フランス軍はSwitchblade600に相当する「対戦車向け弾頭を搭載する新型無人機(LARINAEプロジェクト)」の開発契約をNexterに授与、この徘徊型弾薬は敵車輌が搭載するアクティブ・ディフェンスを妨害する能力を備えるらしい。
参考:NEXTER, UNE SOCIÉTÉ DE KNDS, EOS ET TRAAK REMPORTENT L’APPEL À PROJETS DES MUNITIONS TÉLÉOPÉRÉES « LARINAE »
参考:French Army taps Nexter to build tank-busting kamikaze drones
アクティブ・ディフェンスを妨害する能力をもつ対戦車向け弾頭を搭載した徘徊型弾薬
ウクライナに提供され注目を集めるようになった米AeroVironment製の徘徊型弾薬「Switchblade」には40mmグレネード弾相当の威力を備えた「Switchblade300(重量2.5kg/滞空時間15分/飛行距離10km)」と、対戦車ミサイル相当の威力を備えた「Switchblade600(重量22.7kg/滞空時間40分以上/飛行距離40km~90km)」があり、米陸軍が本格的にSwitchblade300の調達を始めたのはナゴルノ・カラバフ紛争後の2021年からだ。

出典:Photo by Cpl. Jennessaa Davey
AeroVironmentは10年以上前からアフガニスタンで戦う特殊部隊向けにSwitchblade300を提供してきたが、米陸軍は2021年5月にSwitchblade300に関する複数年契約(契約額4,496万ドル/約49億円)を同社に授与、この契約には対外有償軍事援助(FMS)を通じた同盟国からの発注分を含まれており、米陸軍と共にSwitchblade300の導入に踏み切ったのは英国だと言われている。
このSwitchbladeについて「フランス軍も調達する」と報じられ、仏陸軍のグジョン大佐は徘徊型弾薬について「もし迫撃砲の砲弾と同じコストで3km先の上空を15分も徘徊できるなら本当に興味深い。しかしコストが砲弾の10倍も掛かるなら興味はないものの、もし30kmから50kmも先の上空を2時間から4時間も徘徊できるなら話は別だ」と述べていたが、AeroVironmentは今年4月「新たに獲得した契約にはフランスに販売されるSwitchblade300が含まれる(+国名を明かしてない同盟国分も含まれる)」と明かした。

出典:ZALA AERO Lancet
フランス軍は独自の徘徊型弾薬を複数開発している最中で、Switchblade300の導入は「試験目的」もしくは「独自の徘徊型弾薬が実用化されるまでのつなぎ」と言われており、フランス軍はSwitchblade600に相当する「対戦車向け弾頭を搭載する新型無人機(LARINAEプロジェクト)」の開発契約をNexterに授与、2024年末までに能力の実証を行う予定らしい。
この徘徊型弾薬は最低でも80km以上の航続距離(滞空時間3時間以上)、電子妨害下でも運用できるようGPSに依存しないナビゲーションシステム、昼間なら15km先、夜間でも3km先の車輌を検出可能なオプトロニックボール(EO/IRセンサーを内蔵したターレットのこと)を備えているらしいのだが、最大の特徴は敵車輌が搭載するアクティブ・ディフェンスを妨害する能力を持っている点だろう。
恐らくNexterが開発する対戦車向け徘徊型弾薬は「APSによる保護を突破する能力がある」という意味で中々興味深いが、この能力については詳しく触れられていない。
因みにウクライナへの提供が発表されているSwitchblade600は米陸軍の正式採用装備ではなく、国防総省が研究目的で極少数を調達しているレベルなため大量生産されておらず、ウクライナにSwitchblade600が到着したのかも不明だが、ロシア軍は攻撃効果を高めた能力拡張型のLancet-3(Izdeliye51/推定値:最大重量14kg以上/弾頭重量5kg/滞空性能60分/航続距離70km)を戦場に投入して効果を上げており、Nexterが開発する徘徊型弾薬には米ディフェンスメディアも注目している。
米海兵隊は対戦車向け徘徊型弾薬にSwitchblade600ではなくHERO-120を選択しているため、Switchblade600が米軍採用を勝ち取れるのか非常に怪しい。
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※アイキャッチ画像の出典:AeroVironment
アクティブ・ディフェンスというと、イスラエルのトロフィーシステムなら、突入方位に向けて飛翔角度の狭い散弾を撃つ感じだから、横スライドするか、急加速で予測を躱す感じになるとは思うけれど。実際に突破するところを見てみたいものだ。ただ、書いては見たものの、タイミングが凄くシビアな気がする。
逆に急減速して鳥ぐらいの速度で突入するとか
空中のドローンから手りゅう弾を落とすイメージの垂直落下
あと数年したらレーザーが運用され始めると思いますが、それも突破できるのでしょうか?
