ウクライナ戦況

クピャンスク・スバトボ方面の戦い、ウクライナ軍がナディア奪還に成功

クピャンスク方面で登場した視覚的証拠は「シンキフカをウクライナ軍が支配している」と、スバトボ方面で登場した視覚的証拠は「ウクライナ軍が再びノボセリブケに入ったと」「ウクライナ軍がナディアを奪還した」と示唆している。

クピャンスク方面

一部のロシア人達はクピャンスク方面について「ウクライナ軍がシンキフカの南地区しか保持していない」と主張していたものの、ロシア軍がシンキフカの北地区=を砲撃する視覚的証拠が登場、これによって「ロシア軍がシンキフカに入っていないこと」「依然としてシンキフカのほぼ全域がウクライナ軍の支配下にある」と裏付けられた。

出典:GoogleMap クピャンスク周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

ロシア軍のクピャンスク方面に対する攻勢は反攻作戦と同タイミングで始まり、未だに戦闘規模は謎(登場する視覚的証拠が少なすぎる)だが、ロシア人が主張するほどロシア軍は成功を収めておらず、この方面では複数のロシア人ミルブロガーが協力して「反攻作戦から目をそらす意図」の情報戦を仕掛けているのかもしれない。

スバトボ方面

ロシア人達は当初、ロシア軍が仕掛けたスバトボ方面の突破について「ゼレベツ川を渡河したロシア軍はハルキウ州の州境に迫っている」と大々的に報告していたが、8月23日~9月2日までに登場した視覚的証拠によって大規模な突破は否定され、この攻勢でロシア軍が確保できたのはライホロトカの対岸にあるセルヒフカだけだと判明。

出典:GoogleMap スバトボ周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

さらに9月4日~22日までに登場した視覚的証拠は「ウクライナ軍が制圧されたノボセリブケ方向でロシア軍を押し戻して集落に入った」「ウクライナ軍がグレーゾーン扱いだったナディアを奪還した」「ウクライナ軍の砲撃と無人機による攻撃でロシア軍が消耗を強いられている」と示唆しており、中々興味深い傾向といえるだろう。

  • =ウクライナ軍がノボセリブケ集落内のロシア軍兵士を無人機で攻撃する様子
  • =ロシア軍がノボセリブケ集落内のウクライナ軍陣地を砲撃する様子
  • =ロシア軍の戦車がナディア集落のウクライナ軍陣地を攻撃する様子

  • =ウクライナ軍がロシア軍陣地を無人機で攻撃する様子
  • =ウクライナ軍がロシア軍兵士を無人機で攻撃する様子
  • =ウクライナ軍がロシア軍のT-90Mを無人機で攻撃する様子

  • =ウクライナ軍がライホロトカ集落内のロシア軍戦車を自爆型ドローンで攻撃する様子
  • =ウクライナ軍がライホロトカ集落内のロシア軍車輌を砲撃する様子
  • =ウクライナ軍がライホロトカ集落内のロシア軍陣地を無人機で攻撃する様子

  • =ウクライナ軍がロシア軍陣地を無人機で攻撃する様子
  • =ウクライナ軍の攻撃で破壊されたT-90M×1輌、T-72B3×3輌、BMP-3×1輌
  • =ウクライナ軍がロシア軍の戦車を自爆型ドローンで攻撃する様子

  • =ウクライナ軍がロシア軍のT-72B3とBREM-1を砲撃する様子
  • =ウクライナ軍がロシア軍の120mm迫撃砲を砲撃する様子
  • =ウクライナ軍がロシア軍の自走砲を自爆型ドローンで攻撃する様子

  • =ウクライナ軍がロシア軍の榴弾砲を自爆型ドローンで攻撃する様子
  • =ウクライナ軍がロシア軍のTOS-1Aを自爆型ドローンで攻撃する様子
  • =ウクライナ軍がロシア軍の自走砲を自爆型ドローンで攻撃する様子
  • =ウクライナ軍がロシア軍車輌を自爆型ドローンで攻撃する様子

上記の視覚的証拠はどれも派手な戦闘ではないが、スバトボ方面のロシア軍は砲撃と無人機で削られ続けているため「オスキル川まで突破する力」はもう残されていないはずだ。

因みに訪米中のゼレンスキー大統領は「バフムートを奪還するつもりだ」と言及、さらに2つの都市の奪還も示唆したが「何処の都市を奪還するのか」は明かさなかった。

関連記事:ウクライナ東部の戦い、未だにロシア軍の成功を示す視覚的証拠はない
関連記事:クピャンスク、スバトボ、リマンの戦い、ロシア軍は何も成功を収めていない
関連記事:ウクライナ軍と英軍が東部戦線でのロシア軍攻勢を警告、2ヶ月以内に開始?

