ユーロサトリ2022で取材に応じた仏陸軍のグジョン大佐は米国や英国に続き徘徊型弾薬「Switchblade」を調達すると明かして注目を集めている。
参考:France requests Switchblade loitering munition to fill ‘urgent’ capability gap
迫撃砲中隊の支援火力が砲兵部隊並な射程を獲得しようとしている点は、ポーランドのグラディウス・システムと同じだ
ウクライナに提供され注目を集めるようになった米AeroVironment製の徘徊型弾薬「Switchblade」には40mmグレネード弾相当の威力を備えた「Switchblade300(重量2.5kg/滞空時間15分/飛行距離10km)」と、対戦車ミサイル相当の威力を備えた「Switchblade600(重量22.7kg/滞空時間40分以上/飛行距離40km~90km)」があり、米陸軍が本格的にSwitchblade300の調達を始めたのはナゴルノ・カラバフ紛争後の2021年からだ。
AeroVironmentは10年以上前からアフガニスタンで戦う特殊部隊向けにSwitchblade300を提供してきたが、米陸軍は2021年5月にSwitchblade300に関する複数年契約(契約額4,496万ドル/約49億円)を同社に授与、この契約には対外有償軍事援助(FMS)を通じた同盟国からの発注分を含まれており、米陸軍と共にSwitchblade300の導入に踏み切ったのは英国だと言われている。
このSwitchbladeについて「フランス軍も調達する」と報じられており、ユーロサトリ2022で取材に応じた仏陸軍のグジョン大佐は「迫撃砲の砲弾と同じコストで3km先の上空を15分も徘徊できるなら本当に興味深い。ただ3km先の上空を15分も徘徊するのに砲弾の10倍もコストが掛かるなら興味はないが、もし30kmから50kmも先の上空を2時間から4時間も徘徊できるなら話は別だ」と明かしている。
フランス軍は独自の徘徊型弾薬を複数開発している最中で、グジョン大佐の発言は開発中の徘徊型弾薬を指したものである可能性が高く「陸軍が調達するSwitchbladeの数は82発だ」という情報もあるので、ひとまず米国製のSwitchblade(300なのか600なのかは不明)を運用して開発中の徘徊型弾薬に役立てるつもりなのだろう。
それでも「30kmから50kmも先の上空を2時間から4時間も飛べる徘徊型弾薬を実現したい」という仏陸軍の願望が漏れているため非常に興味深く、迫撃砲中隊に砲兵部隊並な射程を与えようとしている点は、ポーランド陸軍が導入を決めたグラディウス・システム(別記事参照)と同じ趣旨だ。
因みに主力戦車を破壊可能なSwitchblade600は国防総省が研究目的でプロトタイプを極少数調達しているレベル(製造ラインがないという意味)で、ウクライナに提供する10発もAeroVironmentの技術者が1発づつ手作業で製造しているらしいが、同社の関係者はユーロサトリ2022で「Switchblade600がまもなくウクライナに到着する」と述べている。
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※アイキャッチ画像の出典:Photo by Cpl. Jennessaa Davey
これからは徘徊型弾薬をばら撒き合う戦い方になるんなかぁ。
海洋国家だと、徘徊型潜水ドローンの様な物がこれに相当するのだろうか
魚雷改造したら行けるかな
ただ、ウクライナではスイッチブレード300/600は通用していないらしいんですよね。
報道によると、スイッチブレード300/600 は電子戦防護に極めて弱く、制御システムが機能しなくなるためウクライナ側が使用を禁止しているという話です。
一部の西側ドローンはロシアの電子戦下ではかなりの範囲で無効化されているという話は開戦以降から出ていますし。
今のところロシアの電子戦の影響を受けているのは小型~中型ドローンで、プレデターやリーパーのような大型機はほとんど影響を受けていないとのこと。これは機体に搭載した信号妨害防止受信機の性能の差によるものだと思われます。
ドンバスやクリミアでもウクライナの従来型の軍用無線機はロシア軍のジャミングの影響をかなり受けたが、その後米軍が供与したSINCGER無線機はほぼ影響を受けなかったという事例もあります。
小型安価な高性能ドローンで革命的戦果!と期待されることもあったが、実際やってみると上手くいかないものですね。
電子妨害に勝つには効果で重い防護システムを追加する必要があり、結局大型で高価になります。
あるいは砲爆撃主体の電子戦(物理)の支援が必要で、簡単に安く簡単にとはならないことが証明されました。
ちなみに、元記事にはカナダが提供した砲弾(M982 エクスカリバー誘導砲弾かな?)も同様に電子戦で無効化されるのでは無いかとの推測が書かれています。
誘導砲弾も万能では無いのでしょうね。
まぁ電波妨害を行わせてその影響範囲内に相手の行動を抑制するのも十分効果はあると言えるのではあるけれど。
自動自爆ドローンではなくて、最終的な爆撃に通信が必要なのが問題のようですね。
打ちっぱなし能力があるものは画像や熱センサーでも突っ込むので妨害しにくい。
アメリカは誤爆の可能性が高まるこういったタイプを開発しないので送れない。
>カナダが提供した砲弾も同様に電子戦で無効化されるのでは無いかとの推測
公の資料だとカナダが購入したエクスカリバーは07年だけのようなのでどう考えてもIncrement Ia-1。GPSアンチジャム機能積んだのは次のバージョン。
10年以上前の砲弾をさして万能では無いってのはちょっとどうなのかと思う。最新バージョンだと全ての機能は搭載されているから、それが無効化されているなら憂慮すべきだと思うけど。
米宇宙軍作戦担当副本部長デイヴィッド・トンプソン将軍が米NBCに出演し、ロシアはGPS信号をウクライナ国内で妨害していると証言しています。妨害されているのはGPS衛星信号ではなく測位精度を上げるために地上局から発する電波だそうで、妨害装置は大型トラックに積載された移動式とのことです。
自律飛行する西側無人機は航法にGPSを利用している場合が多く、誘導砲弾等を含め運用に支障が生じている可能性はありますね。
特殊部隊が敵地に侵入して重要インフラを爆撃とか破壊工作に活用できますな
ただ、使ってみたウクライナとしては300威力が低すぎて普通商用ドローンでいいみたいな感じなんですよね。
600の方だったり、運用体制でまた違ってくるのでしょうが。
82発程度の購入なら運用実験をして終わり
管理人が言うようにお試し感覚の試験導入なんでしょう
デジカメや防犯カメラの顔認識とか動体追尾機能って、なかなかの性能なのだが
敵戦闘車両のデータや指定した建物のどの階かを画像指定
敵しかいないエリアに飛ばす→俳諧→検知して特攻
だと電子戦には強いのではなかろうか?
IRセンサー無しだと煙幕と夜間には弱いが
「おい捕虜ども、これから故郷に帰っていいぞ。」
民生品の追尾機能は、撮影対象が軍事レベルの迷彩を身に纏ってプロが本気の擬装している状態を想定していないので・・・
特に初夏になってから、両軍とも車両に対する擬装がすごいですよ。生花か、という感じで木の枝がわさわさ生えてたり。
都市で防衛戦やってる戦車が砲塔の上にゴミを貼り付けて上空から見るとゴミ捨て場に見えるカモフラージュをしていたのには笑いましたが。そんな手があるのかと。現場の将兵は自分の命がかかっているので、まああれやこれやと工夫しています。
AIに学習させてそういう擬装を見破る能力を向上させると、今度は「擬装している戦車に見せたただのダミー」にひっかかりやすくなります。
なかなか難しいもんですよ。