チェコのパベル大統領は今年3月「ウクライナの反攻作戦は1度きりで失敗すれば次はない」と述べていたが、反攻作戦の結果を受けて「ウクライナ軍は戦場での優位性を示しておらず、来年には(ロシアとの)交渉が始まるかもしれない」と語った。
参考:Čas hraje pro Rusko, na převahu Ukrajinců to nevypadá. Pavel mluví o jednání
戦いの長期化は動員能力の差でロシア有利に働き、現在の状況が良くないことは明白だ
チェコ軍参謀総長やNATO軍事委員長などを務め、2023年の選挙で大統領に当選したペトル・パベル氏は3月「数ヶ月以内にウクライナ軍の反攻が必ず行われるが、これが失敗すれば次回の反攻に必要な資金や物資を得ることは困難になる」と指摘した。
ポーランドメディア(Rzeczpospolita紙)の取材に応じたパベル大統領に「いくつかの西側諸国は戦争を止めるためウクライナの領土放棄が必要だと考えているのではないか?」と質問、これに「領土の一部放棄を私が勧めることは絶対にない。ウクライナが自ら放棄を決めるならまだしも周囲が譲歩を押し付けるべきではない。同時に最後の1人まで戦うことも勧めるべきでもない。我々は可能な限り支援を行うが、将来の計画を与えることはできない」と回答。
さらに「あらゆる種類の武器をウクライナに与えるのか?」という質問についても「彼らの目標達成に役立つものなら何でもいい。全領土の解放が目標なら必要な全てを与えよう。ただ現実的には西側諸国の支援にもウクライナも人的資源にも限界があり、米国で大統領選挙が来年行われることも受け入れなければならず、過去の選挙を見ればわかるように大統領選で国民も政治家も国内問題に重点を置く。もし選挙戦で国際的なテーマが争点になる場合、それは欧州ではなくアジア(対中国)になるだろう」と指摘。
このような現実的な政治問題を加味した上で「来年の米国はウクライナへの関心や支援水準が下がるかもしれない。もし米国の関与が低下すれば多くの欧州諸国もそれに習うはずだ。予定されているウクライナ軍の反攻は数ヶ月以内に必ず行われる。現在の支援レベルを今年の冬以降も維持するのは極めて困難で、戦争による疲労はウクライナだけでなく支援国にも広がっており、多くの支援国やその政治家達は年内に何らかの進展を期待している。そのためウクライナ軍の大規模な反攻は1度きりになるだろう。これが失敗すれば次回の反攻に必要な資金や物資を得ることは困難になる」と言及した。
約6ヶ月間にわたる反攻作戦で「ウクライナ軍が残した結果」については様々な見方があるものの、世論やメディアの評価は「期待に達してしない」というのが主流で、ウクライナ軍のザルジニー総司令官も「反攻作戦が膠着状態に陥っている(ゼレンスキー大統領は否定)」「戦いが長引けば人的資源の問題で不利になる」「何らかの解決策を見つける必要がある」と現状の困難を認めている。
さらにドイツ軍のクリスチャン・フロイディング少将も「ここ数週間は膠着状態でザポリージャ南部のウクライナ軍の攻勢は勢いを失っている」と、エストニア軍諜報機関のアンツ・キヴィセルグ大佐も「現状でウクライナがクリミアを解放してロシア軍を領土から追い出すのは難しい」と述べていたが、チェコのパベル大統領も「戦場での結果はウクライナ軍の優位性を示しておらず、来年には(ロシアとの)交渉が始まるかもしれない」と語った。
パベル大統領は「ロシアは意図的に戦いを長引かせようとしているのは明白で、プーチンはウクライナに対する武器支援の意欲を揺るがしかねない米大統領選の結果を待っているのかもしれない。どちらにしても戦いの長期化は動員能力の差でロシア有利に働き、時間をかけることで不足している物資を補充することもできる。現在の状況が良くないことは明白だが、我々にとってもウクライナ支援を継続する以外に選択肢がない。西側諸国はウクライナ自身が次の行動を決めるまでそうしなければならい」とも述べている。
どの米紙だったかは失念したが「ウクライナ支援は戦争に勝つためのものから『戦争に負けないもの』に変質する可能性がある」的なことを言及しており、パベル大統領が「西側諸国はウクライナ自身が次の行動を決めるまで支援を継続するしない」と言ったのは「ウクライナ人が交渉を始めると決断するまでロシア軍を食い止めるだけの支援が必要だ」という意味かもしれない。
因みに政治的な状況や戦場の動きでウクライナにポジティブな要素(ウクライナ軍が個々の戦闘でロシア軍の◯◯を破壊した的な話以外)を見つけようと努力しているが、取り上げるべき話題がないというのが正直なところで、ここまで悪い流れは20ヶ月間を通じて初めてだ。
