさっさとロシアに寝返った部隊がウクライナ軍で1番勝ち組まである

    42
      • あいうえお
      • 2024年 2月 19日

      ところで、どんな悪いことにも利点もあるから、(ウクライナ国民の)士気が低い方がいい場合もあるよなあ。

      国民の士気が高い場合、エリート層や技術のある人達が志願兵として戦場に出てしまい、貴重な人材が失われやすくなる。
      逆に士気が低いと、志願兵が足りないから、犯罪者や誰でも出来るような仕事しか出来ない人達を徴兵して戦場に送り出す。彼らが亡くなっても、ぶっちゃけ、戦後に途上国などから移民を入れれば、代わりになる。

      ゼレンスキー政権と西側メディアが頑張ることで、ウクライナ国民の士気は奮い立たされてきた。
      その高い士気のために、エリート層や技術のある人達が志願兵として大量に戦場に流出してしまい、(士気が低いとされるロシアよりも)貴重な人材を多く失ったと言われている。国民の士気が高かったために、ウクライナの戦後はより大変だ。

      6
        • あいうえお
        • 2024年 2月 19日

        書き忘れたけど、「ウクライナの士気高い」云々は、もちろん現時点の話ではない。2023年になる以前の話。
        同様の内容は、1年以上前にロイターだかBBCだかの日本語記事でも危惧されていた。

        8
    • きりる
    • 2024年 2月 19日

    航空写真を見る限りザポロジエに取り付くまで大きな障害はない感じだな
    オレボボも街は大きく見えるけど日本みたいに鉄筋の陸屋根だらけとかじゃないから時間は稼げそうにない

    街周辺が平地の畑しかないから互いに迂回し放題だし補給も遮蔽の無い主要道路を使うから作戦が想定通り過ぎて殿の守備兵が気の毒になるわ

    11
    • Artillery
    • 2024年 2月 19日

    追従しているmapperが少ないし、Rybarが飛ばしてる時のパターンじゃないかなあこれ。
    攻勢を続けてればすぐにRybarのラインまで戦場が追いつくとは思うが、現時点ではそこまで行ってない気がする。

    11
    •  
    • 2024年 2月 19日

    どうもゼレンスキーが死守命令を連発したチョビ髭か、旧軍を想起させますね
    ウクライナ劇場も閉幕が近いと考えざるを得ませんね

    5
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