欧州関連

イタリア海軍が調達予定の新型潜水艦、リチウムイオン蓄電池の開発が順調

イタリア海軍はサルヴァトーレ・トーダロ級潜水艦を改良したU212NFSを調達予定で、このプログラムを管理しているOCCARは10日「U212NFSに搭載するリチウムイオン蓄電池の熱伝播試験が良好な結果を得た」と明かした。

参考:UDT 2024: Type 212 NFS lithium-ion battery system tests move forward

最終的に水中の動力源はリチウムイオン蓄電池に1本化される可能性が高い

イタリア海軍はサルヴァトーレ・トーダロ級潜水艦(212A型潜水艦)を改良したU212NFSを2027年から受け取る予定で、このプログラムを管理しているOCCAR(防衛装備協力共同機構)は10日「U212NFSに搭載するリチウムイオン蓄電池の熱伝播試験が良好な結果を得た」「この試験中に火災や爆発は発生せずガスのみが放出された」と明かし、U212NFSを構成する要素の開発が順調だとアピールしたものの水中の動力源が「燃料電池方式のAIP+リチウムイオン蓄電池」になるのか「リチウムイオン蓄電池のみ」になるのかは不明だ。

出典:Naval Group Scorpene Evolved

仏Naval Groupが発表したScorpene Evolvedも「AIP機関+リチウムイオン蓄電池」と「リチウムイオン蓄電池のみ」の両方がラインナップされ、ドイツ海軍とノルウェー海軍が導入するU212CDも「燃料電池方式のAIP+リチウムイオン蓄電池」になる予定で、Naval Groupは「AIP機関を扱った経験もインフラもない国にはリチウムイオン蓄電池バージョンの方がいい=導入や運用上の負担が少ないという意味」と説明し、インドネシアはリチウムイオン蓄電池バージョンのScorpene Evolvedを選択している。

韓国もKSS-III/BatchIIから水中の動力源を「AIP機関+リチウムイオン蓄電池」に変更する予定で、まだ水中の動力源をリチウムイオン蓄電池に1本化するオプションは主流ではないものの、Naval Newsは「通常動力型潜水艦にとってリチウムイオン蓄電池は必須条件になりつつある」と述べており、最終的に水中の動力源はリチウムイオン蓄電池に1本化される可能性が高いのだろう。

出典:Hanwha Aerospace Europe

因みにイタリア海軍はU212NFSを4隻調達(4隻目はオプション)する予定で、詳細不明の長距離攻撃兵器(水中発射式の巡航ミサイル)が搭載されるらしい。

関連記事:フランス、オランダ海軍に続きインドネシア海軍からも潜水艦を受注
関連記事:米海軍、火災の危険性がつきまとうリチウムイオン電池の代わりに亜鉛電池を研究

 

※アイキャッチ画像の出典:OCCAR

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コメント

    • 774rr
    • 2024年 4月 15日

    日本が珍しく?世界に先駆けて採用したリチウムイオン電池搭載の潜水艦
    世界でもメジャーになりつつあるのを見ると自衛隊くんの目が確かだったのが伺えて良き良き

    次は燃料電池が来るかな?
    トヨタに頑張って貰って自動車で大々的に使えるようになったらまた切り替えよう

    24
      • 名無し
      • 2024年 4月 15日

      実情に即しているかは分からないけど海自は割と堅実に試験したり他所(主にアメちゃん)の事例を見て判断してるイメージ
      試験感あすかに感謝

      37
      • hogehoge
      • 2024年 4月 15日

      AIPと同種の補給問題抱えるので燃料電池は来ないんじゃないかと。
      リチウムイオン電池で最大メリットは洋上での再充電能力なので、通常のディーゼル燃料の続く限り繰り返し隠密行動に移れます。

      16
        • イーロンマスク
        • 2024年 4月 15日

        ディーゼルの代わりに全部水素にしたらと思ったが体積当たりのエネルギー量でディーゼルに負けるか
        水素の場合タンクの水素脆弱化があるから20年以上使う潜水艦には向いてないのかも
        LiBはバラせるから劣化した部品の取り換えはまだ簡単そう

        3
      • ネコ歩き
      • 2024年 4月 16日

      平成18~22年度(2006~2010年度)にかけ、2020年代以降の潜水艦への適用を念頭に防衛省技術研究本部(現防衛装備庁)において「次世代潜水艦AIPシステムの研究」を行っています。
      陸上における試作・試験の結果、事後の事業評価において「予定した燃料電池発電システムが完成するとともに、水中持続力延伸に関する基本性能及び耐久性能を確保した」とする成果をあげました。
      ただし水素の安全な貯蔵法が課題で、潜水艦用に最適として念頭に置いた水素吸蔵合金の価格が予想に反し低減できず、建造費が過大になることから採用が見送られたまま現在に至ります。
      見通しは明るくないですが水素吸蔵合金の価格低下、ないし代替し得る安全かつ安価な貯蔵技術が確立されれば計画が復活するかもです。

