欧州関連

反トルコ同盟構築を目指すギリシャ、インドと軍事協力強化で合意

トルコとの軍事的緊張に晒されているギリシャのデンディアス外相は29日、インドのジャイシャンカル外相と会談を行い両国間の軍事協力を強化することで合意した。

参考:EUROPEGreece Rushes to Establish Military Alliance With India As Turkey, Pakistan Develop Close Defence Collaboration

インドとの関係強化に乗り出したギリシャ、目的はトルコの味方をするパキスタン牽制か

ギリシャは東地中海上の排他的経済水域(EEZ)問題でトルコと外交的にも軍事的にも対立中で、両国が加盟するNATOやギリシャのみが加盟するEUに極度の緊張をもたらしている。

多くのNATO加盟国は東地中海問題に関して表向きギリシャを支持しているものの、米国に次ぐ規模を誇る軍隊(常備兵力35.5万人+予備兵力38万人)とロシア黒海艦隊の地中海進出阻止に貢献しているトルコと対立するような対応を行うのは不可能で「ギリシャを支持しながらもトルコへの明確な非難を行わない」という曖昧な対応でお茶を濁しており、EUもトルコ向けの軍事物資輸出で国内防衛産業が潤っている加盟国が少なくためギリシャが要請したトルコへの経済制裁には反対の立場だ。

※補足:ドイツが昨年トルコに輸出した武器の取引総額は約10億ドル(約1,100億円)で、これはドイツの武器輸出総額の1/3に相当する。 さらに政府の許可が必要ない軍事転用可能な装備品や物資まで含めると対トルコ向けの輸出総額は80億ドル(約8,600億円)を越えると中東系メディアが指摘している。

結局、トルコに対して口先だけではなく行動を起こそうという国は東地中海問題で影響を受けるギリシャやキプロスを除くとフランス、オーストリア、スロベニアぐらいしかなく、この状況をさらに複雑にしているのがNATOやEU加盟国以外からのトルコ支持だ。

出典:Millî Savunma Bakanlığı

トルコと関係の深いリビア、アゼルバイジャン、パキスタンなどは東地中海問題でギリシャを非難してトルコ支持を明確に表明しており、この苦しい状況を打開するためギリシャのデンディアス外相は29日、インドのジャイシャンカル外相と会談を行い両国間の軍事協力を強化することで合意した。

トルコとパキスタンは経済面と軍事面で急速に接近しており、トルコのエルドアン大統領は今年2月「インドは今や大虐殺がまん延する国家となった」と批判、さらに今年9月に開催された国連総会での演説でカシミール問題に対するインドの対応や政策を批判するなどパキスタン支持を鮮明に打ち出しているため、ギリシャはパキスタンの宿敵であるインドを味方につけることでトルコとパキスタンに対抗するするつもりだ。

因みにパキスタンはアゼルバイジャンとも関係を強化しており、ナゴルノ・カラバフ紛争でもアゼルバイジャン軍を間接的に支援しているという噂まであるため、インドとしてはカシミール問題にパキスタン支援の名目でトルコとアゼルバイジャンが首を突っ込んでくることを警戒している可能性が高く、ギリシャを味方につけることでトルコ牽制を狙っているのだろう。

そのためギリシャとインドの協力関係は互いの利益が合致した産物で上手くハマったと言えるが、全般的にはギリシャ外交は出遅れている。

出典:Prime Minister’s Office from Greece / CC BY-SA 2.0 トルコのエルドアン大統領とギリシャのパパンドレウ前首相

そもそもギリシャはNATOやEUの加盟国を味方つけてトルコ問題を片付けるつもりだったので、欧州以外の国に目を向けていなかった。それがエルドアン大統領の外交努力で当てが外れてしまい、慌ててギリシャの味方となってくれる国を探し始めたため、着々と味方づくりを進めていたトルコと大きな差が生じてしまった。

トルコのエルドアン大統領は先月、リビア、アゼルバイジャン、パキスタンに続いてウクライナと軍事協定を締結したため、当てにしていたNATOやEUが役に立たなかったギリシャとしては相当焦っているだろう。

今後ギリシャが手っ取り早く反トルコ同盟を構築するならアルメニアとの2ヶ国間関係を強化するのが一番だが、今直ぐ動けばナゴルノ・カラバフ紛争に巻き込まれるかもしれない。そうなるとエジプトが有力候補に挙がるが、ギリシャが焦って仲間に引き込もうとしているのは見え見えなのでエジプトに足元を見られるのは明白だ。

恐らく慌てているギリシャを見てエルドアン大統領はほくそ笑んでいることだろう。

関連記事:口だけのEUに踊らされたギリシャ、トルコに対する武器禁輸措置は不発

 

※アイキャッチ画像の出典:Public domain セイバーガーディアン17に参加したギリシャ陸軍

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コメント

    •  
    • 2020年 11月 02日

    なぜインドが反トルコ側につかなければいけないんだろう?

      • 匿名
      • 2020年 11月 02日

      記事よく読もう

      28
      • 匿名
      • 2020年 11月 02日

      宗教的にはヒンドゥー国家としてイスラム諸国とは常に対立と緊張
      むしろ、隣接の宿敵パキスタンへの対抗
      それでもギリシャへどこまで支援やるのか不透明
      ギリシャの劣勢挽回のめどは立たない

      12
    • 匿名
    • 2020年 11月 02日

    反中共同盟だけでなく反トルコ同盟にもインドは引っ張りだこ…
    そしてやっぱりエルドアンはそこそこ有能?

