中国は第5世代戦闘機FC-31(J-31の海外輸出仕様)を今後の海外輸出における主力製品に位置づけており、同機を外交ツール化して中国の影響力拡大の尖兵にすることを考えている。
参考:China establishes office to promote exports of the FC-31 stealth fighter
本当にFC-31が中国外交=特に安全保障面の切り札になるかどうかは同機が完成するかどうかに懸かっている
米空軍大学の中国航空宇宙研究所は14日に公開したレポートの中で「中国海軍の空母で運用を想定しているJ-31の派生型が新たに2機確認された」と報告しており、この2機のJ-31は滑走路に駐機されているため「ただのモックアップではなく飛行可能なプロトタイプだ」と断定。
さらに中国のインターネット上に登場したJ-31の写真も加味して「2026年頃に実用化される可能性がある」と指摘したが、開発元の瀋陽飛機工業集団も「FC-31を今後の主力製品に位置づけ、従来のマーケティング思考を転換して海外のハイエンド戦闘機市場を積極的に開拓する」と述べているのが興味深い。
FC-31は海外市場で米国のF-35Aやロシアのチェックメイトと競合関係にあり、瀋陽飛機工業集団はFC-31の魅力をアピールして販売促進を行う専門部署を立ち上げたと報じられている。
この動きに中国の軍事アナリストは「第5世代戦闘機の国際需要は飽和とは完全に無縁で、先に供給が始まったF-35Aに多くの顧客が関心を示しているものの高価な導入コストや米国が設定する制限も多いため調達出来る国が限られており、ロシアも輸出向けのチェックメイトを公開したものの初飛行に至っておらず、開発が進んでいるFC-31は許容できる導入コスト、顧客に政治的な制限を設けない姿勢、完全に自立した技術体系、中国独自の優位性、機体と武器をセットで提供できるため海外市場で優位なポジションを占められる」と主張した。
さらにFC-31を導入する国に組み立てラインを建設することで「中国と顧客はより深い関係を構築することもできる」とも述べており、正に米国が直面している問題をFC-31で深く抉ろうと言っているのだからタチが悪い。
米国は武器供給を通じて導入国の安全保障政策に関与、これをテコに地域の安全保障に主導的な立場と強い影響力を確保してきたが、冷戦終結後に訪れた地域対立の増加、人権重視の世論、武器供給国の多様化などによってエンドユーザーの運用を厳しく制限する販売条件、人権状況が武器輸出の認可を左右する問題、異なる外交政策を選択した場合のスペアパーツ供給問題など米国製兵器のデメリットが強調されるようになり、少なくない国が米国以外からの武器調達という選択を考えるようになってきた。
この状況の改善に役立ったのが「海外市場に唯一供給されている第5世代戦闘機」という肩書きをもつF-35Aの存在で、米国は多くの国が関心を示すF-35Aを外交ツール化し「海外市場からのロシア防衛産業排除」や「5Gネットワーク機器からのファーエイ排除」を推し進めたものの中東諸国や第三世界は簡単には靡かず、この地域の安全保障に対する米国の主導的な立場や強い影響力の維持に陰りが生じている。
特にバイデン政権は新しい武器輸出ポリシーの中心に人権問題を据える予定なので「中東諸国(サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタールなど)や第三世界(エジプト、モロッコなど)は米国製兵器にアクセスするのが今後難しくなる」と予想されており、ぽっかりと空く力の空白に中国がロシアよりも先にFC-31で抑えてしまおうと、仮にチェックメイトと競合しても現地生産という奥の手がある中国の方が有利という意味だ。
PLAN J-35 carrier-borne stealth fighter
(CG by wb/WinWordW) pic.twitter.com/9ezzL8AqRG— 彩云香江 (@louischeung_hk) January 8, 2022
軍事的に見れば技術の拡散で機密が漏れる可能性もあるが、FC-31をテコに中国製兵器の導入国を増やせば米国に傾いた地域の安全保障の立場を中国に傾かせることも出来るため、政治的に見れば中国にとってのFC-31は米国にとってのF-35Aと同じ外交ツールとみなすことが出来る。
まぁ本当にFC-31が中国外交=特に安全保障面の切り札になるかどうかは「同機の完成に懸かっている」と言えるだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:wc / CC BY-SA 4.0 2014年珠海航空ショーでの瀋陽J-31
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> 顧客に政治的な制限を設けない姿勢
流石に嘘だろ…
顧客の大半は第三世界だから、地域のバランスに無頓着でいる限りは実際その姿勢でいけるんじゃないかな
対中国には使えないバックドアくらいは仕込むかもしれないけど
それにセカンドランナーである以上、技術の流出もそこまで痛手じゃないはず
人道や国際的対面を比較的気にする西側と違い、中国としては顧客同士で戦争しようが民間人狩りに使おうが構わないということではないでしょうか
仮に自分たちに向けてきたところで逆侵略する理由にできるだけですし
基本、中国のこの手の機体を買う国は、F-35など高価すぎて手が出ないか、政治的に
米国政府の輸出許可が下りない、売って貰えない国なので、そうなると反米国やら
政情不安な国やら新興国や発展途上国って事になります。
中国はその手の国に対しては経済的な影響力が強いし、そもそも中国と敵対して勝てる国
