欧州関連

フランス、オランダ海軍に続きインドネシア海軍からも潜水艦を受注

JANESは先月1日「インドネシアとNaval Groupが潜水艦の契約交渉を始めた」と報じていたが、Naval Groupは2日「インドネシアからScorpene Evolved-Full LiB(リチウムイオン蓄電池タイプ)を2隻受注した」「この潜水艦はインドネシアで建造される」と発表した。

参考:Naval Group and PT PAL have signed a contract with Indonesia for 2 locally built Scorpène® Evolved Full LiB submarines

このScorpene Evolvedはフィリピン海軍にも提案される可能性が高い

フランスとインドネシアは2022年2月「スコルペヌ型潜水艦の調達に関する合意文書(MOU)」に署名済みで、JANESは先月1日「Naval Groupの関係者がジャカルタに到着し、リチウムイオン電池搭載のスコルペヌ型潜水艦に関する契約交渉が始まった」と報じていたが、Naval Groupは2日「インドネシアと現地建造するScorpene Evolved-Full LiBの契約を締結した」「この契約に基づいて潜水艦2隻がPT PALで建造される」と発表した。

出典:Naval Group

Scorpene Evolvedとはスコルペヌ型潜水艦の鉛蓄電池をリチウムイオン蓄電池に変更したモデルで、推進システムは「AIP機関+リチウムイオン蓄電池の組み合わせ」と「リチウムイオン蓄電池」の2タイプから選択でき、Naval Groupは「前者はAIPグレードの水素や液体酸素のインフラが必要になる。AIP機関を扱った経験もインフラもないインドネシア海軍にとって後者の方が導入や運用上の負担が少ない」と説明していたが、インドネシアもScorpene Evolved-Full LiB(リチウムイオン蓄電池タイプ)を選択。

Naval Groupは今回の契約に基づいて広範囲に渡る技術やノウハウをPT PALに移転、インドネシアはScorpene Evolved-Full LiBの建造、運用、保守を主体的に行えるようになり「高度な技術職の雇用を何千人分も創出する」「インドネシアの防衛産業界にとって利益となるような主権構築に協力する」と説明している。

出典:Palácio do Planalto/CC BY 2.0 DEED ブラジル海軍のスコルペヌ型潜水艦

因みにNaval Groupが公開したScorpene Evolvedのスペックは排水量1,600トン~2,000トン、全長72m、水中速度20ノット、潜航深度300m、乗組員31名、弾庫容量18発、魚雷発射管6門、連続行動時間80日間、航続距離8,000海里以上、年間稼働率240日で、Evolvedの戦闘管理システムにはイタリア製のBlack Shark、フランス製のF21、 エグゾセの水中発射バージョン、フランスが実用化済みのD-19(魚雷発射管から発射可能でISR、電子戦、対潜戦、機雷戦、スマート機雷、訓練といった用途に使用できる多機能UUV)が予め統合されているのが特徴だ。

このScorpene Evolvedはフィリピン海軍にも提案される可能性が高い。

関連記事:イタリアがインドネシアからPPA級哨戒艦を受注、契約額は11.8億ユーロ
関連記事:リチウムイオン電池搭載の潜水艦、フランスとインドネシアが契約交渉を開始
関連記事:インドネシアがボーイングからF-15EXを24機調達、売却に関する覚書に署名
関連記事:インドネシア、7.33億ユーロで12機のミラージュ2000-5調達を発表
関連記事:42機のラファールを調達するインドネシア、米国も36機のF-15EX売却を承認
関連記事:インドネシア国防相、F-15EX導入は政府の最終決定を待っているところ
関連記事:インドネシアとボーイングがF-15EX導入を交渉中、アローヘッド140建造もまもなく
関連記事:白熱してきたフィリピンの潜水艦導入、韓国がKSS-IIIベースの潜水艦を提案

 

※アイキャッチ画像の出典:Naval Group Scorpene Evolved

日米によるT-4後継機の共同開発、実戦的な訓練が積める機体開発を想定前のページ

韓国のHanwha、米軍プログラムの元請け参加が可能なAustal買収に動く次のページ

関連記事

  1. 欧州関連

    スウェーデン国防相、グリペンのウクライナ提供を戦闘機連合内で検討中

    スウェーデンのジョンソン国防相は「安全保障上の理由でグリペンのウクライ…

  2. 欧州関連

    センサーとシューターの分離が進む欧州、UAVを活用して対戦車ミサイルを視界外の目標に発射

    欧州のミサイル開発・製造企業「MBDA」は21日、マイクロドローンで収…

  3. 欧州関連

    アルメニア首相、アゼルバイジャンと領土の相互承認で合意したと発表

    アルメニアのパシニャン首相はユーラシア経済連合の首脳会談の中で「アルメ…

  4. 中東アフリカ関連

    弱みを握られたEU、リビア停戦合意の裏でトルコは戦略的要衝を確保

    リビア国民統一政府とトブルク政府はリビア全域で停戦することで合意したと…

  5. 欧州関連

    FCASのサブシステム開発、エアバスがA400MからのUAV投下に成功

    エアバスは戦術輸送機A400Mの貨物スペースから無人航空機(UAV)を…

  6. 欧州関連

    第二次大戦以来最大の動員数、ウクライナ侵攻のため集結したロシア軍は最大19万人

    欧州安全保障・協力機構(OSCE)のカーペンター米国大使は18日、ウク…

コメント

    • 匿名希望係
    • 2024年 4月 02日

    オーストラリアへの意趣返し含んでそう

    9
    • 58式素人
    • 2024年 4月 02日

    トルコ建造のドイツ潜水艦かと思っていました。
    フランス製のリチウム電池が安全であると良いですね。
    フランスでの運用実績はまだだと思うのだけど。
    フランスには実験艦みたいなものはあったかな?。
    鉛電池なら安全という訳では無いですが、ある意味、リスクでは?。

    9
    • うみ
    • 2024年 4月 03日

    あららら
    オーストラリアの一応の仮想敵がインドネシアなのは、フランスは分かっているのか
    分かってやってるんだろうなぁ、、、こわやこわや

    15
      • k.ziro
      • 2024年 4月 03日

      複雑怪奇が過ぎますねえ

      1
      • nachteule
      • 2024年 4月 03日

       そんなに訝しがる事かね?インドネシアの潜水艦なんてドイツ製で改良に韓国が関わったが、オーストラリアはドイツのボクサーと韓国のレッドバック採用したが?

       インドネシア空軍もオーストラリア空軍も米国製の機体使用していますが、それも仮想敵国同士だから制限すべきだと?少なくともこの兵器導入に関しては国の主権範囲内であり、仮想敵国だから意趣返しだと言うのはどうかと思う。別に地域のバランスが変な方向に行かないなら全然普通の話でしょう。

      2
    • kitty
    • 2024年 4月 03日

    ロシアの制裁関係もありますが、世界第二位の武器輸出国になるにはこれくらい節操がないと

    13
    • 牛丼チーズ
    • 2024年 4月 04日

    フランスの防衛産業は最近景気がいいなぁ

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  2. 北米/南米関連

    カナダ海軍は最大12隻の新型潜水艦を調達したい、乗組員はどうするの?
  3. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  4. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  5. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
PAGE TOP