英国は日本がもがみ型護衛艦の輸出を進めているインドネシアと31型フリゲート/アローヘッド140の輸出契約を締結したと発表して大きな注目を集めている。

参考：Babcock sells first new frigate design licence to Indonesia

もうインドネシアのフリゲート調達プログラムがここで終了するのか誰にも分からない

本題に入る前にインドネシアのフリゲート調達計画について振り返っておく。

この話は非常に複雑で計画の詳細も公表されていないため謎が多いがインドネシアは海軍の老朽化したアフマドヤニ級フリゲート（2,200トン）5隻の更新を予定しており、英国はデンマーク海軍採用のアイヴァー･ヒュイトフェルト級フリゲートから派生したアローヘッド140（約6,000トン）を、オランダはインドネシア海軍に採用実績のあるマルタディナタ級フリゲート（2,365トン）の改良型を、イタリアは米海軍採用を勝ち取ったカルロ･ベルガミーニ級フリゲート（約5,500トン）を、日本は海自が調達中のもがみ型護衛艦（3,900トン）を提案。

出典：fincantieri

しかしイタリアのフィンカンティエリは今年6月、カルロ･ベルガミーニ級フリゲート6隻のの売却に関する契約を締結したと唐突に発表したためインドネシアのフリゲート調達プログラムはイタリア勝利で終わったかに見えたが、6月末にバブコックのデイビット･ロックウッドCEOが英議会で「現在5つの国に対して31型フリゲート（アローヘッド140のこと）の輸出交渉を進めておりギリシャ、インドネシア、ポーランドで最有力候補に挙がっている」と証言したためインドネシアのフリゲート調達プログラムは終了していない可能性が浮上したもの続報がなく管理人もすっかり存在を忘れてた。

この忘れていた存在＝アローヘッド140のインドネシア輸出契約をバブコックが獲得したと報じられており大きな注目を集めている。

バブコックの説明によればインドネシア国営企業「PT PAL」とアローヘッド140のライセンス契約を締結、PALは自国海軍の要求に沿うようアローヘッド140の設計をカスタマイズするためドイツのMTG MarinetechnikとトルコのFIGESに作業を依頼（この両社はバブコックが主導する31型フリゲート/アローヘッド140コンソーシアムの一員）しており、これを国内で2隻建造してインドネシア海軍に引き渡す予定らしい。

この契約締結イベントはロンドンで開催中の「DSEI 2021」で行われ英国からウォレス国防相、インドネシア側からスビアント国防相が出席したと報じられているので確かな情報と言える。

問題は2,200トンのアフマドヤニ級フリゲート5隻を更新するため約5,500トンのカルロ･ベルガミーニ級フリゲートを6隻、約6,000トンのアローヘッド140を2隻調達したという点で、もはや更新ではなく戦力の拡張と言えるためインドネシアのフリゲート調達プログラムがここで終了するのか誰にも分からない＝つまり日本のもがみ型護衛艦の輸出は失敗したと断定できないという意味だ。

ただ日本メディアはもがみ型護衛艦のインドネシア輸出規模について「8隻」だと報じていたため、カルロ･ベルガミーニ級フリゲートとアローヘッド140の輸出数と一致するので「これで終了」という見方も出来なくはないが、果たしてインドネシアはカルロ･ベルガミーニ級フリゲート、アローヘッド140に続く3種目のフリゲート調達に動くのだろうか？

出典：海上自衛隊 もがみ型護衛艦3番艦「のしろ」

因みにインドネシアは今後3年間で1,250億ドル/13.7兆円を軍の近代化に投資する計画を立案しているという情報もあるので、これが事実なら資金的にもがみ型護衛艦を調達する余裕は十分ある。

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※アイキャッチ画像の出典：Babcock