欧州関連

防空は数の戦い、大量のシンプルなシステムでローエンドの脅威に対抗

ノルウェーは長期防衛計画に基づく国防費増額を表明、ノルウェー軍参謀長のクリストファーセン陸軍大将は防空能力の向上について「最も重要なのは保有しているシステムの数を増やすこと」「ローエンドの脅威に対抗できるシンプルなシステムが大量に必要だ」と指摘した。

参考:Norway’s air defense priorities: Volume first, then long-range capabilities

安価なローエンドの脅威には安価なローエンドのシステムで対抗しなければならない

ノルウェーのストーレ首相は5日「政府は今後12年間に6,000億クローネの国防費増額を議会に提案した」「この計画が承認されれば我が国の国防予算は現在の約2倍となり、2024年~2036年までの国防支出額は1兆6,400億クローネ(約23兆円)に達するだろう」と表明、この長期計画における優先事項には全領域における防空能力の向上(弾道弾迎撃に対応した防空システムの取得、NASAMSの追加取得、NASAMSのドローンやミサイルへの対応力強化など)が含まれている。

出典:Admiralis-generalis-Aladeen/CC BY-SA 4.0

ノルウェー軍参謀長のクリストファーセン陸軍大将は防空能力の向上について「最も重要なのは保有しているシステムの数を増やすことだ。我々は既に携帯式の対UAVシステムからNASAMSまで多くのシステムに投資を行っているが、これをもっと増やさなければならない」「特にローエンドの脅威に対抗できるシンプルなシステムが大量に必要だ。そのため戦術レベルでドローンに対処できる優れた対UAVシステムを探している」「安価なローエンドの脅威には安価なローエンドのシステムで対抗しなければならない」と述べた。

さらに弾道弾迎撃に対応した長距離防空については「何を購入すべきか明確な答えは出ておらず、時間を無駄にすることなく何に投資すべきなのか見極めなければならない。パトリオットシステムなのか、それとも他の選択肢なのか、このようなシステムはコストがかかるため大きな決断になる」「出来るだけ早く決断したと願っているが、弾道弾迎撃に対応した長距離防空には本当に多くの選択肢が登場している」と言及しているのが興味深い。

出典:IDF Spokesperson’s Unit/CC BY-SA 3.0 DEED

ノルウェーが取得を表明した弾道弾迎撃に対応した防空システムは「短距離弾道ミサイルの迎撃」を想定していたるため、下層迎撃に対応した米国のパトリオットシステム、仏伊のSAMP/T、イスラエルのDavid’s Sling、Barak MX、Barak-8、韓国のM-SAM BlockIIなどが候補(全の候補が輸出実績あり)に上がり、ノルウェーが何を選択するのかに注目を集まる。

関連記事:ノルウェーが長期防衛計画に基づく国防費増額を表明、12年間で約23兆円
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※アイキャッチ画像の出典:Raytheon

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コメント

    • 名無し
    • 2024年 4月 20日

    数の戦い、ローエンド→純粋な工業力、生産力の勝負
    ハイエンド化に極端に継投して工業力が順調に死んで来た西側諸国には辛い時代になるかもしれない

    38
      •   
      • 2024年 4月 20日

       スペースX社とロッキードの宇宙ロケットとか見ると、ロッキードはシガラミの多さにビビる。
       スペースXはコスト削減のために頭を使っているけど。
       ロッキードとNASAは、スペースシャトルの固体ロケットブースターの企業の雇用と利権を守るために、政治家の介入を受けて、設計上の制約を受けるとか。ギャグみたいな世界だ。
       たぶん、ドローンでも似たような制約を受けるはず。
       ウクライナ戦争でも、EUの金は兵器の生産でEU還元みたいなシガラミが大きい。
       政治家自身、ウクライナにお金を出すと単純な持ち出しではなく国内の雇用につながると、国民に説明しているんだからしょうがない。スペインやイタリア、イギリスの庶民から見れば、ロシアの脅威なんて歴史的にほぼ存在しないだから当然と言えば当然だけど。

       自由主義・民主主義国の場合、金持ち>政治家だけど、ロシア・中国・イランでは独裁者>金持ちだ。
       国益や目的達成よりも、政治家が選挙に勝つための政策、企業が儲けるための政策なんだから厳しいとしか言いようがない。

      14
    • マダコ
    • 2024年 4月 20日

    安価で大量にとなると、いよいよ工業力が乏しくなっている西側諸国にはつらい状況です。ですが、そういう面が残っていてコストを安く作れるという意味では、韓国などはチャンスがありそうですね。日本に関しては未知数ですが・・

    13
      • 2024年 4月 20日

      日米はまだ人口に余裕がある分未来があるけど、ヨーロッパはほんとキツそう

      2
      • たむごん
      • 2024年 4月 20日

      仰る通りです。

      石油化学工業、大規模コンビナートが分かりやすいのですが、中東などの産油国に巨大コンビナートが続々と完成しました。

      産油国なので価格競争力も高く(自国産原油を近場で活用)、最新で効率性も高いわけですから、時代は変わったなあと感じます。

      4
        • たむごん
        • 2024年 4月 20日

        追記です。

        西側諸国の左翼が、環境ばっかり騒いでる間に、すっかり競争力がなくなって弱体化してしまいましたね。

        サウジアラムコなどに、西側諸国の製油所など(日本も)を格安で買われていたりもしています。

        9
    • Whiskey Dick
    • 2024年 4月 20日

    ドローンの様なローエンドの空中目標の迎撃には、アメリカのアベンジャー(近SAM+機関銃)にドローン検知装置とジャミング装置を追加したものが有効と思われます。対ドローン装備は消費電力が大きいので、六輪トラックに搭載することになるでしょう。
    指向性エネルギー兵器は1ショット当たりのコストが極めて安価なのが魅力ですが、消費電力が大きく射程は短いので拠点防御若しくは艦載兵器に用いられる。
    寸法が大きくドローンの餌食になりやすい装甲車両には、個々に対ドローン装備を備える必要がある。武装とセンサーの邪魔にならない部分は金網で囲い、戦闘機の様にドローンとミサイルの接近を警告、自動で攪乱する機能も普及するでしょう。

