ウクライナ戦況

侵攻772日目、バフムート方面のロシア軍がチャシブ・ヤール郊外に到達

ロシア軍によるウクライナ侵攻から772日が経過、DEEP STATEとRYBARは「バフムート方面のロシア軍がチャシブ・ヤール郊外に到達した」と報告、この報告を裏付ける視覚的証拠も登場しているため、ロシア軍がチャシブ・ヤール郊外に到達したのは事実だ。

参考:Мапу оновлено!
参考:Битва за Часов Яр: рывок ВС РФ к микрорайону «Канал» обстановка по состоянию на 08.00 5 апреля 2024 года

イワニフスキー方向について両者の食い違いが大きくなっている

バフムート方面のチャシブ・ヤール方向についてDEEP STATEとRYBARは「O-0506沿いにロシア軍が前進した」という評価で一致していたが、イワニフスキー方向についてはDEEP STATEが「ウクライナ軍がイワニフスキー集落の北東を失った」と、RYBARは「イワニフスキー集落の大部分をロシア軍が支配している」「敵を集落内からほぼ追い出した」と報告し食い違いを見せていたが、この状況に明確な変化が観測された。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

ウクライナ人が運営するDEEP STATEは4日「O-0506沿いにロシア軍が前進してチャシブ・ヤール郊外に到達した」と、ロシア人ミルブロガーが運営するRYBARも「ロシア軍とウクライナ軍がチャシブ・ヤール郊外で交戦している」と報告し、これを裏付ける視覚的証拠=も登場したため、ロシア軍がチャシブ・ヤール郊外に到達したのは事実だ。

問題はイワニフスキー方向で、DEEP STATEは「集落南の倉庫一帯を失った」と報告したが、RYBARは「ロシア軍がイワニフスキーの西に位置する運河周辺に到達した」と主張しており、両者の食い違いが大きくなっている。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

DEEP STATEの報告は視覚的証拠=によって裏付けられているが、RYBARが主張するイワニフスキー全体の支配は視覚的証拠=によって否定されており、ロシア軍が運河周辺まで到達したことを示す視覚的証拠も提示していない。

DEEP STATEはイワニフスキー方向の状況について「集落の半分はグレーゾーンで状況も安定してきた」「敵は多くの襲撃で大きな損害を被った」と述べているが、ロシア軍が戦力面で著しく優勢なので「猛攻を食い止めるのは困難」と付け加えている。

因みに他の戦線でも動きが観測されているものの、わざわざ戦況マップを更新して言及するほどの動きではない。

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※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України

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コメント

    • ミカ
    • 2024年 4月 05日

    まあいずれ落ちるんだろうけど今年一杯くらいかかるのか、航空支援を多用してるから意外に早期に陥落するのか?
    ロシアが市街に取りつくまでは地形の関係で時間がかかるが、市街に入ってからは展開が早い気もする。
    空爆で市街の破壊が進みすぎだし、ウクライナ軍もアウディーイウカの反省から撤退時期を遅らせることはしないだろう。

    13
      • ミカ
      • 2024年 4月 05日

      今のところゼレンスキーが訪問してないから死守方針ではなさそうだが

      22
      • A-10
      • 2024年 4月 05日

      攻める先が高地かつ泥濘期なんで戦線が動いてることに少し驚いた
      どこの空域かはわからないけどSu-25が飛んでる映像も出回ってるし、近接航空支援にたる航空優勢を確保したと判断してるのかね

      24
      • Artillery
      • 2024年 4月 05日

      チャシブヤールを今年中に落とすのは難しいんじゃないですかね。
      バフムトもアウディーイウカも半包囲のような形を取れたが、チャシブヤールでその形まで持って行くにはかなりの時間が掛かります。さらに用水路もあるので難易度が高い。
      周囲を攻めずに市街地のみを攻めるにはいささか突出しすぎています。ロシア軍にとって不利な戦型にわざわざ持っていくか疑問です。

      この攻撃もバフムート防衛の縦深の確保、つまり守りやすい用水路沿いまで前線を進めるのが目的であり、いきなりチャシブヤール攻略とは行かないのではと推測します。
      (もちろん、チャシブヤール攻略の足場作りという意味も多分にあるでしょうが)