APSを喰らっても目標に突っ込んで行くほど頑丈に出来ているのか、そもそも発見されないようなステルス性を備えているのか、気になります
ドローン、APS、APSを突破するドローン
これぞ矛盾、血を吐き続ける悲しいマラソン…
まぁ迎撃側も検出力や威力を上げたり、レーザーとかの新技術を投入したりでイタチごっこでしょ
大事なのは開発し続けて、世界の潮流から取り残されないこと
日本もなんとかして欲しい
日本ではダイキンが「打撃用UAV」という名称の徘徊型無人機を開発中ですね。
日本の防衛省が挙げた防衛力の抜本的強化の7つの重視分野の中に「無人アセット防衛能力」などが入っているので、今後の日本には多数の無人兵器などが配備されることになると思いますよ。
謳い文句は凄いけど、実際は…というのが兵器開発の歴史なので、実際に運用されるまではなんとも言えないですね
しかしドローン関連は進化が早いのも事実なので、有り得るかも?と思ってしまうのもまた面白い
戦争は技術を進歩させると俗に言いますが、あまりの速度に感覚が追いついていきません。
空を無数の徘徊型弾薬が飛び回る戦場・・・
人間にとってはなかなかのディストピアですね。
少し前の記事でF35の発電と冷却の話が話題になってたけど戦車もAPSやレーザー兵器を強化するようになれば同じ問題で苦しむのかな?
冷却ではないがすでに似たような問題で苦しんでるみたいよ。
車内の電子機器が充実したせいで、発電のため大馬力のエンジンをアイドリングさせてるせいで燃費が最悪なことになってる車両が増えてるからね、とはいえ戦車は飛行機と違って多少は余裕があるから補助動力装置をつけるという乱暴な方法でなんとかできるけど。
個人的には戦車みたいな車両にハイテク装備をゴテゴテつけるのはどうかと思うな、飛行機は空港という整備環境が整った拠点で常に整備ができるけど、車両はいつでも整備拠点に戻れるとは限らないし、いざとなったら現場の工兵が直さないといけないから、あまり現場の手に負えないものをつけるのはどうかと思う。
飛行機は電子機器が壊れると最悪飛べなくなりますが、戦車は一応走れるという違いはあります。
走行能力や最低限の戦闘能力までも複雑な電子制御に依存するのは考えものですね。
> 国防総省が研究目的で極少数を調達しているレベルなため大量生産されておらず
そう言うことだったんだ。
スイッチブレードやフェニックスゴーストの戦果がまったく出てこないのは何故かと思っていたけど、そもそも数が出てなかった可能性があるんだ。
APSの射程内でサイドスラスターとかさすがにありえないと思うので、落とされる前に自己鍛造弾をぶっ放すとかですかねぇ
流石に徘徊弾薬に期待できる程度の機動性でAPSの回避は難しそうですからデコイか自己鍛造弾、子弾放出ないし多弾頭化になりそうですね
やはりこの手の兵器も対抗手段が増えるにつれ弾頭重量増でスケールアップ重ねて運搬性とかその辺の理由で頭打ちはありそうです
いまなら喜んでウクライナ人が実戦でテストしてくれる
散弾形式のAPSが相手だったら。
APS側の散弾の射程距離直前で急上昇して、
トップアタックモードに切り替えたら行けそうな気がします。
ジャヴェリンなどのATGMでは実際に行っているようだし。
ただ、推進力を急に増やさないとだから、どうやるかな。
プロペラのピッチを変えるとか、ブースターを使うとか。
でもこれは、実施コストを含んだいたちごっこでしょうか。