でも無いし、広く自国の戦闘機を売って味方に引き入れる方が利になるので、制限を設け
なくても、特に不利益にはならないでしょう。
技術情報が漏れる恐れはありますが、相手側の方が進んでいれば、劣った自分側の技術が
漏れても、そう痛くもないって感じでしょうか
そこそこのステルス性を持っていて組み立てまで提供してくれるだから中東や第三世界でバカ売れする予感
F-35との性能差は実際に戦わせてみないとわからないし、とりあえず第5世代機としてのガワがあれば欲しがる国は多いだろうね。
それにメインターゲットの国はガバガバナンスだから、キーパーソン数人を大使館のパーティーに招待すればあとはどうとでもなると考えてそう。
F-35に直接勝てる必要はないでしょう。
4.5世代機をある程度圧倒できるなら十分では。
実際に勝てる勝てないではなく、見た目がF-35とタメ張れるように見えることが売る側にとってはメリットということですよ。
F-35を配備した国が周辺にいればそれに対抗でき「そうな」機体を望むのが人情。
そしてF-35を配備する国と対立しそうな国って往々にして中露とつながりやすい。
第三者的にF-35の正確な性能が把握できないのだから、中国がかなり手前味噌なセールスをしても買い手はある程度それを信じるしかない。
もしセールス始めた早い段階で、どこかの国でF-35とやりあってボッコにされたらT-72みたいな運命をたどるだろうけど。
本文にもあるようにF-35の輸出商品としての一番の優位性が唯一の第5世代機なんだから、時間がたてば他国が追い付いてくるのはわかっていたはず。
FC-31やチェックメイトが本格的な輸出攻勢に出るまであと5年くらいあるけど、5年後も同じ理屈で市場を伸ばせなければ怠慢と言われても仕方ないんじゃないか
「J-31が欲しかったり使いたい国は、中国の言うことを聞け!ああしろ、こうしろ」
って口うるさかったらアメリカと変わらんで
中国の目指すところは、要するにアメリカの地位に変わることだから、最終的にはアメリカと同じようにアレコレ口出しするよ
今は新規オープン顧客獲得セールだから入り口を拡げてるが、出口は必ず狭い
それこそ軍備のみならず、文化経済に至るまで中国主導の衛星国になることを要求されるよ
>中国の目指すところは、要するにアメリカの地位に変わることだから、最終的にはアメリカと同じようにアレコレ口出しするよ
ただしアメリカと違って(中国の不利益にならない限り)「法の支配」やら「人権」とか「自由」「平等」「公正」みたいなお題目で殴ってくる事はないから、そこら辺のお題目のありがたみの分からない残念な国家(のトップ)にとっては大分居心地がいい可能性があるんだよねぇ…
中国批判だけはするな、あと決済は元に統一しろ、英語でなく中国語を教えろ程度は求めてくるでしょう(笑)
兵器の輸出で「中国の言うことを聞け!ああしろ、こうしろ」って態度を取ったら、中東諸国や第三世界(アフリカ)は購入しないし心証も悪くする。
中国は中東諸国や第三世界を重要視しているので、口煩くはならないでしょうね。
中国製無人機が中東諸国や第三世界で人気なのも、口煩くないのが理由の1つでしょうし。
最大の問題は実性能がオープンではない(中国人以外で証言者が居ない)こと
F35はオープンでしかもその性能が確証されてて無論実績はダンチ
現状中華ステルスなんぞ安物買いのなんちゃら以外の何者でもない情弱専用
ロシアですらステルスは追求しないと明言してるし、エンジンは眉唾、電子機器は期待できるかもってところだもんな
FC-31の事は判らないけど、J-20のステルス性能はSu-57より上で、F-117レベルが想定されていたと思います。
F-22やF-35に比べるとステルス性能は一世代落ちる雰囲気ですが、F-35非装備国だと脅威でしょうし、
F-35装備国の日本でも、配備数によっては油断出来ないと思います。
F-35を持つ米軍が脅威と分析しているし、頭から中国製は駄目と決め付けるのはどうですかね。
長年に渡り西側から盗んだ技術情報の蓄積と、膨大な予算·人員を投入して開発してきた兵器を侮るのは現実逃避に過ぎないと思います。
F35に対しての比較の話に頭から中国製は駄目と決め付けてるという言いがかりで難癖つけてくるヤツなんなん?
侮るのは現実逃避に過ぎない?むしろ逆に問いたいがF35がどのような経緯と規模で開発されたか知ってるの?
あれだけの内容の物が開発非参画でも輸入機体で単価100億円ってのどれほど尊いか理解できればその半額はするであろう中華のバッタもんがどれだけ費用対効果で劣るかも理解もできようがな
>F35に対しての比較の話に頭から中国製は駄目と決め付けてるという言いがかりで難癖つけてくるヤツなんなん?
書き方の問題かと。
>>現状中華ステルスなんぞ安物買いのなんちゃら以外の何者でもない情弱専用
この部分が不要でしたね。
無ければ、窘めなトーンも実際より少なくなったかも?
実性能がオープンではない ≠ 低性能
真の実力は中国しか知らないうえ、一般に広まっている情報しかわからない以上、情弱専用と言うには根拠が薄すぎるかと。
安物買いの銭失いの可能性もあれば、予想以上の実力の可能性もあり得なくはない訳で。
そして、戦闘機は性能が全てではなく政治であったり様々な要因によって選定されるのもお忘れなく。(もちろんF-35を買えるならこれ以上の選択肢はないですね。)
ぶっちゃけSu−75との競争の方が大きいんじゃないかなぁ
対象とする層はF-35よりも被ってるし
Su−75とFC-31の比較だと、個人的に外見はFC-31推し。
Su−75の機首回りがどうにも。
Su−75の尾翼回りと言うかボディ・フラップな辺りは、「自己修復飛行制御システムの研究」の動的風洞模型に通じる感じで良いのだけど。