      15
    • gepard
    • 2024年 4月 05日

    チャシブ・ヤールの地形図は都市中心を頂点とした急峻な丘を構成する地形であり、加えて南北を貫く運河がロシア軍の包囲軌道を阻む。攻略には多大な労力と時間を必要とするだろう。
    一方でこの都市の陥落はバフムトからの攻勢軸が高地を抑え、スラビャンスク・クラマトルスク・コンスタンティニフカという主要都市群を直接狙える位置へ移ることを意味しドンバスを巡る戦いはチェックメイト一歩手前の状況となる。

    ロシア側情報源は滑空爆弾だけでなくSu-25によるCASがこの戦争で初めて本格的に行われたと報告しており、ウ軍の対空火器不足がロシア軍に付け入る隙を与えている状況が日増しに顕著になっている。

    25
    • 理想はこの翼では届かない
    • 2024年 4月 05日

    とはいっても地形的に圧倒的優里で後方との補給路もあるチャシブ・ヤールはそう簡単には落ちんやろ

    16
      • 匿名
      • 2024年 4月 06日

      茶渋を落とすなら重曹で擦るとエエで?

      8
    • たむごん
    • 2024年 4月 05日

    チャシブヤールの地形は、興味深いですね。

    戦線正面(東側)が隘路のようになっているだけでなく、地形が高地なので、どういった防衛線を築いているのか注目したいと思います。

    ロシア軍は、砲撃・爆撃の物量を費やすと思いますので、気になっています。

    7
    • nana4
    • 2024年 4月 06日

    遂に徴兵年齢25歳引き下げやっちゃいましたね、70万人の行方不明の動員兵とやらはとうとう見つからなかったんでしょうか。
    対するロシア軍はテロ事件から志願兵が更に増加し、士気も兵数も増す一方で戦力差は広がり続けています。
    もはや大勢は決した様に思いますがここからウクライナ軍が逆転するなんて事起こり得るんでしょうか、戦えば戦うほど傷が広がるだけにしか思えません。

    38
      •  
      • 2024年 4月 06日

      ウクライナでは18~27の兵役を18~25に縮小し、戦闘へ動員可能な予備役を27~60から25~60へ拡大して即戦力を増やそうとしている。
      同時にロシアでは18~27の兵役を18~30に拡大するというウクライナと真逆の判断。こちらは新兵の数を増やすことで本土防衛の負担を軽減し、その分訓練済みの志願兵を前線へ回そうという感じなのでしょう。
      やはりロシアの方が余裕がありますね。

      25
    • jimama
    • 2024年 4月 06日

    アウディイウカ抜かれてから防御線張るにも青息吐息って感じだったけど
    チャシブヤールを防御拠点化するための資材はあったんだろうか?
    さらに言うと十全に機能させるために必要な兵員と物資
    有利な地勢であるはずなのにロシア側の砲兵部隊に対して
    手出し出来てないみたいだし案外あっさり抜かれるのでは

    24
    • 2024年 4月 06日

    舗装された道路以外では地面がぬかるんで車両を走らせるのが困難な時期なのに市内郊外まで到達されてしまっている状況はガチでヤバい。
    空爆やら砲撃やらドローン攻撃からの損害を抑えるには後退するしかないんだろうけど。
    バフムトやアウディイウカやマリンカと違って地下要塞化はされてはないから、地面が乾いてから暫く時間がある夏には運河より506号沿いにある東側の郊外は間違いなく取られる。

    23
    • 名無し
    • 2024年 4月 06日

    イワニフスキーはMajakovskの分析を踏まえると、少なくとも4分の3はロシアの占領下にあると見なしても良いでしょうね
    チャシブ・ヤールも地形的には有利ではありますけどこの時期に街の端に取り付かれたという点や最近の砲弾不足を考えるとかなり状況的には危ういんじゃないかなと

    ただ一方でバフムート北方で最近ロシア軍が攻撃を激化させていて占領地を増やしつつあるため、チャシブ・ヤールよりもシヴェルスク方面に力を入れている可能性もあるのではないかと思ってもいますな