    4
      • 58式素人
      • 2024年 4月 20日

      米陸軍は30mm機関砲を選んだみたいですね。
      他所の記事によると、ルーマニアにM-LIDSを配備したとか。
      四駆の対地雷車両にAN/TPQ-50レーダー/熱画像センサー/
      他のセンサー類とEW装置、30mmXM914をまとめていますね。
      ルーマニアを威嚇するシャヘド対策のようですが。

      4
    • あああ
    • 2024年 4月 20日

    後方であれば全周囲で近距離レーダー搭載したレシプロ軽攻撃機(戦車より安い)で空中警戒警備ってできそうな?

    1
      • 2024年 4月 20日

      後方なら現行のAWACSで広域見てる範囲に入るんじゃない?

      1
      • 58式素人
      • 2024年 4月 20日

      シャヘド-136なら飛行速度は巡航時速185km/hなのですが。
      シャヘド-238(ジェット化)ですと520km/hになります。
      追いつくためにも700km/hくらいの速度性能が欲しいのでは。
      レシプロ機でも高性能機の範疇になりそうですね。
      かといってジェット戦闘機でも結構キツイようです。
      例として、朝鮮戦争の時ですが、
      夜間に嫌がらせ爆撃(シャヘド136とやっていることは同じ?)
      をするAn-2(巡航速度185km/h)を撃墜するのに、当時の米軍の
      ジェット戦闘機(F-84/86?)は失速寸前まで減速する必要があったとのこと。
      ですから、低速でも比較的?安全な初等ジェット練習機かな、と想像します。
      フーガ・マジステールやフォーランド・ナットくらいの機体か、と思います。
      武装は機銃で十分でしょうが、欲を出して、亜音速ミサイルをも
      的にしたければ、MANPADSベースのAAMも欲しいでしょう。きっと。

      2
        • あああ
        • 2024年 4月 21日

        火力についてはミサイルでなくレーザー誘導のハイドラロケットで結構いけそうな?
        ジェット化シャヘドにはダメでもジェット化を強要する効果はあるなら単価上昇で投入数を抑制はできるだろうに思います。またこれで現在は後方に回されてるAAGやスティンガーを前線に送り返せるなら前線が攻撃機に蹂躙される事もなくなる。
        何より対応範囲が広い空中警備機であるなら現状より省人化が望めると思う。何も供与対象を軍用航空機に限る必要もないような?

        2
          • 58式素人
          • 2024年 4月 21日

          先日、他所の記事で。
          APKWSがシャヘドを撃墜した内容のものがありました。
          お話の”レーザー誘導のハイドラロケット” はこれですね。
          SAMで一番コストが安いのは、おそらくこれなのでしょう。
          地上発射だと射程距離が短いのが”難あり” のようです。
          現在、長射程版を開発中のようですね。
          地上発射はレーザー誘導のままでも良いのですが、
          AAMの形式だと少し面倒に思えます。
          IR画像誘導のものが欲しいですね。開発中とも聞きます。
          ”何も供与対象を軍用航空機に限る必要もないような?”
          今のところ、広域警戒に決定打はまだ無いようです。
          他所も記事を見ていると、ウクライナはマストの先に
          携帯電話をつけたものを多数建ててネットで結び、
          広域の聴音探査をしていたりするようです。
          ポーランド・他が、早速、自国用に試験中ともありました。
          まだ他に、色々と出来て来そうですから、
          そうした物を供与するのも大いに意味があるのでは、と思います。

          3
      • Natto
      • 2024年 4月 21日

      気球にレーダー着けたものでも良さそう。

      1
    • たむごん
    • 2024年 4月 20日

    数は力ですね。

    ノルウェーは南北に海岸線の長い国のため、日本と似たような特徴があり興味深いですね。

    10
    • イーロンマスク
    • 2024年 4月 20日

    戦いは数だよとシンプルに言い切らせた富野監督のリアリティすごい

    17
    • DEEPBLUE
    • 2024年 4月 20日

    対ドローンの為に低価格な機関砲が再び脚光浴びそう

    2
    • ブルーピーコック
    • 2024年 4月 20日

    やはりハイローミックス。ハイローミックスは全てを解決・・・する訳ではないが、ローの方の能力も高くなってきているから、それなりのは必要になってくるんだろうな。

    アレ?必要なのってミドル?

    1
      • daishi
      • 2024年 4月 21日

      攻める側はハイローに加えてウルトラローが出ているので、防衛側もウルトラローが必要なのでしょうね。
      ・数が作れる
      ・攻撃側よりも安価
      ・展開が容易
      となかなか難しいところだと思います。

      1
    • かず
    • 2024年 4月 20日

    見下ろしレーダーと機関砲を搭載した気球を上げておけばどうか、電力は繫留索を通じて供給

    3
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