ウクライナ戦況

ウ軍はドニエプル川左岸に上陸、ロ軍はアウディーイウカ南郊外の防衛ラインを突破

ウクライナ侵攻602日目はヘルソン方面とドネツク方面で動きがあり、ウクライナ軍がドニエプル川左岸の鉄道橋付近に上陸したことが、ロシア軍がアウディーイウカ南郊外の防衛ラインを突破したことが視覚的に確認された。

アウディーイウカのウクライナ軍は南郊外の森林地帯でロシア軍の前進を食い止める必要がある

ロシア人ミルブロガーが運営するRYBARは17日「ウクライナ軍の第35海兵旅団と第36海兵旅団が再編を終え、砲兵部隊や無人機の支援を受けてポイマ村を占領し、ピシュチャニフカの北郊外に到達した。同時にコザチ・ラヘリやクリンキーの対岸でも別の攻撃グループがドニエプル川の渡河を準備している」と報告していたが、ウクライナ軍が鉄道橋付近に上陸しているのが視覚的に確認された。

出典:GoogleMap ヘルソン州ドニエプル川沿いの戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

ウクライナ軍はドニエプル川左岸の鉄道橋付近に上陸、そこから鉄道橋に沿って南に前進して付近でロシア軍の砲撃を受けているのを確認、他にも正確な位置が不明な鉄道橋への砲撃を映した映像も登場しているが、ウクライナ軍がポイマまで前進したことを示す視覚的証拠はない。

RYBARは18日も「ロシア軍の反撃でウクライナ軍は川沿いまで撤退を余儀なくされたものの、未だに橋頭堡を維持し、ピシュチャニフカやポイマの郊外で活動し続けている」と報告している。

出典:GoogleMap アウディーイウカ周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

アウディーイウカ方面でも新たな視覚的証拠が登場、ウクライナ軍が道路沿い陣地=に布陣したロシア軍兵士を無人機で攻撃する様子、ロシア軍の装甲車輌が道路沿い陣地=に交代要員を送り込む様子が確認され、RYBARが主張していたアウディーイウカ南郊外の突破は「可能性が高い」ではなく「事実だ」と判断するのが妥当だろう。

道路沿いの防衛ラインを失ったウクライナ軍は「アウディーイウカ南郊外の森林地帯」に後退した可能性が高く、ここを突破されるとアウディーイウカ郊外への侵入を許すことになるため、何としても森林地帯を死守しなければならない。

追記:ウクライナ軍参謀本部も19日「ドニエプル川左岸への上陸」に言及した。

関連記事:ウクライナ軍のザルジニー総司令官、ATACMSの発射シーンを動画で公開
関連記事:シルスキー大将、ロシア軍が再編を完了してクピャンスクで攻勢を開始

 

