ドイツ最大の経済新聞「ハンデルスブラット」は26日、老朽化した戦闘機「トーネード」の後継機選定問題でドイツ国防省は米国と欧州の両方から戦闘機を分割調達する方針だと報じている。
参考:Eurofighter und F-18-Jets sollen offenbar Bundeswehr-Tornados ersetzen
ドイツ空軍のトーネード後継機問題は最悪の選択「分割調達案」で決着か?
ドイツは核兵器運搬能力を持つ戦闘機「トーネード」の後継機を調達するため米国からF-35AとF/A-18E/Fを欧州からユーロファイター・タイフーンを提案されたが、政治・経済要因の影響でロッキード・マーティンが提案した「F-35A」は後継機候補から外され、ドイツ国防省はF/A-18E/Fとタイフーンの2機種から後継機を選択しなければならなくなったが幾つか重大な問題に直面している。
F/A-18E/Fは核爆弾「B61」の運搬能力を有しているがNATOによる認証(実質的には核兵器を提供している米国の認証)手続きを受ける必要があり、タイフーンは核爆弾の運搬能力自体がないため改良作業を行いNATOによる認証を受けなければならない。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Janweb B. Lagazo/Released
そのためドイツは米国に認証手続を受けるのに「具体的に何が必要なのか」を説明するよう要求したが、米国はF/A-18E/Fならトーネードの機体寿命が尽きる2030年までに調達が間に合うが、タイフーンを選択すればF/A-18E/Fよりも認証作業に最大5年以上余計に時間が掛かると説明した。
関連記事:ドイツに残された唯一の選択肢?トーネード後継機として間に合うのは「F/A-18E/F」だけ
結局、ドイツ空軍の条件(時期や能力)を満たせるのはF/A-18E/Fしかない訳だが、ドイツはこれを受け入れる事ができない事情がある。
タイフーンの開発・製造を担当しているエアバス傘下のユーロファイター社はドイツに拠点があるため政治的にも経済的にも無視することが出来ず、スイス、フィンランド、スペインで両機は競合しているためタイフーンの開発に参加しているドイツがF/A-18E/Fを選択すれば同機の販売に悪影響を与える可能性があるため安易にF/A-18E/Fを選択することができない。

出典:pixabay
では、タイフーンを導入すれば良い話なのだが核兵器の運搬能力やNATO認証問題以外にもドイツ空軍としてはタイフーンを避けたい理由がある。
当初、ドイツ空軍はトーネードの後継機にF-35Aを希望してたのはステルス能力や核兵器の運搬能力などの理由以外に、敵防空網制圧任務を担当していた電子戦闘偵察型「トーネード ECR」退役の穴を埋めるのに既存の電子戦専用機よりも優れた能力をF-35Aが備えていたからで、F-35Aはドイツ空軍にとってトーネードの穴を完璧に埋めてくれる唯一の存在だったのだ。
補足:エアバスもタイフーンに電子戦/妨害ポッドを装着することでトーネード ECRの穴を埋めることが出来ると提案していたが、核兵器の運搬能力の付与に加え電子戦/妨害ポッドを運用できるよう改造を行うためにはコストがかかるという問題点がある。
以上の経緯を踏まえると、ドイツ国防省がトーネードの後継機に求めなければならない条件は以下の通りだ。
- トーネードが退役してしまう2030年までに調達可能なこと
- NATOの認証を得た核兵器の運搬能力を持っていること
- 敵防空網制圧任務が行える電子戦能力をもっていること
- ドイツが置かれた政治・経済的状況を踏まえ欧州の利益を優先すること
- エアバスがタイフーンの情報開示(核爆弾B61統合に必要)に否定的なこと
- 今後のタイフーンに悪影響を与えないこと
この全ての条件を1機種でクリアすることは到底不可能なので分割調達案が浮上してきたのだ。

出典:public domain EA-18Gグロウラー
経済新聞「ハンデルスブラット」によればドイツ国防省は核兵器運搬能力を満たすため米国から戦闘機F/A-18E/Fを30機、国内や欧州に配慮するためエアバスから戦闘機タイフーンを90機、トーネード ECRが担っていた敵防空網制圧任務の穴を埋めるため米国から電子攻撃機EA-18Gを15機導入する案を採用するだろうと報じている。
確かにこれなら米国も欧州も自国の防衛産業に利益が落ち面子も保つことが出来るが、戦闘機「トーネード」の後継機が3機種に増えることで調達費用は確実に上昇することになり、結局これを負担するドイツ国民にとっては何のメリットもない。さらに運用する空軍にとっても機体の維持や保守が複雑になるため、この分割調達案はドイツ国内で批判に晒されている。
もし本当に戦闘機「トーネード」の後継機問題が分割調達案で決着すれば、ドイツ空軍にとって最悪の決定になることは間違いないだろう。
※アイキャッチ画像の出典:public domain シュレスヴィヒ空軍基地に展示されているドイツ空軍の戦闘機「トーネード」
ドイツには「プロジェクト管理能力」は無くなったみたいですね。
別件、
武漢コロナに関して、韓国と同じく全数検査で行くみたいです
現在でさえ50万件/週の検査をしてる、これを倍増の100万件/週に増やすって(検査を週5日とした場合)
F15Eじゃダメなの?