    6
      • 匿名
      • 2020年 11月 02日

      エルドアンはよくわかりませんねえ・・・。
      ただ、トルコの将軍や官僚、技術者は優秀なのでしょうね。

      3
        • 匿名
        • 2020年 11月 02日

        オスマントルコが第一次世界大戦で敗北し分割された状態しか知らないと、トルコは小国にしか見えない。
         トルコ系騎馬民族は古代はモンゴル同様、ユーラシアの支配者。ウィーン包囲も遣ったことがある。チンギスハーンら、モンゴル系とも言葉が通じた為、騙されたこともある。中国からは匈奴と言われ恐れられた騎馬民族の同類。
         トルコ語、アゼルバイジャン語、フィン語、ハンガリー語、モンゴル語、朝鮮語、日本語は膠着語。
         更にイスラム教でも仲間をたくさんつくれる。

        4
    • 匿名
    • 2020年 11月 02日

    地域外のインドくらいしかひっぱってこれないギリシャの劣勢は否めない
    とはいえ、このままトルコを増長させると世界の国家バランスは崩れるよ
    その善し悪しを別として、それを放置するのかどうか大国の動きに注目

    10
    • 匿名
    • 2020年 11月 02日

    アゼル、リビアは軍事援助を、パクは経済援助を必要としている。
    トルコがパクに接近する目的は、”核”と”ミサイル”なのでは?
    それなら、インドがギリシア(経由でEU)と結ぶ理由になる。

    4
      • 匿名
      • 2020年 11月 02日

      アメリカ「かつて西側陣営だったイランがどうなったか知らない訳じゃないよな?」

      1
    • 匿名
    • 2020年 11月 02日

    ギリシャは他国が欲しがる軍事技術があるわけでも、経済力があるわけでも無いからなぁ・・
    酷い言い方をすると・・ギリシャが求めているのは同盟というより保護
    そんな都合の良い国は居ないわけで。

    10
      • 匿名
      • 2020年 11月 02日

      でもね、ギリシャは欧米文明の源流と位置付けられてるから見棄てられもないんだよ。
      いまのギリシャ人でなく、あの場所をイスラムに奪われることを欧米はこぞって怖れてるから

      3
    • 匿名
    • 2020年 11月 02日

    着実に世界の二分化が進んでるね

    1
      • 匿名
      • 2020年 11月 02日

      経済的には二分化だけど、地理的には多極化が顕著だね
      しかし、国際交流の進む以前の古き国家はどこも自分が世界の真ん中な意識を持ってたから、本来の姿に回帰してると思えば否定もできない
      問題はその課程に起こる混乱がどういう影響を持つかだよ

      8
      • 匿名
      • 2020年 11月 02日

      二分化以上に分裂しているのでは?

      2
    • 匿名
    • 2020年 11月 02日

    中国やトルコばっか言われるけどギリシャもけっこうな全方位ケンカ外交じゃね?
    近隣国全部と関係悪化してね?

    2
    • 匿名
    • 2020年 11月 02日

    オスマントルコが第一次世界大戦で敗北し分割された状態しか知らないと、トルコは小国にしか見えない。
     トルコ系騎馬民族は古代はモンゴル同様、ユーラシアの支配者。ウィーン包囲も遣ったことがある。チンギスハーンら、モンゴル系とも言葉が通じた為、騙されたこともある。中国からは匈奴と言われ恐れられた騎馬民族の同類。
     トルコ語、アゼルバイジャン語、フィン語、ハンガリー語、モンゴル語、朝鮮語、日本語は膠着語。
     更にイスラム教でも仲間をたくさんつくれる。

    • 匿名
    • 2020年 11月 02日

    ギリシャは早々にアメリカとフランスという2つの大国から支持を得ていますし、戦闘機の売買と具体的な支援策も進んでいます。対するトルコはアメリカやロシアとは関係を拗らせ、それの穴埋めのように小国連合を進めるだけです。

    これをギリシャ劣勢トルコ優位とするのは疑問です。

    1
      • 匿名
      • 2020年 11月 02日

      記事に書いてる通り米国もフランスも口先だけ。

      支持を表明してもトルコに何一つ措置を講じていないんですよ。S400購入でF35プログラムから追放しと米国入ってるけど、今だにトルコからF35の部品を購入し続けてる。

      フランスもギリシャに武器を売りけた後は腰が引けてるし、欧州の国はトルコの難民恫喝に屈してるから全く当てにならないのよ

      3
        • 匿名
        • 2020年 11月 02日

        今アメリカやフランス、EUが、ギリシャ関連でトルコに制裁をするような何かが起きていたでしょうか。確かに小競り合いはありましたが、それらは何も深刻化していません。戦闘機関連の戦力提供も実際に戦闘が起きているわけでもなく、現状ではあくまで予防的措置にすぎません。

        1
          • 匿名
          • 2020年 11月 02日

          NATO加盟国のトルコがロシア製のS-400を導入、ロシア主催の国際共同演習コーカサス2020にNATO加盟国のトルコが参加、NATO主導の軍事作戦シーガーディアンに参加していたフランス海軍の艦艇にトルコ海軍の艦艇が火器完成レーダーを照射、国連の武器禁輸措置を無視してリビアへ違法に武器を輸出などなどトルコに断固とした態度に出るには十分かと。

          1
            • 匿名
            • 2020年 11月 02日

            どれもギリシャは関係ありませんね。

      • 匿名
      • 2020年 11月 03日

      ドイツやカナダのように公然と、あるいは後ろでトルコとズブズブの有力国家が多いから、反トルコ勢力としては結束が弱いよ

    • 匿名
    • 2020年 11月 03日

    トルコもEUへの一線は越さないように注意はしてるが、これがギリシャとの係争地に侵攻したりキプロス軍事統一に動いたら、確実に潰されるよ
    それがエルドアンとヒトラーとの分かれ目になる

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