※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України

ウクライナに提供したATACMSは約20発、短射程タイプの提供が濃厚前のページ

フィリピン軍参謀総長、安全保障分野における米国と日本の関係強化を発表次のページ

関連記事

  1. ウクライナ戦況

    最新の世論調査、ウクライナ人の97%が「ロシアとの戦争に勝つ」と回答

    最新の世論調査の結果、多くのウクライナ人が「領土をロシアに譲渡する形で…

  2. ウクライナ戦況

    ウクライナ政府機関へのサイバー攻撃を確認、現段階での影響は限定的

    ウクライナ政府機関のwebサイトを標的にしたサイバー攻撃(DDoS攻撃…

  3. ウクライナ戦況

    アウディーイウカの戦い、クラスノホリフカ南西の高台を失った可能性

    ウクライナ国防省情報総局は24日「ロシア軍は占領地域に40万人以上の戦…

  4. ウクライナ戦況

    ロシア軍はキスリブカで国旗を掲げ、オチェレティネから西へ2kmも前進

    RYBARはクピャンスク方面について「ロシア軍がキスリブカ東部で国旗を…

  5. ウクライナ戦況

    侵攻772日目、バフムート方面のロシア軍がチャシブ・ヤール郊外に到達

    ロシア軍によるウクライナ侵攻から772日が経過、DEEP STATEと…

  6. ウクライナ戦況

    反攻作戦に向けた準備と阻止、ウクライナ軍とロシア軍がミサイルで殴り合う

    ウクライナ軍の反攻に向けたシェーピング・オペレーションが本格化した可能…

コメント

    • TKT
    • 2023年 10月 19日

    アウディイウカ市街を完全包囲ではなく、南の道路からロシア軍が攻撃、突撃ということは包囲して補給を妨害してウクライナ軍が消耗するのを待つよりも、一気に正面突撃を行って要塞化された市街を陥落させる方が早いだろう、という判断、作戦でしょうか?

    郊外の森林でロシア軍の突撃、市街への突入を阻止できるかどうかは、弾薬の補給、特にアメリカからの弾薬や兵器の補給が続くかにかかっているでしょう。いくら市街が要塞化されていて、ウクライナ兵の士気が高くても、弾薬、砲弾がなければロシア軍の突撃を阻止することはできません。

    22
      • 航空太郎
      • 2023年 10月 19日

      以前の記事で、食料供給ラインが切れて数日とか言っていたので、各種物資の消耗度合いが気になるところですね。こうした前線での削り合いをしてる状況では、ロシア軍が遺していった武器、弾薬の鹵獲も殆ど期待できないでしょうから。

      9
      • 2023年 10月 19日

      > 弾薬、砲弾がなければロシア軍の突撃を阻止することはできません
      このような表現、過去に何回も見た気がします。
      何かウクライナの弾薬が不足しているというバイアスがTKTさんのメガネに焼きついてしまったのでしょうか。
      過去では逆にロシアの弾薬が先に尽きた結果に終わった気がします。
      今度はどうなりますかね。

      40
      • nachteule
      • 2023年 10月 20日

       アウディーイウカ要塞なんてどれ位の期間ちょっかいかけ続けて撃退されてるんだって所だし前線の陣地すら抜けきれていないでしょう。ロシアの攻勢なんて昨日今日に始まった話じゃないよ?
       最近ロシアとウクライナの砲撃回数が逆転したとかあるし、ウクライナが迎撃する程の弾不足ならばロシアなんてとっくの昔に要塞の一部に浸透しているでしょう。

       前々から爆撃機の投入なりで高威力の爆弾投下するなりチュリパンで五月雨式にでも砲弾打ち込めば、まだ行けるかなと思うけど呆れる位に火力の投射が弱い。バフムト並に力注がないとここは落とせないよ。

      2
    •  
    • 2023年 10月 19日

    アウディーイウカは戦略上意味がないのにプーチンのノルマに答えるためという解説もあるけど、それはちょっと違うのかなと思っている。
    ここにこだわってるのはロシア本国の意志というよりドネツク人民共和国の意志が強いのではないかな。
    彼らにとってここからドネツク市街に撃ち込まれる砲撃が悩みの種。
    プーチンがドンバス完全制圧を妥協しここが停戦ラインになるのが困る。
    朝鮮戦争時のアメリカと韓国の関係のようにいきなりアメリカが韓国を無視して停戦して38度線ができたようなことを避けたい。

    27
      •  
      • 2023年 10月 19日

      政治に関しては傀儡なんだけど人民軍に関しては必ずしも露軍の完全制御下でもないような気もする。
      ワグネルほど独立した存在ではないが。
      露軍批判を続けるボストーク大隊の司令官も粛清されることもなくそのままだし。
      補充兵として派遣された本国出身の兵が酷い扱いされてるから配置換えしてくれと訴える動画出したり。
      力関係は必ずしも露軍が圧倒的上というわけでもなさそう。
      でも人民軍の力だけでは勝利も難しい。特に露軍の航空支援。これが少ないことにも文句言ってる。

