欧州関連

フランスがEurodroneから撤退、欧州共同開発のUCAV計画に見切りをつける

フランス、ドイツ、イタリア、スペインは中高度を長時間飛行できる武装可能な無人機=Eurodroneを開発中だったが、イタリアはトルコと手を組んで競合プラットホームへの投資を開始し、フランスメディアのLa Tribuneも「フランス政府はEurodrone開発からの撤退を決めた」と報じた。

参考:Actualisation de la programmation militaire : ni Rafale, ni frégates de 1er rang, ni chars supplémentaires

UCAVの有効性は対地攻撃能力のみで判断するのではなく、キルチェーン全体におけるUCAVの役割で見るべき

中高度を長時間飛行できる武装可能な無人機=MALEタイプのUCAV開発・製造は米国、イスラエル、トルコ、中国の独壇場で、この状況を打破するためフランス、ドイツ、イタリア、スペインは約71億ユーロの資金を投じて独自の無人機=Eurodrone開発計画を2015年に開始したものの、試作機製造に関する契約締結はCOVID-19の影響で2019年から2022年に、初飛行も2024年から2027年に、量産機引き渡しも2027年から2028年以降にずれ込んでしまう。

出典:Airbus

欧州4ヶ国は開発を請け負ったコンソーシアム(Airbus、Dassault、Leonardo)にEurodroneを60機と地上管制システム20基を発注すると確約しているが、ドイツが「単発機の場合、エンジンが停止すると最悪都市部に墜落する可能性があるので双発機として開発してほしい」と要求したため、EurodroneはMQ-9ではなくMQ-4に近いサイズ感(全長16m、翼幅26m、最大離陸重量11トン)になってしまい、無人機3機と地上管制所1基で構成される1システムあたりの調達コストは約3.55億ユーロ、Eurodrone1機あたりの調達コストは約1.18億ユーロ=約218億円と非常に高価だ。

MALEタイプのUCAVはウクライナとロシアの戦争でも有効性(EO/IRセンサーによる戦場認識力の拡張など)が再確認され、MQ-9やTB2は輸出を大きく伸ばすことになり、フランス装備総局(DGA)も2025年6月のパリ航空ショーで「最近の激しい紛争を通じて中高度を長時間飛行でき、低コスト、モジュール性、マルチミッション、妨害耐性、迅速な展開能力といった特性をもつ無人機の必要性が浮き彫りになった」「この種の無人機は現代戦において優れた偵察、監視、情報収集、軽攻撃能力で重要な役割を果たしている」と主張し、仏企業5社=AURA AERO、Daher、FLY-R、SE Aviation、Turgis GaillardにUCAV開発契約を授与した。

Defense Newsも「MALEタイプの無人機はウクライナとロシアの戦いで有効性と限界を示したため、この種の市場は急速な変化と進化が起きている」「この分野でフランスやトルコなどは国内の開発能力を戦略的に育成しており、パリ航空ショーでも開発を進めている新しいMALEタイプの無人機が10機以上も展示された」と報じて以下のように指摘している。

“Airbus、Dassault、Leonardoが手掛けるEurodroneは開発が遅れているため、プログラムコストが高騰し、技術的な陳腐化のリスクも高まっている。そのためフランスやドイツなどの欧州諸国はMQ-9やHeronなどの代替品に頼ることを余儀なくされている。DGAは仏企業5社とMALEタイプの無人機開発契約を締結することで選択肢を広げ、輸出機会を創出し、フランス軍に利益をもたらす競争力を備えたMALEタイプの無人機産業を育成したいと考えている。但し、5社に対するDGAの初期投資額(計1,000万ユーロ=約17億円)は控えめだ”