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※アイキャッチ画像の出典:Petr Pavel
停戦交渉したとしてもロシア側が過大な要求をしてくることは明らかだし
むしろ交渉するふりをして合意する気はなく侵略を継続すると予想するが
停戦してもロシアが次の侵攻の準備を進めるだけと言うのはそうかもしれませんが、かといって継戦してどうなるのかという予想と天秤にかける必要があります。
停戦でウクライナが譲歩しなくてはいけない内容と、継戦することでロシアにどんどん押し込まれた場合の状況、どちらがマシなのか…
継戦してウクライナが反撃に成功する見込みがあるなら停戦は時期尚早でしょうが、本当にこの先反撃に成功する見込みはあるのでしょうか…
個人的には、今停戦して失う(割譲する)ウクライナ領土と、継戦してロシアが将来的に「もう戦争疲れたし停戦しよ」と言い出した際に占領されてしまっているウクライナ領土、前者の方がマシな気がします。
ちなみに、ウクライナとしての利益は現時点で停戦交渉開始だと思いますが、人道を無視して西側の利益とを考えると、10年でも20年でも、ウクライナ人が血を流しながらゲリラ戦でロシアに抵抗するのが一番利益でしょうね。
いやむしろ停戦交渉をするとロシア側がモチベーションアップして却って停戦が遠のく恐れがあるというのが私の考え。
交渉をする上でも動員拡大など戦争継続の準備をしてみせたほうが有利に交渉できる。
またロシアは弾薬の供給ができているのに対してウクライナは供給が追いつかなくなっている。
ロシア国内でも弾薬生産量を維持できているとの報告もあり、北朝鮮による供給も単発のものではなく
北朝鮮国内で増産体制をとり継続的に供給していく。
そしてプーチンの政治基盤は安定していてロシア国内からの停戦世論など数年は期待できない。
また確実ではないが台湾有事が起きれば西側の支援はさらに難しくなり、ウクライナの継戦能力が致命的に失われる可能性もある。
続けるほど有利になっていくと見られる中でロシアが停戦交渉など本気でするわけがない。
じゃあどうすればいいかというとウクライナは領土奪還を先送りにして、
これ以上領土を削られないようにひたすら防衛に徹するしかない。
そしてプーチンが死ぬか引退するなどしてロシア内部の変化を待つしか無い。
> ロシアは弾薬の供給ができているのに対してウクライナは供給が追いつかなくなっている
ロシアは弾薬の供給ができているのは北朝鮮の弾薬からエビデンスがあるけど、ウクライナは供給が追いつかなくなっているって何かエビデンスのようなものはあるかな。
私は知らないから、知っているなら教えて欲しい。
> ロシア国内からの停戦世論など数年は期待できない。
その通りだと思うけど、独立系ロシアメディアの調査で、プーチンが望むなら停戦を支持するというロシア人が7割になったとありました。
ロシア人もいい加減戦時体制が嫌になってきたのかもしれません。
独裁国家だから民意なんてクソかもしれませんが。
関係ないけどトップ画のパベル大統領の写真カッコ良すぎる
マジでTHE.老兵って感じがする
ダンディだよなぁ
老紳士みたいな感じでカッケェ
やっぱ選挙じゃ顔大事だよな
レーガン
小泉
ゼレンスキー(今は見る影もない)
などなど
俳優出身も多々あるし
うーむ、領土放棄は良いが、問題は戦後のウクライナの安全保障だな・・・。
ロシアの最終目的は、西側にここさえ放棄させるくらいの絶望を与えることか・・。
気が早いが、ウクライナとしては、次の戦争までどれだけ国内の体制を整えられるか・・。
領土放棄をすれば、ウクライナの親露派地域が丸ごと吹っ飛ぶから、過去の選挙ほど、この先親露派大統領が生まれる可能性も低い、か・・・・・・・?
停戦すればロシアに有利なのは明らかだ
まして領土放棄となれば停戦ではなく、ウクライナの事実上の敗北だから、戦後の安全保障がウクライナに都合の良く成り立つはずがない
まぁ、せいぜい
交渉でできるだけ有利に立てるよう、どこかしらで軍事的勝利を得ることを目指すべきだと思う
軍事的勝利が外交的勝利をもたらすとは限らないけど、例えば、小牧・長久手の戦いとか
>交渉でできるだけ有利に立てるよう、どこかしらで軍事的勝利を得ることを目指すべきだと思う
そら、ゼレンスキーもドニエプル川渡っても、どこかしらで成果を求めるよなあ・・・。
203高地や日本海みたいに、何かしらの勝利がないと、自軍に有利に講話なんてできないだろうし・・。(もしくは、朝鮮戦争みたいに敵味方双方疲弊しつくすとこまで行くか・・)
ロシア側も、決して楽な状態ではないと思うんだがなあ・・。
今ロシアが交渉のテーブルに着くでしょうか?