      19
        • 匿名11号
        • 2023年 10月 19日

        「ドネツク人民共和国の意志」もなにも、併合されてしまったんだから、ロシア主観ですら存在しないじゃないですか。

        3
          •  
          • 2023年 10月 19日

          独自の憲法を持つ国家内国家ですね。
          チェチェン共和国と同じ。
          ヘルソンとザポリージャはロシアの州になりましたが。
          共和国軍も連邦軍に編入され部隊番号が付与されてはいますがまだ軍閥的な性格は残ってると思います。
          将校をロシア人に総入れ替えでもしない限り変わらないでしょうね。
          彼らにとってはロシアの利益より自分たちの利益を追求します。
          例えば中東がきな臭くなってきましたがロシア軍基地の防衛にシリアに派兵しろという命令が出ても従わないでしょうね。

          22
            • 匿名11号
            • 2023年 10月 19日

            苦しい解釈と想像のオンパレードにしかみえませんが。

            「併合」と言い切られてしまってはねえ。

            2
              • Artillery
              • 2023年 10月 20日

              少なくともロシアの主観では、ロシア連邦を構成する共和国の一つとしてDPRは存在しています。

              人の投稿を想像と言う前に、まず事実について調べたほうがいいですよ。

              7
                • 匿名11号
                • 2023年 10月 21日

                そりゃあ、戦争下といえ住民の統治機構は必要ですからね。しかし、軍政下の協力組織を人民共和国と称するのは「苦しい解釈」でしょう。

                Wikipediaの「ドネツク人民共和国 (ロシア連邦)」の記事にしろ、「ドネツク人民共和国」で検索をかけたにしろ、併合以降は特に存在感がないですからね。実態があるというならなら、和平協議等で独自の動きをみせてもいいものですけどね。沖縄県知事やハマスの方がまだ存在感があるというものです。

                2
              • さつよ
              • 2023年 10月 20日

              併合された後も自治権を所持した例はそれこそ旧ソ連などにいくつかあるので、何もかもが苦しい解釈や想像とも思えないですが。

              12
                • 匿名11号
                • 2023年 10月 21日

                そもそも元コメで、「ドネツク共和国に今も実態がある」と仮定した上で「思います」「ないでしょうね」としているのだからそれは「想像」でしょう。

                それに、領域内に現在進行形で大軍が滞留しているなか自治権を維持できたという実例があるならば、お示し頂きたいものです。

    • 名無し
    • 2023年 10月 19日

    こんな無理押ししたら他の戦線に影響出ると思うんだけどね。
    これ一帯一路サミットに出席したプーチンの面子のためにやってるでしょ。

    13
    • Artillery
    • 2023年 10月 19日

    バフムートと同じ流れだな
    包囲を閉じる動きに対しては抵抗が非常に激しく、補給線に圧力をかけながら正面を直接攻める方がむしろ良いという状況だ
    バフムートとの大きな違いはワグネルがいない事だが、ロシア軍はワグネルのように上手くやれるだろうか?

    22
      • 名無し
      • 2023年 10月 19日

      この方面にはドネツク人民共和国の部隊が大量に投入されているので、ワグネルと同じでいくら損害が出ても気にならないんでしょう。

      11
      • バーナーキング
      • 2023年 10月 19日

      奪取すべき都市を鉄と火ですり潰して使い物にならなくしちゃったので全然上手くやれてないのでは。

      10
    • bbcorn
    • 2023年 10月 19日

    ヘルソン州から南下されたらロシアにとってはまずいよね。
    南部だけじゃなくクリミアまで危険になる。
    ウクライナは今のところちまちまと川を渡るしかないけどね。
    東部はどうすんだろうね?
    動員兵の兵の数だけで押し切る気なのか。
    前の大戦ではそれで通じたんだろうけど今回はどうだろ?