      7
    • ブルーピーコック
    • 2024年 4月 15日

    行動範囲が地中海だけならリチウムイオン電池のみ、航続距離が必要ならAIPかディーゼル発電機も搭載するだろうから、それでイタリアの運用方針がわかるかな。

    3
    • 名無し
    • 2024年 4月 15日

    まさかイギリス海軍よりも明るいニュースをイタリア海軍から聞く時代になるとは思わなんだ

    20
    • 名無し
    • 2024年 4月 15日

    潜水艦にもEV化の波が押し寄せようとは

    4
      • kitty
      • 2024年 4月 16日

      人力でスクリューを回してた時代が終わった直後から、「EV化」はしてましたよ。
      鉛蓄電池を使ったハイブリッド車みたいなもので。

      BEVみたいに原子力の母船から充電する方式のものができれば面白そうなのですが。

      2
    • かず
    • 2024年 4月 15日

    リチウムイオン電池でガスが発生してたらアカンと思うのだが違うのだろうか?

    2
      • あばばばば
      • 2024年 4月 15日

      潜水艦でガスが発生するような環境って、艦内に浸水しているような(もっと言えば海水に通電して塩素系のガスが発生する)状況だし、AIPだろうが鉛蓄電池だろうが、高度に電力化された現代の潜水艦全般がそもそも危険ではないだろうか。

      2
      • kitty
      • 2024年 4月 15日

      鉛蓄電池でもガスが発生しますよ。
      爆発しないでそれと同じ程度のリスクしかないと言いたいのでしょう。

      1
    • 774545
    • 2024年 4月 15日

    リチウムイオン蓄電池の登場によって性能が向上したたいげい型は更に思い切った戦術が取れるようになったそうな
    今後はリチウムイオン蓄電池搭載かそうでないかで潜水艦の世代を分けることになるかもしれない
    もっとも建造費も跳ね上がっているからそこがちょっと不安…なんだよ1隻950億円って…

    6
    • ホテルラウンジ
    • 2024年 4月 15日

    通常動力は電池になっていくでしょうね。静かですもんね
    個人的にこの手の話で気になってるのは、三菱重工がトラックに積める大きさの超小型原子炉を開発してる事ですね。
    災害時に被災地への電力供給等を想定して開発してるらしいです
    出力は弱いのでこれを推進動力として使って原子力潜水艦とはならんでしょうけど、トラックに積めるサイズであれば
    小さい筈ですし、トラック事故も想定してるでしょうから衝撃や傾き対策は取れてる筈ですので、これを1個潜水艦に積めば艦内環境を整えるエネルギー源として使うと水を作り放題、酸素も作り放題になりますんで大幅に住環境が向上しそうですけどね。
    シャワー浴び放題、トイレでうんこし放題、休憩時間にゲームし放題は乗組員にとっては革命と思うんですが
    潜航してじっとしてる分には理屈上は積み込んだ食料の量だけ潜航し続ける事が出来るようになるので戦い方も変わってくると思いますし

    11
      • 電池
      • 2024年 4月 16日

      トラックに積める原子炉、2022年のこれでしょうか。一般的な現在の発電用原子炉とは構造も違うのですね。
      「原子炉を積んだトラックがテロリストに奪われた!
      高速道路を爆走する原子炉トラックを止められるのはだれだ!?」なんて映画になりそう。

      直径1mで25年間燃料交換なし、三菱重工の超小型原子炉はどう動く
      (日経クロステック)
      リンク

      1
      • 匿名希望係
      • 2024年 4月 16日

      潜水艦に積むやつは、現状の40fコンテナに搭載できるやつで規格は統一しそう

    • 58式素人
    • 2024年 4月 15日

    ”最終的に水中の動力源はリチウムイオン蓄電池に1本化される可能性が高いのだろう。”
    どうなのでしょうか。現在は、これが最適解かもしれませんが。
    待ち伏せ戦法に徹するなら、出力の小さい燃料電池やスターリング機関も”アリ” なような。
    素人は、閉サイクルディーゼルは使えないか?、と妄想していますが。

      • 58式素人
      • 2024年 4月 16日

      妄想を追記します。
      昔の海軍で言う、第二空気(98%のほぼ純粋酸素)
      の環境で作動するディーゼルエンジンはないかしら。
      排気(ほとんど水溶性)は艦外水中へ強制排気のみで。
      原潜と向き合う時のブースターになりそうな気がします。
      通常潜に液酸タンクを積むだけで実現出来ないかな、
      酸素発生器も積んで、スノーケル発電時に同時に補充して、
      などと妄想しています。

      1
    • 無無
    • 2024年 4月 16日

    三菱が将来の潜水艦搭載まで含んでいるのは確実な気がする、
    以前から小型原子炉搭載の理論として、海自の待ち伏せ探知戦術における低速航行用としてならば低出力の小型原子炉でも問題なく、その場合は電池を襲撃時や退避の一時的な高速航行用と位置づける話は出てました

    8
      • kitty
      • 2024年 4月 16日

      充電用と割切れば、ディーゼル部分を小型原子炉にできるだけでも有効なんでしょう。
      ただし、わーくには廃棄の問題があるからなあ。

    • M774A6
    • 2024年 4月 16日

    みんな途中までは順調と言うんですよねえ。

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