    アウディーイウカ方面もトネネキーを越えてウマンスキーのすぐ側まで到達され、ウクライナ軍が粘っていたベルディチも8割方占領され残りはグレーゾーン、オルリフカの近くにあるセメニフカにも侵入されてペルヴォマイスケも中心部が占領されるなど状況は悪化し続けていますし

    親ウクライナOSINTからも後方に防衛線を設置する努力をせず兵士の膨大な犠牲と引き換えに領土を死守しているだけだと酷評されていましたし、やはり領土を損切りして兵士を温存するという方法が出来ないのが未だに弱点かなあと

    25
      • たむごん
      • 2024年 4月 06日

      ウクライナが、何年タームで戦争を考えているのかが、少し気になっています。
      2023年南部攻勢の目的は、クリミア手前までの奪還、クリミア奪還を射程に捉えての早期停戦が現実的だと考えていました。

      南部攻勢失敗したという事は、積極的な停戦が不可能になったため(有利でなければ停戦を持ち掛けられない)、2025年以降の戦争継続も視野に入ってきたように感じています。

      仰る通り、ウクライナが兵士を温存できずに消耗戦に引きずり込まれた場合、どうような想定を行ってきたのかが少し気になっています。

      6
        • nana4
        • 2024年 4月 06日

        消耗戦においては占領地の拡大は重要ではなくどれだけ敵国を消耗させるか、つまり敵国の国民をサツ害するかが重要ですからね。
        ウクライナは労働人口の殆ど全てを戦場で消耗させられ、インフラ、産業は破壊しつくされもはや国家としての体を成していません。
        戦争が終結し西側からの資金援助が無くなればウクライナは破綻するしか無いでしょう。
        ウクライナと言う国はもはや自らの足を食べるタコ同然です、国がどれだけ疲弊しようとも戦うことでしか国家を維持できないのです。

        22
          • たむごん
          • 2024年 4月 06日

          仰る通りですね。

          最近でも、ウクライナの発電所・変電所攻撃で発電量が大幅に失われて、さらに産業基盤がボロボロになっています。
          ロシアの石油精製施設などの攻撃報道が、絶賛されて目立ちにくいのですが…。

          ウクライナ支援国と言えば、耳障りはとてもいいのですが、仰る通り生殺与奪を完全に握っています。
          債務国(ウクライナ)は何か払う義務がありますが、対価(メリットの提供)が恐ろしい事になるのではないかと注目しています。

          電力会社・水道・ガス・パイプライン・農地・鉄道・空港・港湾・資源権益など、民営化や売り渡す事になるでしょうから、それでよかったのかなと考えてしまいますね。

          (2024/04/05 ロシア軍、ウクライナの発電所への攻撃強化…ドネツク州など6州で計画停電 読売新聞)
          (2024/4/6 ウクライナ首相「露軍の攻撃で火力発電所8割が破壊」 東部ドネツク州で激戦続く 産経新聞)

          11
    • 名無し
    • 2024年 4月 06日

    ロシア軍のパターンだと包囲して爆撃、砲撃で更地にして戦車やストームZに特効して、安全に少しづつ進むのかな?
    ウクライナの予備兵力が枯渇してたら一気に進みそうだけど新たに徴兵拡大決まったし今年いっぱいは持つ?

    3
    • 陥落
    • 2024年 4月 06日

    ロシア軍は大量に保有してる航空爆弾を滑空誘導爆弾に改造するのに成功したことで
    アウディーウカに続きチャシブ・ヤールに対する近接航空支援により強力な1.5トン爆弾
    を落としウクライナ軍の重要陣地を破壊することで予想されるロシア軍の5月攻勢で
    チャシブ・ヤール一帯の高地は占領されるでしょう。
    北に位置するリマン方面にもロシア軍が侵攻すればウクライナのドネツク州都市は
    危機的状況になるかも知れません。

    12
      • どねつくぼうし
      • 2024年 4月 07日

      ウクライナはドローン集中投入による飛行場襲撃という航空殲滅戦を展開しているのでこれによりロシアの航空宇宙軍の活動が抑制されてきています
      ウクライナにとっては絶望的な状況が困難な状況になった程度の改善ですが地形優位もありますしそろそろ届き始める追加の砲弾と併せて予想外の粘りを見せる望みも捨てきれません

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