FBWでは無いって理由で早期に候補落ちした記憶があります。
アメリカ軍から当面分のF18をレンタル出来ないんでしょうか?
購入するのではないので国内への言い訳は出来そうですが。
F-18E/FとGを別機種にカウントする必要があるのかな?
ないでしょうね。
ドイツの場合は取り敢えずニュークリアシェアリングに適合すればなんでもいいのです。
なんなら他のNATO国からでも借りてくればいいのです。
お金持ちなんだから使わなきゃね。
この手の話ってもう20年ぐらい前から各国であったものを今さら騒いでもなぁ…。
退役の時期から逆算すればわかっていた話だろうに。
ないでしょうね。
ドイツの場合は取り敢えずニュークリアシェアリングに適合すればなんでもいいのです。
なんなら他のNATO国からでも借りてくればいいのです。
お金持ちなんだから使わなきゃね。
スパホはまだ良いとしてグラウラーは10年後まだ現役でいられるのかね?
近代化改修って言っても最大のカスタマーである米国が諦めたらそこまでなんだから、F-35選んだ方が最終的には安くつきそうな気がするんだけど。
なんでF35だと政治的にあかんの?
ロッキードが親の仇なん?
FACS(独・仏の共同開発の次期戦闘機)の邪魔だから
なんせF-35Aの導入を主張したドイツ空軍のTOPを更迭したぐらい。
ドイツは電気をフランスに、ガスをロシアに、経済を中国に握られている。つまりそう言うこと。
国家間分業による効率化の行き着く先…
まぁつまりは過度なグローバル化の結果なんですけどね
目先の利益に釣られて危機管理ができてないという
F/A-18E・FとEA-18Gはそれ程差は無いしタイフーンは既に独空軍が装備してるんだから其程複雑にはならないんじゃないかな。トーネードの代わりにF/A-18・E/A-18Gが来る感じで0.5機種増えたって状態?寧ろsu-57も飛び始めて周りの国はF-35A・B導入する国も多い中でスパホって言う一週遅れな状況が…。
>さらに運用する空軍にとっても機体の維持や保守が複雑になるため、この分割調達案はドイツ国内で批判に晒されている。
核兵器運搬能力としてトーネード→F/A-18F
トーネードECRの後継にEA-18Gならば、
上記以外のタイフーンを加えると、現状と同じ三機種運用だけどね﹙移行期間は除く﹚。
無論、タイフーンへ電子攻撃能力や核兵器運搬能力を付与しとけば、より運用機種が減ったのだろうけど、
分かっていてもそこら辺の事前準備が出来ないのがタイフーン陣営のクオリティ。
トーネードを1機種扱いならグロウラーとスパホも1機種扱いでいいんじゃね
最初の一手を誤ってどんどん袋小路に
素直にF35にすれば良かったのに。
FACSはF35以上も性能を求められるのだから、丁度いい
ベンチマークになっただろうに。
ついでに言えば、どうせ独仏共同開発なんて無理なんだし。
それだよね。
タイフーンメインで核運用と電子戦をF-35で賄えば電子戦機分の枠をタイフーンに回せる訳だし。
F-35の運用で得られる経験や知見はFCASの開発にだって役に立つ…というかむしろ「独仏が第五世代機を肌で知らない」事はFCASの開発・セールス上、無視できないネガティブ要素になるんじゃなかろうか。
独仏はFCASを将来の欧州共通戦闘機にしたいんだけどF-35が普及してしまうとFCASの入り込む余地が小さくなってしまう。
そこで肝心要のドイツがF-35を導入してしまえばFCASの完成そのものをドイツが怪しんでF-35で保険をかけたと見られかねない。
となれば他の欧州諸国もFCASを待つリスクを回避してF-35導入に踏み切る国が出てきてしまい、予定通りにFCASが完成したとしても「F-35買っちゃったから当面新型戦闘機の導入計画は無いよ」となりかねず顧客がいなくなってしまう、という可能性が懸念される。
敵防空網攻撃を検討できるのが、羨ましい。
F35でいいやろと…
まあ、エンジン不具合で全機種飛行停止とかにならないと思えば…