 

※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України

ザポリージャ州の戦い、ウクライナ軍の装甲車輌が防衛ラインを突破前のページ

訪米中のゼレンスキー大統領、バフムートを含む3つの主要都市解放を明言次のページ

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コメント

    • bbcorn
    • 2023年 9月 22日

    東部から南部へ空てい部隊が移動してから急に弱くなったよね。
    代わりに入れた部隊は訓練不足の動員兵だからなかなか厳しい。
    南部に送った部隊もだいぶ溶けちゃっるみたいだし。
    今となっては攻撃軸を絞らないといけないのはロシア側だよね。
    ロシア軍は打たれ弱い。

    48
      • ななし
      • 2023年 9月 22日

      それでも強欲なプーチンは戦力を集中できないでしょうね
      プライドにかけてもバフムトは捨てられないだろうし
      トカマクを取られて補給を分断されるのもまずいのはさすがに理解できるだろう
      どっちつかずの中途半端な采配でどっちも取られるという未来

      35
      • 2023年 9月 22日

      やっぱ現場に権限移譲してある程度自由に創意工夫できる民主主義国家は強い。
      権威主義国家は指示待ちで終始し、上からの机上の空論の指示で失敗した戦術を、壊れたレコードのように繰り返すだけ。

      20
    • タチコマァ
    • 2023年 9月 22日

    穀物輸出問題の事態沈静化の兆候が見えて来ましたし、東部攻勢も上手くいってないようですね
    この一年半の戦争見ているとロシアの希望が一つ一つ潰されてるようで……まるで(詰め)将棋だな

    41
      • らっしー
      • 2023年 9月 22日

      将棋といえば相手の駒を取って使用可能ですが、
      現実には調略が上手く行って寝返らせない限り人は死傷して無理なものの、
      モノはその限りではナシ。
      戦車の様な大物以外の小銃なんかも、拾って再生使用したりしてるんですかね?
      ふと、去年のロシア動員兵がろくな武器も渡されずに、
      サビサビの銃を渡されて怒ってる話を思い出しました。

      ウクライナ側では戦闘の落ち着いた地域で遺体の回収作業の話が度々聞かれたりしますが、
      その際やはり使える装備の回収とか部品取りやスクラップに分けて再生使用に回す係とか、
      双方共にあるんですかね?
      そう云うのも兵站として重要?

      2
        • 航空太郎
        • 2023年 9月 22日

        現在の軍隊は、相手にこちらの情報を渡すのを酷く嫌うので、例えば行軍中に食べるレーションにしてもゴミ一つ残さず回収するのが基本です。所属を示す認識証などから、部隊の配備や運用を推測されたりしかねないので、遺体回収時には余裕があればあらゆるモノを回収するでしょう。双方ともに物資不足が酷く、敵から鹵獲した装備も使ってたりするくらいですから、再利用をどちらも普通に行っているでしょう。

        兵站の一助としての意味合いも勿論あります。ただ、再利用しようとするのを見越して、ロシア軍が仲間の遺体にブービートラップを仕掛けていたなんて報道もありましたので、リスクはあります。

        7
    • しゃる
    • 2023年 9月 22日

    ドローンによる爆撃映像だけど、
    自由落下爆撃なのにホント操縦とタイミングの見極めが上手だ
    ドローンの操縦ノウハウに関してはウクライナは世界一かもね、悲しい話でもあるけど…

    38
      • だいだーら
      • 2023年 9月 22日

      戦果確認で重症のロシア兵を見るウクライナドローン操作兵の心境や如何に・・・

      9
      • 匿名
      • 2023年 9月 23日

      豆粒みたいな戦車のハッチに爆弾ホールインワンで誘爆とか、走ってる歩兵に命中とかすごすぎるな
      これでもドローンの有効性が分かって数年程度の黎明期なんだから今後どうなるのか恐ろしい
      そのうちAIが全自動で操縦して照準合わせて、オペレーターが発射スイッチ押すだけとかなりそう

      12
    • ふしぎの海の
    • 2023年 9月 22日

    名作アニメを思い出した・・・

    5
      • マサキ
      • 2023年 9月 22日

      ナディア「古今東西、悪の栄えた試しはないわ!」

      プーチン「その通り!だが君は考え違いをしている。我々は悪では無い、善なのだ。我々は間違った方向に進もうとしている愚かなウクライナ人どもを救うために、正しき道へと導いてやっているのだ。ウクライナ人は我々ロシア人が管理しなければいずれ自らの手で滅びてしまうからね。」

      ナディア「なんて傲慢な」

      32
        • ななし
        • 2023年 9月 22日

        最後にはブルーウォーターの光を浴びて塩になるプーチンか

        14
        • xyz
        • 2023年 9月 22日

        清川元夢さん、安らかに眠って下さい。

        6
        • 名無し
        • 2023年 9月 22日

        ほんとにこう考えてそうで怖い。

        11
    • 2023年 9月 22日

    >「ウクライナ軍の砲撃と無人機による攻撃でロシア軍が消耗を強いられている」

    東部で撃ち負けるてどういうこと ?
    想定の上を行くなロシアは !?

