フィンランド国防軍は次期戦闘機HXプログラムへの入札期限だった4月30日までに欧米の戦闘機メーカー5社から最終的な調達プランと見積もりを受け取ったと明かしており、今後各提案を検討して導入機種を年末までに決定する。
参考:Final Quotations for HX Fighter Programme Received
最終的な調達プランと見積もりの提出が締め切られたフィンランド国防軍の次期戦闘機HXプログラム
フィンランド国防軍はF/A-18C/Dを更新するため次期戦闘機(HX)の調達を計画しており、プログラムコストが100億ユーロ(約1.3兆円)に達するにHXプログラムには米国からロッキード・マーティンとボーイング、フランスからダッソー、欧州(英国/ドイツ/イタリア/スペイン)を代表してエアバス、スウェーデンからサーブが参加の意思を表明していたが、入札期限だった4月30日まで全てのメーカーが最終的な調達プランと見積もりを国防軍に提出した。
米国は事前にフィンランドに対する対外軍事援助の可能性を承認、その情報をFMSを管轄する国務省が公開しているのでロッキード・マーティンとボーイングのフィンランド国防軍に対する提案内容はほぼ判明しており、ロッキード・マーティンの販売パッケージ(推定金額約125億ドル)には64機のF-35Aに加えパイロットや整備チームの訓練費用、スペアパーツ、保守サービス、500発のGBU-53/B、150発のAIM-9X、200発のAGM-158 JASSM、200発のAGM-154 JSOW、200発分のJDAMキッド等が含まれている。
ボーイングの販売パッケージ(推定金額約147億ドル)には50機のF/A-18Eと8機のF/A-18Fの他に電子戦機のEA-18Gが14機が含まれており、F-35Aと同じくパイロットや整備チームの訓練費用、スペアパーツ、保守サービス、500発のGBU-53/B、150発のAIM-9X、200発のAGM-158 JASSM、200発のAGM-154 JSOW、200発分のJDAMキッドに加え照準ポッドAN/AAQ-33、前方監視赤外線ポッドAN/ASQ-228、EA-18Gに必要な電子攻撃用ポッドが含まれている。
ボーイングはフィンランド国防軍の要求にないEA-18Gをなぜパッケージに含めたのかについて「HXの要求事項を満たすにはF/A-18E/FとEA-18Gを組み合わせて運用するのが最適だ」と主張しており、逆にロッキード・マーティンは専用の電子戦機並な能力をF-35Aが備えているため他の要素を含めなかったのだろう。
補足:ドイツ空軍も過去、トーネード(IDS/ECR/RECCE)の後継機選定時に攻撃、偵察、敵防空網制圧の3つの任務に対応したF-35Aがトーネードの後継機に最適だと主張(F-35Aを後継機候補から除外したためF/A-18E/F、EA-18G、タイフーンの3機種を同時導入する予定)していたことがある。
ダッソーが提案するラファール、エアバスが提案するタイフーン、サーブが提案するグリペンについては今のところ提案内容や最終見積もり額が発表されていないが、サーブはフィンランド国防軍に提案した内容に関する記者会見を中央ヨーロッパ夏時間の午前9時30分に行う予定なので本日の夜までには何かしらの情報が判明するだろう。
参考:Saab Presents Best and Final Offer for the HX Programme in Finland
果たして誰が勝者に選ばれるのかは不明だがHXプログラムに提出されたプランの評価ポイントは戦闘機の軍事的要素、戦闘機の保守や維持、HXプログラムに関するフィンランド産業界の関与、プログラムコストの4つに分けれているので戦闘機単体の性能で勝負が決まる訳ではない。
フィンランド国防軍は有事の際の運用と維持が容易でフィンランド産業界が関与する形でのメンテンナスシステム提供を重要な要素に挙げており、提案される戦闘機の運用・維持と提供されるメンテンナスシステムはフィンランドの国防予算内(恐らく明確な数字が各メーカーに提示されているのだろう)で賄えることが絶対条件だ。
このような要素を満たしていることを確認できた提案機種は最終的に軍事的要素を検証する能力評価プロセスに進み、フィンランド国防軍が実施する戦争シミュレーションの下で各戦闘機の運用効率が測定され総合的に最も優れた提案機種が勝者に選ばれるので、唯一の第5世代戦闘機で能力的に優れているF-35Aでもフィンランド国防軍の戦略や戦術にハマらなければ他の競合機種に負ける可能性もある。
特にF-35Aはメンテンナスシステムは独特で米国以外の国で自己完結することが難しく、主要コンポーネントの修理はF-35出資国や導入国の企業に配分されているので1ヶ国でどうにかなるという問題ではない。果たしてロッキード・マーティンはフィンランド国防軍が要求する運用・維持やメンテンナスシステムの提供にどの様に応えるのだろうか?
あとタイフーンを提案する欧州グループ(実際にはMBDAとBAEシステムズ)はタイフーンの開発及び製造・組立、エンジンの製造や保守業務にフィンランド産業界を迎え入れる用意があると発表しており、評価ポイントの4要素以外の部分でも激しい駆け引きが行われているのだろう。
参考:Finland Could Develop New Radar for Eurofighter Jet under HX Programme
管理人も以前はF-35Aの調達コストが値下がりしたため「F-35A有利」と主張していたが、同機の高額な運用コスト問題やHXプログラムの評価ポイントを考慮するとF/A-18C/Dを運用していた経験やインフラを活用できるF/A-18E/Fも十分競争力を秘めていると考えており、地理的に近いスウェーデンのサーブが提案するグリペンなどは保守や維持の面で相当高い評価を獲得するのではないかと思っている。
あとフィンランド国防軍の戦略や戦術に基づく戦争シミュレーションの下で各戦闘機の運用効率が測定するというのもポイントで、フィンランド国防軍の戦争プランは戦闘機のステルスをどこまで必要(あるに越したことはないが)としているのか個人的に気になるポイントだ。
関連記事:圧倒的なコスパを示すF-35A、スイスに次いでフィンランドでも他候補を圧倒か
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※アイキャッチ画像の出典:フィンランド国防軍
スパホのCFTの問題って解消したの?