出典:GA-ASI

“この5社が提供するMALEタイプの無人機はサイズ、ペイロード、コスト、耐久性がかなり異なっており、機体は専用設計のものから認証済みの商用機をベースにしたもの、コストも500万ユーロ~3,000万ユーロまで様々だ。この取り組みの第2フェーズでどれだけの計画を維持するのは不明だが、これはDGAが能力の異なる複数の無人機取得を目指すのか、全ての任務を1つの機体で実行可能な無人機取得を目指すのかに左右されるだろう”

Eurodrone開発に参加しているLeonardoもTB2、TB3、Akinci、Kızılelmaといった無人機プラットホームをもつBaykarと提携し、パリ航空ショーで「無人航空機技術の開発に特化した合弁企業=LBA Systemsを設立する」「今回の提携によってLeonardoは無人機技術分野における主要プレイヤーの地位を確立した」と発表しており、恐らくフランスとイタリアは欧州4ヶ国の取り組み=Eurodrone構想は賞味期限切れだと考えている可能性が高く、特にフランスは「MALEタイプの市場と需要が単独投資のリスクを冒すだけの規模に成長した」と判断したのだろう。

出典:Leonardo

La Tribuneも今月5日「フランス政府はEurodrone開発からの撤退を決めた」「今月8日に閣議決定する軍事計画法(2024年~2030年)の修正バージョンの中で『Eurodroneは高強度戦闘に適さなくなっており、より低コストで主権を確保した戦域ドローン領域での機会を活かすため、MALEタイプの能力に対する軍事的ニーズの方針が転換された』と明記している」と報じ、Eurodroneを開発する欧州4ヶ国枠組みからフランス撤退が確定的になった。

ちなみに、フランスは2027年までに即応師団を編成する予定で、この即応師団の長距離攻撃能力は老朽化したLRU=M270 MLRSに依存しており、仏装備総局はSafranとMBDAのコンソーシアム、ThalesとArianeのコンソーシアムに独自の多連装ロケットシステム開発を発注したが、この競争入札で勝利したシステムの導入は早くても2030年以降の話で、ここにTurgis Gaillardが「迅速に開発可能」という触れ込みの独自の多連装ロケットシステム=Foudreで食い込んでいる。

今月8日に閣議決定する軍事計画法の中には「最大13基の単装ロケットランチャー取得」が明記されているらしいので、Turgis Gaillardが提案してFoudreを調達するのかもしれない。

追記:日本ではUCAVの有効性を対地攻撃能力のみで判断することが多く、ウクライナがロシアとの戦争に投入したTB2についても「侵攻初期だけしか役に立たなかった」という認識が強いが、海外ではキルチェーン全体におけるUCAVの有効性(特にEO/IRセンサーによる戦場認識力の拡張)が評価されており、フランス装備総局が主張するUCAVの有効性も「UCAVが搭載する比較的大型のEO/IRセンサー」や「プラットホームの多用途性」のことで、米国でもMQ-9の価値が再評価されている。

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※アイキャッチ画像の出典:Airbus

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コメント

  • コメント (2)

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    • たむごん
    • 2026年 4月 08日

    フランスは、武器システムの主権を握り続ける事に、非常に拘りが強いように感じるなと。

    ダッソーがオーナー企業だからなのか、フランス政府が雇用を重視しているからなのか、どういった内部の論理が働いてるのか常々気になるんですよね。
    フランス政府は防衛企業に強い権限があるわけですが、ダッソー株はエアバス(フランス政府が大株主)も保有しているため、フランス政府の支配力もあるなあと。

    ドローン・無人機の全てを、最終的にどのように使うのかも大事ですが、『日本世論・政治の支持が極めて強力』なうちに自衛隊にもドンドン導入して欲しいですね。

    • ras
    • 2026年 4月 08日

    無人分野だけでも協力しなければ…とFCASで言われ続けてたがFCASも死ぬ流れでついに死ぬのかユーロドローン…
    まあ選択と集中でいつまでも完成しないものから撤退するのは当然ではありますが、10年かけたものを手切れるのはむしろ褒めるべきか…
    とりあえず二度とやるなダッソー×エアバス

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