    12
    • エア
    • 2023年 9月 22日

    成功した映像ばかりネットに上がることを考慮しても
    自爆ドローンによる攻撃精度が明らかに上がってる気がしますね

    17
      • 航空太郎
      • 2023年 9月 23日

      ドローンは失われても、ドローン操縦者はそうそう失われないから、どんどん練度が上がっていってるんでしょうね。

      9
    • panda
    • 2023年 9月 22日

    本来主導権奪還のための攻勢に使うべき精鋭部隊を防衛戦に回せざるを得なくなっていますからね
    ジリ貧展開です

    19
    • 58式素人
    • 2023年 9月 22日

    クリミア大橋をさっさと落橋させるべきでは。
    ロシアから大量の徴集兵が肉壁として送られて来る前に。
    よしんば来たとしても、糧食/武装などの補給を滞らせて、結果として
    その戦力(?)を無意味に費やさせるべきでは。
    クリミア大橋だけでなく、ロシア本土の鉄道(輸送インフラ)を破壊するべきでは。
    少なくも、クルスク州/ベルゴロド州/ロストフ州においては。石油インフラも同様。
    カスピ海の海運を破壊すべきでは。ボルガ河経由とイランからの物資はここから来ます。
    多分、沈底機雷を設置(空中投下)する形でしょうが。

    13
      • baru
      • 2023年 9月 23日

      そんなんできるならとっくにやってると思うんですけど

      14
      • 航空太郎
      • 2023年 9月 23日

      橋って、空から見ると線に過ぎず、開放系なので爆風エネルギーの大半も周囲に逃げてしまうという、何気に破壊が難しい目標なんですよね。レーザー誘導の航空爆弾を橋脚に何発も叩きこめれば破壊もできるでしょうけど、ウクライナの航空戦力は弱く、ロシア軍の対空網も破壊したとはいえ、まだS-400システム×3も稼働中です。

      なので、順番としては、S-400システム×3を破壊、次にクリミア半島各地の航空基地に駐機している航空戦力を破壊、その次でやっと、クリミア大橋空爆ですね。先は長いです。どううまく転んでも、来年夏辺りにならないと難しいかと。

      11
    • バーナーキング
    • 2023年 9月 22日

    >訪米中のゼレンスキー大統領は「バフムートを奪還するつもりだ」と言及、さらに2つの都市の奪還も示唆したが「何処の都市を奪還するのか」は明かさなかった

    まーたそーゆー事言って舌先三寸でキルゾーンに戦力誘引する訳ね。
    そして分かっていても放置できない露軍。

    28
    • mun
    • 2023年 9月 22日

    クピャンスク・スバトボ方面のロシア軍の動きは
    南部で行われるであろう反抗作戦へ兵力を集中させないための
    陽動としての側面が強かったのだろうと推察しますが

    ザポリージャ南部のウクライナ軍の攻勢を止められず
    他方面から精鋭を引き抜きザポリージャ南部へ送る結果となっており
    陽動を狙いとした作戦は失敗しています
    むしろ、陽動しようとして自らが分散してしまい
    それが裏目に出たと言えるかも知れませんね

    ウクライナ軍は守りやすい地形を利用して防衛しますので
    精鋭を引き抜かれたロシア軍が防衛線を突破するのは難しいでしょう

    15
    • 黒足袋
    • 2023年 9月 22日

    脚の大量出血をなんとか止血しているものの、苦悶のロシア兵。エグい映像ですね。
    その前の、戦車長がボロ雑巾のように吹き飛ばされるのもエグい。

    5
    • ゆう
    • 2023年 9月 23日

    人へのドローン攻撃は、本当に一方的…
    5~10m程度外れても。
    兵士はぶっ倒れる。
    足がなくなる。
    そして、仲間が助けに来れば、それごと…
    一般兵の装備ではドローンは撃墜できない。
    攻撃を受け、ドローンを認めたら、絶望感半端ない。
    たとえ五体満足で生きて帰っても、精神的に、再度戦場に行くことは難しそう。

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