解決したってのは聞いてないけど、
フィンランドの防衛戦略を考えるに、航続距離の要求値は低いんじゃないかと思うので、それ程問題ないんじゃないかな。
それほど広大な国土ではないが、限られた機体数と基地で全土をカバーするとなると、逆に航続距離のとれる機種のほうが使い勝手が良いとも思える
パッケージのみのコスパならF35だろうけど、総合的にデータリンクや電子支援考慮するとグロウラーも選択肢になりそうだな。
ただ、グリペンは整備に都合が良くても、今から選定するには性能面で要求が満たせないんじゃないか。
では発表を待ちましょう、
いちおうはグリペンに賭けとく、
理由?面白いから
やはり公表されたサーブの提案は面白い、電子戦でロシアを圧倒できるって話
もう流石にロシア機はないか。
もうフィンランドの黒歴史をいじくるなよ
わろた
Wargame Red Dragonだとフィランドは東側陣営なんだな
最初知った時びっくりしたわ
こういう小国(少し失礼だが)はグリペン有利だと思っていたけどそうでもないみたい。
フィンランドの仮想敵ってロシアでいいんだよな?
EUとは距離置いてるし絶妙な立場だ
ロシアって言えないけどロシアなんだろうな。
後、EUだけどNATOじゃないでは?
今でも微妙な立場だし
過去に百年もロシアの統治を受けてたし、今もロシア貿易も少なくないから
そういう意味では彼らはロシアなんて大嫌いですわな
中曽根総理がフィンランド侮辱して
抗議されてたよね
フィンランド政府は表向き中曽根発言に否定的だったが、フィンランド国民はそうでもなかったという。東西対立の狭間での苦しい立場を察するしかないね
歴史的にロシアが大好きなわけがないだろうけど、
フィンランドの地政学上・経済上、表立ってそんな事言えないですからね
そのあたりはアメリカと中国の板挟みになっている日本としても共感できない事はない
米軍基地さえなければ大手を振って中華経済圏へ参入できるのにな
今時オワコンのアメリカに付いてたって何一つ得られるものはないし…
アメリカには、上を批判する自由は保証されてるが、中国には全くそれが無いから
善悪でなく、居心地の良さで選ぶならばアメリカだよ
チベットにもウイグルにもなりたくないし
そんな話は一切していないから同意を求めないで頂きたい
今となっては中国は世界を敵に回してしまって終わりが見え始めている
中国が、香港マカオを西側との出入口として温存していたように、フィンランドはソ連と西側との窓口として都合良く利用されることで存続を許されていた感がある。イデオロギーでは資本主義を否定しつつ、実は資本主義側と貿易を続け、豊かな文化を吸収したかったのが東側の実態だよ
いわば自国民を騙して支配層が利を得るための方便な。
それをいまだに中国や北朝鮮は続けてる
それはあなたの願望でしかないよ
実際に終末を迎えているのは「西側」の「自由主義」陣営だから
人の未来は中国の様な中央集権国家とムスリム共同体の非理性的倫理の先にある
F−35A売り込みで問題になる運用コストが高額というハンデは今後も付いて回るのだろうなあ
量産効果で機体単価を下げても維持費は簡単には下げられない
オーストリアがタイフーンの維持費に苦しんでるのに
フィンランドの予算でF35の運用は難しいんじゃないの?
年間40億ドルに満たない軍事予算で147億ドルの戦闘機パッケージ買えるのか?
日本で言うと20兆円分の戦闘機?
あの辺の国こそ国防は共通化した方が良さそうだが、そうもいかんのかな。
北欧三ヶ国で装備の共通化含めた防衛協定とか結べないのかな?
あの3か国は微妙にそれぞれへの嫌悪を持ってるんですよ。昔スウェーデン1強だった時代の他2国への仕打ちとかWW2の際の見捨て方とかね。寧ろフィンランドはバルト3国のほうが連帯意識強いんじゃないかな。ノルウェーは現在の王家をデンマークから迎えていると言えば何をか言わんをやですよね。
もちろん人種的には入り交じってますし、個人レベルでのヘイトは無いように思えます。
なかなかの分析ですね。
隣近所は敵でなくともモヤモヤを抱えてることあるから
バルト三国の方がフィンランドと仲良いんだ……
とくにエストニアが。
フィンランドとエストニアの国歌は曲が同じですね、フィンランド湾の交流史とか面白そうなんですが、いいサイト知りません?
グリペンEは普通に高級機になったと言うしなあ
グリペンほF404単発で運用維持費が激安
F16の半分から三分の一とか
スパホで倍くらいになる
加えて整備性も高く、際出撃までかかる時間も他の機体の半分から三分の一
ステルス世代には見劣りするけど、小規模空軍での運用に適してるし、維持費の安いのは魅力的だね。
仮想敵がロシアというのがキツいとこだけど
一応SaabとしてはグリペンEを「スホーイキラー」と称してはいるけどね。
まあスウェーデンにとってはロシアが唯一最大の仮想敵で全力で対ロシア電子戦対策してるのに対して、
ロシアにとってスウェーデンはそうではないから、という事の様だけど。
誰も突っ込んでないけど、サーブってノルウェーなの?
スウェーデンじゃないの?
転載対策じゃないの?
さて、フィンランドがどんな結論に達するのか、その軍事的論拠の説明をはやく聞きたいよ
けっこうワクワクする