ロシアの立場なら、ウクライナの持久力が切れるのを待ち、何とか維持して来た膠着状態が破れるまで粘ったあと出来るだけ領土を切り取ってから交渉の席についた方が得だと考えそうです。
交渉が始まったとしてもロシアは既に4州を併合しています。
NATOとの緩衝地域を手に入れるにはウクライナ政府にNATO加盟を諦めさせる他なく、この条件だけは譲らないような気がします。
もし戦争が終わったとしても緊迫した情勢はずっと続く事になりそうですね。
>「ウクライナ支援は戦争に勝つためのものから『戦争に負けないもの』に変質する可能性がある」
援助されたリソースはたしかに莫大ですが、質・量・タイミング共に最初から戦争に負けないレベルですよ
来年から支援額は減らされますが、完成品ではなくて製造能力を渡す形にして設備と部材の供給に変換すればウクライナは長期戦を継続できるでしょうね。ラインメタル社が工場を作りたいらしいので彼らを全力でサポートするのが吉でしょう
これからはアメリカの支援が急速にしぼみ相対的にドイツの支援比重が増えてきそうなので、この戦争が何年も継続して、例えば5年後もバフムトで攻防戦をしている未来があったらその時のウクライナの最大の支援国はドイツになっているかもしれませんね
そしてドネツクで新型パンターが疾走する胸熱な展開に
現実問題、現状で停戦した場合の領土の位置関係はむしろロシア側に不利なんですね。
クリミアに続く長い弧状の領土がウクライナに対する弱点として晒された状態になりますから、むしろ停戦はウクライナ側に再反攻の時間的猶予と準備を与えることになります。
それに対抗するために長大な要塞線を構築するコストはロシアに多大な防衛負担を強いることになるので、現状での停戦は必ずしもロシア側に一方的に不利というわけでも無いんですよ。
が、故にロシア側もウクライナ再反攻の芽を潰さねばおいそれとは停戦できないんですね。
双方の落とし所はなかなか難しいですね。
>取り上げるべき話題がないというのが正直なところで、ここまで悪い流れは20ヶ月間を通じて初めてだ。
年貢の納め時といったところか。
ロシアは過去のミンスク議定書で裏切られたと感じているのに、交渉なんて受け入れるだろうか
そのミンスク議定書の内容が気に入らないからと公然と破棄に動いたのが他ならぬゼレンスキー政権で、西側も要塞構築のための時間稼ぎだったと公然と停戦合意を蔑んだから、ロシアが全面侵攻を決断したのではなかったか
はっきり言って外交交渉で事態の打開を画策するにはウクライナと西側にまるで信用がない上に、履行を監視する組織も存在しない状態では、まとまるものなんてないだろう
あのメルケルとマクロンのミンスク合意を愚弄する発言は、本当に失言としか言いようがなかったですね。
なにを考えてあんな事を言ったのか、
メルケルは、親露派扱いされる事への自己弁護だろうなとは思いますけど、
推測はできても共感はできません。
究極の平和ボケですよ、二人揃って。
地図を見る限りでは。
停戦するにしても。
クリミアは西側に入れておいた方が良いと思います。
なら、和平無視でずっと継戦するしかないですね。
その継戦の結果、もっと領土が切り取られる事になったとしても。
解決までは長引きそうですね。
・開戦後に活動禁止とされた政党所属のうち、与党に靡かなかった人々の地方議会での排除が進む
・当局の要求に応じない場合、Telegram等を事実上禁止可能にするための準備
・寡頭政治家から取り上げる形で国有化した企業の、大規模リストラや戒厳令終了までの配当等各種支払い凍結を伴う過去最高益
・軍人の所得税が地方予算から国家予算に。地方予算を中央の管理下に移す活動の進展
政権強化を含め長期戦に向けた準備が着々と進んでいるのは良いニュースと言えるかもしれませんね。
国防省情報総局がスーダン等でワグナーと戦っているとかは、大局に影響しないメディア向けの感が強いか。
プーチン大統領はボケてなどいなかったか
極端な話だけど、ロシアがブダペスト覚書を反故にした以上、ウクライナには核保有する権利があるので、停戦して核開発すれば次の侵攻は抑止できる。侵攻の口実にもなりかねないけど。
停戦で合意しても、どうせロシアは約束を守らず何年後かに、良く分からない口実をつけてまた侵攻してくるでしょう。
かといってウクライナのNATO加盟はハードルが高そうなので、ありそうな落としどころとしては、停戦後にNATO軍のウクライナ駐留でしょうかね。
その駐留は、NATOとロシア、両方が望んでいないのでは無いのでしょうか。
いくらウクライナが防護壁になるとはいえ、その引き換えに自軍をロシアと交戦させたいNATO国家なんて、無いよ。
そんなことは、外様大名のウクライナ軍にやらせたい。
ウクライナの経済復興・戦後外交が、どのようになるのか少し見通せないですね。
インフレ対策が、東欧諸国だけでなく、独仏英伊の経済大国も優先課題になっています。
日本は、官僚や政治家の統制が効いているため、国際約束の美名により海外ばら撒きをガンガン行っています。
海外を見れば、海外援助・拠出金の凍結削減は、なんだかんだ理屈(人権問題など)をつけて頻繁に行っています(ガザ紛争を見て凍結から増額と、グラグラしているのが分かりやすいですね)。
ロシアとの関係改善を、ヨーロッパ諸国が進めていけば、ウクライナの戦後復興も流動的と考えるべきです。