米国関連

国防総省がF-35の飛行制限を解除、雷を避けるという皮肉な状況の終結

F-35はOBIGGS(機上不活性ガス生成装置)の不具合によって「落雷や稲妻が発生している空域から25海里以上離れて飛行する制限」が設けられているのだが、国防総省は正式に「飛行制限の解除」を発表、ライトニングIIが雷を避けなければならないという皮肉な状況が終結した。

参考:EXCLUSIVE: Pentagon clears F-35 to fly in lightning after years-long hold

航空戦闘軍団司令部も任務達成のため落雷や稲妻が発生している空域への侵入を許可

F-35は燃料タンクやパイプ内に滞留する可燃性ガスが発火するのを防ぐためOBIGGS(機上不活性ガス生成装置)が組み込まれているのが、OBIGGSが生成した不活性ガスを注入するためのチューブ損傷(十数機分)が2000年6月に発覚、F-35ジョイント・プログラム・オフィス(JPO)は「緊急時にOBIGGSが設計通り作動しないのではないか」と懸念し、この問題が修正されるまで「落雷や稲妻が発生している空域から25海里以上離れて飛行する制限」が設けられている。

出典:U.S. Air Force 携帯式の避雷針で保護されたF-35B

米海兵隊も「F-35の機体表面は複合材料で構成されているため固有の受動的雷防護がなく、インフラが整っていない基地に展開するには携帯式の避雷針を持ち運んで機体を保護する必要がある」と主張していたが、F-35JPOは2022年2月「問題が修正されたF-35Aが7月までに完成する」と明かしたため、米メディアは「約2年ぶりに落雷や稲妻が発生している空域を飛べるようになる」と報じていたが、OBIGGSの修正は飛行制限を解除するには不十分と判断され、ライトニングIIが落雷や稲妻を避けて飛行しなければならないという皮肉な状況が続いていた。

この問題についてBreaking Defenseは1日「F-35Aに組み込まれている雷防護システムのハードウェアとソフトウェアを修正し、国防総省は正式に飛行制限を解除(先月19日)した」と報じ、F-35JPOのラス・ゴエメール報道官も「この修正にはOBIGGS設計変更とソフトウェアの更新が含まれていた」と、航空戦闘軍団司令部も「修正されたOBIGGSは安全な運用が証明され飛行制限が緩和された」と明かしている。

出典:U.S. Air Force photo by William R. Lewis

因みに航空戦闘軍団司令部が「飛行制限の緩和」と表現したのは、任務達成のため落雷や稲妻が発生している空域への侵入を許可しているものの「それ以外の飛行時は落雷や稲妻を避けろ」と指示しているためで、既存機がOBIGGSの制限を解除されるためには何らか修正を受けなければならない。

関連記事:OBIGGS修正は期待外れ、F-35は今後も落雷や稲妻が発生する空域を飛べない
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関連記事:欠陥修正を断念した米国、F-35BとF-35Cの超音速飛行制限で対応

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Zachary Rufus

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コメント

    • kitty
    • 2024年 4月 02日

    今までは「全天候」戦闘機じゃなかったんですねえ。

    16
      • 765
      • 2024年 4月 02日

      まあいくら平気とはいえF-35に限らず基本飛行機は被雷を避けた方が良いので…

      23
        • kitty
        • 2024年 4月 03日

        A-10で雷雨の中を飛んで被雷して、「さすがA-10だ。なんともないぜ」とか言って欲しい

        1
    • 無印
    • 2024年 4月 02日

    高性能だが制約も多い機体だね

    2
      • ルイ16世
      • 2024年 4月 02日

      まあ、本当にロシアや中国の対空ミサイルを無視出来るなら些細な制約ではありますが

      2
    • のー
    • 2024年 4月 02日

    なるほど。
    ステルス機は機体表面が金属ではなくて、電波吸収材なのですね。
    恐らく黒鉛かフェライトのような、電気抵抗の大きな導体で出来ていて、落雷で強烈な電流が流れると発熱して焼けるのかな。

    3
    • lang
    • 2024年 4月 03日

    弱点が愛称なわけですから わざわざ教えてくれてるわけですね

    5
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