    7
    • VIVA
    • 2023年 10月 19日

    ロシアが占領地域を拡大すればするほど、その分だけウクライナの攻め入る隙が増えて占領コストがかさむ訳だから、侵攻側も楽じゃ無いよね

    6
    • MAT
    • 2023年 10月 19日

    ヘルソン方面で2個旅団が上がってる話が最初来ましたが、2つの旅団の部隊が揚がっているだけでフルでは無さそうです。

    アウディーウカの方ですが、前面で攻撃はあまり良くは見えないですよね。バフムトの時より部隊が少なく、範囲もより広い訳ですから、人数が足りないようにもみえます。
    後方にさらなる攻撃が増やして、最後の突破のための橋頭堡作りなのか、それでなければ時間が経ったらまた押し返されそうですね。

    0
      •  
      • 2023年 10月 19日

      ヘルソンで大規模な兵力を投入できる余裕があるならザポリージャに突っ込むでしょうね。
      アメリカに兵力を分散させず集中させろと指示されて同意したんだから。

      6
    • AAA
    • 2023年 10月 19日

    アウディーイウカはドネツク近郊に残ったウクライナ側の最後の拠点だから攻撃側も守備側も大きな意義あるよ
    逆に軽装備の少数の歩兵でドニエプルを敵前渡河してすぐに撃退されることを繰り返しているのは
    なんか意味あるのか疑問である

    22
      • panda
      • 2023年 10月 19日

      まあ普通に考えて戦力誘因でしょう

      22
    • うさ
    • 2023年 10月 19日

    周りから補給線叩きつつ、正面からはDPR兵がひたすら突撃っていうバフムートとまるっきり同じ流れになりそうな気がする。
    正面でここまで前進すれば泥濘期だろうが冬季だろうがゾンビアタックは効果的だろう。半年後にはアウディーイウカは陥落するんじゃないかな。

    19
      • 名無しさん
      • 2023年 10月 20日

      バフムトの時はまだクラスター弾の支援がなかったからゾンビアタックは有効でしたが、今はウクライナ側にも十分なクラスター弾が供与されましたからね。
      同じ作戦が成功するほど、ロシアもウクライナも甘くないでしょう。

      1
        • ak
        • 2023年 10月 20日

        クラスター弾はアメリカが支給出来る砲弾が不足してもう渡すものが無い為の窮余の蔵出し品で、別に潤沢に有る訳でも無い。
        と認識していましたが。違いましたかね?

        8
          • panda
          • 2023年 10月 20日

          アメリカの保有するクラスター砲弾の在庫は約300万発あると予測されています
          一方、アメリカがウクライナに供与した数は数十万発程度

          既に生産はしてないので限りは有りますが、まだ余裕はあると言って良いでしょう

          9
      • 匿名
      • 2023年 10月 21日

      バフムトは、ロシアの鉄道が近くにありましたから、食料や物資や人を送れましたが、アウディーイウカは、鉄道がないので、ゾンビアタックは、連続で出来ないですよ。
      バフムト周辺を、完全に奪いバフムトに鉄道敷設できたら、ゾンビアタック、連続でできるんでしょうが、バフムト周辺地域を支配地域にもまだいれられていませんからね。
      鉄道敷設に半年かかるから、アウディーイウカ要塞には、あと1年は、ゾンビアタックできないでしょ。

      2
    • panda
    • 2023年 10月 20日

    クラスノホリフカからまた打って出てるので包囲機動を諦めたわけではなさそうですね
    前回の焼き直しのような大損害を受けているようですが・・・

    8
    • 名無し
    • 2023年 10月 20日

    話半分としてもウ軍発表では1日で戦車55両、歩兵戦闘車120両を撃破したとか。
    航空機も10日間で5機落ちてるらしい。
    こういう損害度外視の攻勢やると露軍は後々苦しくなると思うんだけどな。

    11
  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  2. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  3. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  4. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  5. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
PAGE TOP